そこで注目されているのが「レコグニションプログラム」です。従業員の貢献を日常的に認め、称賛を仕組み化する取り組みとして、導入企業が増えています。
本記事では、レコグニションの基本的な意味から、制度設計の具体的なステップ、失敗を防ぐポイント、効果測定のKPI例、日常運用のリアルなイメージまで、体系的に解説します。「概念はわかったけど、実際にどう始めればいいかわからない」という方にこそ読んでいただきたい内容です。

まずは「レコグニション」という言葉の意味と、混同されやすい用語との違いを整理しておきましょう。
レコグニション(Recognition)は「承認」「認識」を意味する英語です。人事領域では、従業員が取り組んでいる仕事の価値を認め、その活躍を称賛・承認する仕組みを指します。
ポイントは「仕組み化」という点にあります。上司が気まぐれに褒めるのではなく、誰がどんな基準で評価されるのかを制度として整えることが、レコグニションプログラムの本質です。
レコグニションと混同されやすい言葉に「リワード(Reward)」があります。両者の違いを端的に整理すると以下のとおりです。
| レコグニション | リワード | |
|---|---|---|
| 報酬の性質 | 非金銭的(称賛・承認・表彰) | 金銭的(賞与・昇給・インセンティブ) |
| 効果の持続性 | 長期的(帰属意識・文化の醸成) | 短期的(一時的なモチベーション向上) |
| 対象 | 成果だけでなく行動・姿勢・気遣いも | 主に定量的な成果 |
| 主体 | 上司→部下だけでなく、従業員同士も | 主に企業→従業員 |
どちらか一方だけでは不十分であり、両者をバランスよく組み合わせるのが理想的な設計でしょう。
従来のレコグニションは、永年勤続表彰やMVP制度のように「企業が従業員に対して与えるもの」が中心でした。
一方、近年注目を集めているのがソーシャルレコグニションです。これは従業員同士が日常的に感謝や称賛を送り合う仕組みで、上司から部下への一方通行ではなく、全員参加型の承認文化を築けるのが特徴です。
サンクスカードやピアボーナスはソーシャルレコグニションの代表的な手法であり、社内SNSや専用アプリを通じてリアルタイムに称賛を共有する企業も増えています。
レコグニションが重視される背景には、大きく3つの要因があります。
1.金銭報酬だけではエンゲージメントを維持できない
昇給や賞与は一時的な満足感を生みますが、それだけで「この会社のために頑張りたい」という継続的な意欲にはつながりにくいのが実情です。特に若い世代ほど、「自分の仕事が認められている実感」を重視する傾向が強まっています。
2.リモートワークの普及で貢献が見えにくくなった
物理的に離れた環境では、同僚の頑張りや裏方の貢献が目に入りにくくなります。意図的に「見える化」する仕組みがなければ、孤立感やモチベーションの低下を招くリスクがあるでしょう。
3.人的資本開示でエンゲージメント施策の「実行証明」が求められている
2023年3月期以降、有価証券報告書を発行する大手企業にはエンゲージメントを含む人的資本情報の開示が求められています。「何を実施し、どのような効果が出ているか」を示すデータが必要な時代に、レコグニションプログラムの称賛データは有力なエビデンスになり得ます。

レコグニションプログラムを導入すると、企業はどのような恩恵を得られるのでしょうか。代表的な4つのメリットを見ていきましょう。
日常的に「認められている」と感じられる環境は、従業員の帰属意識を大きく高めます。金銭報酬のように一過性ではなく、称賛の積み重ねがじわじわと効いてくるのがレコグニションの特徴です。
「自分の仕事に価値がある」「このチームに必要とされている」と感じられる従業員は、自発的に組織へ貢献しようとする意欲が自然と高まるでしょう。
退職理由として頻繁に挙げられるのが「正当に評価されていない」「職場の人間関係が悪い」といった不満です。レコグニションプログラムは、この2つの課題に同時にアプローチできます。
日々の小さな貢献まで称賛が届く環境では、「見てもらえていない」という不満が生まれにくくなります。結果として、特にエース級の中堅社員の流出防止に効果を発揮するケースが多いのです。
多くの競合記事では語られていませんが、レコグニションの真価は組織のバリュー(行動指針)と称賛の基準を紐づけたときに発揮されます。
たとえば、「挑戦」「チームワーク」「顧客志向」といったバリューをバッジとして設定し、称賛のたびにバッジを選ぶ仕組みにすれば、従業員は日常的にバリューに触れ、どんな行動がバリューに沿っているかを具体的に理解できるようになります。掛け声だけの理念浸透とは、まるで効果が違うはずです。
「管理職の罰ゲーム化」が2025-2026年の人事トレンドワードとして注目されています。承認やフィードバックが上司だけの役割になっていると、管理職に負荷が集中してしまいます。
レコグニションプログラムによって従業員同士が相互に承認し合う文化が根づけば、管理職が一手に担っていた「部下の貢献を見つけ、褒め、モチベーションを維持する」という業務が組織全体で分担されます。結果、管理職が本来注力すべき戦略業務やメンバー育成にリソースを割けるようになるでしょう。

自社にどのタイプが合うかを判断するには、まずレコグニションの種類を理解しておく必要があります。大きく3つに分類できるので、それぞれの特徴を押さえましょう。
年に1〜4回、経営層が主導して実施する公式な表彰です。全社的なインパクトが大きく、「あの舞台に立ちたい」という目標意識を生み出せるのが強み。一方で、頻度が低いため日常的なモチベーション維持には向きません。
毎日〜毎週、従業員全員が参加する日常的な称賛の仕組みです。小さな貢献や裏方の頑張りまで拾えるのがメリットですが、単体ではインパクトが弱く、マンネリ化しやすいリスクもあるでしょう。
最も効果的なのは、インフォーマル型とフォーマル型を組み合わせるアプローチです。
日常的にサンクスレターやピアボーナスで称賛を送り合い、そのデータが蓄積されて月間・年間のランキングや表彰に反映される——こうした設計であれば、日常のモチベーション維持と、大きな節目での達成感を両立できます。
この内容をまとめると以下のようになります。
| フォーマル型 | インフォーマル型 | ハイブリッド型 | |
|---|---|---|---|
| 頻度 | 年1〜4回 | 毎日〜毎週 | 毎日+定期表彰 |
| 主体 | 経営層・人事 | 従業員全員 | 全員+経営層 |
| 拾える貢献 | 大きな成果 | 小さな行動も | 両方 |
| マンネリリスク | 低い | やや高い | 低い |
| 適する規模 | 全規模 | 全規模 | 100名以上推奨 |
ハイブリッド型がおすすめですが、自社の規模や従業員の傾向などに合わせて適切な方法を試してみましょう。

「導入したいが、何から始めればいいかわからない」という方のために、具体的な設計ステップを解説します。抽象論ではなく、すぐに実務へ落とし込める粒度を意識しています。
最初に決めるべきは「なぜレコグニションを導入するのか」の目的です。目的が曖昧なまま始めると、施策が迷走し形骸化の原因となります。
目的の例を挙げてみましょう。
経営会議で合意を得られるレベルまで目的を具体化しておくと、その後の設計判断がブレにくくなります。
レコグニションの効果を最大化するカギは、称賛の基準を自社のバリュー(行動指針)と連動させることです。具体的には、自社のバリューを6〜8個のバッジ(カテゴリ)に分類します。
(例)
称賛を送る際にバッジを選ぶ仕組みにすれば、従業員は「どんな行動がバリューに沿っているか」を繰り返し考えるようになります。これが日常レベルでのバリュー浸透につながるのです。
制度の骨格が決まったら、日常運用のルールを設計しましょう。ここで重要なのは「義務化しすぎない」と「放任しすぎない」のバランスです。
検討すべき項目は以下のとおりです。
運用ルールを明確にしておくことで、従業員は「何で評価されるのか」「どう運用すべきか」が把握できるためスムーズに定着できます。
制度の成否を左右する最大の要因は、経営層が率先して使うかどうかです。
社長や役員が最初のサンクスレターを送り、朝礼や全社ミーティングでレターの内容を紹介する。たったこれだけで「経営層も本気なんだ」というメッセージが全社に伝わります。
さらに、各部署に1〜2名の推進メンバー(アンバサダー)を配置すると、現場レベルでの定着が加速するでしょう。アンバサダーの役割は、自らレターを積極的に送り、周囲に声かけをする「伝道師」のようなイメージです。
「導入して終わり」は形骸化の最大の原因です。定期的にデータを確認し、改善を重ねるサイクルが欠かせません。
(測定すべきKPI例)
| KPI | 測定頻度 | 目安 |
|---|---|---|
| 月間レター送受信数 | 月次 | 1人あたり月10通以上が目安 |
| アクティブユーザー率 | 月次 | 80%以上を目標 |
| 称賛レベルスコア | 月次 | 50以上が健全な状態 |
| エンゲージメントサーベイとの相関 | 四半期 | 称賛量とサーベイスコアの連動を確認 |
| 離職率の推移 | 半期〜年次 | 導入前後の比較 |
改善アクションとしては、月次でデータをレビューし、四半期ごとに制度のチューニング(バッジの見直し、ランキング表彰の追加、イベント連動など)を行うのが理想的なサイクルです。

メリットだけを並べても実践には不十分です。導入企業が陥りがちな3つの失敗パターンと、その防ぎ方を押さえておきましょう。
原因: 「月に○通は必ず送ること」のようにノルマ化してしまう。あるいは経営層が制度を使わず、現場だけに強いるケース。
対策: まずは任意運用からスタートし、楽しんで使っている人の事例を社内で共有するのが効果的です。何より重要なのは、経営層自身がロールモデルとして率先して称賛を送ること。トップが使わない制度は、どんなに設計が優れていても定着しません。
原因: 営業成績のように数値化しやすい成果だけが称賛の対象になり、バックオフィスや裏方の貢献が見落とされてしまうパターンです。
対策: Step2で解説したバリューバッジの設計が有効です。「チームワーク」「改善」「誠実さ」といったバッジを設ければ、数字に表れない貢献も正当に評価される土壌が生まれるでしょう。
原因: 新鮮味が薄れたタイミングで、テコ入れ施策を打てていない。改善サイクルが回っていない。
対策: 3ヶ月目が「定着の壁」です。このタイミングで以下の施策を投入すると効果的でしょう。

導入を検討する方が最もイメージしにくいのが、日常的にどのように運用すべきかという部分です。専用アプリを活用したハイブリッド型の運用例を具体的に見ていきましょう。
朝(5分) 出勤後にアプリを開き、フィードに並ぶ仲間のレター(称賛メッセージ)を確認。気になったレターには拍手やリアクションを送る。「今日もチームが動いているな」という一体感のある1日のスタートに。
日中(1〜2分 × 数回) 良い行動を見かけたら、その場でレターを送信。バリューバッジを選び、具体的なメッセージを添える。所要時間は1通あたり1〜2分程度です。
週末〜月末 週間・月間のランキングが自動更新される。「今月、最も多く称賛を集めたのは誰か」「どのバリューバッジが多く送られたか」が一目でわかり、表彰や1on1の話題にも活用できます。
実際の運用では、以下のようなメッセージが飛び交います。
レコグニションプログラムの大きな利点は、蓄積された称賛データが組織の健康診断ツールになる点です。
こうしたデータを1on1や組織改善のミーティングに持ち込めば、感覚ではなくファクトに基づいた議論が可能になるでしょう。

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レコグニションプログラムは、単に「褒め合いましょう」というスローガンではありません。制度設計→運用→効果測定まで一貫して取り組んではじめて、組織に根づく仕組みになります。
特に重要なのは、自社のバリュー(行動指針)と称賛の基準を紐づけることです。これにより、レコグニションは単なるコミュニケーション施策を超え、理念浸透・エンゲージメント向上・離職防止を同時に実現する組織変革のドライバーとなるでしょう。
まずは自社の課題を整理し、小さく始めて改善を重ねる。その第一歩として、本記事の制度設計5ステップをぜひ活用してください。
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