モチベーションの意味
モチベーションは、ラテン語の「move」に由来します。moveは「何かに向かって動き出す」という意味合いをもち、モチベーションというときには、行動や決断のきっかけとなる「動機付け」という雰囲気で使われます。モチベーションは「やる気」や「意欲」と混同されがちですが、厳密には異なるため区別しましょう。
やる気と意欲は、それぞれ「行動を継続させるための力」を意味します。やる気と意欲が生まれるのは、モチベーションという原動力ありきです。
モチベーションの仕組み
「行動の実行により得られるメリット」があると、モチベーションが高まります。マズローの欲求5段階説では、人は生理的・安全的など低次の欲求が満たされない限り、高次欲求に興味を示さないとされています。つまり、社員の仕事に対するモチベーションを高めるには、まず低次欲求を満たす必要があります。
ただし、人によって欲求の対象、置かれている環境は異なります。マズローの理論だけをもとに社員の低次欲求を満たすよう働きかけても、全員のモチベーションが高まるとは限りません。
モチベーションアップにつながる2つの動機付け
行動や決断のきっかけとなる動機付けは「内発的」「外発的」の2つにわけられます。それぞれの動機付けについて詳しく解説します。
◾︎ 外発的動機付け
外発的動機付けでは、報酬や賞賛などの外的要素をトリガーにモチベーションを高めます。なお、外発的動機付けは一時しのぎになりがちで、経営者の予想を超えるモチベーションを生み出すのは困難です。外発的動機付けの具体的欲求について、以下で解説します。
生理欲求
生理欲求とは生命維持にかかわる欲求で、食欲・性欲・睡眠欲などが挙げられます。人間の根底にある欲求であるため、何もしなくても自然と湧き上がります。
安全欲求
衣食住の「衣・住」に関わる欲求です。「不安定な生活を脱したい」「安心できる環境を手に入れたい」という気持ちから、身体的な安全と経済的安定を求めます。評価体制、給与など金銭的報酬、懲戒などペナルティなどが安全欲求に影響を及ぼします。
社会的欲求
グループや仲間に属したいという社会とのつながりを求める欲求です。「自分の存在を受け入れてほしい」「愛されたい」「必要とされたい」という気持ちから生じます。
◾︎ 内発的動機付け
内発的動機付けでは、個々の心から生まれる目標意識や好奇心などをトリガーにモチベーションを高めます。報酬などの準備が不要な一方、どの程度モチベーションが向上したのか把握しにくいという問題があります。内発的動機付けの具体的欲求について、以下で解説します。
承認欲求(尊厳欲求)
他者からの尊重や尊敬を求める欲求です。外発的動機付けの社会的欲求が満たされると、それぞれが所属する社会に対して承認欲求が芽生えます。円滑な人間関係、会社への帰属意識などが挙げられます。
自己実現欲求
理想やイメージを実現したいという欲求です。自主性やチャレンジ精神を生み出し、働き方を考えるようになります。「自分らしく生きたい」「夢を叶えたい」など、もっとも人間らしい欲求といえます。
モチベーションアップによる企業メリット
社員がモチベーションアップすると、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。企業のメリットについて解説します。
◾︎ 採用コストを削減できる
社員が現状を肯定的に捉えるため、離職率が低下します。離職率が低下すると、人材補充を目的とした採用活動の必要がありません。加えて、イメージアップにより採用倍率が高まります。結果、採用コストを削減可能です。
◾︎ 人材育成の効率が上がる
「知識やスキルを仕事に活かせる」というメリットから社員のモチベーションが高まり、自発的な行動が増えます。人材育成をスムーズに進行できるため、個々のスキルアップが効率よくすすみます。
◾︎ 生産性の向上につながる
社員一人ひとりの集中力やパフォーマンスが高まると、企業全体の生産性が促進されます。個々のモチベーションアップが周囲との相乗作用を引き起こし、企業全体の士気を高めるためです。
モチベーションアップの具体策5つ
社員のモチベーションアップにより、企業は多くのメリットを得られるとわかりました。モチベーションを高める具体策を5つ紹介します。
◾︎ 社員がチャレンジしやすい環境を整える
チャレンジするメリットを感じさせ、モチベーションを生み出しましょう。経営層から管理職、そして担当へと指示が伝わるトップダウン方式では、社員の自主性やチャレンジ意欲を奪いかねません。また、やりたいことがあっても失敗を恐れる環境では行動が困難です。社員の意見を積極的に取り入れつつ、気兼ねなくチャレンジできる職場環境を構築してください。
◾︎ キャリアアッププランに合う働き方を準備する
社員それぞれの理想のライフスタイルやキャリアプランにあわせて働き方を選べると、モチベーションアップにつながります。また、出産や子育て、介護などを経験するとき、仕事を続けるメリットが小さければモチベーションが湧きにくいです。ただし、時短勤務やリモートワークなどで働き方を選べると、仕事を続けることに前向きになり、働くモチベーションを維持できると考えられます。社員が挫折することがないようにサポートしましょう。
◾︎ コミュニケーションを活性化する
職場の人間関係がうまくいかなければ、社会的欲求が満たせないため仕事へのモチベーションは低迷します。また、コミュニケーションが円滑にとれると、社員同士でノウハウの共有や助け合いができます。職場環境に不安があれば、社内専用の相談窓口を開くなどして悩みを解決し、コミュニケーションの土台を作りましょう。
◾︎ 評価と感謝をしっかり伝える
結果とプロセスの両方を評価し、感謝の気持ちを伝えましょう。承認欲求が満たされるためモチベーションが高まり、会社への愛着がわきます。昨今では「サンクスカード」という制度が注目されています。サンクスカードとは、感謝や賞賛の気持ちをカードに手書きして、相手に手渡す制度です。手書きや手渡しに負担を感じる人に向け、アプリでサンクスカードを送り合う仕組みも開発されています。
◾︎ 会社の方向性を共有する
企業の経営方針やビジョン、目標や達成すべき使命を社員一人ひとりに理解してもらいましょう。会社の方向性がわかれば、会社への帰属意識が高まり、モチベーションが湧きます。また、取り組むべき行動を考えるときには、企業の方向性を理解しているとスムーズだからです。
モチベーション維持のコツ
社員のモチベーションを高められたとしても、持続できなければ元の状態に戻ってしまいます。モチベーション維持のコツについて紹介します。
◾︎ 将来のビジョンと目標を持たせる
将来のビジョンと目標を明確にしましょう。たとえば、お手本となる先輩社員を見つけさせる、研修などで企業理念や経営方針について通達するなどの方法が挙げられます。ゴールがわかっていると、努力しやすく成果を得やすいです。
◾︎ 振り返りの機会を持ち改善策を見つけさせる
アドバイスやフィードバックをしたあとは、社員自身に改善策を考えさせるように習慣化させましょう。ただし、過剰に振り返りを促すと、社員は疲弊してしまいます。企業の狙いとは裏腹にモチベーションの低下をもたらすため、無理のない範囲で実施してください。
◾︎ 自己回復の時間を確保する
睡眠不足や不規則な食事、ストレスなどはモチベーション維持に悪い影響を及ぼします。低次欲求が満たされないことには、仕事に対する欲求が湧きにくいです。社員が優れたパフォーマンスを発揮できるよう、自己管理の徹底を促しましょう。
モチベーション低下の原因は?
社員のモチベーション低下を防ぐためには、原因や背景への理解が大切です。考えられるモチベーション低下の原因について解説します。
◾︎ 人事評価に不満がある
「頑張っているのに評価されない」「怠惰に見える社員が高評価を受けている」など、人事評価への不満を抱える社員も少なくありません。どのような立場からみても公平な評価と感じられるよう、明確な評価基準を定め周知しましょう。
◾︎ 報酬が低い
労働に見合った報酬が支払われないと、仕事の目的や動機を見失いやすくなります。仮に、業績不振などもっともな理由があったとしても、給与減額や賞与カットはモチベーション低下につながりやすいです。また、不満を抱えたまま仕事をすると、生産性に影響するかもしれません。
◾︎ 職場内の人間関係に悩みがある
いきすぎた個人主義、パワハラなどがみられる職場では、人間関係のトラブルが起きがちです。トラブルによるストレスは、社員のモチベーションに大きな影響をもたらします。特に、相性がよくない人とチームやペアを組んで働く場合は、仕事の遅延・質の低下が懸念されます。
◾︎ 会社への帰属意識が低下している
企業やチームに対する愛着心や忠誠心が薄れると、社会的欲求や承認欲求が満たされにくくなります。たとえば、チーム編成や評価基準を改めたときに、自分にとって好ましい環境ではなくなったと感じる社員が出てくるかもしれません。社員の帰属意識の動向に気をつけてください。
◾︎ 仕事にやりがいや魅力を感じられない
仕事にやりがいや魅力を感じられず、「義務」と捉えている場合はモチベーションが低下しやすいです。さらに、誰からも評価や感謝をされなければ、仕事に意味や達成感を見出せません。仕事の目的や意義を再確認してもらい、あわせてやりがいや魅力を伝えましょう。
モチベーションアップで気を付けたい3つのポイント
社員のモチベーションを上手く高めるにはコツがあります。気を付けたいポイントについて解説します。
◾︎ 「やる気」と区別する
「やる気・意欲」は目に見えず、周囲の働きかけで持続させるのは困難です。特に体調やメンタル面などは、状況しだいで簡単に変化します。したがって「やる気を出せ」などというだけではモチベーション向上が見込めません。
◾︎ フィードバックのタイミングと伝え方に配慮する
心に響くフィードバックのために、タイミングや伝え方を意識しましょう。ポイントは、すぐ伝えることです。時間が空くと記憶があいまいになってしまいます。また、感情的・抽象的な表現は避け、具体的なフィードバックを心がけてください。
◾︎ 画一的な対応を避ける
社員それぞれ、ライフスタイルや仕事へのモチベーションは異なります。そのため、画一的な対応では逆効果かもしれません。個人に関心を持ちつつ、モチベーション低下の原因に寄り添う姿勢が求められます。
まとめ
社員のモチベーションが高まると、企業にとって大いにメリットがあります。モチベーション向上施策として、職場環境を改善する、感謝や賞賛の気持ちを伝えあうなどの対策を取りましょう。「サンクスカードのデジタル化」もおすすめです。
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