在宅勤務を導入したものの、従業員のモチベーションが低下したというケースは少なくありません。一人で黙々と働く環境では、自分の役割や仕事の意義を見失いやすくなるためです。こうした在宅勤務でのモチベーション低下を放っておくことは企業にとってリスクになります。
本記事では、在宅勤務におけるモチベーション低下の背景を解説し、効果的な管理方法をご紹介します。

在宅勤務では部下の様子を直接確認できないため、モチベーションが下がっていても気づきにくいでしょう。在宅勤務でモチベーションが低下した状態が続くと、組織にさまざまな悪影響を及ぼします。まずはモチベーション低下がもたらすリスクを見ていきましょう。
在宅勤務でモチベーションが低下すると、つい緩慢に働いてしまい、同じ仕事でもオフィスワークよりも時間がかかるようになります。また、集中力が続かずミスが発生するなど、作業効率が下がります。仕事が終わらないために残業が増え、疲労によってさらに生産性が落ちるという悪循環にも陥りかねません。
またチームで動く業務では、一人の生産性低下がチーム全体の進行を遅らせます。チームの成果が落ちることで、他のメンバーのモチベーション低下を招くリスクもあります。
在宅勤務でモチベーションの下がった状態が続くと「この会社で働き続ける意味はあるのか」「もっと意欲的に取り組める仕事があるのではないか」と考えるようになります。オフィスワークであれば、日々同僚と顔を合わせるなかで悩みを相談し、離職を思いとどまる場合もあるでしょう。しかし在宅勤務では周囲に相談しづらく、一人で抱え込んで離職を決断するケースも少なくありません。
さらに在宅勤務では、部下のモチベーション低下に気づきにくいため、慰留の働きかけが遅れることもあります。
在宅勤務でモチベーションが低下すると、仕事に対して主体的に動いて改善や工夫を試みるといった、前向きな行動が見られなくなります。市場や顧客の情報を積極的に収集したり、外部の勉強会に参加して学びを深めたりする自己研鑽の機会も減少するでしょう。
こうしたモチベーションの低い従業員が増えると、イノベーションが生まれにくくなり事業の停滞を招きます。また、取引先への対応の質が低くなるなど、やり取りのなかでモチベーション低下が表面化すると、現状の売上維持さえも難しくなるリスクがあります。

在宅勤務でモチベーションが低くなるのは、気の緩みなど個人の問題だと考える方も多いかもしれません。しかし、実は在宅勤務という「環境」がモチベーション低下の大きな理由になっています。
オフィスワークでは、仕事の合間に近くの席の同僚と雑談をしたり、社内ですれ違った際に「この間はありがとう」と声をかけたりと、些細なコミュニケーションが自然と生まれます。
しかし在宅勤務では、相手の状況が見えづらいため連絡をためらい、最低限の報連相のみになることも多いでしょう。こうした在宅勤務でのコミュニケーションの減少や雑談の消失は、モチベーションと帰属意識を低下させます。特に新入社員や中途社員は、コミュニケーションが取りづらい在宅勤務では関係構築が難しく、モチベーションが下がりやすくなります。
在宅勤務では、評価者が働きぶりを直接確認できないため、業務プロセスを適切に評価することが困難になります。そのため、在宅勤務では成果に基づく評価に偏りやすく、目に見える結果を出さなければ評価されにくいという難しさが生じます。
しかし業務によっては、成果に結びつくまで時間を要する場合もあるでしょう。たとえば、顧客との関係構築や資料作成など、地道な準備が必要な仕事は成果が見えにくいものです。その過程が正当に評価されなければ「努力が報われない」と不満が募り、在宅勤務でモチベーションが低くなる理由になります。
オフィスワークでは、たとえば自分が作成した資料を他のメンバーが活用している様子を見て、「役に立った」とモチベーションが上がることもあるでしょう。しかし在宅勤務では周囲の仕事が見えにくく、自分がどのように貢献しているか分からないため、モチベーションの低い状態に陥りやすいです。
またルーティン業務を頼まれた際も、オフィスでは会話や周囲の状況から仕事の背景を把握できる一方、在宅勤務では全体像をつかめないまま着手せざるを得ない場合もあります。業務が”作業”と化して、自分の仕事の意義や役割を見失ってしまい、在宅勤務のモチベーションは低下します。
オフィスワークでは会社にいれば自然と仕事モードに、家に帰ればプライベートモードになり、オンオフの区別がつけやすいでしょう。しかし在宅勤務では、普段生活している空間で働くため、なかなか仕事のスイッチが入らずモチベーションが低くなります。
また、在宅勤務は通勤がないため始業・終業の区切りが曖昧になったり、家に仕事用のパソコンがあることで終業後もついメールを確認してしまったりと、長時間労働につながるリスクもあります。在宅勤務でオンオフがうまく切り替えられない状態はストレスとなり、さらなるモチベーション低下につながるでしょう。
在宅勤務では、オフィスのように「働く環境」を十分に整備できない場合もあるでしょう。たとえば、仕事に不向きなダイニングテーブルや、長時間座るには適さない椅子の使用は身体的疲労の原因になります。
また在宅勤務では、一人で仕事をする孤独感から精神的な不調を抱えるケースも増加するでしょう。在宅勤務で周囲に気軽に相談できず不調が蓄積していくと、モチベーションは加速度的に下がっていきます。不調を抱えた状態では本来のパフォーマンスが発揮できず、そのストレスがさらにモチベーションを低下させるといった悪循環に陥る可能性もあります。

在宅勤務におけるモチベーション低下を防ぐには、どのような工夫ができるでしょうか。ここでは、モチベーション低下にストップをかける在宅勤務の制度をご紹介します。
人事評価は従業員のモチベーションを大きく左右するため、まずは在宅勤務にあわせて評価制度を見直しましょう。
在宅勤務で公平な評価を行なうには、プロセス評価ではなく、成果ベースの評価を重視することが大切です。成果に重きを置いた評価制度により「ついサボってしまう」という在宅勤務特有の課題解決にもつながります。
しかし前述のとおり、成果だけで評価する制度はモチベーションの低下を招くため、プロセスも適切に評価できるよう、在宅勤務では360度評価を組み合わせるとよいでしょう。チームのメンバーが評価者となれば、数字や結果だけでは測れない日々の努力や貢献も評価に反映できます。正当に評価される環境づくりは、モチベーション低下に歯止めをかけるだけでなく、意欲の向上にもつながります。
モチベーションは働く環境にも影響を受けるため、在宅勤務の環境が整うようサポートすることも重要です。
まずは在宅勤務におけるコミュニケーションの土台を整えるため、気軽に連絡を取り合えるチャットツールや、急ぎの連絡に適した電話、顔を合わせてミーティングができるビデオ会議ツールなどを用意しましょう。在宅勤務でモチベーションが下がりそうなときでも、メンバーと密にやり取りできる環境があれば、気持ちを立て直しやすくなります。
また、在宅勤務によって増える通信費や光熱費、デスク・椅子といった備品購入に対する金銭的サポートも欠かせません。自費で新しく備品を購入するのは従業員にとって負担になりますが、補助があれば在宅勤務の環境整備に前向きになれるでしょう。働く環境が整えば、在宅勤務のモチベーションは高まっていきます。
在宅勤務でのオンオフの切り替えを促し、長時間労働を防ぐために、勤怠のルールも整備しましょう。
勤怠管理ツールを利用すれば、打刻によって在宅勤務でも始業・終業を意識しやすくなるほか、勤務状況を共有できるため就業時間外の連絡防止にも役立ちます。また、休憩時間もツール上で管理すると「休憩を取らない」「規定よりも長く休んでしまう」といった在宅勤務で起こりがちな問題も回避できるでしょう。
さらに、残業時間を自動集計できる点もメリットです。適切な労働時間が守られて、モチベーション低下の防止につながります。
ツールの導入が難しい場合は、上司やチームのチャットで始業・終業報告をする方法も有効です。やり取りが生まれるため、在宅勤務の孤立感が和らぎ、モチベーション低下を防げます。
在宅勤務では普段の様子が見えないため、悩みや精神的な不調を抱えていても周囲がそのサインに気づきにくいでしょう。だからこそ、在宅勤務では不調を早期に発見できる仕組みが不可欠になります。
たとえば、在宅勤務で週1回オンラインミーティングを行なって顔を合わせると、表情や声のトーンから互いの変化に気づきやすくなります。本人が不調やモチベーション低下を自覚していなくても、メンバーの指摘で早めに対処できる場合もあるでしょう。
さらに相談窓口の設置や、産業医面談の体制づくりも重要です。オンラインで相談・面談できる環境があると、在宅勤務の合間に安心して利用できます。
こうした早期発見や相談体制の仕組みによって、在宅勤務でも心身の健康を保ちやすくなり、モチベーション低下を防止できます。

在宅勤務でのモチベーション低下は、マネジメントの工夫によっても防止が可能です。ここからは管理職が意識したい、在宅勤務のマネジメント施策をご紹介します。
部下の状況を把握するためには、1on1ミーティングが効果的です。在宅勤務で実施する1on1は業務進捗の確認が目的ではなく、「困りごとを引き出す対話の場」とすることがポイントです。たとえば「オンライン会議で発言のタイミングがつかめない」「チームのコミュニケーションがうまくいかない」など、在宅勤務での働きづらさや悩みを中心に対話します。
部下の様子をこまめに確認するためにも、週1回程度のペースで実施するとよいでしょう。在宅勤務でモチベーションが下がっている兆しがあれば、じっくりと話に耳を傾け、早期に課題解決できるようサポートしましょう。
在宅勤務では意識的に雑談の機会を設け、孤独感を軽減することが大切です。在宅勤務は雑談が生まれにくいだけでなく、テキスト中心のコミュニケーションでニュアンスやトーンが分からず、不安を感じる場合もあります。特に異動してきたばかりのメンバーや新入社員、中途社員にとって在宅勤務は不安も多いでしょう。
そこで、始業後5分間をオンラインでの雑談タイムにしたり、オンラインランチ会を開催したりと、メンバーが気軽に会話できる機会を設けましょう。関係構築やリフレッシュの場にもなり、在宅勤務でのモチベーション低下を防止できます。
周囲の仕事の状況が見えにくい在宅勤務では、仕事の全体像の把握も難しくなります。その結果、自分の仕事の意義や役割を見失い、モチベーションが下がってしまうケースも珍しくありません。
こうした在宅勤務でのモチベーション低下を防ぐには、「なぜこの仕事をするのか」「チーム全体でどのような役割を担っているのか」を意識的に部下に伝えることが大切です。節目ごとに繰り返し共有したり、ルーティン業務のように意義を感じにくいタスクについては、組織の目標とどのようにつながっているかを図などで視覚的に示したりすると、理解度と納得感を高められます。
在宅勤務では表情やニュアンスなどから感謝や称賛を伝えることが難しく、些細な会話も発生しにくいため、意識的な言語化が必要です。ポジティブなコミュニケーションが習慣化されるよう、組織として制度やルールを設けるとよいでしょう。具体的には以下のような取り組みが考えられます。
ミーティングで貢献度の高いメンバーを表彰する
チャットではスタンプを利用してこまめに「ありがとう」を伝える
ピアボーナス制度で感謝を可視化する
このように在宅勤務でも日々、感謝や称賛を伝え合うことによって、組織全体のモチベーション低下を防止できます。
在宅勤務のマネジメントで重要なのは、監視するのではなく、部下を信頼して見守る姿勢を持つことです。過度に管理される環境ではモチベーションが下がるため、部下には「成果で評価する」という方針を伝えたうえで、過干渉にならないよう適度な距離を保ちましょう。
たとえば、案件の進捗を上司が逐一チェックするのではなく、「何かあれば朝礼・夕会で報告する」などルールを決めておきます。それ以外の報告や相談は各々のタイミングに任せ、必要なときはサポートします。こうした体制を通して、在宅勤務でも部下の自律性とモチベーションの維持が可能です。

メンバーを信頼して任せようと意識しても、在宅勤務ではどうしても心配になってしまう場面もあるでしょう。ここでは、在宅勤務でメンバーのモチベーションを下げる、よくある失敗例を解説します。
在宅勤務では「メンバーがサボっているのでは」と不安になり、パソコンの操作状況を確認したくなることがあるかもしれません。しかし、こうした監視は逆効果です。
上司や組織から信頼されていないと感じれば、メンバーのモチベーションは大きく低下します。また、在宅勤務の環境で管理されている窮屈さがストレスとなり、モチベーションはさらに下がるでしょう。
在宅勤務では、監視ではなくメンバーを信頼する姿勢が、モチベーション低下を防ぐ重要なポイントになります。
たとえば「朝と夕方の2回、チームミーティングを行なう」と全社共通のルールを設けた場合、外出の少ない部署では問題ないかもしれませんが、営業など外回りの多い部署では業務に支障が出るでしょう。部署や業務内容、メンバーの家庭状況によって最適な在宅勤務の仕方は異なるため、全社一律のルールは不公平感を招き、モチベーション低下の原因になりかねません。
在宅勤務では各部署に裁量を持たせ、状況に応じて柔軟に働き方を設計することで、モチベーション低下を防止できます。
在宅勤務で意外と見落とされてしまうのが、管理職の心身のケアです。リモートマネジメントや部下のメンタルケアなど、在宅勤務では管理職の負担が増えやすい一方、管理職同士で悩みを共有しづらい状況もあります。その結果、部下のモチベーション管理を任される管理職自身が疲弊してしまうケースは少なくありません。
管理職のモチベーションは部下の士気に大きく影響し、ひいては組織の活力をも左右します。組織全体のモチベーション維持のためにも、管理職を支える仕組みや相談しやすい環境づくりが大切です。

オフィスワークと勝手の違う在宅勤務では、闇雲にモチベーション向上に取り組んでも、期待する効果は得られにくいでしょう。施策を段階的に行なうことが在宅勤務のモチベーションアップのポイントになります。
在宅勤務でメンバーのモチベーションを高めるため、まずはコミュニケーション環境を整えましょう。1on1を実施したり、すでに行なっている場合はメンバーの声や効果を踏まえて内容を見直したりします。
さらに在宅勤務では、雑談の場のセッティングもモチベーションアップに効果的です。具体的には「ミーティング冒頭に雑談タイムを設ける」「月1回オンラインランチ会を開く」などがおすすめです。在宅勤務のモチベーション向上施策は、コストをかけず気軽にできるものから始めていきましょう。
次に、在宅勤務におけるモチベーションアップのための制度とルールを整備します。在宅勤務で発生する通信費や光熱費、備品購入費などの金銭的サポートについて、具体的な金額や支給頻度を検討しましょう。あわせて、勤怠管理も在宅勤務に適した方法に見直します。アナログな方法で管理している場合は、ツールの導入も有効です。
制度やルールを検討する際は、運用のしやすさに目が向きがちですが、「在宅勤務のモチベーション向上に寄与するか」を意識することが大切です。
在宅勤務では対面のコミュニケーションが減り、自分がチームに貢献できている実感を得にくくなります。そのため、サンクスカードやピアボーナスといった仕組みを活用しながら、感謝や称賛の気持ちを日常的に伝え合う習慣をつくりましょう。日々の些細な声かけが「役に立っている」という手応えにつながり、メンバーのモチベーション向上を促します。
さらに、ポジティブなやり取りが根づけば社内が明るく活気ある雰囲気に変わり、組織の風土改善も期待できます。

在宅勤務での感謝・称賛の文化づくりには、チームワークアプリ「RECOG(レコグ)」がおすすめです。RECOGは、メンバー同士が「レター」を送り合い、日々の貢献を称え合えるアプリです。レターはチーム内に公開されるため、在宅勤務で見えにくい一人ひとりの働きが可視化され、自分の仕事の意義を実感しやすくなります。また、送信状況をデータで分析できるため、孤立しがちなメンバーの早期発見にも役立ちます。シンプルな操作性で、在宅勤務のモチベーション課題を解決するために有効です。
在宅勤務は柔軟な働き方を実現できる一方、モチベーション管理にはオフィスワークとは異なる工夫が求められます。在宅勤務では部下の働きぶりを直接見られず、モチベーション低下に気づくのが遅れる場合もあるため、早いうちから施策に取り組むことがポイントです。
制度やマネジメントの見直し、コミュニケーション設計、ポジティブな組織文化の醸成といった取り組みを積み重ねれば、在宅勤務でもモチベーションが下がらず、高い成果を生み出す組織づくりが可能です。在宅勤務で部下のモチベーション低下にお悩みの企業は、ぜひご紹介した施策を段階的に実践してみてはいかがでしょうか。
\\編集部おすすめ記事//