少子高齢化の影響で、多くの企業が人手不足となっている昨今。優秀な人材の確保が困難な時代となり、人材の採用だけでなく、採用後の定着が大きな課題となっています。
本記事では、人材が定着しない原因から定着率を上げるための施策を紹介します。人材定着に課題を抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
人材定着とは、雇用している人材が企業から離職せず、継続して働いてくれることを指します。「維持」や「保持」といった意味合いを持つ「リテンション」と言われることもあります。
人材定着が重要視されるようになった背景にあるのは、働く環境の変化です。
従来は年功序列制度や終身雇用制度という後ろ盾があったため、一度企業に就職すると勤続年数に応じて安定して昇給・昇進があり、定年退職まで働き続けるのが主流でした。雇用形態はメンバーシップ型雇用が一般的で、「総合職」などという名称で新卒一括採用を行ない、職務内容や勤務地などを指定せず雇用していました。
しかし先行きが不透明な時代となり、年功序列制度や終身雇用制度は崩壊へと進んで転職が当たり前の時代になっています。また、少子高齢化の影響で労働力不足となっており、企業間での優秀な人材確保のための競争が激化しています。企業はメンバーシップ型採用からジョブ型雇用へと転換し、スキルや適性を持つ人材を採用するようになってきました。
そのような中で、労働者たちは今よりも自身にあった仕事を見つけようと流動化が進んでいます。企業は、人材を採用するだけでなく定着させなければ、すぐに人手不足に陥り事業成長が止まってしまう状況だといえるでしょう。
人材定着率は、一定期間内に企業に在籍している人材の割合を指します。一方、離職率とは、一定期間内に企業から離職した人材の割合です。つまり、人材定着率と離職率を足すと100%になる関係となっています。
たとえば、100人が入社し、3年間で15人が離職して85人が残っているとしましょう。その場合、人材定着率と離職率は以下のように求められます。
人材定着率 | 85人÷100人×100=85% |
離職率 | 15人÷100人×100=15% |
人材定着率が低いのにはさまざまな理由がありますが、よく起こる原因を紹介します。自社が当てはまっている項目がないか確認してみましょう。
業務量が多い場合や、複数の業務を兼任している場合など、業務負荷が大きすぎると過度なストレスを感じます。特に優秀な人材には業務量が偏り、質の高さも求められるでしょう。
そのため「ワークライフバランスが維持できない」「自分が本当にやりたい仕事ができない」などの不満が生まれます。さらにこのような状況では、心身の健康が保てなかったり、業務を回せずに生産性が低下したりするなどの悪循環も生じます。結果として離職を考える人が多くなり、人材が定着しなくなるのです。
職場の雰囲気が悪かったり、上司との関係性がよくなかったりする場合、自身の意見やアイデアが通らないこともあります。建設的な意見や革新的なアイデアが次々と生まれても、聞く耳を持たれないと次からは意見を言うのもやめてしまい、モチベーションが低下してしまいます。やりがいを感じられなくなると、離職という選択をする人も増えるでしょう。
職場環境の悪さも、人材定着をはばむ要因となります。人間関係が悪かったり、給与などの待遇に不満を感じていたりすると、モチベーションが下がって会社へ貢献したいという気持ちが薄れます。
また、コミュニケーションが希薄な職場では相談したくても話す相手がおらず、自身の中で不満が溜まっていくでしょう。その結果、会社への帰属意識の低下を招き、離職へとつながりかねません。
「業界全体で需要が低下している」「会社の経営状況が悪化している」など、会社の先行きへの不安は離職のきっかけになる可能性があります。会社に将来性を感じられないと具体的なキャリアパスを描けなくなり、転職したいという意欲が生まれます。
従業員は、会社が掲げる経営理念に沿った行動が求められます。しかし経営理念に共感できなければ、自身がどのような行動を取るべきかわからなくなり、会社での存在意義を見いだせなくなるでしょう。
評価制度があいまいな場合や、誰かの主観である場合、努力が正当に評価されず不満を抱える従業員は少なくありません。いくら頑張っても評価されなければ意欲が失われていき、離職を検討する人が増えるでしょう。
企業にとって、人材の定着は大きなメリットが得られます。具体的なメリットについて見ていきましょう。
離職者が出ると、新たな人材を採用するためのコストや、研修などの教育コストも発生します。頻繁に離職が発生するとそのぶんコストも膨大になるうえに、せっかくコストをかけて採用・教育したのにすぐに離職されてはコストが水の泡です。
人材が定着すれば、新たな人材にかける採用コスト・教育コストは削減され、社内のコストが適正化されるでしょう。
長く働いていると、業務内容やプロセスに関するノウハウも蓄積されていくため、業務効率が向上していきます。そのため、継続して働いている人材が多いほど、企業の生産性は向上していくといえるでしょう。
また、優秀な人材が離職してしまうと、その人材が持っているスキルやノウハウまでも失ってしまうことになり、企業にとって大きな痛手となります。他の従業員が同じレベルのスキルやノウハウを身につけるためには、教育の時間とコストも必要になるでしょう。しかし、優秀な人材が定着していれば継続して質の高い仕事をしてくれるため、企業の業績向上にもつながります。
職場の雰囲気がよく、仕事にやりがいを感じられる会社ほど、人材が定着する傾向にあります。つまり、人材が定着している会社は従業員にとって働きやすい職場であるため、従業員のエンゲージメントは自然と向上するでしょう。
エンゲージメントが向上すれば、高いモチベーションを持って仕事に取り組めるようになり、主体的に仕事をする従業員が増えていきます。ポジティブな雰囲気は他の従業員へも派生していき、全体の士気が高まることが期待できます。
人材が定着すると企業の成長に好影響がありますが、具体的にどのようなことに取り組むべきなのかわからないという人も多いでしょう。そこで、人材定着のための施策を6つ紹介します。
従業員へ会社の理念やビジョンを正しく共有することで、従業員は会社が目指す方向性が明確になり、自分はどのような行動を取るべきか理解できるようになります。理念やビジョンに沿ったキャリアパスも描きやすくなるため、モチベーション向上にもつながるでしょう。
理念やビジョンを共有するには、全従業員に向けた研修を行なうのも一つの案です。勤続年数に関係なく、改めて全従業員に理念やビジョンを詳しく説明することで、全社に浸透させられるでしょう。
従業員が「この会社で長く働きたい」と思えるよう、コミュニケーションを取りやすい環境を整えましょう。職場の雰囲気が良くなり仲間意識が芽生えると、自然と会社に貢献したい気持ちも強くなります。
具体的には、1on1ミーティングで上司と部下の信頼関係を築いたり、シャッフルランチで部署を超えたコミュニケーションを図ったりする方法があります。また、社内SNSなどのツールを活用すると、リモートワークや別拠点の従業員ともコミュニケーションが取りやすくなるでしょう。
評価制度を見直すのも、人材定着には効果的です。大きな成果を出したり、難易度の高い業務を担当したりしても評価されず、適切な給与や報酬も得られなければ、モチベーションが下がる一方です。
そのため、明確な評価基準を定めて頑張りが正当に評価されるようになれば、従業員はやりがいを感じるようになり「長く働きたい」という意識が芽生えます。
採用段階から長く働いてくれる人材を見極めることで、入社後の定着を促せます。
たとえば、本人が希望する職種と、企業が求めている職種が合致していないと、入社しても「やりたい仕事ができない」というミスマッチが発生します。また、理念やビジョン、社風などに合っていない場合も、入社後のギャップを感じてやりがいを見いだせなくなるでしょう。
採用段階から、本人のスキルや希望などをヒアリングし、さらに自社のビジョンも共有しておくことで、自社にマッチする最適な人材を採用できます。
福利厚生の充実度は従業員満足度に影響し、優秀な人材が定着しやすくなります。産休・育休制度や住宅手当、介護休暇などのほか、従業員自身のスキルアップを支援する制度や、アニバーサリー休暇・手当などのユニークな制度など、福利厚生を充実させて従業員が働きやすい環境を作りましょう。
テレワークや時短勤務、フレックスタイム制などの多様な働き方を取り入れると、従業員のライフワークバランスが充実してエンゲージメントが向上します。プライベートな時間を確保できるようになれば心身ともにリフレッシュでき、また仕事を頑張ろうというモチベーションが生まれます。
人材定着のためには従業員のエンゲージメントを高める取り組みが求められます。チームワークアプリ「RECOG」では、従業員同士の感謝・称賛を通じて職場のコミュニケーションを促進し、風通しのよい職場作りを実現できます。
レター機能によるメッセージの送受信だけでなく、投稿フィード機能を使うと経営理念や日報などの情報発信が可能です。また、チャットのように使えるトーク機能もあるため、従業員同士のコミュニケーションを促せます。
詳しい機能についてはこちらの資料で紹介しているので、ぜひダウンロードしてご確認ください。
企業の成長のためには、採用した人材が長期的に働いて貢献してくれることがポイントです。しかし、人材の流動性が高まっており、人材が定着しない企業は少なくありません。
人材が定着しない背景には、職場や仕事内容への不満などからモチベーションや帰属意識が低下するという原因があります。まずは自社の課題を明確にし、課題に合った施策を講じていきましょう。
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