「エンプロイーエクスペリエンス」という言葉を耳にする機会が増えてきました。海外の先進企業から広まったこの考え方は、人材獲得競争の激化や働き方の多様化を背景に、日本でも人事戦略の重要テーマとして注目を集めています。
一方で、「エンゲージメントや従業員満足度と何が違うのか」「具体的にどう高めればよいのか」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、エンプロイーエクスペリエンスの意味や注目される背景、類似用語との違い、向上のための進め方や成功のポイントまでをわかりやすく解説します。明日から自社で取り組めるヒントもあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

エンプロイーエクスペリエンス(Employee Experience:EX)とは、従業員が入社から退職までの間に企業や組織のなかで体験するすべての経験を意味します。日本語では「従業員体験」と訳されることが多い言葉です。
ここでいう「経験」には、業務上の出来事だけでなく、職場の人間関係、評価や報酬、オフィス環境、使用するITツール、研修やキャリア機会など、職場におけるあらゆる接点が含まれます。マーケティング分野で広まった「カスタマーエクスペリエンス(CX)」の考え方を、人事領域に応用したものといえるでしょう。
近年では、人事責任者の名称を従来のCHRO(最高人事責任者)からCEEO(チーフ・エンプロイー・エクスペリエンス・オフィサー)へと変更する海外企業も登場しております。
エンプロイーエクスペリエンスは抽象度の高い概念のため、どこから手をつけるべきか迷う人も少なくありません。一般的には、次の5つの領域に分けて考えると整理しやすくなるとされています。
物理的環境:オフィスのレイアウト、設備、リモートワークの環境
テクノロジー環境:業務システム、コミュニケーションツール、社内ポータル
人間関係・文化:上司や同僚とのコミュニケーション、心理的安全性、組織風土
制度・働き方:人事評価、報酬、福利厚生、勤務制度
成長機会:研修、キャリア開発、異動・昇進の機会
これらは互いに影響し合っており、どれか一つだけを改善しても十分な効果は得にくいものです。自社の現状を5つの観点から俯瞰し、優先順位をつけて取り組むのが望ましいでしょう。

EXが注目されるようになった背景には、社会・経済環境の大きな変化があります。ここでは代表的な3つの観点から見ていきましょう。
日本では少子高齢化により、生産年齢人口の減少が続いています。つまり企業にとって人材の確保は難しい状況となっており、今後ますます少子高齢化が進むとさらに深刻化するでしょう。
採用が困難になるなか、入社した従業員に長く活躍してもらうための仕組みづくりは、経営の根幹に関わる課題となりました。EXは、人材の定着とパフォーマンス最大化を両立させる考え方として、強い関心を集めています。
リモートワークや副業の浸透、ジョブ型雇用への移行など、働き方の選択肢は急速に広がりました。また、若い世代を中心に、給与や安定だけでなく「働きがい」「自分らしさ」「成長実感」を重視する傾向が強まっています。
画一的な人事施策では、こうした多様な価値観に応えるのが難しくなりました。一人ひとりの体験に目を向けるEXの発想は、現代の働き手に選ばれる企業であり続けるために重要であるといえます。
マーケティングの世界では、商品やサービスを通じて顧客に提供する体験全体(CX)を高めることが、顧客ロイヤリティや事業成長につながると考えられてきました。
この発想を従業員に転換したものがEXです。従業員を「コスト」ではなく「価値ある体験を提供すべき相手」と捉え直す風潮が、世界的に進んでいます。

EXは、エンゲージメントや従業員満足度(ES)といった既存の概念と混同されやすい言葉でもあります。施策がぶれないよう、それぞれの違いを押さえておきましょう。
従業員エンゲージメントとは、従業員が組織に対して抱く「貢献したい」という自発的な意欲や心理的なつながりを指します。一方EXは、エンゲージメントに影響を与える「体験そのもの」を含む、より広い概念です。
つまり、良質なEXの積み重ねがエンゲージメントを高める、という関係にあります。エンゲージメントが「結果として現れる従業員の状態」だとすれば、EXは「その結果を生み出す入力側の体験」と位置づけられるでしょう。
従業員満足度(Employee Satisfaction:ES)は、給与・福利厚生・職場環境などの条件面への満足度を測る指標です。多くの場合、年に一度のサーベイで把握されます。
これに対しEXは、満足度という結果指標だけでなく、入社から退職までのあらゆる接点における体験を含みます。ESが「点」の評価だとすれば、EXは「線」や「面」の発想で捉える考え方といえるでしょう。
「エンプロイーサクセス」は、EXを最大化した状態を指す言葉で、カスタマーサクセスから派生した言葉です。また「ロイヤリティ」は、従業員が組織に抱く忠誠心を意味します。
EX、従業員エンゲージメント、エンプロイーサクセス、ロイヤリティはそれぞれ近しい関係にあります。EXが土台となり、ほかの要素を底上げするイメージを持つとよいでしょう。

EXを高める取り組みは、企業にどのような効果をもたらすのでしょうか。ここでは代表的な4つのメリットを紹介します。
良質なEXを提供する企業では、従業員が「ここで働き続けたい」と感じやすくなり、結果として離職率の低下が期待できます。とくに入社初期の体験は早期離職に直結するため、オンボーディング段階のEX設計が重要です。
人材が定着すると、採用コストや育成コストも削減されます。企業経営の観点からも、人材定着の効果は大きいといえます。
EXが従業員エンゲージメントを高める要素であることは戦術の通りです。さらに、働く環境や日々のコミュニケーションが充実していれば、従業員は自発的に高いパフォーマンスを発揮しやすくなるでしょう。エンゲージメントの高い組織は、生産性や業績の面でも好結果を残す傾向にあるとされています。
EX向上は、福利厚生のコストではなく、業績への投資として捉えることが可能です。
口コミサイトやSNSにより、企業の内側が外から見えやすい時代になりました。従業員が前向きに働ける企業は、その評判が自然と外部に伝わり、採用市場でも選ばれやすくなります。
EXが高いと、従業員は積極的に自社について言及するようになります。良い口コミが増えていく結果、企業ブランドや採用ブランディングの強化にもつながるのです。
心理的安全性が確保された組織では、従業員が萎縮せずに意見を出したり、失敗を恐れずに新しい方法を試したりしやすくなります。互いの仕事を認め合う関係性は、業務改善のアイデアや部門を越えた連携を生む土台にもなるでしょう。EXを高める取り組みは、こうした組織内の小さな変化の積み重ねにつながっていきます。

メリットを理解したうえで、実際にEXを高めるにはどのように進めればよいのでしょうか。急に施策を始めるのではなく、以下のステップに沿って段階的に進めていきましょう。
まず必要なのは、自社の従業員が今どのような体験をしているかを把握することです。エンゲージメントサーベイやパルスサーベイ、1on1での対話などを通じて、現場の実態と本音を丁寧に拾い上げましょう。
サーベイは年1回の大規模調査だけでなく、月1回程度の短いパルスサーベイを併用すると、変化に気づきやすくなります。
エンプロイージャーニーマップとは、従業員の入社から退職までの体験を時系列で可視化したものです。採用・入社・配属・評価・異動・昇進・退職といったタッチポイントごとに、従業員の感情や課題を整理していきます。
職種や階層によって体験が大きく異なるため、複数のペルソナを設定し、それぞれにマップを作成するのが効果的です。
EXは特別なイベントよりも、日々の小さな積み重ねによって形づくられます。なかでも、上司や同僚から「自分の仕事を認められた」「感謝された」という経験は、従業員のモチベーションに大きな影響を与えるものです。
近年では、テレワークの普及によって従業員同士の何気ない交流が減り、承認の機会が失われがちです。意識的に称賛・感謝を伝え合える仕組みを職場に組み込むことが、EX向上の鍵となります。
朝礼で「ありがとうの時間」を作ったり、サンクスカードやピアボーナス制度を導入したりするなど、自社の文化に合った方法を選びましょう。
EX向上の施策は、一度きりのキャンペーンで終わらせては効果が定着しません。推進チームを発足させ、施策を実行しながら定期的に効果を測定し、改善を続けるサイクルを整えましょう。
経営層が継続的にコミットすることも、現場に取り組みを浸透させるうえで欠かせません。

エンプロイーエクスペリエンスを高めるうえで重要なのが、日々の「称賛・感謝」のコミュニケーションです。とはいえ、感謝の気持ちを伝えるタイミングを逃したり、テレワークで顔を合わせる機会が減ったりと、職場での承認の機会は意外と少ないのが実情ではないでしょうか。
チームワークアプリ「RECOG」は、従業員同士が日常的に感謝や称賛のメッセージ(レター)を贈り合えるツールです。パソコンやスマートフォンから手軽に送受信でき、リモートワーク下でも組織にあたたかいコミュニケーションが生まれます。
導入企業からは、エンゲージメントスコアの向上や、部署を越えた相互理解の深まりといった効果が報告されています。「称賛文化を組織に根づかせ、エンプロイーエクスペリエンスを底上げしたい」とお考えの方は、ぜひ詳しい資料をご覧ください。

エンプロイーエクスペリエンスを継続的に向上させて成果につなげるためのポイントを3つ紹介します。
EXは「経営層が方針を示すだけ」でも「現場の自主性に任せるだけ」でもうまくいきません。経営層が向かう先を明確に示しつつ、現場の声を吸い上げて施策に反映するという、両輪のアプローチが理想的です。
人事部門だけで進めず、現場マネージャーや従業員を巻き込んだプロジェクトとして推進するとよいでしょう。
EX向上の効果は、すぐに数値として現れるとは限りません。組織風土や従業員の意識は、半年から数年かけて少しずつ変わっていくものです。
短期的なKPIだけで判断せず、中長期的な視点で粘り強く取り組む姿勢が求められます。この視点は、経営層を含めて社内全員が共通で持つことが大切です。
「なんとなく良くなった」では、施策の継続判断や改善が難しくなるため、事前に効果測定の指標を決めておきましょう。代表的な指標としては、以下のようなものが挙げられます。
エンゲージメントスコア
eNPS(従業員推奨度)
離職率・定着率
1人あたりの生産性
サンクスカードや称賛メッセージの送受信数
数値で変化を追えるようにしておけば、PDCAも回しやすくなります。

最後に、EXに関してよく耳にする質問とその回答をまとめました。
企業規模や業種を問わず、すべての企業に取り組む価値があります。とくに「離職率を下げたい」「採用力を強化したい」「リモートワーク下でエンゲージメントが下がっている」といった組織課題を持つ企業にとって、EXの考え方は有効です。
大きな投資が難しい中小企業やスタートアップでも、日常のコミュニケーション設計やサンクスカード導入など、小さく始められる施策から取り組むとよいでしょう。
施策の内容にもよりますが、組織風土や従業員の意識の変化が数値として現れるまでには、一般的に半年から1年程度かかるといわれています。
ただし、称賛・感謝のコミュニケーション施策のように、導入直後から職場の雰囲気が変わるものもあります。短期的な変化と中長期的な成果の両面で効果を見ていく視点が大切です。
エンプロイーエクスペリエンスとは、従業員が組織のなかで得るすべての経験価値を指す概念です。労働人口の減少や働き方の多様化を背景に、人材定着やエンゲージメント向上の鍵として注目を集めています。
EXを高めるには、サーベイによる現状把握、エンプロイージャーニーマップの作成、運用体制の整備といった取り組みが効果的です。なかでも、日々の「称賛・感謝」のコミュニケーションは、特別なコストをかけずに今日から始められ、EXに大きな影響を与える要素といえるでしょう。
組織に称賛文化を根づかせるツールとして、チームワークアプリ「RECOG」は多くの企業で活用されています。エンプロイーエクスペリエンス向上の第一歩を踏み出したい方は、ぜひRECOGの資料請求から検討を始めてみてはいかがでしょうか。
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