人材不足や働き方の多様化が進むなか、勘や経験に頼った人事から脱却し、データに基づく意思決定を行ないたい企業が増えています。その実現を支えるのがピープルアナリティクスツールです。
一方で「種類が多すぎて選べない」「導入したものの活用できていない」という声も少なくありません。
本記事では、ピープルアナリティクスツールの種類や選び方、おすすめツール10選、導入手順までを整理し、運用を成功させるためのポイントまでわかりやすく解説します。

ピープルアナリティクスツールとは、従業員に関するさまざまなデータを収集・分析し、人事領域の意思決定を最適化するために用いるシステムの総称です。採用、配置、育成、評価、定着など、人事のあらゆる場面で活用が進んでいます。
ピープルアナリティクスとは、従業員や組織に関するデータを収集・分析し、企業の課題解決や経営判断に活かす取り組みです。HRアナリティクスやタレントアナリティクスと呼ばれる場合もあります。
従来の人事は担当者の経験や勘に頼る部分が多くありました。しかし、ピープルアナリティクスを導入すれば、客観的なデータを根拠とした判断が可能になります。
扱うデータは多岐にわたり、人事情報(適性検査、評価履歴、異動歴など)、勤怠情報、サーベイ結果、行動ログ、コミュニケーションデータなどが含まれます。これらを統合的に分析できるツールが、ピープルアナリティクスツールです。
ピープルアナリティクスが注目される背景には、人材不足の深刻化、働き方の多様化、人的資本経営への関心の高まりなど、多岐にわたる要因があります。2023年3月期決算以降、上場企業には人的資本情報の開示が義務付けられ、自社の人材に関するデータを定量的に把握する必要性が高まりました。
また、リモートワークの普及によって従業員の状態が見えづらくなった点も、データを活用する動機につながっています。離職の兆候やエンゲージメント低下を早期に察知するため、ピープルアナリティクスの活用は今後さらに広がるでしょう。

ピープルアナリティクスツールで何ができるのか、代表的な活用領域を紹介します。
社内で活躍している従業員の特性を分析し、採用基準に反映できます。スキルや経験だけでなく、価値観や行動特性まで含めて評価のため、自社にマッチする人材を見極めやすくなるでしょう。結果として早期離職の抑制にもつながります。
勤怠データ、サーベイ結果、コミュニケーション頻度などを組み合わせて分析すれば、離職リスクの高い従業員を早期に把握できます。兆候を察知した段階で1on1や面談を実施すれば、離職を未然に防ぐアプローチが取れます。
従業員のスキルや適性、過去の実績データから、最適な配置を検討できます。プロジェクトに必要なスキルセットを保有する人材を素早く特定できるため、機動的な組織運営が可能です。育成面でも、個々の特性に応じた研修プランを設計しやすくなります。
人による評価は主観が入りやすく、評価者によってばらつきが生じがちです。データを活用すれば、評価の根拠を明確にでき、納得感のある人事評価制度の運用につながります。評価者バイアスの是正にも役立つでしょう。

ピープルアナリティクスツールは大きく4つのタイプに分けられます。自社の目的に応じて適切なタイプを選定することが重要です。
従業員同士の感謝・称賛のやり取り、チャット、投稿などの日常的な行動データを蓄積し、組織の関係性や文化を可視化するタイプです。サーベイや人事考課では捉えにくい「日々の実態」をデータ化できる点が特徴で、組織活性化と相性が良いツールといえます。
従業員のスキル、経歴、評価、適性などの人材データを一元管理し、配置や育成に活用するタイプです。人材データベースとしての機能が充実しており、人事戦略の基盤となります。人材の見える化を最優先したい企業に向いています。
定期的にアンケートを実施し、従業員のエンゲージメントやコンディションを可視化するタイプです。パルスサーベイ機能を備えたツールも多く、組織状態の変化を継続的に把握できます。離職防止や組織開発を主目的とする企業に適しています。
各システムに分散しているデータを統合し、自由に分析・可視化するタイプです。柔軟性が高い一方で、活用にはデータ分析の知見が必要となります。分析リソースが社内にある企業向けです。

ここからは、おすすめのピープルアナリティクスツール10選を、タイプ別に紹介します。
RECOGは、感謝・称賛のメッセージを従業員同士で贈り合えるチームワークアプリです。日常的にやり取りされる「レター」「投稿」「チャット」のデータがRECOG上に蓄積されていき、AIが組織状態を分析・可視化します。サーベイや人事考課では見えにくい現場のリアルなコミュニケーションをデータ化できるため、ピープルアナリティクスの起点となる行動データの取得に強みがあります。新たなリーダーの発掘や離職対策に活用でき、PC・スマートフォン・タブレットに対応しているため現場での定着もスムーズです。
Uniposは、感謝のメッセージに少額のポイント(ピアボーナス)を添えて贈り合えるツールです。シンプルな投稿設計で運用しやすく、Microsoft TeamsやSlackなどの外部ツールとも連携できます。称賛文化の醸成と従業員エンゲージメント向上を目的に、多くの企業で導入されているツールです。 カオナビは、顔写真をベースにした人材データベースが特徴のタレントマネジメントシステムです。異動履歴、評価結果、スキル、個性などの人材情報を一元管理し、AIによる分析機能を組み合わせて配置や育成、評価の意思決定を支援します。直感的なUIで現場の管理職も使いやすく、人材の見える化を優先したい企業に適しているでしょう。 タレントパレットは、人事にマーケティング思考を取り入れた「科学的人事」をコンセプトとするオールインワン型のタレントマネジメントシステムです。人材データベース、人事評価、異動シミュレーション、サーベイ、人的資本ダッシュボードなど機能が幅広く、データ分析や人的資本開示への対応もワンストップで実現できます。大手・先進企業での導入実績が豊富です。 HRBrainは、シンプルなUIと充実したサポート体制を強みとするタレントマネジメントシステムです。人事評価、目標管理、スキル管理、人材データ分析、配置シミュレーションなどに対応しており、サービスが領域別にわかれているため自社の課題に合わせて導入しやすい点も特徴といえます。専任担当による伴走支援も用意されています。 Wevoxは、株式会社アトラエが提供するエンゲージメントサーベイツールです。短時間で回答できるパルスサーベイを通じて、組織やチームのエンゲージメントを定点観測できます。AIによる分析機能で課題や打ち手の提案までサポートを受けられるため、サーベイ結果を改善アクションにつなげやすいツールです。 モチベーションクラウドは、株式会社リンクアンドモチベーションが提供する組織改善クラウドです。独自指標「エンゲージメントスコア」によって組織状態を可視化し、課題の特定から改善施策の立案までを支援します。豊富なデータベースに基づいた他社との比較も可能で、組織改善のサイクルを回したい企業に向いています。 Geppoは、リクルートとサイバーエージェントの新規事業開発プログラムによって生まれたパルスサーベイツールです。「仕事満足度」「人間関係」「健康」の3問に毎月回答する形式で、従業員の負担を抑えながらコンディション変化を捉えられます。個人サーベイと組織サーベイを1つのプラットフォームで運用できる点も特徴です。 Tableauは、データ可視化や分析機能の充実度で高い評価を得ているBIツールです。ドラッグ&ドロップで複雑なグラフやダッシュボードを作成でき、人事データだけでなく経営データや営業データなど多様な情報を統合的に分析できます。社内に分析人材を抱える企業や、大規模なデータを扱う企業に向いているでしょう。 Microsoft Power BIは、Microsoft社が提供するBIツールで、ExcelやMicrosoft 365との親和性の高さが大きな強みです。既存のOffice環境を活かして人事データを分析・可視化できるため、導入のハードルが低く、コスト面でも抑えやすいツールといえます。AI機能「Copilot」によって自然言語での分析にも対応しています。 ツール選定で失敗しないために、以下5つのポイントを押さえましょう。 最初に決めるべきは、ツールで解決したい課題と達成したい目的です。離職防止なのか、採用精度向上なのか、評価の客観化なのかによって、選ぶべきツールは変わります。目的が曖昧なまま導入すると、機能を持て余すか、必要な機能が足りないという事態に陥りがちです。自社の課題と目的に合った機能やサポートがあるツールを選びましょう。 分析の前提となるのはデータです。自社にどのようなデータが蓄積されているか、ツール側で新たに収集できるかを確認しましょう。サーベイ機能、行動ログ収集機能、他システムからのデータ取り込みなど、収集の入口が整備されているかがポイントとなります。 社内のデータが充実している場合は、人事システムや勤怠管理システム、グループウェアなど、既存のツールとピープルアナリティクスツールが連携できるかも重要です。データがサイロ化していると分析の精度が下がるため、APIの提供有無や連携実績を確認しておくことをおすすめします。 人事部門だけでなく、現場の管理職や従業員も触れるツールであれば、UIのわかりやすさが重要です。誰でも使いこなせるよう、直感的に操作できるか、スマートフォンに対応しているかを確認しておきましょう。トライアル期間を活用して実際に試してみるのもおすすめです。 ツールは導入して終わりではなく、運用を継続するなかで成果につながります。導入時のオンボーディング支援、活用相談、定期的な勉強会などのサポートが充実しているかは見落とせないポイントです。 ピープルアナリティクスの議論では、いきなり高度な分析の話に進みがちです。しかし実際に多くの企業がつまずくのは「分析するデータがそもそも蓄積されていない」段階です。 サーベイは年1~2回しか実施できず、人事考課のデータも頻度が限られます。これらの「定点データ」だけでは、組織の日々の変化を捉えるのは困難でしょう。さらに、退職者の兆候や活躍人材の特徴といった示唆を得るためには、もっと粒度の細かい行動データが必要となります。 しかし現場では、日常的な行動データを取得する仕組みがないままピープルアナリティクスを始めようとし、分析対象不足で頓挫するケースが少なくありません。 そこで注目したいのが、従業員同士の感謝・称賛のやり取りをデータ化するアプローチです。サンクスカードや称賛メッセージのやり取りは、誰が誰を支援したか、どんな行動が評価されているかを示す貴重な行動ログとなります。 このデータが蓄積されれば、リーダー候補の発掘、孤立しがちな従業員の早期発見、組織文化の浸透度の測定など、さまざまな分析が可能になります。サーベイや人事考課では見えなかった組織の実態を、日常データから捉えるアプローチが有効です。 ツールを最大限活かすには、計画的な導入が欠かせません。一般的な進め方を4ステップで紹介します。 最初に行なうのは、ツールで何を達成するかの目的設定です。「離職率を○%改善する」「採用ミスマッチ率を低減する」といった定量目標を設定し、進捗を測れるKPIに落とし込みます。 目的達成に必要なデータを定義し、収集の仕組みを整えます。既存システムからのデータ統合、新たなサーベイ設計、日常的な行動データの取得などを組み合わせるとよいでしょう。データの質と量が分析結果を左右するため、ここに十分な時間を割くことが重要です。 蓄積されたデータをツールで分析し、得られた示唆をもとに具体的な人事施策を立案します。データを見るだけでは意味がなく、現場の知見と組み合わせて実行可能なアクションに落とし込むことが求められます。 施策の実行後は、設定したKPIに基づいて効果を測定します。期待通りの効果が出ていない場合は、分析方法や施策内容を見直し、PDCAサイクルを回していきましょう。継続的な改善によって、ピープルアナリティクスの価値は徐々に高まります。 ピープルアナリティクスツールの導入には、いくつか注意点があります。 ピープルアナリティクスでは従業員の個人情報を扱うため、個人情報保護法への対応が必須です。利用目的を明示して本人同意を得るだけでなく、データの暗号化やアクセス権限などの適切な管理を徹底しましょう。 「監視されている」という印象を与えてしまうと、現場からの反発を招き、データの取得そのものが難しくなります。なぜこの取り組みを行なうのか、従業員にとってどのようなメリットがあるのかを丁寧に説明し、納得感を得ることが大切です。 最初から大規模に展開しようとすると、運用負荷が大きくなり頓挫しやすくなります。まずは特定の部署や課題に絞って始め、成果を確認しながら範囲を広げていくのが現実的です。 ピープルアナリティクスツールは、データドリブンな人事戦略を実現するための強力な武器です。コミュニケーション型、タレントマネジメント型、サーベイ型、BI型と、ツールの種類は多岐にわたるため、自社の課題と目的を明確にしたうえで最適なものを選定する必要があります。 とくに見落としがちなのは、分析の前提となる「日常的な行動データの蓄積」です。年に数回のサーベイだけでは捉えきれない組織の実態を、感謝・称賛といったコミュニケーションデータから可視化するアプローチは、これからのピープルアナリティクスにおいて有効な選択肢となるでしょう。 RECOGは、従業員同士の称賛データを起点に組織を可視化するチームワークアプリです。導入のハードルが低く、現場に定着しやすい設計のため、ピープルアナリティクスをこれから始める企業にも適しています。組織課題の解決に取り組みたい方は、まずは資料請求から始めてみてはいかがでしょうか。 Unipos(コミュニケーション・行動データ型のツール)
カオナビ(タレントマネジメント型のツール)
タレントパレット(タレントマネジメント型のツール)
HRBrain(タレントマネジメント型のツール)
Wevox(サーベイ・エンゲージメント型のツール)
モチベーションクラウド(サーベイ・エンゲージメント型のツール)
Geppo(サーベイ・エンゲージメント型のツール)
Tableau(BI・統計分析型のツール)
Microsoft Power BI(BI・統計分析型のツール)
ピープルアナリティクスツールの選び方

自社の課題と目的を明確にする
必要なデータが収集できるか
操作性と現場の定着しやすさ
サポート体制
データ収集の起点となる「日常のコミュニケーションデータ」

なぜ多くの企業で分析が進まないのか
感謝・称賛データから組織を可視化するアプローチ
ピープルアナリティクスツール導入の手順

ステップ1:目的設定とKPI策定
ステップ2:データ収集と蓄積
ステップ3:分析と施策立案
ステップ4:効果測定と改善
ピープルアナリティクスツール導入時の注意点

個人情報・プライバシーへの配慮
現場の納得感を醸成する
スモールスタートで運用する
まとめ