ピアボーナス制度とは、従業員同士が自発的に互いの仕事ぶりに対して感謝や称賛の気持ちを伝え合う制度です。ただし、運用ルールの未整備や組織文化とのミスマッチなどが原因で、失敗するケースも散見されています。
本記事では、ピアボーナス制度の失敗事例と原因、成功に向けてのポイントなどを紹介します。ピアボーナスを運用中で思うように成果があがっていない方、ピアボーナスの導入を検討中の方は、参考にしてみてください。

ピアボーナス制度とは、従業員同士が自発的に互いの仕事ぶりに感謝や称賛の気持ちを伝える際、メッセージと一緒に報酬も付与する制度です。
報酬はポイントを付与するケースが多く、貯まった分のポイントは商品との交換や現金化され、現金化された場合は給与やボーナスに上乗せされて支払われます。
ピアボーナス制度は大型案件の受注や新商品開発などに加え、数値化できないサポートや貢献も評価対象としている点が特徴です。報酬とメッセージを受け取った従業員は、自身の仕事ぶりを評価してもらえた実感を持てるため、業務へのモチベーションが高まります。
また、ピアボーナス制度の導入で感謝や称賛を伝え合う文化が定着すると、従業員同士が互いの仕事ぶりや業務内容に気を配るようになり、相互理解が深まります。
ピアボーナス制度については、こちらの記事で詳しく解説しています。
ピアボーナスは専用アプリやチャット上で、従業員同士がメッセージやリアクション、報酬を自由に贈り合う仕組みです。ピアボーナスは従業員の自発性を重視しており、会社側がメッセージや報酬を贈る相手を指定することはできません。
報酬を贈る際は「わかりやすい資料ありがとうございます」「○○さんのアドバイスで受注できました」など、具体的なエピソードを交えます。
報酬の内容はサービスによって異なりますが、ポイントを贈り合う運用スタイルが一般的です。
1回のやり取りで贈られるポイント数は、現金に換算すると大体数十円〜数百円程度です。1ヵ月間に贈られるポイントの上限は決められているケースが多く、上限内でどの相手にポイントを贈るかを決めて、従業員一人ひとりが運用します。
一定のポイントが貯まれば現金や商品と交換できるため、従業員は感謝や称賛の気持ちだけでなく、目に見える報酬を手に入れられます。
また、メッセージと報酬を贈り合った相手は、リアルタイムでタイムラインに表示される仕組みです。タイムラインは全従業員が閲覧できるため、誰がどのような仕事ぶりや貢献をしたのかが可視化されます。
ピアボーナス制度の導入で営業事務や経理など、仕事の成果が数字で表れにくい職種に就いている従業員の貢献にも光を当てられます。
ピアボーナスの導入で得られるメリットと期待される効果に関して、以下の表にまとめました。
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メリット |
主に期待される効果 |
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従業員のエンゲージメント向上 |
・優秀な人材の流出防止 ・離職率の低下 ・経営理念の浸透 |
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称賛文化の醸成 |
・コミュニケーションの活性化 ・職場の活性化 ・モチベーションアップ |
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部門間連携の強化 |
・生産性向上 ・業務の属人化を防止 ・新たなアイデアの創出 |
ピアボーナスは数値で見える成果だけではなく、互いの仕事ぶりや貢献を評価し合う制度です。感謝や称賛の気持ちを伝え合う文化が定着すると、従業員同士のコミュニケーションが活性化し、職場の雰囲気が明るくなります。
また、勤務先への帰属意識や他の従業員への仲間意識も強くなり、離職率の低下にもつなげられます。

ピアボーナスは、従業員同士の相互理解や関係性を深める効果が期待できる制度です。ただし、正しく運用しないと導入効果が得られません。ここでは5つの失敗事例を紹介します。
ピアボーナスの導入当初は盛り上がったものの、次第に一部の従業員や部署に利用が限定されるケースです。利用者が限定される理由には、ピアボーナスの導入目的や運用ルールの説明不足が挙げられます。
ピアボーナスの導入で、企業側が従業員にどのような行動を期待しているか、どのような課題を解決したいかが伝わらないと、従業員も戸惑いを覚えるでしょう。
また、利用シーンやメッセージの上限数などルールが曖昧な場合は、通常業務への支障やトラブルをおそれ、ピアボーナスの利用に消極的になる可能性が高まります。
報酬やメッセージを贈る基準が曖昧な場合は特定の従業員にポイントが集まり、ポイントを得られない従業員に不公平感が生まれるおそれがあります。
ルールが曖昧だと、従業員は主観的な評価を下さざるを得ず、目立つ成果をあげている従業員、コミュニケーション能力に優れた従業員にポイントを贈る傾向が強くなりがちです。
ピアボーナスは本来、数値化が難しく目に見えない貢献をしている従業員に、スポットを当てる効果も期待できる制度です。
ただし、評価基準や利用シーンなどが整備されていないと、特定の従業員に評価が集中しやすくなりピアボーナス導入によるメリットが得られません。
他の従業員へ感謝や称賛の気持ちを伝えるのではなく、いかに多くのポイントを獲得するかが目的となってしまうケースです。
従業員がピアボーナスでの評価に固執すると、成果が目立つ仕事や周囲から感謝される仕事などを優先する傾向が強くなり、通常業務に支障が及ぶリスクが生じます。
また、周囲からの評価を気にしすぎるあまり、自分の意見を思うように言えず、能力以上の仕事を引き受ける可能性も考えられます。
ピアボーナスでの評価獲得が目的にならないよう、導入後に従業員の行動や職場の雰囲気に変化が起きていないか、定期的に確認することが重要です。
報酬を付与する基準や管理体制が不十分な場合は制度が形骸化し、従業員が本来の目的とは程遠い方法での利用を招きかねません。たとえば、特定の従業員同士や仲良しグループでポイントを贈り合うといった事例です。
悪質な場合は、従業員同士が飲み会に行った際、会計の割り勘代わりに使うケースも想定されます。ピアボーナスが一部の従業員で不正に利用された場合、他の従業員から制度全体に対する不信感が生まれ、制度の形骸化に拍車がかかるでしょう。
ピアボーナスの利用が一部にとどまった場合、コミュニケーションの活性化やエンゲージメント向上など、本来の導入効果を得るのは困難です。
また、ピアボーナスの使い方をめぐって従業員同士のトラブルが発生し、かえって職場の人間関係や雰囲気が悪化する懸念もあります。
ピアボーナスの実施には、専用ツールの導入が必要です。多くの場合で初期費用や月額料金が発生するため、ピアボーナス制度を続ける限り、毎月一定の料金を支払わなければなりません。
また、ピアボーナスで運用するケースが多いポイントは、一定数貯まると現金や商品に交換が可能です。現金や商品の購入費用も企業側が負担するため、ピアボーナスの利用頻度が想定以上の場合、予算超過に陥るケースも少なくありません。
ピアボーナスを導入する際は、予算内で運用できるかどうか、慎重な見極めが必要です。

ピアボーナスが社内に定着せず、形骸化する理由には3つの原因があげられます。
ピアボーナスの導入目的を十分に従業員へ伝えず、運用に踏み切った結果、失敗を招くケースは少なくありません。
どのような課題を解決したいか、従業員にどのような行動を期待しているか、企業側の姿勢が伝わらない限り、従業員は積極的な利用に踏み出せないでしょう。
また、利用時間やポイントの上限、評価基準など、運用ルールの大枠はピアボーナスの導入前に決めておく必要があります。
ピアボーナスの使い方がイメージできないと、メッセージを贈る相手や利用シーンに迷い、ピアボーナスの定着まで長期化する可能性があるためです。
ただし、細部までルールを厳格に決めすぎると、従業員へ窮屈な印象を与えることもあります。運用していく中で新たに課題が生まれる可能性もあるため、従業員の意見も聞きながらルールの追加や見直しをしましょう。
経営層や管理職がピアボーナス導入で得られるメリットの重要性を理解しておらず、利用に消極的なケースも失敗を招く原因の一つです。経営層や管理職が導入目的を理解していなければ、自社の方針を従業員に伝えられません。
経営層や管理職の説明が不足していると、従業員が「どのように使うべきかわからない」という状態に陥るでしょう。ピアボーナスの早期定着を実現するには、経営層や管理職が積極的に利用することが重要です。
経営層や管理職の影響力は大きく、従業員の仕事ぶりを評価することで、従業員がピアボーナスの利用に前向きな印象を抱くようになります。
たとえば管理職が、営業事務として働く従業員に、営業担当者へのフォローや後輩への指導など、普段の仕事ぶりを評価したとしましょう。メッセージと報酬を受けた従業員は「自分の仕事ぶりを見ていてくれている」と感じ、モチベーションアップが期待できます。
また、評価されている様子を見た他の従業員にも好影響を及ぼし、ピアボーナスの利用促進が期待できます。
ピアボーナスはすべての組織文化に対応可能な制度ではありません。自社の組織文化が以下の内容に当てはまる場合、ミスマッチを招く可能性があります。
職場の人間関係がビジネスライクな企業
成果主義重視の企業
従業員同士のコミュニケーションが少ない企業
互いの仕事ぶりを称賛する文化がない企業
また、人手不足で従業員が担当業務をこなすのに精一杯の場合も、ピアボーナスの導入によって従業員の負担が増加し、制度の形骸化が危惧されます。

ピアボーナスの導入を失敗させないためには、計画的な導入が重要です。以下6つのステップを段階的に踏んでいき、状況を見ながら全社での運用へ切り替えていきましょう。
どのような課題を解決するためにピアボーナス制度を導入するのか、目的を明確化する作業からはじめます。従業員のエンゲージメント向上や離職率低下、部門間の連携強化など、自社が解決したい課題解決のためと伝えると、従業員から理解が得やすいでしょう。
具体的な導入目的が決まり次第、従業員に共有する場を設けて理解を得ます。
通常業務に支障が及ばないよう、従業員がやりやすいルール作りが必要です。主に以下の内容を明確化しておきます。
1回あたりの付与ポイント
1ヵ月のポイント付与上限
1ヵ月内でのメッセージの回数上限
評価基準
評価基準は資料作成や納期調整のサポートなど、具体的な業務内容を記載しておくと、従業員がイメージしやすくなります。
また、導入後のトラブルを避けるため、現金やギフト券、特別休暇など、インセンティブの種類は従業員と相談して決めましょう。
ピアボーナス制度導入後に積極的に利用してもらえるよう、経営層や管理職に説明する場を設けます。担当者はピアボーナス制度の仕組みや導入目的、メリットなどを丁寧に伝え、経営層や管理職から協力を得ることが重要です。
ピアボーナス制度の重要性やルールを従業員にも理解してもらえるよう、説明会を開催して周知する場を設けます。従業員から理解を得られるよう、説明会の際は主に以下の内容を配布資料にまとめて、ピアボーナス導入に至った背景を丁寧に説明します。
ピアボーナスの導入目的
運用開始時期
解決したい課題
運用ルール
インセンティブの種類
評価基準
質疑応答の時間確保や相談窓口を紹介し、従業員の不安を軽減しましょう。また、ツール上でメッセージや報酬を相手にどのように贈るか、操作方法を説明しておくことも重要です。
すべての従業員がITリテラシーに優れているとは限りません。操作方法に不安を抱えたままだと、積極的な参加は望めないため、操作方法を記載した資料や簡単なマニュアルを作成しましょう。
一気に全社で運用を始めるのではなく、特定の部署やチーム単位で運用を開始するのが良いでしょう。
いきなり全社で導入を開始した場合は、ツールの不具合や運用上のトラブルなどが発生し、ピアボーナスの制度自体にネガティブな印象が付く危険性があります。
運用開始後は定期的に利用状況をモニタリングしながら、並行して従業員からルール上に問題がないか、不具合は起きていないかなどをヒアリングします。
従業員のフィードバックから問題ないことを確認できたら、対象範囲を徐々に拡大し、最終的には全社での運用を目指しましょう。
また、ピアボーナス制度を全社で運用後、達成したい目標を設けておくことも必要です。「ピアボーナス導入後に「離職率を10%減らす」「従業員満足度を20%高める」など、具体的な数値目標を掲げると、導入効果を実感しやすくなります。
加えて、全社でピアボーナスを運用してからも、定期的にデータ分析やアンケートを実施し、従業員の満足度や改善点の有無を把握しましょう。
導入開始時の運用ルールや制度設計に固執する必要はありません。ピアボーナス制度は従業員が自発的に感謝や称賛の気持ちを伝え合う必要があるため、従業員が利用しやすい制度を整備して利用率やピアボーナスの導入効果を高めましょう。

多くの従業員に継続してピアボーナスを利用してもらうには、以下3点を意識することが重要です。
導入後のフォロー不足も、ピアボーナスが失敗する要因の1つです。ピアボーナス制度が失敗しないためには、従業員からの質問や相談に対して丁寧に対応しましょう。
また、心に響いた投稿を社内報やコーポレートサイト、会議などで取り上げるのも1つの方法です。多くの従業員の目に留まる場所で取り上げることで、ピアボーナス制度の魅力や従業員の仕事ぶりをアピールできます。
ピアボーナスを贈った従業員も、他の従業員から自身の投稿が注目されることで満足度が高まり、今後の継続的な利用が望めるでしょう。
ピアボーナスの利用率を高めるには定期的にデータ分析を行ない、運用状況を確認する必要があります。利用率が高まらない場合は、運用ルールや制度設計に問題がある可能性があります。
部署ごとの利用率やポイントの偏りなどをデータで確認し、分析結果から課題の抽出と対策の実施に移ります。
ただし、従業員にピアボーナスの利用を強制できません。ピアボーナスは従業員の自発性を引き出す制度のため、利用の強制は制度自体への信頼性が揺らぐ結果となります。
また、客観的な数値にもとづく改善を行なうには、データ分析やレポート機能を搭載したツールの導入が必要です。
ピアボーナスは従業員同士が評価し合う新たな人事制度です。MBOや360度評価、コンピテンシー評価など、他の人事制度との連携によってピアボーナス制度の価値を高められます。
たとえば、ピアボーナスとMBOを連携したとしましょう。MBO(目標管理制度)とは、組織の方針を把握したうえで従業員自身が目標を設定し、目標の達成状況に応じて評価を下す人事評価制度です。
MBOのマネジメント手法の1つに、上司と部下の1on1ミーティングがあげられます。ピアボーナスと連携した場合は、1on1ミーティングでの話題づくりや評価を下す参考情報として活用できます。
ただし、人事制度と連携する際は、ピアボーナスでのポイント数や利用率を直接的な評価項目に含めないようにしましょう。評価項目に含めた場合は、従業員が人事評価で高評価を得るためにピアボーナスを悪用するおそれが生じます。
チームワークアプリ「RECOG」でピアボーナスを成功

ピアボーナスの運用失敗には、さまざまな原因が隠れています。成功させるためには本記事で紹介したポイントのほかにも、使いやすい設計としっかりとしたサポート体制を兼ね備えたツール選定が重要です。
チームワークアプリ「RECOG」は、感謝・称賛の気持ちをポイントとともに簡単な操作で贈ることができ、使いやすさに定評のあるサービスです。また、導入から運用、定着までを専任のカスタマーサクセスが伴走するので、初めてのピアボーナス運用でも失敗せずにスムーズに進められます。
RECOGの詳細は以下の資料で紹介しているので、ぜひダウンロードしてみてください。
ピアボーナスは社内コミュニケーションの活性化や離職率低下など、さまざまなメリットが得られる制度です。ただし、導入目的や運用ルールが整備されていないと、一部の従業員しか利用しなくなり、失敗を招く一因となります。 制度を失敗させないためには、導入目的の明確化や運用ルールを整備したうえで、従業員に周知する場を設けることが必要です。ピアボーナスを積極的に利用してもらえるよう、経営層や管理職からの協力も欠かせません。 また、継続的な利用を実現するには、定期的なデータ分析の実施が必要です。分析結果をもとに運用ルールを見直すことで、従業員が利用しやすい制度を設計できます。 本記事の内容を参考にピアボーナス制度を導入し、従業員同士が自発的に感謝・称賛し合う文化を作ってみてはいかがでしょうか。 \\編集部おすすめ記事//
まとめ