本記事では、働きがい改革の定義から働き方改革との違い、企業が得られるメリット、すぐに実践できる具体的な施策までを網羅的に解説します。「従業員の働きがいをどう高めればいいのかわからない」という方は、ぜひ最後までご覧ください。

2019年に本格施行された「働き方改革」に続き、近年は「働きがい改革」に取り組む企業が増えています。働きやすさを整備するだけでは、従業員の定着や意欲向上に限界があると気づいた企業が、次のステージとして「働きがい」に注目しているのです。ここでは、働きがい改革の定義と、押さえておくべき基本的な考え方を確認しましょう。
働きがいとは、従業員が仕事に対して主体的に取り組む意欲やエネルギーの源泉を指します。モチベーションには、報酬や昇進といった外部からの刺激で生まれる「外発的モチベーション」と、仕事そのものへの興味や達成感から湧き上がる「内発的モチベーション」の2種類があります。
外発的モチベーションは即効性がある反面、効果が持続しにくいという特徴を持っています。一方、内発的モチベーションは自分自身の意思が原動力となるため、長期にわたって維持されやすいでしょう。働きがい改革では、この内発的モチベーションをいかに高めるかが重要なテーマとなります。
働きがい改革が注目される最大の理由は、労働市場の構造変化にあります。少子高齢化による人手不足が深刻化する中、優秀な人材の獲得競争は一層激しくなりました。かつては給与や雇用の安定が定着の決め手でしたが、現在は「やりがい」や「自己成長の機会」を重視する人が増加しています。
さらに、2023年3月期から上場企業に義務化された人的資本情報の開示も、働きがい改革を後押しする要因の一つです。離職率や育成投資額などを外部に公表する必要が生じたため、企業は従業員が長期的に活躍できる環境づくりを経営課題として捉えるようになりました。

「働き方改革」と「働きがい改革」は名前こそ似ていますが、目的やアプローチが異なります。両者の違いを正確に理解したうえで、相互補完的に取り組むことが大切です。
アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した「二要因理論」を用いると、両者の違いを明快に整理できます。
二要因理論では、仕事の満足度に影響する要素を「動機付け要因」と「衛生要因」に分類しています。衛生要因とは、給与・労働時間・福利厚生など、不足すると不満を引き起こす要素のこと。一方、動機付け要因は、達成感・承認・成長実感など、満たされると積極的な満足感をもたらす要素を指します。
働き方改革は主に衛生要因の改善、つまり残業削減やテレワーク導入による労働環境の整備などに重きを置いています。対して、働きがい改革は動機付け要因、つまり仕事への誇り・成長機会・公正な評価などの充実がゴールです。
衛生要因が整っていなければ、動機付け要因に取り組んでも効果は限定的になります。たとえば、過度な長時間労働が続く職場では、いくらキャリア支援制度を整備しても活用する余裕がありません。
逆に、残業を減らしても評価基準が不透明なままでは、従業員の納得感は高まらないでしょう。つまり、働き方改革で土台を整え、働きがい改革で意欲を引き出すという段階的なアプローチが最も効果的だといえます。

働きがい改革は単なるトレンドではなく、日本の労働市場が抱える構造的な課題への対応策でもあります。ここでは、最新データを交えながら「今、取り組むべき理由」を解説しましょう。
厚生労働省が公表した「令和6年版 労働経済の分析(労働経済白書)」では、日本の人手不足が「長期かつ粘着的」であると分析されています。需要増加や労働時間短縮、サービス産業化の進展が複合的に影響し、2023年時点で幅広い産業・職業において人手不足が生じている状況です。
また、労働政策研究・研修機構のデータによると、2023年の離職率は15.4%に達しています。人材の流出を防ぐためには、給与や労働条件の改善だけでなく、「この会社で働き続けたい」と思える動機付けが欠かせません。
オープンアップグループが運営する「幸せな仕事総合研究所」の調査(2024年度)によると、働く10〜50代の男女が回答した「仕事に対する幸せ度」の平均は約55点(100点満点)でした。2022年度から比較すると約5ポイント低下しており、80点以上と回答した人も全体の23.6%にとどまっています。
加えて、同調査では「人手不足を感じている」と答えた人が60.6%に上り、改善策としては「人材育成・スキルアップの機会創出」が40.3%で最多という結果も出ました。制度や環境の整備に加え、成長の実感を得られる仕組みが求められていることがうかがえます。
出典:オープンアップグループ「2024年度 幸せな仕事に関する実態調査」
2023年3月期決算から、上場企業は有価証券報告書で人的資本に関する情報を開示する義務を負うようになりました。開示項目には離職率や従業員満足度、育成投資額などが含まれるため、「働きがい」の可視化は企業価値にも直結します。
投資家や求職者が人的資本情報を参照して企業を評価する時代において、働きがい改革は経営戦略の一環として位置づけられるようになっています。

働きがい改革に取り組むことで、企業と従業員の双方にさまざまな恩恵が生まれます。主なメリットを4つの観点から整理しました。
従業員に寄り添った職場環境をつくることで、会社に対する信頼や愛着が高まり、従業員満足度が向上します。公正な評価制度やキャリア支援制度を整えれば、従業員は「自分の努力が正当に認められている」と感じやすくなるでしょう。
エンゲージメントが高い状態とは、従業員が仕事に熱意を持ち、自発的に貢献しようとする姿勢を指します。働きがい改革は、このエンゲージメントを組織全体で底上げする有効な手段です。
仕事にやりがいを感じている従業員は、「もっとスキルを伸ばしたい」「この組織に貢献したい」という意欲を持ちやすくなります。厚生労働省の調査でも、働きがいがある職場ほど従業員の定着率が高いという結果が報告されています。
離職率が下がれば、採用・教育コストの削減にもつながるため、経営面でのインパクトは小さくありません。
自分の役割に納得し、成長実感を得られる環境では、従業員は主体的に業務へ取り組む姿勢を強めます。業務効率化のアイデアを自発的に出したり、部署を越えてナレッジを共有したりする動きが生まれ、組織全体の生産性が底上げされるでしょう。
業績が向上すると目に見える成果として返ってくるため、さらに働きがいが高まるという好循環が期待できます。
心理的安全性とは、チームの中で自分の考えや意見を安心して発言できる状態のことです。働きがい改革により、上司・部下間や同僚間の信頼関係が深まると、失敗を恐れず挑戦できる風土が醸成されます。
心理的安全性が高い組織では、活発な議論やイノベーションが生まれやすくなるため、変化の激しい市場環境においても柔軟に対応できるでしょう。

ここからは、働きがい改革を推進するための具体的な施策を5つ紹介します。自社の課題を見極めたうえで、優先順位をつけて取り組んでください。
評価基準が不透明な職場では、いくら成果を出しても従業員の納得感が得られません。昇進・報酬の基準を文書化して全社に公開し、複数人による評価会議を実施するなど、公正性を担保する仕組みを整えましょう。
360度フィードバックや目標管理制度(MBO)を組み合わせれば、上司だけでなく同僚や部下の視点も取り入れた多角的な評価が可能です。
人は、他者から認められることで承認欲求が満たされ、仕事への意欲が高まります。日常業務の中で「ありがとう」「助かったよ」と伝え合う文化が根付いている職場は、従業員の働きがいが大きく向上するでしょう。
紙のサンクスカードでは運用が属人化しやすいため、デジタルツールを活用して称賛を可視化・仕組み化する方法が効果的です。称賛のやり取りがオープンに共有される環境をつくれば、第三者からの承認も得られ、モチベーションがさらに高まります。
社内公募制度やジョブクラフティング(従業員自身が業務内容を主体的に見直す手法)を導入し、個人の強みと業務をマッチングさせましょう。研修制度の充実やキャリア面談の定期実施も、成長実感を得るうえで有効な施策となります。
年齢や勤続年数に関係なくチャレンジの機会を与える「抜擢人事」や「早期昇格」の仕組みも、従業員の意欲を引き出す有力な手段です。
テレワーク・フレックスタイム・時短勤務など、ライフステージに合わせた多様な働き方を認めることで、ワークライフバランスが保たれやすくなります。働きやすさが土台にあってこそ、働きがいが生まれるという点は見落とせません。
ただし、リモートワーク中心の環境では、個人の頑張りや貢献が見えにくくなるリスクもあるため、成果の可視化やオンラインでの交流機会を意識的に設ける必要があります。
部署や役職を越えたコミュニケーションの機会を設けることは、働きがい改革の土台となる施策です。1on1ミーティングの定期実施、社内SNSの導入、チーム横断プロジェクトへの参加などが代表的な方法として挙げられます。
コミュニケーションが活発な組織では、助け合いの文化が根付きやすく、「仲間のために頑張ろう」という連帯感が自然と生まれるでしょう。

働きがい改革を形骸化させず、確実に成果へつなげるためのポイントを押さえておきましょう。
働きがい改革は、人事部門だけで完結するものではありません。経営層が「なぜ働きがい改革に取り組むのか」を自らの言葉で発信し、率先して行動する姿勢が求められます。
成功事例に共通しているのは、トップ自らがビジョンを語り、従業員と対話する場を設けている点です。経営層のコミットメントがあってこそ、現場は安心して新しい取り組みに踏み出せるでしょう。
「働きがい」は目に見えにくい概念であるだけに、定量的な指標を設定して効果を測定する仕組みが欠かせません。エンゲージメントサーベイや従業員満足度調査を定期的に実施し、施策の前後でスコアがどう変化したかを追跡しましょう。
厚生労働省が委託した三菱総合研究所の調査(令和6年度)でも、企業1万社を対象にワークエンゲージメント向上の取り組みの実態や効果を把握するためのアンケートが実施されており、こうした外部データとの比較も参考になります。
出典:三菱総合研究所「企業1万社を対象とした働きがいに関する実態調査の結果を公表」
導入した制度やツールが「最初だけ盛り上がって終わる」というケースは少なくありません。定着させるためには、PDCAサイクルを回して定期的に振り返りと改善を繰り返すことが大切です。
たとえば、称賛ツールを導入した場合は、利用状況のデータを月次で確認し、活用度が下がっている部署には個別フォローを実施するといった運用が効果的です。小さな成功体験を積み重ねながら、組織全体にカルチャーとして浸透させていく姿勢が成功の鍵を握ります。

働きがい改革の施策の中でも、「称賛・感謝文化の醸成」は比較的取り組みやすく、効果を実感しやすい領域です。ここでは、称賛を仕組み化するチームワークアプリ「RECOG」を紹介します。
RECOGは従業員同士の「感謝」「称賛」を通じてコミュニケーションを活性化するアプリです。主な機能として、仲間の良い行動に対して称賛の「レター」を贈る機能があり、贈られたレターは社内全体にシェアされます。メンバー同士の関係性を相関図で可視化できるため、マネジメントや人間関係の早期フォローにも役立つ点が大きな特徴です。
従業員同士のつながりが可視化されることで、リモートワーク環境でも一体感が維持されやすく、部署や拠点を越えたコミュニケーションの促進にも寄与します。レターを通じて相手の良い面に目を向ける習慣が身につくため、接客力や日常のコミュニケーション力の向上にもつながるでしょう。
RECOGの詳細は以下の資料で紹介しているので、ぜひダウンロードしてみてください。
まとめ
働きがい改革とは、従業員の内発的モチベーションを高め、やりがいを持って主体的に働ける組織をつくるための取り組みです。働き方改革で労働環境を整えたうえで、評価制度の見直し・称賛文化の醸成・キャリア支援・柔軟な働き方・社内コミュニケーションの活性化といった施策を組み合わせて推進しましょう。
人手不足の深刻化や仕事への幸福度低下が進む中、働きがい改革は「あれば望ましい施策」ではなく、「経営に不可欠な戦略」へと位置づけが変わりつつあります。まずは従業員の声に耳を傾け、小さな一歩から改革をスタートしてみてはいかがでしょうか。
称賛文化の醸成から働きがい改革に着手するなら、豊富な導入実績を持つチームワークアプリ「RECOG」の活用をぜひご検討ください。
\\編集部おすすめ記事//