「健康経営に取り組みたいものの、具体的にどのような施策を始めればよいかわからない」「他社の取り組みを自社の参考にしたい」という担当者も多いのではないでしょうか。健康診断や運動促進、食生活の改善、メンタルヘルス対策など選択肢は幅広く、自社の健康課題や働き方に合った施策を選ぶ必要があります。
また、施策を実施するだけでなく、従業員が参加しやすい環境を整え、結果を振り返りながら改善していくことも大切です。企業の事例を見ると、業種や規模、抱えている課題に応じてさまざまな工夫がされていることがわかります。
この記事では、健康経営で取り入れられる施策例と企業10社の取り組み事例、施策を進める手順や定着させるポイントを紹介します。これから健康経営を始める企業や、現在の取り組みを見直したい担当者は参考にしてみてください。

健康経営とは、従業員などの健康管理を経営的な視点から考え、戦略的に実践する取り組みです。経済産業省では、従業員などへの健康投資は従業員の活力や生産性の向上、組織の活性化などにつながり、結果として業績向上や株価向上が期待されるとしています。
健康経営では、健康診断や福利厚生の充実といった個別の施策だけでなく、自社の健康課題を把握し、方針や目標を定めて継続的に改善していく視点が大切です。健康経営優良法人認定事務局が運営するポータルサイト「ACTION!健康経営」でも、「法令遵守・リスクマネジメント」を前提として、「経営理念・方針」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」の枠組みが示されています。
健康経営は自社の課題を起点に進めるものです。そのため、他社の取り組みをそのまま取り入れるのではなく、自社の従業員や職場が抱える課題に合わせて施策を検討する必要があります。
出典:経済産業省「健康経営」・ACTION!健康経営「健康経営とは」

健康経営では、身体の健康だけでなく、働き方やメンタルヘルス、職場内のコミュニケーションなども施策の対象になります。自社の課題によって優先すべき取り組みは異なるため、施策の目的を明確にしたうえで選ぶ必要があります。代表的な施策例を見ていきましょう。
施策例 |
主な目的・対象となる課題 |
健康診断と受診勧奨 |
健康状態の把握、疾病リスクへの早期対応 |
健康知識を高める研修・教育 |
健康に関する知識や意識の向上 |
ワークライフバランスの推進 |
働き方の見直し、休養時間の確保 |
仕事と育児・介護・治療の両立支援 |
事情を抱える従業員の就業継続支援 |
社内コミュニケーションの促進 |
職場内の交流や相談しやすい環境づくり |
食生活の改善支援 |
食習慣の見直し |
運動機会の増進 |
運動不足の改善、運動習慣づくり |
メンタルヘルス対策 |
心の健康への支援、職場環境の改善 |
長時間労働者への対応 |
過重労働による心身への負担軽減 |
禁煙・受動喫煙対策 |
喫煙に伴う健康リスクへの対応 |
女性の健康保持・増進 |
女性特有の健康課題への対応、就業継続の支援 |
高年齢従業員への配慮 |
加齢に伴う心身の変化への対応 |
健康診断は、従業員の健康状態を把握し、必要な対応につなげるための基本的な取り組みです。法令では、事業者は常時使用する労働者に対して定期健康診断を実施することが定められています。
健康経営では、健康診断を実施して終わりにせず、結果を健康管理に活かすことも欠かせません。再検査や精密検査が必要な従業員へ受診を促したり、必要に応じて保健指導につなげたりする方法があります。
健診結果を集計・分析して全体の傾向として確認すれば、自社でどのような健康課題が多いのかを考える材料にもなります。個人情報の取り扱いに配慮しながら、次に実施する施策の検討へ活かしましょう。
従業員自身が健康について正しい知識を身につけるため、研修や情報提供を行なうのも健康経営施策のひとつです。テーマとしては、生活習慣、睡眠、食生活、運動、女性の健康、メンタルヘルスなどがあります。
研修や情報提供の際には、自社で把握した健康課題と研修内容を合わせることがポイントです。たとえば食生活に課題があれば栄養に関する情報を提供し、睡眠に関する悩みが多ければ休養をテーマにするなど、従業員にとって身近な内容にすると理解されやすくなります。
社内ポータルやメールなどを使って定期的に情報を届ける方法もあります。専門的なテーマを扱う場合は、産業医や保健師などと連携すると、正確な情報を伝えやすくなるでしょう。
心身ともに健康な状態で働き続けるには、仕事と生活のバランスにも目を向ける必要があります。有給休暇を取得しやすい環境づくりや労働時間の適正化、勤務方法の見直しなどが施策の例です。
制度を設けていても、職場の雰囲気や業務量によって利用しにくい状態では十分に活用されません。管理職への周知や業務分担の見直しなども含め、従業員が実際に制度を利用できる環境を整えておきましょう。
部署や職種によって勤務形態が異なる企業では、一律の制度だけで対応しようとせず、現場の働き方を踏まえて運用方法を検討するとよいでしょう。
育児や介護、病気の治療をしながら働く従業員を支えることも、健康経営に関連する取り組みの一つです。休暇制度や勤務時間の調整、相談窓口の設置などが具体例として挙げられます。
両立支援制度があっても、対象となる従業員が制度の存在や利用方法を知らなければ活用にはつながりません。社内制度をわかりやすくまとめて周知するとともに、相談先を明確にしておく必要があります。
人事担当者だけでなく、従業員から相談を受ける可能性がある管理職にも制度の内容を共有しておくと、必要な支援へつなげやすくなります。
従業員同士が気軽にコミュニケーションを取れる職場環境をつくることも、健康経営で扱われる取り組みの一つです。1on1や社内交流の機会、感謝や称賛を伝え合える仕組みなど、方法は複数あります。
勤務地や職種が分かれている企業では、従業員同士が顔を合わせる機会が少なく、互いの仕事や状況が見えにくくなる場合があります。普段から接点を持てる仕組みがあれば、情報共有や相談のきっかけにもなります。
交流そのものを目的にするのではなく、「部署間の接点が少ない」「相談相手が限られている」など、自社の課題に合わせて施策を検討することが重要です。
従業員の食生活を支援する方法として、健康的な食事を選びやすい環境づくりや、栄養に関する情報提供があります。従業員向け食堂のメニューを工夫したり、管理栄養士による講座を開催したりする方法も考えられるでしょう。
食事は毎日の生活に関わるため、知識を一方的に伝えるだけでなく、従業員が日々の食事で実践しやすくなります。食堂を設置していない企業でも、食生活に関する情報発信やセミナーなどから始められます。
健康診断やアンケートから食生活に関する課題が見つかった場合には、その内容に合わせて取り組みの内容を検討しましょう。
運動不足への対策として、ウォーキングイベントや体操、スポーツイベントなどを実施する企業があります。運動するよう呼びかけるだけでなく、従業員が実際に身体を動かす機会を設ける方法です。
ただし、普段の運動量や体力には個人差があります。全員に同じ目標を求めるよりも、歩数や参加回数など複数の目標を設定したり、短時間から参加できる内容にしたりすると、無理なく取り組みやすくなります。
実施後は参加人数やアンケート結果なども確認し、自社の従業員に合った内容になっているかを振り返りましょう。
メンタルヘルス対策では、不調が生じた後の対応に加え、従業員自身がストレスに気づくための支援や職場環境の改善も重要です。具体的にはストレスチェック、相談窓口、管理職向け研修、セルフケアに関する教育などが挙げられます。
ストレスチェックについては、個人への結果通知だけでなく、一定の条件を満たした集団ごとの結果を分析し、職場環境の改善へ活用する方法もあります。
相談窓口を設ける場合は、相談方法や情報の取り扱いについても周知し、従業員が必要なときに利用しやすい状態を整えておきましょう。
長時間労働による心身への負担を抑えるためには、労働時間を把握し、必要な対応を行なうことが重要です。勤怠データを確認するだけでなく、特定の部署や従業員へ業務が偏っていないかにも目を向けます。
残業時間の削減を個人の努力だけに委ねても、業務量や人員配置に原因があれば根本的な改善にはなりません。業務工程、会議の進め方、役割分担などを確認し、長時間労働が発生している背景を把握する必要があります。
なお、労働安全衛生法では、時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者から申出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施しなければなりません。こうした法令上の対応も確実に行ないながら、健康管理と業務改善の両面から取り組みましょう。
禁煙を希望する従業員への支援や、受動喫煙を防ぐための環境整備も健康経営の施策に含まれます。禁煙に関する情報提供、禁煙外来の利用支援、社内イベントなど、企業の状況に応じた取り組みが考えられます。
喫煙習慣には個人差があるため、禁煙を強制するのではなく、禁煙を希望する従業員が取り組みを続けやすい支援を用意する視点が大切です。
受動喫煙対策については関係法令も踏まえ、喫煙者だけの問題として扱わず、職場で働く従業員や来訪者を含めた環境整備として進める必要があります。
女性特有の健康課題への理解を深め、働き続けやすい環境を整えることも健康経営の施策に含まれます。月経に伴う不調や更年期の症状、婦人科系の疾患などは、仕事のパフォーマンスや就業継続にも影響を及ぼす可能性があるためです。
具体的には、女性の健康をテーマにした研修や情報提供、婦人科検診の受診支援、相談窓口の設置、休憩スペースの整備などが挙げられます。
女性従業員だけを対象にするのではなく、管理職や周囲の従業員にも知識を広げておくと、不調を抱える従業員が相談しやすい職場づくりにつながるでしょう。
高年齢の従業員が安全かつ健康に働き続けられるよう配慮することも、健康経営の施策の一つです。加齢に伴って体力や身体機能などに変化が生じる場合があるため、一人ひとりの状態に応じた対応が求められます。
体力や身体機能のチェック、転倒や腰痛を防ぐための作業環境の見直し、勤務時間や業務内容の調整などが施策の例です。
年齢だけで一律に判断せず、個人差があることを前提に、本人と話し合いながら働き方を検討しましょう。
出典
ACTION!健康経営「健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)認定要件」
厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」

健康経営の施策は、企業の規模や業種、抱えている健康課題によって実践方法が変わります。他社の事例を見る際は、施策そのものだけでなく、どのような課題を背景に取り組みを始めたのかにも注目しましょう。
ここでは、RECOGの導入企業2社と、健康経営優良法人の認定事務局が運営するACTION!健康経営から7社、経済産業省北海道経済産業局が紹介している1社の事例を取り上げます。
企業名 |
業種 |
主な取り組み |
コンクリートコーリング株式会社(西日本) |
建設業 |
ウォーキング・卒煙キャンペーンとRECOGの連動 |
富士フイルムワコーケミカル株式会社 |
製造業 |
利用促進チームによるRECOG活用、部署間交流の促進 |
山形陸運株式会社 |
運輸業 |
ウォーキング施策、脳ドックの受診勧奨 |
株式会社アイザック・トランスポート |
サービス業(産業廃棄物の収集・運搬) |
人間ドックの会社負担、運行記録計による労働時間管理 |
山八商事株式会社 |
不動産業 |
サラダランチデー、女性の健康をテーマにした研修 |
株式会社セルヴァンエスポート |
娯楽業(スポーツジム) |
体成分・姿勢測定による健康指標の見える化 |
オーエス株式会社 |
生活関連サービス業 |
腹八分目運動の日、健康教育 |
株式会社シアーズホームグループHD |
専門・技術サービス業 |
管理栄養士監修の食堂メニュー、熱中症対策 |
株式会社HYK |
福祉 |
バースデー休暇、就業時間内のボディメンテナンス |
ANA新千歳空港株式会社 |
空運業 |
健康管理室の設立、健康増進アプリの導入 |
それぞれの事例を見ていきましょう。
コンクリートコーリング株式会社(西日本)は、健康経営や人的資本経営を進めるなかで、社内コミュニケーションの促進にRECOGを活用しています。2025年には「健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)ネクストブライト1000」に認定されました。
同社では年3回のウォーキングキャンペーンを行ない、参加者へRECOGのレターでポイントを付与しています。目標達成者には追加ポイントを贈るほか、卒煙キャンペーンの成功者へ従業員から称賛レターが送られるといった使い方もしています。
健康施策とRECOGでの感謝・称賛を組み合わせ、参加の動機づけにしている事例です。
出典:RECOG導入事例「本社と現場の距離を縮めた健康経営―中小建設業が業界初のISO 30414を取得できた理由」
富士フイルムワコーケミカル株式会社は、健康経営宣言を掲げ、従業員の健康維持・増進に向けた取り組みを進めています。広野工場では、部署間のコミュニケーションを促す施策としてRECOGを導入しました。
利用促進のため、各部署からメンバーを集めた「スマイルクラブ」を発足し、月1回の意見交換を実施しています。RECOG上で趣味や特技を紹介する「自己紹介リレー」や、主任が職場を回りながら従業員の良い点を見つけてレターを贈る「褒めパトロール」なども実施しました。
RECOGの導入事例では、社内の雰囲気や風通しが良くなったという声に加え、ストレスチェックの結果にも定量的な変化が表れたと紹介されています。担当者は、コミュニケーションの活性化が従業員のストレス低減につながっているのではないかと話しています。
出典
富士フイルムワコーケミカル株式会社「健康経営への取り組み」
RECOG導入事例「利用促進チームのアイディア施策で、“褒める”文化の定着を促す」
山形陸運株式会社では、運送業で働く従業員の健康リスクに着目し、健康経営を進めています。ACTION!健康経営の事例集では、関連会社の従業員が突然亡くなった経験などをきっかけに、健康経営に取り組み始めたことが紹介されています。
具体的には、歩数計を活用したウォーキング施策や、休日の運動量に着目した「Sunday3000」、対象者への脳ドック受診勧奨などを実施しています。健康診断後の再検査の受診勧奨も継続しています。また、従業員に健康経営の意義を粘り強く説明し、健康経営への理解を広げてきました。
運転業務特有の健康課題を把握し、データを見ながら新しい取り組みへつなげている事例です。
出典:ACTION!健康経営「健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)取り組み事例集」
株式会社アイザック・トランスポートは、長距離運転を担う従業員の不規則な勤務や健康状態を課題として捉え、健康経営を進めています。従業員が長く働ける環境づくりを目指し、健康管理と労働時間管理を組み合わせている点が特徴です。
同社では、人間ドックを会社負担で毎年受診できる体制を整えています。また、デジタル式運行記録計を用いて労働時間を管理し、必要に応じて安全管理部から休憩時間の取り方を伝えたり、配車を変更したりしています。
社内には運動機器や男女別の休憩室なども設けており、長距離運転という業務の特徴を踏まえて施策を組み立てています。
出典:ACTION!健康経営「健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)取り組み事例集」
山八商事株式会社は、従業員との対話を重視し、意見や反応を施策へ反映しながら健康経営を進めています。従業員アンケートやコミュニケーションを通じて課題を把握し、取り組みを毎年見直している点が特徴です。
食生活の改善では、毎月8日を「サラダランチデー」として、希望者へ昼食用のサラダを提供しています。女性従業員の増加を踏まえ、「女性の健康」をテーマにした研修や女性専用の休憩エリアも導入しました。
担当者側だけで施策を決めるのではなく、利用する従業員の声を聞きながら内容を調整しているため、施策改善の進め方を考える際にも参考になる事例です。
出典
ACTION!健康経営「健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)取り組み事例集」
山八商事株式会社「健康経営」
株式会社セルヴァンエスポートは、健康指標や施策の効果を可視化しながら健康経営を進めています。ACTION!健康経営の2025年事例集には、商号変更前の「株式会社セルヴァンスポーツ」として掲載されています。
同事例集では、体成分や姿勢などを測定し、従業員が自身の身体の状態を確認できる取り組みを紹介しています。フィジカル面に加え、精神科医や産業医などの専門家とも連携し、メンタル面への支援も進めてきました。
施策を実施した回数だけを見るのではなく、測定結果やストレスチェックなどの指標を活用し、健康状態の変化を把握しようとしている点が特徴です。
出典
ACTION!健康経営「健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)取り組み事例集」
Gビズインフォ「株式会社セルヴァンエスポート」
オーエス株式会社は、従業員が働き続けやすい環境づくりを進めるなかで、健康経営に取り組んでいます。ACTION!健康経営の事例集では、人事総務部を中心に全社を巻き込み、小さく始められる施策を継続してきたことが紹介されています。
たとえば、毎月8日を「腹八分目運動の日」と定め、社内イントラネットを通じて食生活に関する情報を発信しています。このほか、生活習慣アンケートや健康診断結果を踏まえた健康教育「Wellnessゼミ」のほか、部署を越えた交流を生むフリーアドレスの執務環境づくりにも取り組んできました。
費用をかけずに始められる施策から着手し、継続して取り組んでいる点が参考になります。
出典
ACTION!健康経営「健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)取り組み事例集」
オーエス株式会社「2025年度中間報告 OSグループ健康経営の取り組みについて」
株式会社シアーズホームグループHDでは、従業員が心身ともに健康に働ける環境づくりを重視しています。健康課題の把握や施策の推進を総務・人事部門が担い、経営層は健康経営に関するメッセージを発信しています。
食生活の改善では、従業員向け食堂で管理栄養士が監修した複数のメニューを用意し、サラダバイキングも実施しています。現場では、熱中症対策としてドリンクや塩タブレットを配布しており、ファン付き作業服を支給している現場もあります。
全従業員へ同じ施策を当てはめるのではなく、勤務場所や業務内容に応じた健康対策を進めている事例です。
出典:ACTION!健康経営「健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)取り組み事例集」
株式会社HYKは、ACTION!健康経営の2025年事例集掲載時点で従業員2名の小規模事業者です。規模が小さい企業でも続けられる取り組みを選び、保険会社など外部の支援も活用しながら健康経営を進めています。
同社では、バースデー休暇や、就業時間内に身体のケアを受けられる取り組みなどを導入しました。また、2025年3月時点では50人未満の事業場に実施義務がなかったストレスチェックも自主的に行なっていました。なお、改正労働安全衛生法により、50人未満の事業場でも2028年4月1日からストレスチェックが義務化されます。
自社だけですべての専門知識や体制を用意せず、外部の協力を得ながら取り組みを続けている点も特徴です。
出典
ACTION!健康経営「健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)取り組み事例集」
厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」
ANA新千歳空港株式会社では、従業員の健康状態が航空機の安全な運航やサービス品質にも関わるという考えから、健康経営を進めています。北海道経済産業局の資料では、「健康経営優良法人ホワイト500」に認定された大規模法人として紹介されています。各種データを用いて健康課題を把握し、2017年4月には千歳グループ健康管理室を設立しました。
取り組みは定期健康診断に加え、女性の健康課題や食生活に関する学習機会、健康増進アプリ「MY HEALTH WEB」の導入など多岐にわたります。また、60歳を迎える従業員を対象に、身体機能や健康状態を確認する機会も設けています。
従業員の年代や健康課題に応じた施策を複数組み合わせ、継続的な健康支援につなげている事例です。
出典:経済産業省北海道経済産業局「北海道で健康経営に取り組む企業等を紹介します」

健康経営は、個別の施策を思いつくまま実施するのではなく、課題を把握して計画的に進める必要があります。ここでは、ACTION!健康経営が示す枠組みを踏まえ、実務上の流れに沿って5つのステップに分けて解説します。
取り組みを一度で完成させようとせず、結果を確認しながら改善を続けることが重要です。
最初に、なぜ自社が健康経営に取り組むのかを明確にします。従業員の健康保持だけを目的とするのではなく、企業理念や経営上の課題とどのようにつながるのかまで考えておくと、方針に一貫性がうまれます。
健康経営を一部の担当部署だけの活動として扱わず、会社として取り組む姿勢を示すため、方針は経営層から従業員へ伝えます。
社外へ発信する場合も、認定取得だけを目的として見せるのではなく、自社が目指す働き方や組織の姿と結びつけると、取り組む理由が伝わりやすくなります。
方針を決めたら、施策を継続的に進めるための体制を整えます。経営層、担当部署、産業医や保健師など、誰がどの役割を担うのかを明確にしておきましょう。
健康課題によっては、人事・総務部門だけで対応できない場合があります。長時間労働への対応であれば各部門の管理職、健康指導であれば産業保健スタッフなど、課題に応じた連携が必要です。
推進役を決めるだけで終わらせず、進捗や課題を共有できる機会を設けておくと、一部の人だけに負担が集中する状態を防ぎやすくなります。
施策を決める前に、自社でどのような健康課題が生じているのかを確認します。健康診断やストレスチェック、勤怠状況、休職状況など、すでに保有している情報も課題を把握する材料になります。
たとえば、運動不足が課題の企業と長時間労働が課題の企業では、優先すべき施策は異なります。他社の成功事例だけを基準に施策を決めるのではなく、自社のデータと照らし合わせて考えることが重要です。
健康課題を具体化しておけば、施策を実施した後に効果を評価する際の基準も設定しやすくなります。
把握した健康課題をもとに、優先順位を付けて施策を選びます。すべての課題へ一度に対応する必要はなく、重要度が高い課題や現在の体制で着手しやすいものから進めるのも一案です。
施策を決める際は、対象者や担当者、実施期間、目標などを明確にしておきましょう。「誰に対して何を行なうのか」が曖昧なままでは、実施後に成果を評価しにくくなります。
あわせて、目標の達成度を測る指標(参加率や健康指標など)も決めておくと、次の改善につなげやすくなります。
施策を実施した後は、あらかじめ設定した目標や指標と実績を比較します。参加率や健康関連指標などを確認し、当初把握した健康課題に対してどのような変化があったのかを見ていきます。
一度の実施結果だけで施策の良し悪しを判断するのではなく、継続的にデータを確認することも重要です。健康状態に関する指標には、短期間では変化が表れにくいものもあります。
検証結果を次の計画へ反映し、必要に応じて施策の内容や目標を見直すことで、健康経営の取り組みを改善していきましょう。

健康経営は一時的なイベントではなく、継続して取り組むことが大切です。施策そのものが自社の課題に合っていても、目的が十分に伝わらなかったり、参加しづらかったりすると定着しにくくなります。実施後は従業員の反応も確認しながら、運用方法を改善していきましょう。
それぞれのポイントを解説します。
施策を定着させるには、PDCAサイクルを回すことが大切です。実際に施策を利用した従業員へのアンケートやヒアリングを通じ、参加した感想や「参加しにくかった」「使い方がわかりにくかった」といった利用上の問題点を特定して、次回以降の運用へ反映しましょう。
たとえば、参加者が少なかった場合でも、施策そのものへの関心が低いとは限りません。開催時間が合わなかった、申し込み方法がわかりにくかったなど、運用面に原因がある可能性もあります。
実際に制度を利用した従業員の意見を集め、実施方法を改善していくと、自社の職場環境に合った施策へ近づけられます。
施策を定着させるには、一部の健康意識が高い従業員だけでなく、幅広い人が参加しやすい環境を整える必要があります。勤務時間や勤務地、職種などによって参加条件に差が生じていないかを確認しましょう。
オンラインでも参加できる方法を用意する、短時間で取り組める内容にする、複数の日程を設けるといった工夫があります。参加を強制するのではなく、従業員自身が無理なく選べる形にすると、参加へのハードルを下げられます。
実施後の参加状況も確認し、参加しづらい層が見つかった場合には、次回の運用方法を見直していきましょう。
施策を実施した後に、取り組みの状況や結果を社内で共有することも定着につながります。実施している理由やその後の変化が見えない状態では、健康経営が一時的な活動として受け取られる可能性があります。
参加人数や実施内容、従業員から寄せられた感想など、共有できる情報から社内へ伝えましょう。改善が必要だった施策についても、課題と次の対応を示せば、継続的に見直していることが伝わります。
経営層から健康経営に関する考えや進捗を発信する方法もあります。担当部署だけでなく、会社全体で継続していることを伝える視点が大切です。

健康経営の取り組み方は、企業規模や職場環境によって異なります。これから施策を検討する企業では、規模による違いや始めやすい施策、健康経営優良法人の認定との関係などが気になることもあるでしょう。健康経営の施策についてよくある疑問に回答します。
健康経営の基本的な考え方は企業規模によって大きく変わりませんが、実施体制や取り組み方には違いが生じます。
従業員数が多い企業では、専門部署や産業保健スタッフと連携した施策を進めやすい一方、小規模な企業では経営者と従業員の距離の近さを活かしやすいでしょう。実際にACTION!健康経営の事例集には、従業員数が少ない事業者による取り組みも掲載されています。
企業規模だけで判断するのではなく、従業員数や業務内容、健康課題、利用できる人員や予算を踏まえて実行可能な施策を選ぶことが大切です。
大きな設備投資をせずに始められる健康経営の施策もあります。健康に関する情報を社内へ発信する、短時間の体操を取り入れる、従業員アンケートで健康課題を聞くといった方法は、比較的着手しやすいでしょう。
ただし、始めやすさだけを理由に施策を選ぶのは適切ではありません。健康診断や勤怠状況など、すでに社内にある情報も確認し、自社の課題に合う取り組みかを考える必要があります。
小さく始めた施策でも、実施結果を確認しながら改善を続ければ、自社に合った方法へ調整できます。
健康経営優良法人は、特定の施策を1つ実施すれば認定される制度ではありません。「経営理念・方針」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」など、複数の観点から取り組み状況が確認されます。
制度・施策実行では、健康診断や健康教育、働き方、コミュニケーション、食生活、運動、メンタルヘルス、喫煙対策などに関する項目があります。なお、法人部門や年度によって認定要件は異なるため、過去の要件をそのまま当てはめることはできません。
認定を目指す場合は、申請する年度のACTION!健康経営のWebサイトで、最新の認定要件や申請書を確認しましょう。
出典
ACTION!健康経営「健康経営とは」
ACTION!健康経営「健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)認定要件」

健康経営の施策は、従業員に参加してもらい、継続してもらうことが重要です。RECOGは、従業員同士が感謝や称賛をレターで伝え合い、ポイントを贈り合えるサービスです。社内コミュニケーションの促進に加え、健康施策の参加者や目標達成者へレター・ポイントを贈ることで、取り組みが周囲から認められる機会をつくれます。部署や拠点を越えた交流のきっかけとしても活用でき、健康経営の取り組みを社内に広げる仕組みとして役立ちます。
健康経営では、健康診断や運動、食生活の改善だけでなく、働き方やメンタルヘルス、社内コミュニケーションなど幅広い施策が考えられます。大切なのは、多くの施策を実施することではなく、自社の健康課題を把握したうえで必要な取り組みを選び、結果を確認しながら改善を続けることです。
企業事例からも、業種や規模に応じて取り組み方が異なることがわかります。他社の施策をそのまま導入するのではなく、従業員の声や自社のデータを確認しながら、無理なく続けられる方法を検討しましょう。
健康経営の一環として、従業員同士のコミュニケーションや感謝・称賛を伝え合える環境を整えたい場合は、RECOGの活用がおすすめです。RECOGではレターやポイントなどの機能を通じて、日常的なコミュニケーションづくりを支援しています。健康施策への参加を後押しする仕組みとして活用している企業事例もありますので、RECOGの活用もぜひご検討ください。
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