コラム

健康経営のKPI具体例|KGIとの違いや目標値の設定方法を解説

健康経営のKPI具体例|KGIとの違いや目標値の設定方法を解説

公開日: 2026.10.26
更新日: 2026.10.26

健康経営に取り組むなかで、「どのようなKPIを設定すればよいのか」「目標値をどう決め、何を使って測ればよいのか」と悩んでいる担当者も多いのではないでしょうか。健康診断の受診率やストレスチェックの受検率だけでなく、生活習慣、労働時間、プレゼンティーイズムなど、健康経営で活用できる指標は幅広くあります。

一方で、測定しやすい数値を並べるだけでは、施策が自社の健康課題の解決や健康経営の目標達成につながっているかを判断しにくくなります。KPIは、自社が目指すKGIや健康課題、実施する施策との関係を意識して設定することが大切です。

この記事では、健康経営で活用できるKPIの具体例をカテゴリ別に紹介します。KGIとの違い、KPIの決め方や測定方法、運用時に起こりやすい失敗と対策も解説するので、自社に合った指標を検討する際の参考にしてみてください。

 

 

健康経営におけるKPIとKGIの違い

健康経営では、施策を実施して終わりにするのではなく、目標に近づいているかを継続的に確認する必要があります。その際に使われるのがKPIとKGIです。似た言葉ですが、確認する対象や役割は異なります。まずは両者の違いを押さえ、自社の健康経営にどう結び付けるかを考えましょう。

KPIは目標達成までの進捗を示す

KPIは「Key Performance Indicator」の略です。健康経営優良法人認定事務局が公開している「健康経営ガイドブック(2025年3月版)」では、施策の進捗や効果を可視化する指標と定義されています。また、KPIは次の3つのレベルを意識して設定することが望ましいとされています。

KPIのレベル

確認する内容

指標の例

施策の取り組み状況に関する指標

施策が機能しているか

イベント参加率、保健指導実施率、精密検査受診率

従業員の意識・行動変容に関する指標

施策によって意識や行動が変わったか

高ストレス者割合、運動習慣者比率、朝食欠食率

健康関連の最終的な目標指標

健康状態や就業にどのような変化があったか

プレゼンティーイズム、アブセンティーイズム、ワーク・エンゲージメント

たとえば、運動促進施策ならイベントへの参加率や運動習慣者の割合、メンタルヘルス対策ならストレスチェック受検率などが候補になります。施策を実施した回数だけではなく、従業員が参加したか、行動に変化があったかまで追うと、計画どおりに進んでいるかを判断しやすくなります。

KPIはゴールそのものではありません。施策の途中経過を確認し、必要に応じて内容を見直すための指標として活用します。

ただし、同じ指標でも位置づけによってKPIにもKGIにもなります。ガイドブックでは、3つ目の「健康関連の最終的な目標指標」はKGIの達成状況の評価にも用いられ、企業によってはその向上・改善をKGIとして設定している場合もあるとされています。高ストレス者割合のように、KPIの例としてもKGIの例としても挙げられている指標もあります。

KGIは健康経営で目指すゴールを示す

KGIは「Key Goal Indicator」の略で、健康経営の目標の達成状況を確認する指標です。ガイドブックでは、KGIとあわせて達成目標年限を設定する考え方が示されています。

KGIに何を置くかは、企業の方針や目標によって異なります。同ガイドブックでは、「職場の心理的安全性尺度を2024年度比で10%向上させる」「特定保健指導対象者比率を2024年度比で10%減らす」「睡眠で休養が取れている従業員の比率を一定の水準まで高める」など、達成年度とあわせてKGIを設定する例が示されています。ただし、すべての企業に共通する正解があるわけではありません。

大切なのは、KPIとKGIを切り離して考えないことです。施策によってどのような変化が生じ、その変化がKGIの達成にどうつながるのか、仮説として組み立てておきましょう。

出典:健康経営優良法人認定事務局「健康経営ガイドブック」(2025年3月版)

 

【カテゴリ別】健康経営のKPI例

健康経営で使えるKPIは1種類ではありません。健康診断や生活習慣、メンタルヘルス、働き方など、自社が解決したい健康課題によって適した指標は変わります。ガイドブックで示されている指標を中心に、実務で検討しやすいKPI例をカテゴリ別に紹介します。

カテゴリ

主なKPI例

健康診断・保健指導

保健指導実施率、再検査・精密検査受診率、事後措置面談実施率、要受診者率

生活習慣改善

運動習慣者割合、朝食欠食者割合、喫煙者割合・禁煙継続率、睡眠で十分な休養が取れている従業員割合

メンタルヘルス

ストレスチェック受検率、高ストレス者割合、セルフケア・ラインケア研修参加率、相談窓口の利用率・認知率

働き方・労働時間

長時間労働者数、年間所定外労働時間数、年次有給休暇取得率、傷病休業者の復職率

健康教育・健康風土

健康教育参加率、健康情報の閲覧数、方針・目標の認知率、経営トップのコミットメント認知率

生産性・エンゲージメント

プレゼンティーイズム、アブセンティーイズム、ワーク・エンゲージメント、離職率

健康診断・保健指導のKPI例

健康診断や保健指導では、制度を用意しているかだけでなく、必要な従業員がその後の受診や支援につながっているかも大事です。健診後の対応まで数値で追うと、受診勧奨や保健指導が実際に機能しているかを確認する材料になります。

なお、このカテゴリのうち要受診者率は、受診や支援の状況ではなく従業員の健康状態を示す指標です。ほかの指標とは性質が異なるため、区別して扱う必要があります。

保健指導実施率

保健指導実施率は、保健指導の対象者のうち、実際に指導を受けた従業員の割合です。ガイドブックでも、保健指導の取り組み状況を評価する指標例として示されています。

実施率が低い場合は、従業員の意識だけでなく、予約方法や実施時間など運用面に参加しにくい要因がないか確認しましょう。対象者へ機会を提供できているかを把握することで、次の改善策を考えやすくなります。

再検査・精密検査受診率

健康診断で再検査や精密検査の対象となった従業員について、その後に医療機関を受診した割合もKPIとして活用できます。ガイドブックでは、要再検査・要精密検査の対象者における受診率が例示されています。

健診を受けただけでは、その後の必要な受診までつながったかはわかりません。対象者への案内や受診しやすい環境づくりとあわせて、受診率の推移を確認していきましょう。

事後措置面談実施率

血圧や血糖の値が著しく高い「管理不良者」に対して、事後措置面談を実施できているかを見る指標です。ガイドブックでは、管理不良者への対応に関する指標として、対象者に占める事後措置面談の実施率が挙げられています。健康診断で所見があった従業員全般を対象とする指標ではない点に注意が必要です。

単純な面談件数ではなく、対象者に対して必要な対応が行き届いているかを割合で確認するのがポイントです。未実施が目立つ場合は、案内や日程調整の方法も見直します。

要受診者率

ガイドブックでは、血圧や血糖が一定の基準に該当する従業員を要受診者とし、その割合を把握する方法が例示されています。従業員の身体的な健康状態を捉えるための指標の1つです。要受診者率が示すのは健康状態であり、要受診者が実際に受診や支援につながったかどうかは測れません。

要受診者率だけで施策の成果を判断するのではなく、その後に医療機関を受診した割合や経年変化もあわせて確認しましょう。基準は今後変更される可能性もあるため、実際に活用する際は最新の公的資料を参照することが大切です。

生活習慣改善のKPI例

食事・運動・喫煙・睡眠などの生活習慣は、健康経営で扱われる代表的なテーマです。施策への参加人数だけではなく、その後も取り組みが続いているか、従業員の行動に変化が表れているかまで見ると、施策の状況をより具体的に評価できます。

運動習慣者割合

運動習慣のある従業員の割合は、運動促進施策による行動変容を見る指標として活用できます。ガイドブックでも、従業員の意識・行動変容に関する指標例として運動習慣者比率が示されています。

ウォーキングや体操、スポーツイベントなどを実施する場合は、参加率だけではなく、一定期間後も運動を続けているかを見ると施策の定着状況を確認しやすくなります。

朝食欠食者割合

朝食を欠食する従業員の割合も、食生活に関する行動変容を捉える指標の候補です。ガイドブックでは、朝食の欠食率がKPI例として挙げられています。

食生活に関する情報提供や施策を行なう場合は、実施前後の推移を見る方法があります。ただし、食習慣は勤務形態や生活環境など複数の要因から影響を受けるため、数値の変化を単一の施策だけの成果と判断しないよう注意が必要です。

喫煙者割合・禁煙継続率

喫煙対策では、喫煙者割合に加え、禁煙プログラムに参加した従業員が禁煙を続けている割合を確認する方法があります。ガイドブックでも、禁煙プログラム実施後の行動変容を捉える指標として禁煙継続率が示されています。

参加者数だけを見るより、一定期間後も取り組みが続いているかを確認した方が、施策の状態を把握しやすくなります。禁煙率などの定義や測定時期は、社内で統一しておきましょう。

睡眠で十分な休養が取れている従業員割合

睡眠によって十分な休養を取れている従業員の割合も、生活習慣に関するKPIとして検討できます。ガイドブックでは、意識・行動変容に関する指標例の1つとして示されています。

睡眠に関する研修などを実施する場合は、継続的なアンケートによって変化を追う方法があります。なお、睡眠状態には勤務時間なども関係するため、必要に応じて労働時間の指標とあわせて分析するとよいでしょう。

メンタルヘルスのKPI例

メンタルヘルス対策では、従業員のストレス状態だけでなく、教育や相談体制がどの程度利用されているかも確認します。1つの数値だけで評価せず、施策の実施状況と従業員の状態を複数の指標から見ると、改善が必要な箇所を考えやすくなります。

ストレスチェック受検率

ストレスチェック受検率は、対象となる従業員のうち実際にストレスチェックを受けた割合です。ガイドブックでも、メンタルヘルス対策の実施状況を見る指標例に挙げられています。

受検率が低い場合、実施はしていても、必要な従業員に十分届いていない可能性があります。案内方法や実施時期、回答方法などを確認し、利用しにくい要因がないかを見直す材料にしましょう。

高ストレス者割合

ストレスチェックなどから把握した高ストレス者の割合は、従業員の心理的な状態を継続して見る際に活用できます。ガイドブックでも、意識・行動変容に関する指標例の1つとして挙げられています。

数値が高い部署や時期がある場合は、個人だけの問題と捉えず、業務量や職場環境などにも目を向ける必要があります。経年変化や組織単位での傾向も踏まえ、必要な対策を検討します。

セルフケア研修参加率

セルフケア研修を実施する場合は、対象となる従業員のうち何割が参加したかをKPIに設定できます。ガイドブックでは、セルフケア教育の参加率や満足度が指標例として示されています。

研修を開催した回数だけでは、必要な従業員に情報が届いたかまでは判断できません。参加率とあわせて満足度なども確認すると、開催方法や研修内容を見直す際の材料になります。

ラインケア研修参加率

管理職などを対象にラインケア研修を行なう場合は、対象者に占める参加者の割合を追う方法があります。ガイドブックでも、ラインケア教育の参加率・満足度がKPI例として掲載されています。

対象となる管理職へ必要な教育機会を提供できているかを確認し、未参加者が固定化している場合は開催時期や受講方法などを見直しましょう。

相談窓口の利用率・認知率

メンタルヘルス相談窓口を設けていても、従業員が存在を知らなければ利用にはつながりません。そのため、利用率とあわせて認知率を測る方法があります。

ガイドブックでも、相談窓口等の利用率・認知率が指標例として示されています。ただし、利用率は低いほど良いとは限りません。相談しやすい環境が整った結果として利用が増える場合もあるため、利用件数だけで施策の良し悪しを判断しないことが重要です。

働き方・労働時間のKPI例

健康経営では、個人の生活習慣だけでなく、働き方や労働時間も重要な確認対象です。長時間労働や休暇取得、休業後の復職状況を数値で追うと、従業員が働き続けやすい環境になっているかを確認する材料になります。

長時間労働者数

一定の基準を超えて長時間働いている従業員数は、長時間労働抑制施策の状況を見るKPIとして利用できます。ガイドブックでも、行動変容に関する指標例の1つです。

全社の人数だけではなく、部署や職種、繁忙期などによる偏りも確認すると、業務量が一部に集中していないかを把握しやすくなります。単年度の値だけで判断せず、推移を見ることも大切です。

年間所定外労働時間数

従業員1人あたりの年間所定外労働時間数の平均値も、長時間労働対策に用いられる指標です。残業削減などの施策を実施している場合は、施策前後の変化を確認する材料になります。

平均値だけを見ると、一部の従業員に長時間労働が偏っている状態を見落とす場合があります。そのため、長時間労働者数などもあわせて確認し、全体と個別の両面から状況を見るとよいでしょう。

年次有給休暇取得率

年次有給休暇取得率は、有給休暇の取得奨励施策による行動変容を見る指標としてガイドブックに示されています。

取得率が低い場合は、休暇制度の有無だけではなく、業務の属人化や取得しにくい職場環境がないか確認する必要があります。部署別や職種別の状況も見ると、全社平均だけでは気づきにくい課題を把握できることがあります。

傷病休業者の復職率

傷病休業者のうち職場へ復帰した人の割合も、復職支援に関するKPIとして活用できます。ガイドブックでは、対象者の復職率が行動変容に関する指標例として挙げられています。

ただし、復職率そのものを高めることが目的ではありません。従業員の健康状態を踏まえた適切な復職支援を前提とし、必要に応じて制度の認知率や利用者の評価などもあわせて確認しましょう。

健康教育・健康風土のKPI例

健康経営を継続するには、施策を実行するだけでなく、従業員に方針や取り組みが伝わっているかを確認することも欠かせません。教育への参加状況や健康情報への接触、経営層の考え方の認知度などを見ると、健康経営が社内にどの程度浸透しているかを把握できます。

健康教育参加率

健康教育や研修の参加率は、従業員に健康に関する情報を届けられているかを見る指標です。ガイドブックでも、健康教育について全従業員等に占める参加率や満足度が例示されています。

参加率が低い場合は、内容だけではなく開催時間や参加方法も確認しましょう。勤務形態が異なる従業員がいる企業では、参加機会に偏りがないかを見ることも必要です。

健康情報の閲覧数

社内ポータルなどで健康情報を発信している場合は、閲覧数を確認する方法があります。ガイドブックでは、具体例として食生活改善情報提供の閲覧数が示されています。

これを応用し、健康に関する情報発信について閲覧状況を確認すれば、配信して終わりにせず、従業員にどの程度届いたかを把握できます。閲覧数が少ないときは、テーマや配信方法を見直す材料にしましょう。

健康経営の方針・目標の認知率

健康経営の推進方針や目標を掲げていても、従業員に知られていなければ社内への浸透は進みにくくなります。そのため、従業員アンケートなどを通じて方針や目標の認知状況を測る方法があります。

認知率を見る際は、「聞いたことがある」だけでなく、必要に応じて内容の理解度も確認するとよいでしょう。発信方法を見直す際の材料としても活用できます。

経営トップのコミットメント認知率

経営トップが健康経営への考えを発信している場合は、その内容が従業員や管理職に届いているかを確認する指標も設定できます。ガイドブックでは、経営トップのコミットメントに対する認知率が指標例として示されています。

発信回数だけを数えるのではなく、受け手に伝わったかまで見ることで、社内への浸透状況をより具体的に把握できます。

生産性・エンゲージメントのKPI例

健康経営では、施策への参加状況だけでなく、健康状態が仕事に与える影響や就業に関する変化を確認する指標も使われます。ただし、これらは健康経営以外の要因からも影響を受けます。単一施策との因果関係を断定せず、複数の情報を踏まえて評価することが大切です。

プレゼンティーイズム

プレゼンティーイズムとは、出勤しているものの、健康上の問題によって業務パフォーマンスが低下している状態を指します。この状態を把握する方法として、ガイドブックではWHO-HPQなどによる労働損失の確認や、WFunによる労働機能障害の測定が紹介されています。

継続的に推移を見る場合は、年度ごとに測定方法を変えないことが重要です。尺度が変わると数値を単純比較しにくくなるため、採用する方法をあらかじめ決めておきましょう。

アブセンティーイズム

アブセンティーイズムとは、病気などの健康上の理由で仕事を休んでいる状態を指します。ガイドブックでは、その把握方法として、従業員へのアンケートと、企業が保有する人事情報の活用が紹介されています。

人事情報のうち欠勤・休職日数を代替指標にする場合は、療養のために取得した有給休暇を把握できず、実態より少なく見える可能性があります。何をアブセンティーイズムとして集計するかをあらかじめ定め、継続して同じ条件で測りましょう。

ワーク・エンゲージメント

ワーク・エンゲージメントとは、仕事に対して活力・熱意・没頭を感じている状態を指します。ガイドブックでは就業に関連する指標例として紹介されており、ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度を用いたアンケートで把握する方法が示されています。

ワーク・エンゲージメントは、健康施策だけではなく仕事内容や職場環境などからも影響を受けます。そのため、数値が上昇した場合も特定の健康経営施策だけの成果とは決めつけず、他のデータとあわせて変化を見る必要があります。

離職率

離職率も、就業に関連する指標として健康経営の評価に活用できます。ガイドブックでは、年間の離職率を人事情報から算出する方法が紹介されています。

ただし、離職には待遇、仕事内容、キャリア、個人的事情など多くの要因が関係します。施策参加者と非参加者を比較する場合も、年齢や職位など施策以外の影響をできる限り考慮し、健康経営施策だけの成果と断定しないようにしましょう。

出典:健康経営優良法人認定事務局「健康経営ガイドブック」(2025年3月版)

 

健康経営のKPIの決め方と測定方法

KPIは、他社で使われている指標をそのまま採用するのではなく、自社の健康課題やKGI、実施する施策との関係を踏まえて決める必要があります。また、継続して測定できることも重要です。設定から測定までを一体で考え、評価や見直しに使えるKPIを設計しましょう。

自社の健康課題とKGIからKPIを決める

KPIの決め方に一律の順序はありません。自社の健康課題から必要な施策とKPIを検討する方法もあれば、健康経営で目指すKGIから逆算してKPIや施策を設定する方法もあります。

ガイドブックでも、計画策定の順番に正解はないとされています。重要なのは、健康課題、施策、KPI、KGIの関係に無理がないかを見ることです。

たとえば長時間労働が健康課題であれば、長時間労働者数や所定外労働時間など、課題や施策との関係が明確な指標を選ぶと評価しやすくなります。

現状値をもとに目標値と期限を決める

KPIを設定するときは、指標名だけでなく現状値、目標値、期限まで決めておくと進捗を判断しやすくなります。他社の目標値をそのまま採用するのではなく、自社の現在地を基準に考えることが大切です。

企業規模や従業員構成、事業内容、これまでの取り組み状況が異なれば、適切な水準も変わります。過去の推移を確認しながら、どの期間でどこまでを目指すのかを設定しましょう。

健康経営度調査票(大規模法人部門)でも、具体的な推進計画について数値目標や達成期限を定め、KPIの「現在値」「今年度の目標値」「最終目標値」などを回答する設計になっています。

出典:令和8年度健康経営度調査票(大規模法人部門)

健診・人事データ・アンケートで測定する

KPIによって必要なデータは異なります。すでに社内で取得しているデータを確認し、不足する場合にアンケートなどの追加測定を検討すると、運用負担を抑えやすくなります。

主なデータ

把握できるKPIの例

運用時の確認点

健康診断・保健指導データ

健診結果、保健指導実施率、要受診者率

対象者や集計範囲を統一する

勤怠・人事データ

労働時間、有給休暇取得率、休業日数、離職率

年度ごとに同じ定義で集計する

ストレスチェック

高ストレス者割合など

集団分析では個人が特定されないよう適切に取り扱う

従業員アンケート

プレゼンティーイズム、ワーク・エンゲージメント、方針の認知率

経年比較では設問や尺度をそろえる

複数年度の変化を見る場合は、測定範囲や定義をむやみに変えないこともポイントです。同じ条件で追える状態をつくると、前年との差を判断しやすくなります。

健康経営戦略マップで施策とのつながりを確認する

健康経営戦略マップは、施策、KPI、KGI、健康経営の目標などの関係を可視化するために使います。KPIを設定した後は、施策から目標までのつながりに無理がないかを全体で確認しましょう。

ガイドブックでは、施策とKPIのつながりには仮説的に設定する部分も多いとされています。したがって、戦略マップに矢印を引いたから因果関係が証明されたと考えるのは適切ではありません。

実践後の結果を見ながら、想定したつながりが妥当だったかを検証し、必要に応じて施策やKPIを見直すことが大切です。

 

健康経営のKPI運用でよくある失敗と対策

KPIは設定しただけでは役立ちません。指標を増やしすぎたり、施策との関係が曖昧だったりすると、数値を集める作業だけが残るおそれがあります。健康課題の解決やKGIの達成に向けて判断に使える指標になっているか、運用開始後も定期的に確認しましょう。

KPIが多すぎて管理しきれない

健康経営では活用できる指標が多いため、測れるものをすべてKPIにすると管理が複雑になります。集計作業に時間を取られ、結果を分析したり施策を見直したりできなくなっては本来の目的から外れてしまいます。

まずは、自社が優先して対応する健康課題やKGIとの関係が明確な指標から選びましょう。新しいKPIを追加するときも、「数値が変わったときに、どの判断に使うのか」を説明できるか確認すると、不要な指標を増やしにくくなります。

施策とKPIがつながらず戦略マップが形骸化する

戦略マップを作成していても、実際の運用で見返さなければ形だけになってしまいます。設定時に描いた施策とKPI、KGIの関係が、実際の結果と合っているかを定期的に確認することが必要です。

想定したKPIが変化しない場合は、施策の内容に問題があるのか、KPIの選び方が適切でなかったのかを分けて考えます。ガイドブックでも、戦略マップは一度作って終わりではなく、実践結果を踏まえて継続的に活用するものとされています。

取得できないデータをKPIに設定してしまう

重要に見える指標でも、継続してデータを取得できなければKPIとしての運用は難しくなります。設定前に、データの取得元、集計担当者、測定する頻度を確認しておきましょう。

特に独自アンケートを毎回実施する場合は、担当者だけでなく回答する従業員にも負担がかかります。継続が難しいと判断したときは、同じ目的を確認できる別の指標で代替できるか検討しましょう。

成果が出ないとKPIだけ見直してしまう

KPIが目標値に届かなかったとき、すぐに指標や目標値を変更するのは避けた方がよいでしょう。最初に確認したいのは、施策の内容や実施方法に改善の余地がなかったかです。

たとえば研修参加率が低い場合は、目標値を下げる前に、周知方法や開催時間、参加方法を見直せます。健康関連の変化は短期間では表れない場合もあるため、KPIだけではなく施策、健康課題、KGIまで含めて確認し、必要な箇所から修正していきましょう。

 

健康施策の参加率向上にRECOGを活用する

KPIを設定しても、施策への参加が広がらなければ数値は改善しにくくなります。RECOGは、従業員同士が感謝や称賛をレターで伝え合い、ポイントを贈り合えるサービスです。健康施策への参加や目標達成をレター・ポイントで称える仕組みをつくれば、イベント参加率などを高めるきっかけになります。導入後は参加率などのKPIとあわせて推移を確認し、効果を検証していきましょう。

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健康経営のKPIに関するよくある質問

健康経営のKPIを設定する際は、指標そのものだけでなく、健康課題の決め方や数値化の方法、健康経営優良法人の認定との関係に疑問を感じることもあります。KPIに一律の正解はないため、自社の目標や健康課題との関係を基準に考えるとよいでしょう。

健康経営ではどのような健康課題を設定しますか?

健康課題には、生活習慣病リスク、メンタルヘルス、長時間労働、運動不足、睡眠、喫煙などがあります。どの課題を優先するかは企業によって異なります。

健康診断の結果、ストレスチェックの集団分析、労働時間など、自社で保有しているデータを確認し、対応が必要なテーマを見極めましょう。ガイドブックでも、自社の健康課題を把握したうえで施策やKPIを検討する考え方が示されています。

KPIは定量的な指標だけで設定しますか?

KPIは、できる限り数値で把握できる定量的な指標で設定するのが基本です。ガイドブックでも、施策の評価・改善につなげるため、可能な限り定量的な指標を用いることが望ましいとされています。

施策への満足度など質的な評価を取り入れる場合も、5段階評価など同じ方法で継続して測り、数値で比較できる形にしておくと評価に使いやすくなります。なお、健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定申請書では、「コミュニケーションの取りやすさ」のような判断者の主観による定性指標は、推進計画の目標指標として認められない例に挙げられています。

健康経営優良法人の認定ではKPIの設定が必要ですか?

申請する部門によって確認される内容が異なります。大規模法人部門で使用する健康経営度調査票では、健康課題に対する施策の進捗を確認するKPIや、その目標値を回答する設問が設けられています。

一方、中小規模法人部門では別の認定申請書を使用します。認定申請書では、健康課題を踏まえた具体的な推進計画について、数値目標・実施主体・達成期限を定めて推進しているかが確認されます。また、「1人当たり医療費の削減」や「傷病手当金申請日数の削減」、法令の範囲内にとどまる目標値などは、推進計画の目標として認められない例に挙げられています。

年度や部門によって設問・認定要件が異なるため、申請時にはACTION!健康経営で公開されている最新資料を確認しましょう。

出典
令和8年度健康経営度調査票(大規模法人部門)
健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)認定申請書

 

まとめ | 自社の課題とKGIにつながるKPIを設定しよう

健康経営のKPIには、健康診断や保健指導、生活習慣、メンタルヘルス、働き方、健康風土、プレゼンティーイズムなど幅広い指標があります。大切なのは、多くのKPIを設定することではありません。自社が対応したい健康課題を明確にし、施策の進捗を確認するKPIと、健康経営で目指すKGIとのつながりを考えることが重要です。

KPIを決める際は、現状値や目標値だけでなく、継続して取得できるデータかどうかも確認しましょう。成果が見えにくい場合はKPIだけを変更せず、施策や戦略マップを含めて見直す必要があります。数値を集めること自体を目的にせず、評価結果を次の取り組みに活かしていきましょう。

また、KPIを設定しても、施策への参加が広がらなければ数値は改善しにくくなります。RECOGでは、感謝・称賛を伝え合えるレター機能やポイント機能を通じて、社内コミュニケーションの活性化を支援しています。

ウォーキングキャンペーンの参加者や卒煙の達成者へレター・ポイントを贈り、健康経営の施策と組み合わせて活用している導入事例もあります。健康施策への参加を後押しする仕組みづくりに、RECOGの活用もぜひご検討ください。

 

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