リモートワークの普及により、社員同士の物理的な距離が離れ、コミュニケーション不足や評価の不透明さに悩む企業が増えています。そのような中で注目されているのが「サンクスカード」です。
かつては手書きのカードが主流でしたが、現在はデジタルツールを活用することで、リモート環境でもスムーズに感謝を伝え合うことが可能です。本記事では、リモートワークにおけるサンクスカードの効果や、形骸化させないための運用テクニック、具体的な例文を紹介します。

リモートワークでは、オフィスワークに比べて「雑談」や「ちょっとした感謝」を伝える機会が圧倒的に減少します。業務連絡だけのチャットになりがちな環境において、サンクスカードは単なる「お礼」以上の組織開発的な効果を発揮します。
なぜリモートワークにサンクスカードが必要なのか、その理由を5つのポイントで解説します。
リモートワーク最大の課題は、コミュニケーションの質と量の低下です。オフィスにいれば「ありがとう」と声をかけられる場面でも、チャットツールを開いてわざわざ打つほどではないと判断し、感謝の言葉を飲み込んでしまうことは少なくありません。
サンクスカードという「感謝を伝える専用の場」を設けることで、業務連絡以外のポジティブなコミュニケーションが発生します。感謝を受け取った側は嬉しい気持ちになり、返信やスタンプで反応することで会話が生まれ、結果としてチーム全体の空気が柔らかくなります。業務外の接点が増えることで、仕事の相談もしやすい関係性が築かれるでしょう。
オフィスでは「誰が電話対応をしてくれたか」「誰が会議室を片付けてくれたか」が見えましたが、リモートワークでは他者の細かい動きが見えにくくなります。縁の下の力持ちのような貢献が評価されず、モチベーションが低下してしまうのは自然なことかもしれません。
サンクスカードは、こうした目立たない貢献を可視化する役割を果たします。「急な依頼に対応してくれてありがとう」「陰ながらフォローしてくれていたことに気づきました」といったメッセージが組織内で共有されることで、普段スポットライトが当たりにくいメンバーの努力も正当に評価される文化が醸成されます。
心理的安全性とは、チーム内で自分の意見を安心して発言でき、失敗を恐れずに挑戦できる状態を指します。リモートワークでは対面でのコミュニケーションが減るため、「このチームなら自分の意見を言っても大丈夫だろうか」「失敗して責められるのがこわい」という不安感があると、リモート環境での孤立感は深まるばかりです。
互いに感謝や称賛を送り合うサンクスカードの文化は、「自分はここにいていいんだ」「仲間として受け入れられている」という安心感を高めます。否定や批判ではなく、ポジティブなフィードバックが飛び交う環境を作ることで、メンバーは萎縮することなく発言や行動ができるようになり、組織全体のパフォーマンス向上に寄与します。
リモートワークでは、企業のビジョンやバリューを感じる機会が減り、帰属意識が薄れがちです。オフィスに掲示されたスローガンを目にしたり、理念を体現する先輩社員の姿を間近で見たりする機会がなくなるため、ただ目の前の業務をこなすだけになりかねません。
サンクスカードを企業理念と紐づけて運用することで、理念の浸透を促進できます。たとえば「チャレンジ精神」を大切にする企業であれば、「新しい提案にチャレンジしてくれてありがとう」といったメッセージを送る
ことで、理念に沿った行動が自然と称賛される文化が形成されます。送る側も受け取る側も、理念を意識する機会が増え、離れていても同じ価値観を共有する一体感が生まれます。
リモートワークは、どうしても「自分の部署」「自分のチーム」という狭い範囲でのやり取りに終始しやすく、組織のサイロ化を招きがちです。隣の部署が何をしているかわからない状態は、会社全体の連携を弱めます。
サンクスカードは部門の壁を越えたコミュニケーションのきっかけを生み出します。他部門のメンバーのサンクスカードを見たり、プロジェクトで協力してくれた別チームに感謝を贈ったりすることで、横のつながりが強化されます。サンクスカードのやり取りが組織全体で可視化されれば、「こんな協力関係があるのか」という気づきが生まれ、新たな連携のきっかけにもなります。

「感謝を伝えたいけれど、何を書けばいいかわからない」「いつも同じ文章になってしまう」という悩みは、サンクスカード運用の壁になります。ここでは、リモートワーク特有のシチュエーションに合わせた、すぐに使える具体的な例文を紹介します。これらを参考に、自分なりの言葉を加えてみてください。
リモートワークでは、直接顔が見えない分、テキストでの迅速な対応や、オンライン会議でのフォローが大きな助けになります。具体的な行動に触れて感謝を伝えましょう。
〇〇の件、チャットでの素早い返信ありがとうございました。おかげでクライアントへの回答がスムーズにでき、大変助かりました。
急なオンライン会議の依頼にもかかわらず、快く調整してくれてありがとう。〇〇さんの柔軟な対応にいつも救われています
共有資料の不備に気づいて修正してくれてありがとう!細かい部分まで見てくれている安心感があり、本当に頼りにしています。
急なデータ集計の依頼に迅速に対応していただき、ありがとうございました。おかげで期限内にレポートを提出できました。
いつも質問にすぐ返信してくれてありがとうございます。リモートだと聞きづらいこともあるのですが、〇〇さんのおかげで安心して仕事ができています。
オンライン会議では発言のタイミングが難しかったり、テキストではニュアンスが伝わりにくかったりします。積極的に発言や提案をしてくれたこと自体を称賛しましょう。
今日のZoom会議での〇〇さんの意見、視点が鋭くてハッとさせられました。あの発言のおかげで議論が深まりましたね。
業務フローの改善案、素晴らしいですね!リモートでの不便さを解消するナイスアイデアだと思います。ぜひ進めていきましょう。
新しいツールの導入提案、ありがとうございます。課題を的確に捉えた提案で、さすがだなと思いました。
先日のブレストでの発言、目からウロコでした。違う視点からの意見がプロジェクトに新しい風を吹き込んでくれました。
顧客向けの新サービス案、素晴らしいですね。ユーザー目線で考えられていて、〇〇さんの洞察力に感心しました。
チームの雰囲気を良くしてくれる気遣いに対するメッセージです。場の空気を和ませたり、体調を気遣ったりする行動は、チームのメンタルヘルスを保つ上で非常に重要です。
いつもチャットに明るいスタンプで反応してくれてありがとう!〇〇さんのリアクションがあるだけで、チームの雰囲気が明るくなります。
朝会の冒頭で面白い話をしてくれてありがとう。リモートで静かになりがちですが、あのおかげでリラックスして会議に入れました。
昨日は体調を気遣うメッセージをくれてありがとう。離れて働いていても、気にかけてくれている仲間がいると思うと心強いです!
Slackでの励ましのスタンプ、さりげないですがとても嬉しかったです。見てくれている人がいると思うと頑張れます。
オンライン飲み会の企画、ありがとうございました。リモートだと交流の機会が少ないので、とても楽しい時間でした。

サンクスカード導入当初は盛り上がっても、数ヶ月経つと投稿数が減り、形骸化してしまうケースは珍しくありません。リモートワーク環境下で、継続的に感謝の文化を定着させるためには、運用面での工夫が必要です。ここでは、制度を長く活発に続けるための3つの重要なポイントを解説します。
新しい文化を根付かせるとき、最も影響力があるのはリーダー層の行動です。上司が全くサンクスカードを送っていないのに、部下に「送り合おう」と推奨しても、やらされ感が強まるだけで定着しません。
まずはマネージャーやリーダーが、朝一番や業務終了時に1日1通送ることをルーティンにしましょう。「上司も見てくれている」「些細なことでも褒めていいんだ」という空気が醸成されれば、メンバーも安心して投稿できるようになります。また、部下から送られたカードには必ずリアクションを返すなど、リーダーがハブ的存在になる意識を持つことが大切です。
サンクスカードが続かない大きな原因は、「立派なことを書かなければならない」という心理的なプレッシャーです。感動的な長文や特別な成果だけに限定してしまうと、サンクスカードを贈る機会は激減します。
運用当初は特に「質より量」を重視しましょう。「コピーとってくれてありがとう」「元気な挨拶ありがとう」といった、1行程度のカジュアルな内容でOKというルールを明確にします。スタンプ一つで送れる機能があるツールを選んだり、テンプレートを用意したりして、投稿にかかる時間的・心理的コストを極限まで下げることが、継続への近道です。
ツール上で送り合って終わりにするのではなく、全社員が集まる場でサンクスカードにスポットライトを当てる機会を作りましょう。称賛される喜びを共有することで、制度への関心を持続させることができます。
たとえば、月一回のオンライン全体会議で「今月最も多くの感謝を集めた人」や「心温まるメッセージ」を表彰したり、社内報で紹介したりするのが効果的です。また、送った数や貰った数に応じて少額のインセンティブ(ポイントや社内通貨など)を付与する「ピアボーナス」の仕組みと連動させるのも、楽しみながら継続させるための有効な手段です。

リモートワークでサンクスカードを導入するなら、PCやスマートフォンから手軽に利用できるツールの活用が必須です。中でもおすすめなのが、チームワークの向上に特化したアプリ「RECOG(レコグ)」です。
RECOGは、社内SNSのような感覚で、誰でも直感的に「レター(サンクスカード)」を送り合うことができます。
レターにはポイントを付与することができ、ポイントが貯まると社内通貨としてギフトに交換できるなど、楽しく続けられる仕掛けが満載です。また、レターには会社の行動指針(バリュー)を選択して紐づけることができます。理念に基づいた行動を自然と称賛し合えるようになります。
SlackやChatworkなどのビジネスチャットツールとも連携できるため、日常の業務フローを崩さずに導入できる点も、リモートワーク企業に支持されている理由です。
詳細については以下の資料で詳しく紹介しているので、ぜひダウンロードしてみてください。
リモートワークにおけるサンクスカードは、単なる福利厚生ではなく、組織の「コミュニケーション」「心理的安全性」「理念浸透」を支える重要な経営戦略の一つです。 「見えない貢献」を可視化し、離れていても互いを認め合う文化を作ることで、社員のエンゲージメントは確実に向上します。まずはリーダーが率先し、ハードルを下げて「小さなありがとう」を送り合うことから始めてみてはいかがでしょうか。ポジティブな連鎖が、強い組織を作る第一歩となるでしょう。
まとめ