コラム

ストレスチェック法改正で何が変わる?50人未満の義務化と企業対応を解説

ストレスチェック法改正で何が変わる?50人未満の義務化と企業対応を解説

公開日: 2026.10.30
更新日: 2026.10.30

ストレスチェックの法改正について、「50人未満の事業場も義務化されるのか」「いつから対応が必要なのか」と気になっている担当者も多いのではないでしょうか。ストレスチェック制度は2015年に始まりましたが、制度開始時は労働者数50人未満の事業場について、実施が努力義務とされていました。

その後、2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、50人未満の事業場にもストレスチェックの実施義務が広がることが決まり、2028年4月1日から施行されます。これまで実施していなかった小規模事業場では、実施者の確保や外部委託、社内ルールの整備などを事前に進めておく必要があります。

この記事では、ストレスチェック制度に関する法改正の変遷や今回の主な変更点、50人未満の事業場が準備したい内容を解説します。法改正後も変わらない基本ルールも紹介するため、今後の対応を検討する際の参考にしてみてください。

 

ストレスチェック法改正の変遷

ストレスチェック制度は、労働者が自身のストレス状態に気づき、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことなどを目的として、2015年12月に施行されました。当初、実施義務の対象は常時50人以上の労働者を使用する事業場で、50人未満では努力義務とされていました。

その後、小規模事業場を含めたメンタルヘルス対策の充実が検討され、2025年の法改正で50人未満にも実施義務を広げることが決まりました。また、2026年には労働安全衛生規則の改正により、ストレスチェック結果の集団分析について、個人の特定を防ぐためのルールが明確化されています。

時期

主な動き

2015年12月

常時50人以上の労働者を使用する事業場でストレスチェックの実施が義務化

2025年5月

50人未満への義務拡大を盛り込んだ改正労働安全衛生法が公布

2026年6月

集団分析の実施方法に関する労働安全衛生規則が改正

2027年4月

集団分析を特定の個人を識別できない方法で行なうことが明文化

2028年4月

50人未満の事業場にもストレスチェックの実施義務が拡大

なお、2027年4月からの改正は、集団分析そのものを義務化するものではありません。集団分析は引き続き努力義務ですが、実施する場合は特定の個人を識別できない方法で行なうことが規則上明文化されます。これは従来の考え方を明文化したもので、集計・分析の単位が10人を下回る場合は、原則として集団分析を実施しないこととされています。

出典
厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」
厚生労働省「ストレスチェックの『集団分析』を適切に実施しましょう!」

 

ストレスチェック法改正の主な変更点と変わらない点

今回の法改正で大きく変わるのは、これまで努力義務だった労働者数50人未満の事業場にも、ストレスチェックの実施が義務付けられる点です。一方、50人以上の事業場に適用されているすべての仕組みが、そのまま小規模事業場にも広がるわけではありません。

変更点と従来から変わらない点を切り分けて確認しておくと、自社で必要な対応を判断しやすくなります。

今回の改正による変更点は次のとおりです。

  • 2028年4月1日から50人未満の事業場にも実施義務が広がる
  • 改正後も引き続き確認しておきたい点は次の3つです。
  • ストレスチェックは事業場単位で実施する
  • 産業医や衛生委員会の設置基準は今回の改正では変わらない
  • 50人未満の事業場には労働基準監督署への結果報告義務がない

それぞれの内容を詳しく確認していきましょう。

2028年4月1日から50人未満の事業場も義務化される

2028年4月1日から、労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務付けられます。2015年の制度開始以降、小規模事業場では努力義務でしたが、2025年に公布された改正労働安全衛生法によって、事業場の規模にかかわらず実施が求められることになりました。

施行後は、50人未満の事業場でも対象となる労働者に対し、1年以内ごとに1回ストレスチェックを実施する必要があります。

質問票を配布して終わりではなく、結果を本人へ通知する体制や、高ストレス者が面接指導を申し出た際の対応も必要です。施行直前に準備を始めるのではなく、自社の実施体制をあらかじめ確認しておくことが大切でしょう。

出典:厚生労働省「『小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル』を公表します」

ストレスチェックは事業場単位で実施する

ストレスチェックの実施義務や労働基準監督署への報告は、企業全体ではなく事業場ごとに判断します。事業場とは、原則として工場や事務所、店舗など、同一の場所にある組織上の単位を指します。

たとえば本社と複数の支店がある企業では、実施体制は全社でまとめて整えることもできますが、50人以上かどうかや報告の要否は、支店・店舗などの事業場ごとに確認する必要があります。

2028年4月以降は50人未満にも実施義務が広がるため、ストレスチェックを実施するかどうかを50人という人数だけで判断する必要はなくなります。ただし、労働基準監督署への実施結果報告など、一部の制度では引き続き50人という基準が残ります。

産業医や衛生委員会の設置義務は新たに生じない

50人未満の事業場にストレスチェックが義務化されても、今回の義務拡大だけを理由として、産業医や衛生管理者の選任、衛生委員会の設置まで新たに義務付けられるわけではありません。それぞれには別途、労働安全衛生法上の基準があります。

一方、ストレスチェックを実施するためには、医師や保健師など法令上の要件を満たす「実施者」を確保しなければなりません。

厚生労働省は2026年2月25日、50人未満の事業場を対象とした「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表しました。同マニュアルでは、労働者のプライバシー保護の観点から、原則として外部機関への委託が推奨されています。社内に実施者となれる専門職がいない場合は、マニュアルに沿って外部委託を中心に体制を検討するとよいでしょう。

出典:厚生労働省「『小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル』を公表します」・中央労働災害防止協会「ストレスチェック50人未満義務化 ~改正Q&A~」

50人未満の事業場は労働基準監督署への報告が不要

50人未満の事業場では、2028年4月以降もストレスチェックの実施結果を労働基準監督署へ報告する義務はありません。

常時50人以上の労働者を使用する事業場では、ストレスチェックの実施結果を所轄の労働基準監督署へ報告することが法令で定められています。一方、中央労働災害防止協会の改正Q&Aでは、50人未満の事業場については事業場の負担を考慮して報告義務はないものの、実施は義務であると説明されています。

「報告が不要」であることと「ストレスチェックを実施しなくてもよい」ことは別です。2028年4月以降は50人未満でも実施自体が義務となるため、混同しないよう注意しましょう。

出典:厚生労働省「労働者数50人以上の事業者の方」・中央労働災害防止協会「ストレスチェック50人未満義務化 ~改正Q&A~」

 

50人未満の事業場が法改正に向けて準備すること

50人未満の事業場では、2028年4月の施行を迎えてから対応を始めるのではなく、実施方法や担当者、社内ルールなどを事前に決めておくことが大切です。とくに社内に産業保健スタッフがいない場合は、実施者の確保や外部機関との調整にも時間がかかる可能性があります。

準備は、次の4つに分けて進めるとわかりやすくなります。

  1. 実施方法と外部委託の範囲を決める
  2. 実施者と社内担当者を決める
  3. 関係労働者の意見を聴いて社内ルールを整える
  4. 従業員への周知と実施時期を決める

自社の人員や既存の健康管理体制を確認しながら、継続できる方法を検討しましょう。

ステップ1:実施方法と外部委託の範囲を決める

まず、ストレスチェックを自社で実施するのか、外部機関へ委託するのかを検討します。質問票は紙だけでなくWebでも実施できるため、従業員の勤務形態や事業場の環境に合う方法を選びましょう。

委託先を探す際は、現在健康診断を依頼している健診機関に、ストレスチェックもあわせて依頼できるか確認するとよいでしょう。受検者情報などを一元的に管理でき、スムーズに実施しやすいためです。

委託する場合は、外部機関から「サービス内容事前説明書」を作成・説明してもらい、ストレスチェックの実施、高ストレス者の選定、結果通知、集団分析、面接指導の案内など、どの業務まで対応してもらえるのかを確認します。料金体系だけでなく、どこまでが標準サービスでどこからがオプションか、個人情報の管理方法や連絡体制も比較したうえで委託先を選ぶことが大切です。

出典:厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」・中央労働災害防止協会「ストレスチェック50人未満義務化 ~改正Q&A~」

ステップ2:実施者と社内担当者を決める

ストレスチェックを行なう際は、法令上の要件を満たす実施者を決めます。実施者になれるのは医師、保健師のほか、所定の研修を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師です。

事業場側では、実施計画の管理や従業員への周知、外部機関との連絡などを担当する実務担当者も決めておきます。小規模事業場向けマニュアルでは、この実務担当者に衛生推進者または安全衛生推進者を指名することが望まれるとされています。個人の結果を扱わない業務であれば、人事権を持つ人が担当することも可能です。

ただし、解雇・昇進・異動などについて直接の人事権を持つ人は、その人事権が及ぶ労働者のストレスチェックの実施者や、個人結果を扱う実施事務従事者にはなれません。担当業務の範囲をあらかじめ明確にしておきましょう。

出典:厚生労働省「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」・厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」

ステップ3:関係労働者の意見を聴いて社内ルールを整える

50人未満の事業場では、衛生委員会の設置義務がない場合があります。その場合でも、ストレスチェックを安心して受けられる環境を整えるため、関係労働者の意見を聴き、その内容を踏まえて社内ルールを作成します。

ルールには、実施体制や実施方法、記録の保存、情報管理、情報の開示・訂正や苦情処理、不利益な取扱いの防止などを盛り込むことが望まれます。

厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルには、方針表明や実施規程のモデル例、関係労働者の意見を聴く方法の事例も掲載されています。自社の規模や実情に合わせて内容を調整し、従業員が事前に確認できる形で周知しましょう。

出典:厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」

ステップ4:従業員への周知と実施時期を決める

実施体制と社内ルールが決まったら、従業員へ制度の目的や実施時期、受検方法を案内します。個人結果が会社へ無条件に共有されるわけではないことなど、情報の取扱いもあわせて伝えると、制度への誤解を減らしやすくなります。

ストレスチェックは1年以内ごとに1回、定期的に実施する必要があります。2028年4月1日の施行後も継続して対応できるよう、毎年のおおよその実施時期を決めておくと運用しやすいでしょう。

外部委託を予定している場合は、希望時期に対応できる委託先を確保できるよう、余裕を持って候補を比較・検討しておくことも大切です。

 

法改正後も変わらないストレスチェックの基本ルール

50人未満の事業場まで対象が広がっても、個人結果の取扱いや高ストレス者への面接指導といった制度の基本ルールが変わるわけではありません。小規模事業場でも、従業員のプライバシーを守り、安心して制度を利用できる環境を整える必要があります。

事業者が特に押さえておきたいのは、個人結果を本人の同意なく提供しないこと、受検や面接指導を理由に不利益な取扱いをしないこと、高ストレス者の申出に応じて医師の面接指導を行なうことの3点です。

個人結果は本人の同意なく事業者へ提供しない

ストレスチェックの個人結果は、実施者から労働者本人へ直接通知されます。本人の同意がない限り、実施者から事業者へ個人の結果を提供することはできません。

ストレスチェックは、労働者自身が自分のストレス状態に気づくことを目的の1つとしています。事業者が本人の同意なく結果を把握できる仕組みでは、従業員が安心して回答しにくくなるおそれがあります。

外部機関へ委託する場合も、会社側へどの情報が共有されるのか、誰が個人結果を扱うのかを明確にしておきましょう。小規模事業場向けマニュアルでは、個人結果などの健康情報の取扱いは外部機関で完結し、事業場内では扱わない体制が示されています。

出典:厚生労働省「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」・厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」

受検や面接指導を理由に不利益な取扱いをしない

事業者は、ストレスチェックを受けなかったことや、結果の提供に同意しなかったことなどを理由として、従業員に不利益な取扱いをしてはいけません。高ストレス者が医師による面接指導を申し出たことを理由に、不利な扱いをすることも禁止されています。

また、医師の意見を適切に確認せずに、面接指導を受けた従業員へ不当な配置転換や退職勧奨などを行なうことも認められていません。

制度の目的と情報の取扱いを事前に周知し、「受検したことで不利益を受けるのではないか」という不安を減らすことが、適切な制度運用につながります。

出典:厚生労働省「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」

高ストレス者の申出に応じて医師の面接指導を行なう

ストレスチェックの結果、高ストレスと評価され、実施者が面接指導を受ける必要があると判断した労働者から申出があった場合、事業者は医師による面接指導を行なう必要があります。

面接指導後は医師から意見を聴き、必要に応じて労働時間の短縮や業務内容の変更など、就業上の措置を検討します。この基本的な仕組みは、50人未満へ実施義務が広がった後も変わりません。

社内で面接指導を担当できる医師を確保できない場合は、地域産業保健センターの支援を活用できます。地域産業保健センターでは、労働者数50人未満の小規模事業場を対象に、高ストレス者に対する面接指導などを無料で受けられます。外部委託先のオプションサービスとして、面接指導を依頼する方法もあります。

出典:厚生労働省「『職場の健康診断実施強化月間』の実施に関する協力依頼について」・厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」

 

ストレスチェック法改正に関するよくある質問

50人未満への義務拡大では、施行日だけでなく、「いつまでに初回を実施すればよいか」「すでに自主的に実施している場合はどうすればよいか」といった疑問も生じます。制度を誤って理解すると、必要以上に対応を増やしたり、反対に準備が不足したりする可能性があります。

現在公表されている情報をもとに、法改正への対応で確認しておきたい疑問を見ていきましょう。

施行後はいつまでにストレスチェックを実施すればよいですか?

50人未満の事業場への義務化は、2028年4月1日に施行されます。中央労働災害防止協会の改正Q&Aでは、施行日から1年以内に実施が必要と案内されています。なお、同Q&Aには、今後の労働安全衛生規則等の改正により変更となる場合があるとの注記もあるため、施行が近づいたら最新の情報を確認しましょう。

また、施行後に実施者や外部委託先を探し始めると、希望する時期に実施できない可能性があります。とくに産業保健スタッフがいない小規模事業場では、外部との調整に時間がかかることも考えられるでしょう。

初回の期限だけを意識するのではなく、その後も毎年継続できる実施体制を施行前から整えておくことが大切です。

出典:中央労働災害防止協会「ストレスチェック50人未満義務化 ~改正Q&A~」

すでに実施している50人未満の事業場も対応が必要ですか?

すでに50人未満の事業場でストレスチェックを実施している場合、現在の運用が労働安全衛生法や関係指針に沿っていれば、今回の義務化だけを理由に実施内容を変更する必要はありません。

一方、これまで任意で行なってきた社内アンケートが、法令上のストレスチェックの要件を満たしているとは限らない点に注意が必要です。

実施者の資格、質問項目、結果通知、個人情報の管理、高ストレス者への面接指導などを確認し、厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルと照らし合わせて不足がないかを確認しておくとよいでしょう。

出典:中央労働災害防止協会「ストレスチェック50人未満義務化 ~改正Q&A~」

ストレスチェックを実施しない場合に罰則はありますか?

労働安全衛生法では、ストレスチェックを実施しなかったこと自体について、直接の罰則は定められていません。ただし、義務化後は労働安全衛生法に基づいて実施すべき制度となるため、罰則がないことを理由に実施しなくてもよいわけではありません。

また、常時50人以上の労働者を使用する事業場には、ストレスチェックの実施結果を労働基準監督署へ報告する義務があります。報告を行なわなかった場合は、労働安全衛生法に基づく罰則の対象となります。

50人未満の事業場には実施結果の報告義務がないため、「ストレスチェックの未実施」と「労働基準監督署への報告義務違反」は分けて理解しておきましょう。

出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」・厚生労働省「労働者数50人以上の事業者の方」

 

ストレスチェック後の職場環境改善にRECOGを活用!

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まとめ | 法改正に備えてストレスチェックの実施体制を整えよう

ストレスチェック制度は2015年に始まり、2025年の労働安全衛生法改正によって、これまで努力義務だった労働者数50人未満の事業場にも実施義務が広がることが決まりました。施行日は2028年4月1日です。

50人未満の事業場では、今回の改正によって産業医や衛生委員会の設置義務まで新たに生じるわけではありません。一方で、実施者の確保や社内ルールの整備、従業員への周知など、ストレスチェックを継続して運用できる体制は必要です。自社だけで対応が難しい場合は、外部機関や公的な支援も活用しながら準備を進めましょう。

ストレスチェックで使われる職業性ストレス簡易調査票には「周囲からの支援」の領域があり、集団分析では上司・同僚からの支援の状況も確認できます。この領域に課題がみられた場合の職場づくりの一つとして、日常的に感謝や称賛を伝え合える環境を整えることも考えられます。RECOGでは、感謝・称賛を伝え合えるレター機能やポイント機能を通じて、従業員同士のコミュニケーションづくりを支援しています。職場環境改善の取り組みの一環として、RECOGの活用もぜひご検討ください。

 

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