コラム

2023.09.20
2023.09.20

心理的安全性とは?作り方や4つの因子について詳しく解説

 ▼ 目次
2012年にGoogle社が、「チームのパフォーマンスを向上させるためには心理的安全性を高めること」と発表して以来、「心理的安全性」はチームの生産性を向上させる方法として大きな注目を集めています。
 
本記事では、心理的安全性のメリットや作り方、4つの因子について詳しく解説していきます。
 

心理的安全性とは


 
「心理的安全性」とは、組織やチーム内で、対人関係のリスクをとったとしても安心して振る舞える状態を指します。この概念は1999年に組織行動学の研究者であるハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授によって初めて提唱されました。彼女は著書「組織論」で、心理的安全性を「このチーム内では、対人関係上のリスクをとったとしても安心できるという共通の思い」と詳細に説明しています。
 
具体的には、組織内で立場や年齢、背景に関係なく、率直に意見や提案を発信することができ、それが受け入れられる環境や雰囲気を指します。
しかし、この心理的安全性が「チーム従業員間の仲の良さ」や「反論を禁止するルールの設置」を意味するわけではありません。それらは異なる概念であり、心理的安全性の本質を理解し、実際の組織運営に取り入れる際は十分な注意が必要です。
 

心理的安全性が注目されるようになった背景


 
近年、「心理的安全性」が企業やチームでのキーワードとして頻繁に取り上げられるようになりましたが、その背景には理由があります。
 
この概念が一般的に注目されるきっかけとなったのは、Google社が2012年から2015年にかけて実施した「プロジェクトアリストテレス」によるものです。
 
Google社は、世界屈指の技術企業として、チームの生産性を常に最大化するための方法を模索していました。その中で、何がチームの成功を促進するのかを探る「プロジェクトアリストテレス」を開始。多数のデータやインタビューを基に、多くの要因を検証した結果、「心理的安全性」がチームの成功にとって非常に重要であるという結論に至りました。この発表が大きな波紋を呼び、多くの組織が「心理的安全性」の重要性に目を向けるようになったのです。
 

心理的安全性がもたらすメリット7つ


 
心理的安全性が保たれた組織やチームでは、多くのメリットがもたらされます。
ここでは、具体的なメリットを7つに絞ってご紹介します。
 

イノベーションが生まれる

心理的安全性が保たれたチーム内では、従業員は安心して意見や情報を共有します。その結果、多様な視点が結集し、イノベーションが生まれる土壌が整います。例えば、技術者が遭遇する問題に、営業からの顧客の声を取り入れることで、新しい解決策やアイディアが生まれることがある。このオープンなコミュニケーションは、チーム全体の柔軟性や適応性を高め、時代の変化や市場のニーズに迅速に対応する力を生み出します。
 

企業全体の業績が向上する

心理的安全性が高まると、従業員は自分の意見やアイディアを自由に共有するようになります。これにより、適切な意思決定や効果的な問題解決が行われやすくなります。特に、プロジェクトの進行速度が加速したり、質の高いサービスや製品の提供が可能になったりと、結果的にはチームのパフォーマンスが向上し、企業全体の業績が向上します。
 

仕事に集中できる

心理的安全性が高まると、チーム従業員間の信頼が深まり、対人関係の悩みやストレスが軽減されます。このような安心した環境では、各従業員は自身の役割やタスクに集中し、そのパフォーマンスも向上します。
また、心理的に安定した状態で業務を進めることで、仕事のクオリティとスピードが共に高まり、組織としての競争力も増していくでしょう。
 

責任感ややりがいが感じられる

心理的安全性のある職場環境では、従業員一人ひとりの声が真摯に受け取られ、尊重されます。それが実感できると、個人はただのタスクをこなす労働者ではなく、プロジェクトや組織の重要な一部として自己を位置づけるようになります。自らの意見がチームの進行方向や決定に影響を与えると感じると、それが業務に対する責任感の向上につながります。
 

トラブルへの対処が早まる

心理的安全性が確立された職場環境では、個人はミスや課題を隠すことなく、すぐにチームや上層部に報告することができます。この透明性は、問題が悪化する前に迅速な対応を可能とし、組織全体のリスクを最小限に抑えるのに役立ちます。
また、ミスの発生源や課題の原因を共有することで、他の従業員や部門が同じ問題を繰り返すリスクを回避できます。
 

離職率が低下する

心理的安全性の高い職場環境は、従業員の働きやすさを大きく向上させます。このような環境では、従業員は自分の意見を自由に表現でき、ミスや課題についてもオープンに話すことができるため、職場でのプレッシャーや不安が減少します。また、自分の考えや価値が尊重されていると感じることで、所属意識や職場への愛着が高まるのです。
その結果、離職の主要な原因である「職場の人間関係のトラブル」や「仕事のストレス」が大幅に低減され、離職率が低下します。
 

優秀な人材が集まりやすくなる

心理的安全性の高い職場はエンゲージメントも向上します。高いエンゲージメントは職場の一致団結を生み、これが外部からの魅力となります。現代の求職者は、給与や福利厚生だけでなく、自分の意見が尊重される職場文化を重視する傾向があり、心理的安全性が確保された環境は優秀な人材を引き寄せる要因となります。
 

心理的安全性が低い組織はどうなるのか


 
組織やチーム内で心理的安全性が低いと、その影響は従業員の行動や意識に大きく現れます。
エドモンドソン教授が紹介する4つの行動特徴は、多くの組織で共通して観察されるものとなっています。
 

1.無知だと思われる不安(IGNORANT)

この感情が支配的となると、従業員は自らの知識や理解が不足していることを隠そうとし、質問や意見の共有を避けるようになります。実際には、質問することで学び、成長することができるのですが、心理的安全性が低い環境ではその行動を取ることがリスクとなるため、避けられがちです。結果として、学ぶ機会が失われ、組織やチーム内での情報の非対称性が増してしまいます。これは、意思決定の質の低下や、同じミスの繰り返しといった問題を引き起こす可能性があります。また、この不安から、新入社員やジュニアの社員が自分の考えや提案をオープンに表現することを控えることで、組織のイノベーションや多様性が阻害される恐れも生じます。
 

2.無能だと思われる不安(INCOMPETENT)

この不安は、従業員が自分のスキルや能力に対する自信を失い、自らの価値を低く見積もることから生じます。従業員は、他者から「無能」と見られることを強く恐れ、その結果、新しい挑戦や役割、あるいは自分の専門外のタスクへの取り組みを避ける傾向になります。これは短期的にはミスを避けるための安全策として働くかもしれませんが、長期的には従業員の成長やキャリアの拡大を妨げることになります。また、組織全体としても、新しいアイディアや斬新な取り組みが生まれにくい環境となり、時代の変化や競合他社との競争において後れを取るリスクが高まります。このように、一人ひとりの「無能だと思われる」不安が組織の進化や変革の足枷となることもあるのです。
 

3.邪魔をしていると思われる不安(INTRUSIVE)

この不安は、従業員がチームや組織の中で自分の存在や意見が邪魔となるのではないかという恐れから生まれます。例えば、自分の意見がマイノリティであった場合や、これまでの議論の流れと異なる提案を持っている場合など、その発言がグループの雰囲気を悪化させるのではと感じることがあるでしょう。その結果、そのような状況で沈黙を選び、自らの意見や考えを保留にしてしまうことが多くなります。しかし、このような行動は、組織やチームの多様性を損ない、真の意味でのコンセンサス形成やイノベーションの源泉となる多角的な視点の共有を阻害します。長期的には、組織の意思決定の質や問題解決能力の低下に繋がる可能性があります。
 

4.ネガティブだと思われる不安(NEGATIVE)

この感情が支配的となると、従業員は自らの意見や視点が否定される、または仲間からの反感を引き起こすと感じるようになります。特に組織内の新しいアイディアや変更提案をする際、彼らは自己検閲を強く行い、価値のある意見を封じ込める可能性が高まります。このため、組織は潜在的な問題点を見逃すリスクが増大します。さらに、従業員間の信頼の低下やコミュニケーションの遮断が起こり、チームの団結力が弱まる可能性があります。結果として、組織の適応性や問題解決能力が低下し、持続可能な成長への道が遮断してしまうのです。
 
これらの不安が従業員の中に生まれる原因として、組織文化や上層部の態度、コミュニケーションの取り組みなどが考えられます。
しかし、これらの問題を解消し、心理的安全性の高い組織を築くことで、多くのポジティブな変化がもたらされます。
 

心理的安全性を測る方法


 
心理的安全性はチームや組織の健全な機能を支える中核となる要素ですが、それを具体的にどのように評価・測定するのか、というのは非常に重要な問いです。この要素は組織において非常に重要視されており、具体的な方法が求められています。
 
エドモンドソン教授は、心理的安全性を具体的に測るための「7つの質問」を提唱しています。
この質問方法は、簡潔でありながらも非常に実用的。各質問に対して「強くそう思う」「そう思う」「どちらとも言えない」「あまりそう思わない」「そう思わない」という5択の形式で答えることができます。
 

7つの質問

・チームの中でミスをすると、たいてい非難される。
・チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える。
・チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがある。
・チームに対してリスクのある行動をしても安全である。
・チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい。
・チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない。
・チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。
 
これらの質問を定期的に実施することで、チームや組織の心理的安全性の状態を把握し、必要な改善策を導入する基盤を築くことができます。
特に今の時代、人々の意識や感覚は常に変わっていくもの。その変動をしっかりキャッチし、組織として柔軟に対応することが求められています。
 

心理的安全性を高めるために重要な4つの因子


 
心理的安全性は、チームや組織の中での信頼やオープンなコミュニケーションを築くためのカギとなる要素です。これを実現するためには、特定の因子に焦点を当てて取り組む必要があります。
 

心理的安全性をつくる4つの因子

・ 話しやすさ
チームの中で自由に意見や感じたことを共有できる環境を作ることは、心理的安全性を高める上で極めて重要です。このためには、他者の意見を尊重し、批判や非難を避けることが大切です。
また、アクティブリスニングの実践やフィードバックの文化を根付かせることで、意見を尊重する姿勢をチーム全体で育むことができます。
 
・助け合い
互いにサポートし合い、助けを求めたり提供したりすることが自然なチームは、心理的安全性が高いと言えます。こうしたチームでは、問題や困難が生じたときに迅速に対処することができます。
また、それぞれのメンバーが自分の強みや弱みを理解し、補完しあうことで、全体としてのチームの成果も向上します。
 
・挑戦
新しいアイディアや取り組みを恐れずに提案できる環境は、成長と革新の基盤となります。チームが挑戦を恐れない文化を持っていると、それが心理的安全性を強化する要因となります。このような環境では、失敗を恐れずにリスクを取ることが推奨され、失敗から学びを得ることが重視されます。
 
・新規歓迎
新しいメンバーや考え方を受け入れる柔軟性は、多様性と包摂性を促進し、心理的安全性を高める要因となります。新入りの意見や視点は、固定観念に囚われない新鮮な発想をもたらし、チーム全体の革新性を刺激します。
また、新メンバーが自分の意見を安心して表現できる環境を提供することで、従業員満足度やモチベーションも向上します。
 
他にも心理的安全性を作る方法はあります。
 

マネジメント手法

・OKR
目標と結果を明確にし、全員が共通の方向性を持って取り組むことで、互いの期待と役割を明確にすることができます。
 
・1on1ミーティング
マネージャーと部下が直接対話することで、信頼関係を築き、心理的安全性を高めることができます。
 
・ピアボーナス
チームの中でお互いを評価し合うことで、感謝の気持ちを共有し、チームの結束を強化することができます。
 

チーム・環境づくりで意識すること

心理的安全性を高めるためのチームや環境づくりは、組織全体の文化や価値観を形成する上で不可欠です。具体的な取り組みとしては、フィードバックの文化を根付かせたり、失敗を許容する環境を作ること、全員が参加する意思決定プロセスを導入することなどが考えられます。
 

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チームや組織の心理的安全性を作るには、”褒める”ことも効果的です。
 
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RECOGは、感謝や称賛を通した双方向のコミュニケーションを叶えるサービス。アプリを通じて「レター」を贈ることで、行動や成果を日常的に”褒める”ことができます。
レターを受け取った従業員は「自分のがんばりが認められている」「自分はチームの役に立っている」という実感が得られます。
その結果、心理的安全性が作られ、結果的にパフォーマンスの向上や組織の成長につながるでしょう。
 

まとめ

心理的安全性は、チームや組織内での信頼やオープンなコミュニケーションの基盤となる要素です。
本記事で、心理的安全性の定義から具体的な作り方、4つの重要な因子まで詳しく解説しました。
この知識を活用し心理的安全性の高いチーム・組織にしてみてはいかがでしょうか?
 
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