社内SNSとビジネスチャットは、どちらも企業向けのコミュニケーションツールの一種です。社内SNSとビジネスチャットは似たような機能も多いため、違いが分からないという人も多いでしょう。
本記事では、社内SNSとビジネスチャットの違いを詳しく解説します。社内SNSとビジネスチャットの違いから、それぞれに向いている企業の特徴もまとめました。社内SNSとビジネスチャットの違いを把握し、導入時の参考としてお役立てください。
社内SNSとビジネスチャットの違いを解説する前に、まずはそれぞれのツールの基本情報を解説します。
社内SNSとは、企業内で利用するSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)です。
FacebookやX(旧Twitter)、Instagramなどと似たようなチャットや投稿などの機能のほかビジネスに特化した機能も持ち、従業員同士が情報交換やコミュニケーションを行うために用いられます。一般的なSNSとは異なり、全世界のユーザーとつながるわけではなく、自社のコミュニティ内でのみ利用されるのが特徴です。
単なる交流であれば一般的なSNSでも可能ですが、従業員同士のやりとりには業務に関する情報が含まれることも多いため、セキュリティ上の問題が発生する恐れがあります。
一方、社内SNSなら利用範囲を社内に限定して運用できるため、より安全な環境でコミュニケーションをとれます。
ビジネスチャットとは、業務上のコミュニケーションに用いられるチャットツールです。従業員同士でリアルタイムなやりとりができ、社外との情報共有やコミュニケーションに使用されるケースもあります。
従業員同士の1対1のコミュニケーションのほか、特定のプロジェクトやチームごとにグループチャットを作成することも可能です。
また、スマートフォンやタブレットからでも手軽にやりとりができ、勤怠管理システムや会計ソフトなどの外部ツールとの連携が可能な場合も多くあります。その利便性の高さから、現在ではメールに代わる連絡手段として、多くの企業で導入されています。
ビジネス利用を前提としたツールであるため、汎用的なチャットツールと比べて高度なセキュリティ対策が施されているのも特徴です。
ここからは、社内SNSとビジネスチャットの違いを解説します。
主な違いは、「利用目的」「機能面」「得意とする分野」の3点です。
社内SNSとビジネスチャットは、どちらも従業員同士のコミュニケーションや情報共有に用いられますが、根本的な利用目的に違いがあります。
社内SNSの主な目的は、チームや部署の垣根を超えたコミュニケーションを促進し、良好な人間関係を構築することです。従業員同士の交流を促進することで、従業員エンゲージメントの向上や、組織の一体感の醸成などを目指します。
一方、ビジネスチャットの主な目的は、業務上の情報共有を円滑化することです。迅速かつリアルタイムなやりとりが可能となるため、日々の業務効率が向上し、迅速な業務遂行や意思決定につながるという違いがあります。
社内SNSとビジネスチャットは、機能面でも違いがあります。
社内SNSとビジネスチャットに共通する基本機能は、以下の4つです。
チャット機能
メンション機能
スタンプ機能
アップロード機能(画像やファイルなど)
上記のような機能に加え、社内SNSとビジネスチャットには、それぞれ以下のような機能が搭載されているツールもあります。
社内SNS |
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ビジネスチャット |
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社内SNSは、一般的なSNSと同様に、タイムライン形式での情報共有ができます。また、リアクション機能が充実している場合が多く、「いいね!」や「拍手」を押して、相手の投稿にリアクションすることが可能です。
一方、ビジネスチャットはチームごと、プロジェクトごとにグループを作成する機能やタスク管理機能など、業務遂行に役立つ機能が充実しているという違いがあります。ビデオ会議機能が搭載されたサービスも多く、口頭でのコミュニケーションや議論が必要になった場合も、シームレスに移行可能です。
社内SNSとビジネスチャットは、得意とする分野にも違いがあります。
社内SNSは、全社的な情報共有やナレッジベースの構築などを得意とするツールです。社内SNSを通じて経営層からのメッセージを発信したり、社内イベントの告知をしたりと、全体への情報周知に役立てられます。また、掲示板機能を活用すれば、チャットのように情報が時系列で流れてしまうことがなく、ナレッジベースを構築しやすいでしょう。
一方、ビジネスチャットは個人間やチーム内など、比較的クローズドかつ素早い情報共有を得意とするという違いがあります。双方向のリアルタイムなコミュニケーションを実現できるため、スピーディーな業務連絡が求められる場面で真価を発揮するでしょう。外部の関係者とグループを作成することも可能なため、社内外を問わない連携にも向いています。
社内SNSとビジネスチャットにはそれぞれ違いがありますが、導入により共通のメリットを期待できます。
社内SNSとビジネスチャットは、いずれも社内の情報共有を円滑化するツールです。
従来のメールとは違い、宛先や件名の入力、ビジネスメールにふさわしい表現や定型文などを気にする必要がありません。必要な情報のみを簡潔に伝えられるため、テキストコミュニケーションにかかるコストを削減可能です。
たとえば日々の業務連絡をビジネスチャットで行うようにすれば、従業員同士の報告・連絡・相談を迅速化でき、業務効率化につながります。ちょっとした疑問も気軽に相談しやすいため、生産性向上にも寄与するでしょう。
また、社内SNSでベテランの知見や成功事例などを投稿すれば、必要な情報をスムーズに探し出すことが可能です。
社内SNSとビジネスチャットは、いずれも社内コミュニケーションの活性化に寄与します。
社内SNSもビジネスチャットも、パソコンやスマートフォン、タブレットなどから物理的な距離に関わらないコミュニケーションが可能です。他部署やチーム、別の支店やリモートワークの従業員ともコミュニケーションを円滑にとれます。
スタンプやリアクション機能などにより、堅くなりがちなビジネスコミュニケーションに温かみが加わり、心理的な距離が縮まりやすいのもメリットです。
とくに、社内SNSでは、一般的なSNSと同様にカジュアルなコミュニケーションが可能です。休日の過ごし方や趣味の話題など、思い思いの内容を気軽に投稿できます。これにより、従業員同士が互いに親しみを感じられるようになり、よりよい人間関係の構築につながるでしょう。
メールの場合、送信後の取り消しや内容の修正はできないケースが多いでしょう。
一方、社内SNSやビジネスチャットなら、メッセージ送信後の削除・修正が可能です。誤った内容を送信してしまっても即座に修正可能なため、正確に情報共有できます。また、社内SNSやビジネスチャットなら宛先間違いのメッセージも削除できるため、情報漏えいのリスクが低減されます。
誤字脱字や添付ミスなどを気にしすぎることなく、気軽にメッセージを送れるのもメリットです。確認作業によって余計な手間をかける必要がないため、スピーディーな意思疎通を実現できます。
社内SNSとビジネスチャットにはさまざまなメリットがありますが、導入する際は以下の3点に注意が必要です。
社内SNSやビジネスチャットは気軽なコミュニケーションツールですが、なかには「職場の人に監視されているようでつらい」と感じる人もいます。
社内SNSやビジネスチャットが「疲れるもの」になると、自由な発信や意見交換が妨げられる可能性があります。
従業員が社内SNSやビジネスチャットを安心して利用できるよう、プレッシャーを与えないような運用方法を検討しましょう。
多くの社内SNSやビジネスチャットには、通知機能が搭載されています。
SNSの通知が届くと内容が気になり、ついついそれまでの作業を中断して確認しにいってしまう、という経験をしたことのある人は多いでしょう。社内SNSやビジネスチャットでも同様のことが起こると、集中力が途切れてしまい、生産性の低下を招く可能性があります。
「業務時間中は通知をオフにする」「重要なグループやスレッドだけ通知がくるようにする」など、通知の適切な設定方法を周知しましょう。
社内SNSやビジネスチャットは、ビジネス利用に適したセキュリティ対策が施されています。
しかし、社内SNSやビジネスチャットのセキュリティリスクはゼロではありません。社内SNSやビジネスチャットでは機密情報をやりとりする場合も多いため、ウイルス感染や不正アクセス、誤送信などによる情報漏えいの対策を講じる必要があります。
社内SNSやビジネスチャットの運用ルールを明確化する、セキュリティ研修を実施するなどの対策を実施し、セキュリティリスクを低減しましょう。
ここからは、社内SNSのビジネスチャットの違いを踏まえて、それぞれが適しているケースをまとめます。社内SNSとビジネスチャットのどちらを導入すべきか迷っている場合は、ぜひ参考にしてください。
まずは、社内SNSの利用が適しているケースから紹介します。
社内SNSは、従業員同士のコミュニケーションを促進し、一体感を醸成したい企業に向いています。とくに、社内SNSは以下のような企業におすすめです。
従業員数が多い
拠点が複数ある
リモートワークを導入している
多様なバックグラウンドを持つ従業員が在籍している
ノウハウの共有が不十分
これらの企業は、人材の多様性や物理的な距離などにより、組織としての一体感が生まれにくい場合があります。社内SNSを導入すれば、普段あまり関わりのない従業員の人となりを知れるため、相互理解が深まり、エンゲージメントの高い組織をつくれます。
また、社内SNSは情報の蓄積・共有にも強みを持つため、ナレッジベースを構築したい企業にもおすすめです。分散した情報資産を一元管理でき、属人化の防止に役立ちます。
社内SNSは、主に以下のようなビジネスシーンに適しています。
企業理念やビジョンの発信
社内イベントの告知
プロジェクトメンバーの募集
新入社員の紹介
業務ノウハウや成功事例の共有
部署や拠点を超えた交流促進
社内SNSは、全社的な情報共有に適したツールです。経営層からのメッセージを全社へ一括で発信でき、企業理念やビジョンの浸透に寄与します。また、社内イベントの告知や新入社員の紹介など、社内報の代わりとして活用されるケースも多いでしょう。
次に、ビジネスチャットの利用が適しているケースを紹介します。
ビジネスチャットは、迅速な情報伝達や意思決定が求められる企業に向いています。具体的には、以下のような企業におすすめです。
変化の激しい業界の企業
プロジェクトごとにチームを結成することの多い企業
グローバル展開を進める企業
スタートアップ企業
ビジネスチャットは手軽かつリアルタイムでのコミュニケーションが可能なため、上記のようにスピード感が求められる企業と相性がよいでしょう。
ビジネスチャットは、主に以下のようなビジネスシーンに適しています。
日常的な業務連絡
プロジェクトの進捗報告
簡単な質疑応答
会議の日程調整
外部パートナーや取引先との連携
ビジネスチャットは、日々の業務におけるコミュニケーションに適したツールです。進捗確認やちょっとした質問などもしやすく、業務の円滑な遂行に貢献します。
社内SNSとビジネスチャットをどちらか一方だけ導入するのではなく、業務フローや企業規模などに合わせて併用したり、統合型のツールを導入したりする方法もあります。
最後は、社内SNSとビジネスチャットの併用・統合のおすすめパターンを紹介します。
社内SNSとビジネスチャットを併用する場合、目的別にツールを使い分けるのがおすすめです。たとえば、日々の業務連絡や進捗管理などはビジネスチャット、雑談やナレッジの共有は社内SNSといった使い分けが考えられます。ビジネスチャットで業務効率を高めつつ、社内SNSで組織の一体感を醸成できるでしょう。
社内SNSとビジネスチャットの投稿内容を明確に分けると、従業員がそれぞれのツールの用途を理解でき、活用が進みやすくなるというメリットもあります。
社内SNSとビジネスチャットを段階的に導入するのもおすすめです。
たとえば、はじめにビジネスチャットを導入し、情報共有の円滑化や交流促進がある程度進んだところで、社内SNSを導入してコミュニケーションをさらに活性化させるといった方法が考えられます。まずは日々の業務に使用するツールから導入することで、コミュニケーションツールを無理なく定着させられるでしょう。
また、社内SNSとビジネスチャット、それぞれの導入効果を検証しやすいというメリットもあります。
社内SNSとビジネスチャットの機能を兼ね備えた、統合型ツールの導入もおすすめです。
社内SNSとビジネスチャットを別々に導入する場合とは異なり、複数のツールを使い分ける必要がないため、従業員の抵抗感や負担を減らせます。業務上のやりとりで生まれた「感謝」をSNS機能を使って伝えるなど、用途に合わせた使い分けをシームレスに実現できるでしょう。
また、社内SNSとチャットの統合型ツールを導入すると、情報を一元管理しやすくなるのもメリットです。すべての情報が同じプラットフォームに集約されるため、チャットで依頼された業務のナレッジを、その場ですぐさま検索できるようになります。
社内SNSとビジネスチャットは、どちらも情報共有の円滑化や社内コミュニケーションの活性化に役立つツールです。
しかし、社内SNSが主にカジュアルなコミュニケーションに用いられるのに対し、ビジネスチャットは主に業務上のやりとりに用いられる傾向があるという違いがあります。
また、社内SNSは情報のアーカイブ化を得意とするため、ナレッジベースの作成も可能です。一方、ビジネスチャットは情報が流れてしまいやすいものの、迅速なコミュニケーションを実現しやすいというメリットがあります。
社内SNSとビジネスチャットには共通するメリットがありますが、組織内においてそれぞれ異なる役割を果たす場合が多いでしょう。社内SNSとビジネスチャットの違いを理解し、組織の課題や目的に応じて適切に使い分けることが大切です。