人事評価の見直しを進めるなかで、「定性評価と定量評価の違いがよくわからない」「どう使い分ければ公平な評価になるのか」と悩むケースは少なくありません。評価制度が適切に機能しなければ、従業員のモチベーション低下や離職率の上昇を招くリスクもあるでしょう。
本記事では、定性評価と定量評価それぞれの意味やメリット・デメリットを整理したうえで、職種別の活用例や両者を効果的に組み合わせるステップを解説します。自社の評価制度を改善するヒントとして、ぜひ参考にしてください。

人事評価の手法は、大きく「定量評価」と「定性評価」の2種類に分けられます。まずはそれぞれの定義と、両者の違いを正しく理解しておきましょう。
定量評価とは、売上金額や契約件数、目標達成率、コスト削減率など、数値で表せる成果をもとに評価する方法です。達成の有無を客観的な数字で判断できるため、評価者の主観が入りにくいといえます。
たとえば「月間売上500万円を達成する」「クレーム件数を前年比20%削減する」といった目標に対し、実際の数値と照らし合わせて評価を行ないます。評価基準が明確なため、従業員にとっても納得感を得やすい手法でしょう。
定性評価とは、勤務態度やコミュニケーション能力、業務への主体性など、数値では表しにくい要素を評価する方法です。仕事に取り組む姿勢やプロセス、チームへの貢献度といった「質的な側面」に着目します。
具体的には「後輩への指導を積極的に行なっている」「部署間の連携をスムーズに進めるための調整役を担っている」といった行動や姿勢が評価対象となります。数値だけでは測れない貢献を見逃さないために、欠かせない評価手法です。
両者の主な違いを整理すると、次のとおりです。
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項目 |
定量評価 |
定性評価 |
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評価対象 |
数値で表せる成果 |
数値化が難しい行動・姿勢 |
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客観性 |
高い |
低くなりやすい |
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評価のしやすさ |
基準が明確で容易 |
基準設定に工夫が必要 |
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適した職種 |
営業、マーケティングなど |
事務、総務、介護など |
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評価者の負担 |
比較的少ない |
観察やフィードバックが必要で大きい |
いずれか一方だけでは公正な評価は難しいため、両方をバランスよく取り入れる姿勢が重要です。

定量評価には、客観性の高さをはじめとする長所がある一方で、注意すべき点もあります。導入前にそれぞれを把握しておきましょう。
定量評価の最大の利点は、誰が見ても同じ基準で評価できる客観性の高さにあります。数値に基づく判断であれば、評価者ごとのブレが生じにくく、被評価者にとっても納得しやすいでしょう。
また、前年度との比較や従業員間の成績比較が容易に行なえる点も見逃せません。達成度が数字で明確になるため、フィードバックの際に具体的な改善ポイントを伝えやすくなります。
一方で、すべての業務を数値化できるわけではない点がデメリットです。たとえば総務や経理などのバックオフィス部門では、成果を定量的に示すことが難しいケースも多いでしょう。
さらに、数値目標のみを重視しすぎると、従業員が個人の成果だけを追い求めるようになり、チームワークや人材育成がおろそかになるリスクがあります。目標が単なるノルマとして機能してしまえば、職場の雰囲気が悪化する恐れも否定できません。

定性評価にも固有の強みと弱みが存在します。導入にあたっては、運用上の課題を理解したうえで設計を進める必要があります。
定性評価の強みは、数字に表れにくい努力や工夫を適切に拾い上げられる点にあります。成果が出るまでに時間がかかる業務に取り組んでいる従業員や、縁の下の力持ちとしてチームを支えている人材も正当に評価できるようになります。
加えて、数値化が難しい職種にも柔軟に適用が可能です。事務職や介護職、新入社員のように目に見える成果が限られる立場の従業員にとって、定性評価は自分の貢献が認められる重要な機会となるでしょう。
定性評価の大きな課題は、評価者の主観が入りやすい点です。同じ行動を見ても、評価者によって判断が異なれば、被評価者に不公平感を与えかねません。
また、評価基準が曖昧なまま運用すると信頼性が損なわれ、制度そのものへの不満につながります。定量評価と比べて評価者の負担が大きく、日常的な観察やコミュニケーションが求められる点も、実務上のハードルといえるでしょう。

評価の効果を最大化するには、職種の特性に応じた使い分けが欠かせません。ここでは代表的な3つの職種を例に、具体的な活用方法を紹介します。
営業職は、売上や契約件数など数値目標を設定しやすい職種の代表です。定量評価を軸にしつつ、顧客対応の丁寧さやチーム内での情報共有への貢献度を定性評価で補完すると、よりバランスの取れた評価が実現します。
たとえば、定量目標として「四半期の新規受注10件」を設定し、定性目標として「顧客の課題を深掘りしたヒアリングを徹底する」を併記するイメージです。数字だけを追いかける風土を防ぎ、中長期的な顧客関係の構築も促進できるでしょう。
事務職や経理、人事などの管理部門は、成果を数値で表しにくい傾向にあります。しかし、まったく定量化できないわけではありません。
書類の処理時間やミスの発生件数、業務フローの改善による残業時間の削減率など、工夫次第で定量目標を設定できるケースは多くあります。そのうえで、「他部署との円滑な連携を維持する」「新しい業務手順のマニュアル化を進める」といった定性目標を組み合わせると、多角的な評価が可能です。
エンジニアの場合、納期の遵守率やバグの発生件数、コードレビューの件数など、定量化しやすい指標が存在します。ただし、外的要因に左右される場面も多いため、定量目標だけに頼るのは危険です。
技術力の向上に向けた自主的な学習姿勢や、チーム内でのナレッジ共有への貢献度、コードの可読性に対する配慮といった定性的な側面も評価に取り入れると、従業員の成長を後押しする評価制度になるでしょう。

両者を効果的に組み合わせるには、場当たり的な運用ではなく、段階を踏んだ設計が必要です。以下の5つのステップを参考に、自社に合った評価制度を構築してみてください。
最初に行なうべきは、各職種・各ポジションにおいて「何を評価するか」を洗い出す作業です。具体的には、数値化できる項目とできない項目を明確に分けます。
売上や生産性のように数字で把握できるものは定量評価の対象に、コミュニケーション力やリーダーシップのように数値化が困難なものは定性評価の対象に振り分けましょう。
定量評価と定性評価の比率は、一律に決めるのではなく、職種や階層ごとに調整するのが望ましいです。
営業職であれば定量7:定性3、事務職であれば定量4:定性6など、業務特性に合わせた配分を検討しましょう。新入社員はプロセスや学習姿勢を重視して定性評価の比率を高めるなど、成長段階に応じた設計も効果的です。
定性評価の質を左右するのは、基準の明確さです。「コミュニケーションが良好」のような抽象的な表現だけでは、評価者によって解釈がバラつきます。
「週に1回以上、他部署のメンバーと業務改善について意見交換を行なっている」のように、観察可能な行動レベルまで基準を落とし込みましょう。到達レベルを段階的に設定し、スコアリングを導入すると、さらに客観性が高まります。
定性評価で起きやすい問題の一つが、評価者間の基準のズレです。これを放置すると、部署や上司によって評価に大きな差が生まれ、従業員の不信感を招きます。
評価者向けの研修やケーススタディの共有を定期的に実施し、判断の基準を揃える取り組みが求められるでしょう。具体的な評価事例をもとにしたロールプレイングも有効な手段です。
評価制度は、一度構築して終わりではありません。事業環境や組織体制の変化に合わせて、評価項目や比率を定期的に見直す姿勢が不可欠です。
半期ごとにアンケートやヒアリングを実施して従業員の声を集め、評価基準が実態と乖離していないかを確認しましょう。改善を繰り返すことで、従業員の納得感と制度の信頼性がともに高まっていきます。

定性評価の運用において多くの企業が課題に感じるのが、「日常の行動や貢献をどう把握し、記録するか」という点です。上司が常にすべてのメンバーの働きぶりを観察し続けるのは現実的ではないでしょう。
こうした課題の解決策として効果的なのが、チームワークアプリ「RECOG」です。RECOGは、従業員同士が日常的に感謝や称賛のレターを贈り合う仕組みによって、数字には表れにくい貢献や行動を自然に可視化します。蓄積されたレターのデータは1on1やフィードバックの材料として活用でき、定性評価の根拠づくりをサポートします。称賛の習慣が根づくと心理的安全性も高まり、評価制度全体の納得感向上にもつながるでしょう。
RECOGの詳細は以下の資料で詳しく紹介しています。
定性評価と定量評価は、それぞれ異なる強みを持つ評価手法です。公正で納得感のある人事評価を実現するには、両者をバランスよく組み合わせ、職種や階層に応じた柔軟な運用を行なう必要があります。
定性評価の質を高めるには、日々の行動や貢献を「見える化」する仕組みが大きな助けになるでしょう。評価制度の見直しや従業員エンゲージメントの向上を検討されている方は、ぜひRECOGの導入を検討してみてください。
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