サンクスカードを導入したものの、現場から「苦痛だ」「正直きつい」という声が届いていないでしょうか。感謝を伝え合う前向きな取り組みのはずが、いつのまにか従業員の負担へと変わってしまう例は珍しくありません。
苦痛の原因は、従業員の性格や職場の雰囲気ではなく、多くの場合は運用の設計側にあります。ノルマや順位づけといった仕掛けが、感謝を業務のひとつに変えてしまうためです。
この記事では、サンクスカードが苦痛になる6つの原因と、制度を止めずに負担を取り除く見直し手順、そして続けるか止めるかの判断基準まで解説します。運用が停滞していると感じている担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

サンクスカードが苦痛と受け止められる最大の理由は、感謝を伝える行為が任意でなくなっている点にあります。制度の考え方そのものが間違っているわけではなく、運用の設計が負担を生み出しているのです。
ここでは苦痛の正体を整理したうえで、立場ごとに異なる負担の中身を切り分けていきます。
サンクスカードは本来、自然に生まれた感謝を目に見える形にする仕組みです。ところが「月に3枚は送りましょう」というルールが加わった瞬間、感謝は締め切りのあるタスクへと性質を変えます。
送りたい相手が思い浮かばない月でも枚数だけは求められるため、従業員は文面を絞り出さなければなりません。この「気持ちがともなわないのに書かなければならない」状態が、苦痛という言葉になってあらわれるのでしょう。
同じ構図は、送信枚数の順位づけや表彰、人事評価との連動でも起こります。参加を後押しするつもりで加えた仕掛けが、結果として義務感を強めてしまう場合もあるのです。
苦痛といっても、その中身は立場によって大きく異なります。対策を打つ前に、誰がどこで負担を感じているのかを切り分けておきましょう。
| 立場 | 感じやすい苦痛 |
|---|---|
| 送る側の従業員 | 送る相手が思いつかない、文章を考える時間が取れない |
| 受け取る側の従業員 | 形式的なメッセージへの反応を求められる、自分だけ受け取れていない |
| 管理職 | 部下全員に公平に送らなければならないという圧力がかかる |
| 運用担当者 | 集計や呼びかけが毎月発生し、効果を問われても答える材料がない |
すべてを一律の施策で解決しようとすると、かえって的を外します。たとえば送る側の負担が原因なのに受け取る側への呼びかけを強化しても、状況は変わりません。まずはどの立場から声が上がっているのかを確認するところが出発点です。

サンクスカードが苦痛になる原因は、次の6つに整理できます。
いずれも制度の思想ではなく、運用ルールの設計から生まれます。ひとつずつ見ていきましょう。
もっとも多い原因が、送信枚数の目標設定です。「月に何枚」という数字を置くと参加率の数値は上がりますが、投稿の中身は急速に薄くなります。
さらに、目標を管理する側は未達の従業員を追いかける役回りになります。感謝を促す制度だったはずのものが、いつのまにか進捗を確認される仕組みへと変質してしまうのです。数値上は順調に見えるため、担当者が異変に気づくのは遅れやすくなるでしょう。
「自由に書いてください」という案内は、一見すると従業員に配慮した運用に思えます。しかし文章を書くことに苦手意識のある人にとって、これは白紙を渡されるのと変わりません。
何を書けば正解なのかがわからないまま、ほかの従業員の丁寧な文面を見てしまうと、自分の投稿は物足りないのではないかという引け目が生まれます。書けない状態が続けば、その居心地の悪さが制度そのものへの嫌悪に変わっていきます。長い文章や高い完成度が暗黙のうちに求められている職場ほど、この傾向は強くなるでしょう。
サンクスカードのやり取りは、放っておくと同じ部署、同じ世代、同じプロジェクトという近い範囲で完結します。部署間の連携を狙って始めた制度が、すでにある関係を強めるだけで終わってしまうのです。
固定化が進むと、輪の外にいる従業員には「自分は参加していない」という感覚が残ります。この状態で全社に投稿が表示されると、疎外感はかえって強まります。
感謝は、仕事の見えやすさに引っぱられます。顧客対応や社内調整のように成果が目に触れる業務は投稿されやすい一方、検査や在庫管理のように「できて当たり前」と見られがちな業務は言及されにくいままです。
その結果、一度もサンクスカードを受け取っていない従業員が生まれます。本人にとっては、感謝が飛び交う場を眺めるだけの時間になりかねません。ここに送受信数のランキングや月間表彰が加わると、順位表は「自分は認められていない」という読み替えの材料になってしまいます。
送受信の記録が人事評価に反映されるのかどうか。ここを明確にしないまま運用を始めると、従業員は当然その点を疑います。
上司に送っておいたほうが有利ではないか、送らない自分は不利になるのではないか。こうした疑念が生まれた時点で、投稿は感謝ではなく社内政治の一部になります。対処そのものは単純です。評価と切り離すなら明言し、連動させるなら基準を示す。どちらとも言わない状態を放置することが、もっとも不信を招きます。
「みんなで感謝を伝え合いましょう」と号令をかけた層が、自分では投稿していない。この状態は現場にすぐ伝わります。
送ってよいのかどうかの判断材料がないまま、従業員は様子見を続けます。管理職が関与しない制度は、現場から見れば会社が本気で取り組んでいない施策にしか映りません。号令だけが繰り返されるほど、やらされ感は強まっていくでしょう。

苦痛の声を放置すると、投稿の形式化から担当者の疲弊まで、決まった順序で状況が悪化していきます。制度が静かに止まる前に、どの段階にいるのかを把握しておきましょう。
最初に起きるのが、文面の画一化です。「いつもありがとうございます」「お疲れさまです」といった、誰に送っても成立する言葉が並びはじめます。
受け取った側は、自分の何が認められたのかを読み取れません。読む価値がないと判断された投稿は流し見の対象になり、送る側の負担だけが残ります。この非対称が続くほど、制度への信頼は削られていきます。
次に、投稿する人としない人がはっきり分かれます。書き続けている人が「自分ばかり送っている」と感じて離脱すると、投稿数は急に落ち込みます。
運用担当者も同じ道をたどります。効果を問われても示せる材料が乏しく、手元には呼びかけと集計の作業だけが残るからです。廃止の意思決定を経ないまま、担当者の異動とともに制度が消えてしまうケースもあります。
もっとも影響が長引くのは、社内に残る空気です。形だけになった制度の記憶は、「またやらされ施策か」という反応として次の取り組みに引き継がれます。
サンクスカード単体の停滞では済まないところが、この問題の厄介な点です。エンゲージメント向上や理念浸透など、次に打つ手の効果まで下げてしまいます。

見直しには着手する順序があります。負担の原因を残したまま利用促進の施策を重ねても、苦痛はむしろ増えるためです。次の6ステップで進めましょう。
まずは、いま何が決まっているのかをすべて書き出します。送信枚数の目標、公開範囲、ランキング、表彰、評価との関係、集計の頻度と担当者。この6項目を並べるだけでも、負担がどこに集中しているかが見えてきます。
あわせて、現場の声がどの立場から出ているのかも確認しましょう。送る側なのか、受け取れていない人なのか、集計を担う担当者なのか。ここを取り違えたまま対策を打つと、手間だけが増えます。
棚卸しが済んだら、枚数の目標と送受信数のランキングを撤廃します。苦痛の訴えがある状態では、この2つがもっとも直接的な負担源になっているためです。
ただし完全に任意にすると、投稿は静かに減っていきます。そこで「送らなくても咎められないが、送れば全員の目に触れる場所に流れる」という設計に切り替えます。強制を使わずに参加を促すには、この非対称が有効です。表彰を残す場合も、枚数ではなく行動の中身を対象にし、期間を区切ったイベントにとどめておくと副作用を抑えられます。
書けない負担を減らすには、型を示すのが近道です。「◯◯さんが△△してくれたおかげで、□□が実現しました」というように、行動と結果をセットで書く形を共有します。
例文を数パターン用意して配布するだけでも、書き出しのハードルは目に見えて下がります。加えて、行動が具体的に書かれた投稿は第三者が読んでも意味が通じるようになるため、読まれる投稿が増え、書く動機も戻ってくるでしょう。文章を書くこと自体が難しい従業員のために、スタンプなど短い反応で参加できる導線も用意しておくと安心です。
「上が送っていないのに自分から送るのは気恥ずかしい」という心理は、役職者の投稿でかなり和らぎます。上が送っている状態そのものが、現場にとって送ってよいという合図になるためです。
このとき管理職に枚数を割り当ててはいけません。ノルマを一般従業員から管理職へ移し替えただけになり、負担の総量は変わらないからです。理念に沿った行動や、目立ちにくい業務への感謝など、送る観点を共有するほうが効果的でしょう。
次に、一度も受け取っていない従業員がどこにいるのかを確認します。特定の職種や部署に集中しているなら、手を入れるべきなのは投稿の呼びかけではなく、その仕事が見えにくい構造のほうです。
裏方の業務が成り立たせているものを、朝礼や社内報などの場で言語化して共有する。そうした地道な働きかけが、投稿の偏りを緩めます。投稿数が伸びていても、受け取れていない人が固まっている状態なら、制度は目的を果たしていません。
制度が続くかどうかは、運用担当者の負荷でほぼ決まります。印刷、配布、回収、掲示、集計といった作業を残したまま「盛り上げてほしい」と依頼すれば、いずれ止まってしまいます。
紙とデジタルの負担の違いは、以下の通りです。
| 比較項目 | 紙での運用 | デジタルツールでの運用 |
|---|---|---|
| 始めやすさ | 印刷すればすぐに開始できる | ツール選定と社内説明に時間がかかる |
| 担当者の作業 | 印刷、配布、回収、掲示、集計が毎月発生する | 投稿と集計が自動化され、設計と振り返りに時間を回せる |
| 拠点や在宅への対応 | 対面での受け渡しが前提となり、離れた相手には届きにくい | 勤務場所を問わずに送れる |
| 偏りの把握 | 手集計しないと見えず、気づくのが遅れる | 送信者と受信者の分布をデータで確認できる |
| 投稿の蓄積 | 掲示期間が終わると残りにくい | 過去の投稿を検索して参照できる |
紙が一律に劣るわけではありません。単一拠点で人数が限られ、対面のやり取りが日常的にある職場なら、紙のほうが手触りがあって定着する場合もあります。分かれ目は拠点数と在宅勤務の比率、そして集計を続けられる体制があるかどうかです。自社の状況を見て、紙にするかデジタルにするか決めましょう。

判断材料は投稿数だけでは足りません。投稿の広がりと内容、管理職の関与、運用担当者の負荷という3点を組み合わせて見ます。
| 判断 | 投稿の広がりと内容 | 管理職の関与 | 担当者の負荷 | 取るべき対応 |
|---|---|---|---|---|
| 継続 | 複数部署に広がり、行動が具体的に書かれた投稿が一定割合ある | 管理職も投稿している | 集計が自動化され、作業は軽い | 運用を維持し、受け取れていない従業員への手当てを進める |
| 見直し | 投稿は続いているが定型文が中心で、投稿者が一部に偏っている | 一部の管理職だけが投稿している | 呼びかけと集計に時間を取られている | ノルマと順位づけを外し、型の共有と管理職の関与から作り直す |
| 一時停止 | 投稿が減り、内容も定型文のまま変わらない | 管理職が関与していない | 担当者の作業だけが残っている | いったん止め、目的の再定義と体制の整備を先に進める |
3つのうち2つが見直しに当てはまる程度であれば、まだ止める段階ではありません。運用の作り直しで戻せる範囲です。一方、管理職の関与と担当者の負荷が同時に悪い状態であれば、投稿数が保たれていても継続は難しいでしょう。
止めるという判断は、失敗の記録ではありません。名前だけが残った制度を放置するほうが、社内施策全体への信頼を削ります。止める際に理由を説明しておけば、体制が整った段階で再開する余地も残せます。

最後に、サンクスカードの苦痛に関するよくある質問とその回答をまとめます。
そのようなことはありません。感謝を人前で言葉にする習慣が薄い職場では、気恥ずかしさから抵抗を覚える人が一定数います。加えて、枚数の目標や公開範囲といった運用ルールが負担を生んでいる場合も多く見られます。個人の感じ方の問題として片づけず、どのルールが負担になっているのかを整理して伝えるとよいでしょう。
推奨できません。参加率は上がりやすい一方で、定型文が増え、送る側の負担感と制度への不信が同時に高まるからです。立ち上げ期に投稿を増やしたい場合は、期間を区切ったイベントや、管理職から先に送る運用のほうが副作用は小さくなります。目安を示す場合でも、達成状況を管理したり公表したりしない形にとどめてください。
声が出た時点ですぐに廃止する必要はありません。多くの場合、苦痛はノルマや順位づけといった運用ルールから生じており、ルールを外せば負担は下がります。ただし、目的が共有されておらず、管理職も関与せず、担当者の作業だけが残っている状態であれば、いったん止める判断も現実的です。
拠点数と在宅勤務の比率によって変わります。単一拠点で対面のやり取りが多い職場なら、紙でも定着します。拠点が分かれている場合や在宅勤務が混ざる場合は、渡せない相手が生まれるためデジタルのほうが続きやすい傾向です。判断の分かれ目は、印刷から集計までの作業を継続できる体制があるかどうかにあります。
送る観点を事前に共有しておけば、その懸念はかなり抑えられます。成果の大きさだけを基準にすると偏りが出るため、理念に沿った行動や、目立ちにくい業務への貢献も対象に含めておきましょう。あわせて、投稿が人事評価に影響しないことを明示しておくと、受け止め方は安定します。

RECOG(レコグ)は、感謝や称賛のメッセージを手軽に送り合えるチームワークアプリです。累計2,000社以上に導入されており、パソコンやスマートフォンから場所を選ばずに利用できます。
苦痛を生まない運用で重要になるのは、送る側の手間を減らすことと、やり取りの偏りを早い段階で把握することです。RECOGには感謝を伝えるレター機能に加え、送受信状況を確認できる分析機能があり、まだ受け取れていない従業員の存在にも気づきやすくなります。送られたレターは投稿フィードにも流れるため、枚数の目標を設けなくても称賛が社内で共有される状態を保てるでしょう。
運用ルールの見直しとあわせて仕組みを整えたい方は、基本機能や活用シーンをまとめた資料をご請求ください。
サンクスカードが苦痛と言われる原因は、従業員の性格でも職場の雰囲気でもなく、運用の設計にあります。枚数のノルマ、高い記述ハードル、相手の固定化、受け取れない従業員の存在、評価との曖昧な関係、管理職の不参加。この6つのどれかが残っている限り、呼びかけを強めても負担は増える一方です。
見直しの起点は、ノルマと順位づけを外すところにあります。そのうえで書き方の型を配り、管理職が先に送り、受け取れていない従業員に手を打つ。ここまで進めれば、多くの現場で負担は目に見えて下がるでしょう。
そして継続の可否を判断する材料は、投稿数だけでは足りません。投稿の中身と広がり、管理職の関与、担当者の負荷までを見たうえで、続けるか、作り直すか、いったん止めるかを決めましょう。
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