入社3年以内の離職を「早期離職」といいます。早期離職はコストやブランディングといった面でリスクがあるため、企業は採用段階から対策を講じる必要があります。
本記事では、早期離職の退職理由から適切な対策を紹介。早期離職に悩んでいる方のヒントになる情報をお伝えします。
早期離職とは
早期離職とは、採用した従業員が入社して3年以内に離職してしまうことです。
少子高齢化が進む日本では労働力不足が進んでおり、多くの企業が人手不足に悩んでいます。売り手市場ともいえる状況で、終身雇用制・年功序列制の崩壊や多様な働き方の導入といった背景もあり、よりよい条件を求めて転職する労働者は後を絶ちません。
その中でも、早期離職は「入社後3年以内の離職」を指し、これからの活躍を期待されている層の離職となるため企業にとっても大きな痛手となります。
早期離職率が高いデメリット・リスク
新卒で入社した新入社員や、入社してから教育期間を経て戦力になりつつある若手社員の離職は、採用・育成にかかる時間やコストの面で大きな損失となりかねません。早期離職が続くと、そのたびに採用・育成が必要となるため、リソースの投入が重なっていき結果的に膨大なものとなるでしょう。
また早期離職が多いと、従業員は「自分たちの教育が悪かったのだろうか」などとモチベーションが下がったり、世間から「あの会社はいつも求人を募集している」という印象を持たれたりするため、社内外でリスクがあります。
早期離職率の計算方法
早期離職率を求めるには、対象年度に入社した従業員を対象として計算します。対象年度に入社した従業員のうち3年以内に離職した従業員数の割合を求めることで、早期離職率の算出が可能です。
たとえば、2022年度に入社した100人のうち3年以内に35人が離職している場合、以下の計算式となります。
そのため、2022年度入社の早期離職率は35%となります。
早期離職に関連するデータ
ここでは、早期離職に関するデータを紹介していきます。厚生労働省による早期離職率のデータと、株式会社リクルートマネジメントソリューションズが実施した早期離職理由に関する調査データを見ていきましょう。
厚生労働省の公表データ
厚生労働省が調査した、2021年3月の新規学卒就職者の離職状況は以下の通りです。
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中学:50.5%
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高校:38.4%
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短大等:44.6%
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大学:34.9%
2021年に大学を卒業した新入社員・若手社員のうち、約35%が離職しているという結果が出ています。3年以内に約3人に1人が辞めているといえるでしょう。
リクルートの調査結果
株式会社リクルートマネジメントソリューションズは大学・大学院を卒業して企業に入社した1~3年目の435名を対象に「過去3年以内に、自己都合での退職をしたことがありますか?」と質問したところ、17.5%が「ある」と回答しました。
「ある」と答えた人に対して退職理由をたずねると、上位の理由は以下の通りでした。
この結果から、条件や人間関係、働き方などの大きなくくりとしての「働く環境」に問題があり離職を選択した人が多いことがわかります。仕事に対する不満・やりがいやキャリアの悩みなどより、働く環境のほうが早期離職につながりやすいようです。
早期離職が起きるのは「ミスマッチ」が原因
なぜ早期離職が起きるのかというと、さまざまな「ミスマッチ」によるものが多く見られます。では、どのようなミスマッチが発生しやすいのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
業務内容のミスマッチ
ひとつめが、業務内容のミスマッチです。
近年では、企業が求めている職種にマッチするスキルや経験を持つ人材を採用する「ジョブ型雇用」が一般的となっていますが、以前から主流の「メンバーシップ型雇用」も少なくありません。メンバーシップ雇用とは、新卒一括採用のように職種を限定せずに採用し、入社後に異動や転勤などを通じて幅広く業務経験を積む中でキャリア形成を目指していきます。
しかし、メンバーシップ型雇用の場合、「自分がやりたい仕事ではない」「やりがいを感じられる仕事ではない」という事態が起こり、離職が発生してしまう可能性が高いのです。
また、ジョブ型雇用だとしても、他の業務との兼任を余儀なくされて「本来したかった仕事の時間が取れない」ということや、能力があるゆえに業務量が増えていき「業務負荷が大きすぎる」といったミスマッチも発生します。
社風やビジョンとのミスマッチ
入社してから、社風やビジョンに違和感を抱いて離職を選択する場合も珍しくありません。
就職活動・転職活動中に企業の理念やビジョンを調べても、文章だけではどのような企業風土なのか把握しきれないこともあるでしょう。そうした状況で入社すると、「思っていた社風と違っていた」「自分が大事に思っていることとのギャップが感じられる」などの違和感が生じます。
その結果として「会社と合わない」という気持ちになり離職につながります。
待遇のミスマッチ
実際に入社してみて、入社前に聞いていた待遇とは異なる条件で働くことになり不満を感じるケースも見受けられます。
給与や福利厚生などの待遇に関しては、選考段階でしっかりと確認したのちに納得してから入社する人がほとんどでしょう。しかし、入社してみると「有給が取りにくい」「残業が多すぎる」など、事前に確認していた内容とは程遠い条件で働くことになってしまっているという場合もあります。
待遇面でのミスマッチにより不満を感じると、仕事へのモチベーションが低下していき離職の願望が強くなっていくでしょう。
人間関係のミスマッチ
職場の人間関係も、早期離職の理由のひとつです。
入社前に会社訪問などをしていれば、職場の雰囲気や働いている人たちの人柄はある程度把握できるでしょう。しかし、実際にはそこまでしっかりと確認してから入社することは難しく、入社後でなければ一緒に働く仲間たちを把握できません。
そのため、入社してから「上司との相性が悪い」「職場の雰囲気が悪い」など人間関係のギャップが発生し、離職を選択するケースが少なくないのです。
キャリアプランとのミスマッチ
入社前に描いていたキャリアプランと、入社してから歩んでいく自身のキャリアにギャップが生じた場合も、早期離職の一因になります。
入社前は3年後・5年後・10年後のキャリアを設計できていても、いざ入社してみると「上が詰まっていて昇進できなさそう」「スキルアップの支援制度が不十分だ」などの状況に直面することもあります。また、企業側から提示されたキャリアパスと、自身が理想とするキャリアプランにギャップが生じている場合もあるでしょう。
自身が描く将来像を実現するのが困難だと感じると、仕事へのモチベーションが低下して離職を招きかねません。
早期離職対策~採用編~
早期離職を防止する方法としては、大きく分けて「採用段階」と「入社後」のアプローチが求められます。採用段階から対策を講じておくと、入社前と入社後のミスマッチを防ぐことが可能です。
本章では、採用活動時にできる早期離職対策を紹介していきます。
職場のリアルな状況を伝える
入社後に社風や人間関係、キャリアプランなどさまざまな面でのミスマッチが生じて早期離職につながる場合が多いですが、入社前後のギャップを解消するには、入社前に職場のありのままを伝える必要があります。
人手不足な企業だと「どうしても人材を採用したい」という想いから、面接や会社説明会で自社の説明をする際、嘘とまではいかなくて誇張や脚色を加えて伝えることもあるでしょう。しかし、そうした少しのズレがどんどん膨らんでいき、大きな歪みへとつながります。
自社のリアルな状況を伝えたうえで納得してくれる人・共感してくれる人を採用することで、入社後のギャップを防げます。
適性検査を行なう
自社が求めている人物像か、社風・ビジョンとマッチするか、といった入社後に判明するギャップを事前に把握するために、適性検査を実施するのも一つの手です。適性検査ではデータを基に自社とのマッチ度を判定できるため、ミスマッチしている人材の選別にも活用できます。
リファレンスチェックを実施する
リファレンスチェックは、主に中途採用の選考時に活用できる手法です。
前職の上司や同僚などに、本人の実績やスキル、働きぶり、職場での人間関係などを、本人の同意のもとで聞き取ります。第三者からの評価は、応募書類や面接などでは把握しきれない情報のため、企業の選考に大いに役立ちます。
早期離職対策~入社後編~
自社に適した人材を採用できても、入社後のフォローや対応が不十分だと早期離職を招く要因となります。そこで、入社後に企業が行なうべき対策を紹介します。
サポート体制を整える
入社前にどれだけ「ミスマッチがなさそうだ」と思っていても、いざ入社してみないとわからない部分も少なくありません。そのため、入社後のサポート体制を整え、徹底してフォローできる仕組みを作りましょう。
特に、入社してすぐの段階ではオンボーディングが必要です。オンボーディングとは入社した人材が一人前の仕事ができるように戦力化させるための一連の育成プログラムを指します。具体的には、以下のような方法を盛り込みます。
- 座学研修:自社の理念・ビジョンや業務に必要な知識などを学ぶ
- OJT:上司・先輩の指導のもと、実務を通じてスキルを習得する
- メンター制度:先輩(メンター)が新入社員(メンティー)に対して個別に支援する
- 1on1ミーティング:上司や先輩と1対1で仕事の相談や質問をする時間を設ける
入社後1週間・2週間・1カ月・3カ月といった区切りで、やるべきことと目標を設定してプログラムを組むことで、スムーズなフォローが実現します。
人事評価制度を見直す
人事評価制度も、従業員のモチベーションに影響します。
不透明で不公平な人事評価だと、努力やスキル、成果が評価されなくなりモチベーション低下を招くでしょう。そのため、明確な評価基準を設定し、公平性のある人事評価制度が求められます。
職場環境や待遇、福利厚生を改善する
働く環境に不満を抱えて早期離職する人も少なくないため、職場環境や待遇、福利厚生などを総合的に改善するのも効果的です。
離職者の離職理由を参考にするだけでなく、現在自社に在籍している従業員から意見や要望をヒアリングし、自社の働く環境の課題を見つけましょう。よりよい環境への改善は、従業員のエンゲージメントを高めて離職を防止します。
キャリアサポートを行なう
キャリアアップの支援も、早期離職対策として有効です。
本人の希望を踏まえてキャリアプランを策定し、必要なスキルや資格などの習得のための支援を行ないます。また、人事異動や配置転換などで本人の希望するキャリア形成をサポートする方法もあります。
キャリアに悩んだ従業員がいつでも相談できるよう、相談窓口の設置も有益です。
日々の感謝や称賛を伝える
従業員同士のコミュニケーションは早期離職防止に有効ですが、特に感謝や称賛を伝えられるとモチベーションや帰属意識が向上して離職を防止する効果があります。
仕事を手伝ったことへの感謝や日々の仕事ぶりに対する称賛などを日常的に伝えることで「この会社でもっと活躍したい」という気持ちが芽生え、人材の定着に繋がります。
早期離職防止にはチームワークアプリ「RECOG」
早期離職防止のためには、入社した従業員のモチベーションやエンゲージメントの管理がポイントです。
チームワークアプリ「RECOG」は、感謝や称賛を伝えられるレター機能や、理念・ビジョンなどの情報発信ができる投稿フィード機能、チャットのようなやり取りができるトーク機能で、新入社員との関係性を醸成して早期離職を防止します。
詳しい機能についてはこちらの資料で紹介しているので、ぜひダウンロードしてご確認ください。
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まとめ
早期離職は、業務内容や社風、待遇、人間関係などさまざまなミスマッチが原因で発生します。ミスマッチを完全に防ぐことは難しいですが、入社前の採用段階でのアプローチや、入社後のフォローなどの徹底により、防止または最小限に抑えることが可能です。
適切な対策を講じ早期離職を防いで、優秀な人材の活躍を支援しましょう。
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