不動産会社では、営業成績に応じた歩合給やインセンティブ、トップセールスの表彰など、成果に報いる仕組みが広く取り入れられています。その一方で、「契約事務や入居者対応など、営業を支える仕事が報われていない」と感じている経営者や人事担当者も少なくありません。
成果報酬とは異なる角度から従業員の貢献に報いる仕組みとして活用できるのが「ピアボーナス」です。本記事では、不動産会社の評価・報酬の仕組みとピアボーナスの違いを整理したうえで、不動産会社向けの設計例と運用時の注意点、導入事例を紹介します。

不動産会社には、売買や賃貸の仲介営業、賃貸管理、契約事務、リフォームなど、さまざまな職種の従業員が働いています。なかでも営業職の比重が大きいため、評価や報酬も営業成績を軸に設計されることが多い業界です。代表的な仕組みと、それぞれで拾いきれない貢献を確認していきましょう。
不動産営業の報酬制度として代表的なのが、成約件数や売上に応じて支給される歩合給やインセンティブです。成果が収入に直結するため、営業担当者の意欲を高めやすく、会社にとっても人件費を業績に連動させられる仕組みといえます。
ただし、歩合給やインセンティブの対象になるのは、基本的に契約を獲得した営業担当者の成果です。契約に至るまでに書類を整えた事務担当者や、物件の情報を提供した同僚の働きは、報酬の計算には含まれません。
店舗や個人の営業成績をランキングで共有したり、月間・年間のトップセールスを表彰したりする会社も多く見られます。目標に向けて競い合う雰囲気は、営業組織の活力を生み出す要因になるでしょう。
一方で、ランキングや表彰で光が当たるのは、数字を上げた一部の営業担当者に限られがちです。競争意識が強くなりすぎると、顧客や物件情報を抱え込む個人主義に傾き、店舗内の協力が生まれにくくなるおそれもあります。
宅地建物取引士をはじめとする資格の保有者に手当を支給する制度も、不動産会社でよく見られる仕組みです。重要事項の説明など資格者でなければできない業務があるため、資格取得を後押しし、専門性の高い人材を確保する役割を担っています。
ただし、資格手当は資格を保有していることに対する報酬であり、日々の働きぶりを評価するものではありません。資格を持たない事務やパートの従業員が、どれほど業務を支えていても、この仕組みでは報われない構造になっています。
ここまでの仕組みを踏まえると、不動産会社には既存制度ではすくいきれない貢献が数多くあることがわかります。たとえば、急ぎの契約に間に合うよう書類を整える、内見の段取りや鍵の手配を引き受ける、入居者からの問い合わせに丁寧に対応する、反響のあった顧客情報を担当者へ確実に引き継ぐ、店舗を越えて物件情報を共有するといった行動です。
これらは成約や顧客満足を裏側から支えているにもかかわらず、歩合給にも表彰にも資格手当にも反映されにくいのが実情です。営業と事務・管理部門の間に「報われるのは営業だけ」という意識が生まれると、部門間の協力が損なわれ、顧客対応の質にも影響しかねません。

ピアボーナスとは、従業員同士が日々の貢献に対して、感謝や称賛のメッセージに少額のポイントや報酬を添えて贈り合う仕組みです。「peer(仲間)」と「bonus(報酬)」を組み合わせた言葉で、会社が成果を測るのではなく、一緒に働く同僚が評価の担い手になる点に特徴があります。
不動産会社の既存制度とピアボーナスの違いを、一般的な傾向として整理すると次のとおりです。
| 項目 | 歩合給・インセンティブ | ランキング・社内表彰 | 資格手当 | ピアボーナス |
|---|---|---|---|---|
| 評価する人 | 会社(成果で算出) | 会社・経営層 | 会社(資格の有無で判断) | 同僚 |
| 評価のタイミング | 成約ごと・月次 | 月次・年次 | 資格取得時から継続 | 日常的に随時 |
| 主な対象 | 成約件数や売上 | 営業成績の上位者 | 資格の保有者 | 営業を支える行動や助け合い |
| 報酬の規模 | 成果に応じた金額 | 賞金や記念品など | 毎月の定額手当 | 少額のポイント |
既存制度が「成果」や「資格」を基準に報いるのに対し、ピアボーナスは「同僚が気づいた日常の行動」に報いる仕組みです。歩合給の代わりや上乗せではなく、成果報酬ではすくえない貢献を補うものとして位置づけると、既存制度と無理なく併用できます。

ここからは、不動産会社でピアボーナスを導入する際の設計例を項目ごとに紹介します。売買仲介、賃貸仲介、賃貸管理など事業の内容や、店舗数によって最適な形は異なるため、自社に合わせて調整してください。
| 項目 | 設計例 |
|---|---|
| 目的 | 営業を支える仕事と部門間の協力に光を当てる |
| 対象範囲 | 営業職に限らず、事務・管理部門やパートを含む全従業員を基本とする |
| 称賛したい行動 | 営業と事務・管理の連携、物件や顧客の情報共有、丁寧な引き継ぎなど |
| 付与ルール | 毎月一定のポイントを全員に配布し、月内に同僚へ贈る |
| 交換先 | 従業員の意見を取り入れ、日常で使いやすい商品やギフトを選ぶ |
| 既存制度との役割分担 | 成果は歩合給や表彰、成果を支える日常の行動はピアボーナスで評価する |
設計にあたって最初に整理したいのは、ピアボーナスで何を実現するかという目的です。不動産会社の場合、成果報酬では評価されにくい「営業を支える仕事」と「部門や店舗を越えた協力」を称賛の中心に据えると、歩合給との役割の違いが明確になります。「事務と営業の溝をなくす」「情報を抱え込まない組織にする」など、自社の課題と結びつけて言語化しておけば、導入後の振り返りもしやすくなるでしょう。
不動産会社では、営業担当者のほかに、契約事務や賃貸管理、経理などの管理部門、パートの従業員など、さまざまな立場のメンバーが働いています。営業職だけを対象にすると、既存の成果報酬と同じ偏りを生むため、全従業員を対象とする設計が欠かせません。リフォーム工事などを外部の職人に委託している場合は、契約関係も踏まえて対象に含めるかどうかを検討しておきましょう。
成果を競う文化が根付いている会社では、「同僚の何を称賛すればよいのか」と戸惑う従業員も少なくありません。会社として称賛したい行動を、具体的なメッセージ例とあわせて示しておくと、贈る側のハードルが下がります。
たとえば、「急な契約日の変更にもかかわらず、書類をすぐに整えてもらえて助かりました」「他店舗の物件情報を共有してくれたおかげで、お客様に最適な提案ができました」「入居者からの問い合わせを丁寧に引き継いでくれたので、スムーズに対応できました」といった例です。連携、情報共有、引き継ぎの3つの観点で例を示せば、営業成績とは別の軸で称賛が生まれやすくなるはずです。
付与ルールとして、ポイントの配布量、1回あたりの上限、有効期限の3点を決めておきましょう。毎月一定のポイントを全員に配布し、月内に同僚へ贈る形式にすれば、残りのポイントを意識して周囲の良い行動を探す習慣が生まれます。
成約への貢献度に応じてポイントを増やすような設計は、歩合給との区別を曖昧にするため避けたほうがよいでしょう。ルールは簡潔に始め、利用状況を見ながら配布量や上限を調整していく進め方がおすすめです。
交換先の魅力は、従業員が制度を使い続けるかどうかに影響します。ギフトカードや電子マネー、日用品など、営業職以外の従業員にとっても使いやすいものを、アンケートで意見を聞きながら選ぶとよいでしょう。なお、交換の原資については、ポイントの配布総量と交換レートをもとに月ごとの上限額を試算し、あらかじめ予算に組み込んでおきましょう。
ピアボーナスを導入する際は、歩合給や社内表彰との役割分担を明確にしておくことが大切です。たとえば、成約件数や売上といった成果は歩合給と表彰で、成果を支える日常の行動や部門間の協力はピアボーナスで称賛するという切り分けが考えられます。
ピアボーナスで多く称賛された従業員を、営業成績とは別枠の社内表彰の候補として拾い上げる運用もおすすめです。数字を上げる人と支える人の両方が表彰の場に立てるようになれば、営業と事務・管理部門の間に互いを認め合う関係が育っていきます。
設計が整っていても、営業中心の組織文化や働き方に合った運用でなければ、制度は定着しません。ここでは、不動産会社で運用する際の注意点を紹介します。
不動産の営業担当者は、内見の案内や物件調査、契約手続きなどで外出していることが多く、店舗のPCの前にいる時間は長くありません。移動中や案内の合間にスマートフォンから手軽に贈れるツールを選べば、外出の多い営業担当者も事務担当者に感謝を伝えやすくなります。店舗に戻ってから書く仕組みでは、感謝の気持ちが薄れ、利用も続きにくいでしょう。
歩合給が根付いている会社では、ピアボーナスも「成果に応じてもらえる報酬」と受け止められることがあります。そう誤解されると、営業成績の高い人に称賛を集めたり、ポイントを得るために贈り合ったりする動きにつながりかねません。導入時の説明会などで、ピアボーナスは成果報酬ではなく、日常の協力や支え合いに感謝を伝えるための仕組みであることを繰り返し伝えておきましょう。
運用を始めると、社内で目立つ営業成績の上位者に称賛が集まりやすくなります。利用状況を定期的に確認し、ポイントを受け取る機会が少ない部門や従業員がいれば、管理職がその働きぶりを社内で紹介するなどの工夫が求められます。支える側の仕事に目が向く仕組みを意識的につくることが、制度を生かすうえで欠かせません。
複数の店舗を展開する会社では、店舗ごとの業績を競うあまり、店舗間の協力が生まれにくいことがあります。他店舗への物件紹介や顧客の引き継ぎなど、店舗を越えた協力を称賛の例として示し、店舗間のやり取りを後押ししましょう。経営層や店長が率先して他店舗の従業員に感謝を贈れば、組織全体で支え合う雰囲気が広がっていきます。
交換先に商品券や電子マネーといった換金性の高いものを含めると、支給の条件しだいで給与所得として課税対象となる場合があります。扱いはポイントの付与条件や交換先、換金性などの要素で変わり、一律には判断できません。歩合給やインセンティブとの関係もあわせて、制度設計の段階で税理士や所轄の税務署に相談しておくと安心です。

不動産会社でピアボーナスを導入するなら、チームワークアプリ「RECOG(レコグ)」がおすすめです。RECOGは、感謝や称賛の気持ちをメッセージとポイントで贈り合える「レター機能」を中心としたツールで、累計2,000社以上の導入実績があります。
スマートフォンとPCの両方から利用できるため、外出の多い営業担当者も、内見の合間や移動中に手軽に贈れるのが特長です。送受信状況の分析機能を使えば、店舗や部門ごとの利用状況や称賛の偏りを把握でき、付与ルールや称賛したい行動の見直しにも役立てられます。
機能や活用シーン、料金をまとめた資料を無料でご用意しました。不動産会社の評価制度の見直しやピアボーナスの導入に関心をお持ちの方は、ぜひ資料をご請求ください。
最後に、RECOGを活用してピアボーナスを運用している企業の事例を紹介します。
愛媛県松山市で不動産事業をはじめ、フィットネスや飲食、福祉など多業種のグループ企業を展開する三福グループでは、働く時間や業務内容の異なる従業員同士のつながりが希薄になりやすいことが課題でした。2020年にRECOGを導入し、声かけやキャンペーンを重ねながら、グループ全体への浸透を進めています。
利用率が大きく向上したきっかけは、2024年夏ごろに始めた「称賛給制度」です。商品券などに交換できるポイントをレターにつけられるようにしたことで、自発的に利用する従業員が増えたといいます。月次の利用レポートをもとにした個別の声かけや、年間の称賛レベルに応じた表彰も行なっており、新卒採用の面接で称賛の文化を伝えることが、入社後のミスマッチ防止にもつながっているそうです。
不動産会社の歩合給やインセンティブ、営業成績の表彰、資格手当は、成果や専門性に報いるうえで欠かせない仕組みです。一方で、契約事務や入居者対応、物件情報の共有といった営業を支える日々の行動は、既存制度だけでは十分に評価できません。
ピアボーナスは、成果報酬とは異なる角度から、同僚が気づいた日常の貢献に少額のポイントで報いる仕組みです。目的や対象範囲、称賛したい行動、付与ルール、交換先、既存制度との役割分担を整理して導入すれば、数字を上げる人と支える人の双方が報われる組織に近づけるでしょう。チームワークアプリ「RECOG」を活用し、営業と事務・管理部門が互いを認め合える評価の仕組みづくりを進めてみてはいかがでしょうか。
\\編集部おすすめ記事//