本記事では、称賛文化が注目される背景から、具体的な醸成ステップ、失敗しないためのポイント、おすすめツールまでをわかりやすく解説します。

「称賛文化」への関心は年々高まっており、多くの企業が組織改革の一環として導入を進めています。しかし、そもそも称賛文化とは何を指すのでしょうか。ここでは言葉の定義と、注目を集めている背景について解説します。
称賛文化とは、従業員同士が日常的に感謝や承認、称賛を伝え合う組織風土のことです。上司から部下への一方通行の「褒め」にとどまらず、同僚間や部下から上司への双方向的なポジティブコミュニケーションが自然に行われる状態を指します。
「褒める文化」「感謝文化」「承認文化」といった類似の概念も存在しますが、いずれも従業員の良い行動や貢献に光を当てるという点では共通しています。称賛文化は、これらを包括する広い概念として捉えるとよいでしょう。
称賛文化が多くの企業で注目を集めている背景には、大きく3つの要因があります。
・日本企業のエンゲージメントの低さ
国際的な調査において、日本の従業員エンゲージメントは世界の中でも低い水準にあると繰り返し指摘されています。仕事に対する熱意や主体性を持てていない社員が多い現状は、企業の生産性や競争力に深刻な影響を与えかねません。こうした危機感が、称賛文化への関心を高める大きなきっかけとなりました。
・人的資本経営への注目度の高まり
近年、上場企業を中心に人的資本情報の開示が求められるようになり、従業員エンゲージメントを経営指標として重視する動きが広がっています。エンゲージメントを「測る」だけでなく「高める」ための具体的な施策として、称賛文化の醸成に取り組む企業が増えているのです。
・テレワーク・ハイブリッド勤務によるコミュニケーション不足
リモートワークの普及に伴い、社員同士のインフォーマルなコミュニケーションが減少した職場は少なくありません。日常のちょっとした声かけや雑談が失われた結果、孤独感を抱える社員も増えています。感謝や称賛を意図的に伝え合う仕組みは、こうした環境下でのコミュニケーション不足を補う手段として有効でしょう。

称賛文化は、導入する企業にさまざまなポジティブな変化をもたらします。ここでは、心理学の知見も交えながら、代表的な5つのメリットを紹介します。
称賛を受けた社員は「自分の仕事が認められている」と感じ、業務への意欲が自然と高まります。これは心理学の「自己決定理論」で説明される「有能感」や「関係性」の充足と深く関わる現象です。
金銭や評価といった外発的な報酬に頼らず、内面から湧き上がる意欲(内発的動機づけ)を引き出せる点が称賛文化の大きな強みといえるでしょう。称賛によって得られるやりがいは外発的報酬よりも長続きしやすく、持続的なパフォーマンス向上につながります。
自分の努力や貢献が日常的に認められる環境にいる社員は、「この会社で働き続けたい」という帰属意識を持ちやすくなります。反対に、どれだけ成果を出しても誰にも気づかれない職場では、社員は転職を考えるようになるのが自然な流れです。
称賛文化によってエンゲージメントが高まれば、離職率の低下が期待できます。採用・教育コストの削減にもつながるため、特に人材確保が課題の企業にとっては大きなメリットとなるでしょう。
称賛のやり取りは、心理学で「好意の返報性」と呼ばれる効果を生みます。誰かから認められた人は、相手にも好意を返したいと感じるようになり、その積み重ねが組織全体の信頼関係を厚くしていくのです。
上下関係だけでなく、同僚同士の横のつながりが強まる点も見逃せません。マネージャーだけが褒める組織では、マネージャーと部下の関係は改善されても、メンバー同士の関係には直接プラスに働きにくいためです。全方位的な称賛が行われてこそ、チームとしての一体感が生まれます。
称賛文化の効果は、社員の心理面にとどまりません。モチベーションやエンゲージメントが高い社員は業務への集中力が増し、自発的に改善策を考えるようになります。結果として、チーム全体の生産性が底上げされ、業績向上にもつながっていくでしょう。
また、称賛を通じて「良い行動」が組織内で共有されると、他の社員にとっても行動のお手本となります。称賛が組織の成功パターンを広める役割を果たし、全体の業務品質を高める効果も期待できます。
称賛が日常的に行われている職場では、「発言しても否定されない」「挑戦しても失敗を責められない」という安心感が育まれます。これは近年多くの企業が重視している「心理的安全性」に通じる概念です。
社員一人ひとりの心理的ハードルが下がれば、新しいアイデアの提案や部門間の積極的な連携が生まれやすくなります。イノベーションの土壌づくりという観点からも、称賛文化の醸成は有効な施策といえるでしょう。

称賛文化のメリットを理解する一方で、文化が欠如した組織にどのようなリスクがあるのかも押さえておく必要があります。ここでは、称賛が不足した職場で起こりがちな3つの問題を取り上げます。
自分の努力や成果が正当に認められない環境では、社員の帰属意識は徐々に薄れていきます。とくに成長意欲の高い優秀な人材ほど、自身を評価してくれる職場を求めて転職を検討する傾向が顕著です。
人材獲得競争が激しさを増す昨今、称賛文化の不在は「静かな退職(Quiet Quitting)」や実際の離職リスクを高める要因となりかねません。
ダメ出しや指摘ばかりの職場では、社員は萎縮しがちです。「どうせ認めてもらえない」という無力感が蔓延すると、業務に対する主体性が失われ、指示待ちの姿勢が組織全体に広がっていきます。
こうした状態はモチベーションの低下だけでなく、業務効率や品質の低下にも直結するため、早急な対処が求められるでしょう。
称賛が行われない組織では、社員がリスクを取って新しい取り組みに挑戦するインセンティブがありません。失敗を恐れる風土が定着すると、改善提案や創造的なアイデアが出にくくなり、市場の変化に対応する力が弱まります。結果として、同業他社に後れを取る事態にもつながるのです。

称賛文化は自然発生するものではなく、意図的に設計し、段階的に浸透させていくものです。ここでは、実際に多くの企業で取り入れられている醸成の5ステップを紹介します。
称賛文化の醸成において最も重要なのは、経営層やマネージャーがまず自ら実践することです。組織風土を変えるうえで、トップの行動が持つ影響力は非常に大きいといえます。
これまで称賛の習慣がなかった組織では、「しないことが当たり前」という慣性が働いています。この慣性を打ち破るには、リーダーが率先して行動で示すほかありません。日報のフィードバックや朝礼での一言など、日々の小さなアクションから始めてみるとよいでしょう。
「何を褒めればいいかわからない」「こんな小さなことで褒めていいのか」という戸惑いは、称賛文化の導入初期に多く見られる声です。この課題を解消するためには、称賛の基準をあらかじめ設けておく必要があります。
ポイントは、基準を「低く」設定すること。売上目標の達成など大きな成果だけを対象にすると、称賛の機会は限られてしまいます。「チームメンバーをサポートした」「ミーティングで積極的に意見を出した」「新しい方法にチャレンジした」など、プロセスや行動も称賛の対象にすれば、日常的にポジティブなやり取りが生まれやすくなるでしょう。
個人間のクローズドなやり取りで終わらせず、称賛を「見える化」するのが定着への近道です。具体的には、以下のような仕組みが効果的です。
称賛がオープンな場で共有されると、受け手だけでなく周囲の社員にもよい影響を与えます。「あの人がこんな貢献をしていたのか」と気づくきっかけにもなり、部門間の壁を越えた相互理解が進むでしょう。
全社に一斉に働きかけるよりも、まずチーム内で影響力の大きい1〜2名のメンバーに協力を仰ぐほうが効果的です。後輩指導を担う中堅社員やムードメーカー的存在に目的と意図を共有し、率先して称賛を行ってもらえば、周囲にも自然と広がっていきます。
巻き込む人数を絞るのもコツの一つ。人数が多すぎると責任が分散し、誰もやらなくなるリスクがあります。少数のキーパーソンを起点にするほうが、初動のエネルギーを集中させられるでしょう。
称賛文化の醸成はゴールのないプロセスであり、導入して終わりではありません。定期的に以下のような観点で振り返り、改善を重ねていくことが大切です。
数値を追うだけでなく、「称賛の質」にも着目しましょう。具体性のある称賛が増えているか、特定の人に偏っていないかなど、定性的な観点でのチェックも欠かせません。

称賛文化の導入は多くのメリットがある一方で、やり方を誤ると逆効果になることもあります。よくある失敗パターンと対策を確認しておきましょう。
「制度だから仕方なくやっている」という「やらされ感」は、称賛文化の最大の敵です。義務的にメッセージを送っても、受け取る側には響きません。むしろ、形骸化した称賛は不信感を生む原因にもなりえます。
対策としては、称賛の際に「具体的な行動」を明記するルールを設けるのが効果的でしょう。たとえば「○○さん、ありがとう」ではなく、「○○さん、先日のプレゼン資料で△△の分析を追加してくれたおかげで、クライアントへの提案がスムーズに進みました」のように、何が良かったのかを具体的に伝えると称賛の質が高まります。
営業成績のように数字で見えやすい貢献にだけ称賛が集まり、バックオフィスやサポート業務に携わる社員が埋もれてしまうケースは珍しくありません。称賛が特定のメンバーに偏ると、「自分は認められていない」と感じる社員が増え、組織内に分断が生じる恐れもあります。
称賛の対象をチームへの貢献や日常の小さな気配りにまで広げる仕組みが重要です。「縁の下の力持ち」にもスポットが当たるよう、マネージャーが意識的に目を配るとよいでしょう。
称賛文化は一朝一夕で定着するものではありません。「ツールを導入したのに、1ヶ月経っても変化がない」と焦って施策を撤回してしまう企業もありますが、文化の浸透には最低でも3ヶ月〜半年の継続が必要とされています。
短期的な結果にとらわれず、長期的な視点で取り組み続けることが成功の鍵です。定着に時間がかかることを経営層やマネージャーが事前に理解しておけば、途中で挫折するリスクを大きく減らせるでしょう。

称賛文化を効率的に組織に根付かせるには、アナログの取り組みに加えてデジタルツールの活用が有効です。ここでは、称賛文化の醸成に特化したチームワークアプリ「RECOG」を紹介します。
RECOG(レコグ)は、株式会社シンクスマイルが提供するチームワークアプリです。従業員同士が感謝や称賛を「レター」として贈り合う仕組みにより、ポジティブなコミュニケーションを日常に定着させられます。
RECOGが多くの企業に選ばれている理由は、称賛文化を「仕組みとして根付かせる」設計にあります。
1.称賛のやり取りが全社にオープンに共有される
レターのやり取りはタイムラインで全社に可視化されるため、部門を越えた相互理解や一体感の醸成に役立ちます。「この人がこんな貢献をしていたのか」という新たな発見が、部署間連携のきっかけにもなるでしょう。
2.バッジ機能で企業バリューと称賛が紐づく
称賛に企業の行動指針を紐づけるバッジ機能は、文化の浸透とバリューの可視化を同時に実現します。「単に褒め合う」だけでなく、企業として大切にしている価値観が日常の行動に反映されやすくなる点が大きなメリットです。
3.データで称賛の状況を分析・改善できる
称賛の頻度や傾向をデータとして把握できるため、PDCAを回しながら文化の定着度を継続的に高めていけます。感覚頼りの運用から脱却し、客観的な指標に基づいた改善が可能になる点は、称賛文化を長く維持するうえで大きな強みとなるでしょう。
RECOGの詳細は以下の資料で紹介しているので、ぜひダウンロードしてみてください。
称賛文化の醸成は、従業員のモチベーション向上や定着率改善、業績アップなど、組織に多面的なメリットをもたらす施策です。一方で、自然に根付くものではなく、経営層のリーダーシップ、明確な基準設定、可視化の仕組み、キーパーソンの巻き込み、そして継続的な改善という段階を踏んで初めて実現します。
導入初期には「日本人は称賛が苦手」「うちの組織には合わない」といった声が上がることも珍しくありません。しかし、適切なステップとツールの活用によって、称賛文化の定着に成功している企業は確実に増えています。
まずは小さな一歩として、経営層やマネージャーが日々の業務の中で「ありがとう」「助かったよ」と伝えることから始めてみてはいかがでしょうか。より効率的に称賛文化を浸透させたい場合は、RECOGのようなデジタルツールの導入も有効な選択肢です。
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