苦手意識は、フィードバックを「する側」にも「受ける側」にも生じます。うまく扱えないまま放置すると、従業員の成長機会が失われ、チームの信頼関係が損なわれることも少なくありません。
本記事では、する側・受ける側それぞれが苦手に感じる原因を整理したうえで、今日から実践できる克服のコツを紹介します。さらに、組織として苦手意識を和らげる仕組みづくりの視点にも触れていきます。

フィードバックに対して「苦痛」「気が重い」と感じる人は、管理職にも若手にも一定数存在します。まずは、フィードバックの基本と苦手意識の広がりを確認していきましょう。
フィードバックとは、相手の行動や成果に対して評価や気づきを伝え、成長や改善を促すコミュニケーションのことです。語源は「feed(与える)」と「back(戻す)」の組み合わせで、もともとは電気工学の用語でした。
ビジネスシーンでは、上司から部下への指導や1on1、評価面談などで用いられます。改善点を指摘する「ネガティブフィードバック」と、良い点を伝える「ポジティブフィードバック」の2種類があり、どちらも成長には不可欠な要素です。
苦手意識は片方だけに生まれるものではありません。する側は「人間関係を壊さないか」と悩み、受ける側は「否定されたように感じる」と身構えます。
管理職を対象にした調査では、約4割以上が否定的なフィードバックに強いストレスを感じるとされ、多くは相手を傷つけることへの恐怖に根ざしているといわれています。一方、受ける側でも「解釈が難しい」「自己評価とのギャップに落ち込む」といった声が多く聞かれます。
フィードバックを避け続けると、問題は悪化していきます。業務上の改善点が伝わらないため、従業員は成長の機会を失い、同じミスを繰り返してしまうのです。
また、率直な対話が不足する職場では信頼関係が希薄になり、エンゲージメント低下や離職率の上昇にもつながります。評価面談のタイミングで突然ネガティブな内容を告げられた従業員は、「なぜもっと早く言ってくれなかったのか」と不満を募らせがちです。
苦手だからこそ早めに向き合うことが、結果的に自分にとってもチームにとっても負担を減らす近道になります。

管理職やリーダーがフィードバックを苦手に感じる背景には、いくつかの典型的な要因があります。原因を理解することは、克服への第一歩です。
もっとも多い原因が、相手との関係性を損なうことへの恐れです。「こんなことを言ったら嫌われるのではないか」「今の雰囲気が悪くなるかもしれない」と想像してしまい、言葉を飲み込んでしまうケースは少なくありません。
しかし、実際にフィードバックをしてみると、相手は感謝してくれたり、そもそもそれほど気にしていなかったりすることも多いのです。不安の多くは、頭の中で膨らんだ憶測にすぎません。
近年はハラスメントへの意識が高まり、指摘そのものをためらう管理職が増えています。愛あるダメ出しであっても、伝え方を誤れば「威圧的」「人格否定」と受け取られかねません。
このリスクを避けるため、管理職が当たり障りのない言葉しか発しなくなると、結果として部下の成長が止まってしまいます。
「厳しいことを言ったら辞めてしまうかもしれない」という心配も、フィードバックを躊躇させる大きな要因です。実際に、率直すぎる物言いによって離職が続いたという経験談は少なくありません。
ただし、フィードバックを「しない」ことこそが信頼を損ね、離職率を押し上げる可能性もあります。伝え方の問題であって、伝えること自体を避けるべきではないでしょう。
感覚的にフィードバックを行なっていると、「結局何が言いたいのか伝わらない」「ただのダメ出しになっている」といった状態に陥りがちです。構造化された伝え方を身につけていないと、どれほど相手を思って伝えても誤解を招きます。
後述するSBIモデルやDESC法などのフレームワークを知らないまま、場当たり的に伝えているケースも多く見られます。
普段の関係性が希薄だと、どれだけ丁寧に伝えてもフィードバックは届きにくいものです。日常的なコミュニケーションが乏しい相手から急に改善点を指摘されても、受け手は素直に受け止めづらいでしょう。
信頼関係という土台がないところに、いきなり技術論だけを載せても機能しないのです。

次に、フィードバックを受け取る側の視点を見ていきます。受ける側の苦手意識を理解できれば、する側の配慮も一段と洗練されていきます。
フィードバックは本来、行動や成果物に対する意見です。しかし、受け取る側は「自分そのものを否定された」と感じてしまいがちです。特に真面目で責任感の強い人ほど、指摘を自分の存在への評価と結びつけやすい傾向にあります。
本来、業務への評価と人格への評価は別物です。その切り分けができないまま受け取ると、必要以上に落ち込んでしまいます。
自己肯定感が低い人は、フィードバックをネガティブな評価として過剰に受け止めてしまうことがあります。業務をきちんと遂行していても、「自分がダメだからだ」と事実でないことで自分を責めてしまうのです。
フィードバックはあくまでその場の一意見であり、自分の価値を決定づけるものではありません。しかし、その感覚を持てるまでに時間がかかる人も多くいます。
フィードバックの送り手が上司や先輩の場合、受け手は「自分には実力が足りない」と比較して落ち込むこともあります。キャリアや役職の違いがあるだけで、相手の言葉を絶対視してしまうのです。
経験豊富な人の意見が常に正しいとは限りません。鵜呑みにするのではなく、冷静に受け止める姿勢が大切です。

伝え方を体系化すれば、フィードバックの苦手意識は大幅に軽くなります。ここでは実践的な5つのコツを紹介します。
SBIモデルは、「Situation(状況)」「Behavior(行動)」「Impact(影響)」の順で伝えるフレームワークです。主観ではなく事実ベースで伝えられるため、相手も納得しやすくなります。
たとえば「昨日の会議で(状況)、資料の説明が早口だったため(行動)、新入メンバーが質問しづらそうだった(影響)」といった構成です。主語を「自分」や「周囲」にすることにより、人格への攻撃になりにくい点が特徴といえます。
ポジティブな内容で改善点を挟むサンドイッチ型は、相手の防衛反応を和らげる定番の手法です。「資料の構成はわかりやすかった」→「ただグラフの配置に改善の余地がある」→「この部分を整えるとさらに説得力が増す」といった流れで伝えます。
ただし、ポジティブな部分が形式的だと相手に見抜かれます。本当に良かった点を具体的に伝えることが前提です。
単に「ここを直して」と伝えるだけでは、受け手は何を学べば良いのかわかりません。「自分ならこう考える」「なぜ自分はこう感じたのか」という理由まで添えると、フィードバックの質が一段と高まります。
受け手は自分の思考プロセスとのギャップを知ることで、次回から自走できるようになるでしょう。
ネガティブフィードバックばかりだと、関係性は疲弊していきます。日頃から良い点を具体的に伝える習慣があれば、いざ改善点を伝えるときにも相手は素直に受け取ってくれるでしょう。
「褒め慣れていない」と感じる管理職ほど、意識的に称賛の言葉を増やすことが効果的です。
フィードバックは一方通行ではありません。伝えたあとに「私や会社がもっと良くなるために意見をください」と問いかけると、双方向の信頼関係が生まれます。
自分もフィードバックを受ける姿勢を見せることで、相手の抵抗感は大きく下がります。

受ける側にも、苦手意識を和らげる工夫があります。フィードバックを成長の糧に変える視点を身につけましょう。
ネガティブなフィードバックを受けても、それは業務や行動への評価であって、自分自身が否定されたわけではありません。この切り分けができると、落ち込みの深さは大きく変わります。
「自分はダメだ」ではなく「このやり方を改善しよう」と受け止め直す習慣が、前向きな成長につながります。
フィードバックはある特定の人の一つの意見であり、必ずしも事実や正解とは限りません。内容をすべて真正面から受け止める必要はないのです。
参考にすべき部分と、自分の判断で取捨選択する部分を分ける視点を持ちましょう。上司の意見が常に正しいとは限らないという前提が、健全な受け止め方につながります。
メンタルが弱っているときにネガティブなフィードバックを受けると、必要以上に落ち込んでしまいがちです。そんなときは、内容を一旦保留して、気持ちが落ち着いてから振り返るのも一つの方法です。
ネガティブな思考が連鎖しやすいタイミングで無理に向き合う必要はありません。自分のコンディションを尊重することも、フィードバックを生かす知恵の一つといえるでしょう。

個人のスキルや心がけだけでは、フィードバックへの苦手意識は解消しきれません。組織全体で苦手意識を和らげる土壌づくりも重要です。
普段から「ありがとう」「助かったよ」といった感謝や称賛が飛び交う職場では、多少の耳の痛い話も受け入れやすくなります。信頼の貯金があるからです。
逆に、普段ほとんど言葉を交わさない関係で改善点だけを伝えられても、素直に受け取るのは難しいものです。日常のポジティブコミュニケーションが、フィードバックの受容性を底上げします。
感謝を伝える文化を仕組み化する方法として、サンクスカードやピアボーナスが注目されています。従業員同士が気軽に感謝を送り合える環境があると、職場の心理的安全性が高まり、率直なフィードバックも交わしやすくなるでしょう。
RECOGは、従業員同士が感謝や称賛をレター形式で贈り合えるチームワークアプリです。2,000を超える組織で導入されており、部署を越えた感謝の可視化によって心理的安全性の高い職場づくりに貢献しています。
日常的にポジティブなコミュニケーションが交わされる土台があれば、フィードバックへの苦手意識は自然に和らいでいきます。称賛文化を仕組みとして定着させたい方は、RECOGの導入を検討してみてはいかがでしょうか。機能や料金、導入事例をまとめた資料を無料で配布していますので、ぜひ資料をご請求のうえご確認ください。
フィードバックが苦手と感じるのは、する側も受ける側も自然な感情です。「自分はメンタルが弱いから」と自分を責める必要はありません。
する側はフレームワークや伝え方の工夫で苦手意識を大きく軽減でき、受ける側は受け止め方のマインドセットで落ち込みを和らげられます。さらに、普段から感謝や称賛が交わされる組織文化があれば、フィードバックはもっとスムーズに機能していくはずです。
個人のスキルと組織の仕組み、その両輪で取り組むことが、フィードバックの苦手意識を乗り越える最短ルートといえるでしょう。まずは小さな「ありがとう」から、職場に変化の種を蒔いてみませんか。
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