コラム

官僚主義とは?組織の特徴とデメリット、改善策

官僚主義とは?組織の特徴とデメリット、改善策

公開日: 2025.12.04
更新日: 2025.12.04

官僚主義とは古くからのルールやマニュアルを重視し、新しい考えや技術などの採用に消極的な組織のあり方です。官僚主義が定着した組織は、意思決定のスピードや従業員のモチベーションなどの低下へとつながるリスクをはらんでいます。

 

本記事では、官僚主義が定着した組織の特徴やデメリットの内容、改善策などを紹介します。

 

意思決定スピードの低下に苦しむ企業、組織としての一体感が高まらずにお悩みの企業は、参考にしてみてください。


 

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官僚主義とは

 

官僚主義とは古くからの慣習やルールを好み、新しい考えや技術などの導入をリスクと捉える組織のあり方です。安定志向が強く、前例踏襲やマニュアル通りの業務遂行が推奨されるため、新しいアイデアや挑戦が生まれにくい状態です。

 

官僚主義は創業年数の長い企業、過去に大きな成功を収めた大企業に表れやすく、大企業病とも呼ばれています。ただしリスクを嫌い、形式やルールを重視する場合は、中小企業でも官僚主義に陥る可能性があります。

 

「官僚制」は合理的な組織モデル

官僚制とは大規模組織において、合理的かつ合法的な権威をもとにした管理システムです。ドイツの社会学者マックス・ヴェーバーの著書『支配の社会学』で、官僚制が提唱されました。

 

官僚制の特徴は、明確なルールと階層にもとづき組織を管理している点です。職務規定や階層秩序、業務フローなどに照らし合わせ、事業運営や業務遂行を実施します。

 

合理的なルールにもとづいた組織運営によって、創業者や社長などの影響力が大きい人物が不在でも、安定した組織運営が可能です。

 

ただし、組織内の権限は階層ごとに決められており、誰もが組織にとって重要な意思決定を下せるわけではありません。階層構造で意思決定権と責任の所在を明確化しておくことで、トラブルが起きても早期解決が望める状態です。

 

ヴェーバーが提唱した官僚制は組織運営を効率化・合理化する手段として、現代でも大企業や政府機関、学校など、さまざまな組織で導入されています。

 

官僚主義=官僚制の本来の目的を見失った状態

官僚制はスピーディーな意思決定や公平な組織運営など、多くのメリットが望めます。ただし、官僚主義が定着した組織は、官僚制のメリットを失っている状態です。

 

官僚主義は、従来の方法や手続きによる業務遂行を重視しているため、柔軟かつ素早い対応が困難です。

 

また、官僚主義が定着すると、従業員が上下関係や利害関係などに縛られるようになります。一部の管理職や経営層などに権限が集中する傾向にあるためです。

 

権限や利害関係へ強い執着をもつ従業員が増えた場合、自身の利益につながる行動を優先する傾向が強くなるため、職場の雰囲気や人間関係の悪化を招きかねません。


 

官僚主義組織の特徴

官僚主義が定着した組織はリスクを避けるため、意思決定に時間がかかる傾向にあります。ほかにはどのような特徴があげられるでしょうか。以下で官僚主義が定着した組織の特徴を5つ紹介します。

 

意思決定プロセスが複雑で時間がかかる

官僚主義が定着していると、リスクや失敗を避けるため、判断を下す際は上司からの承認を必ず得なければなりません。そのため、組織に与える影響が小さい意思決定だとしても、1つの判断を下すのに多くの時間がかかります。

 

また、企業によっては承認フローが複雑化して、複数人からの承認が必要となるため、判断や意思決定にさらに時間がかかります。

 

ルールや手続きを過剰に重視する

官僚主義に陥った組織は、ルールやマニュアルに沿った業務遂行が強く推奨されます。効率的な方法を提案しても、ルールから外れている場合はリスクと捉えられ、上司から従来の方法を指示されるでしょう。

 

ルールや手続きを過剰に重視した結果、ミスの発生や対応の遅れにつながることが懸念されます。顧客によっては担当者に対して「仕事が遅い」との印象を抱くようになり、今後の取引に悪影響を及ぼすリスクも生じます。

 

ヒエラルキーを重んじる

官僚主義が定着した企業で働く従業員は、組織内の上下関係や権限、地位を重視している傾向にあります。なぜなら、権限のある人物の意見や方針が社内で通りやすくなるためです。

 

トップダウン型の経営方針で、経営層や管理職などの影響力が強くなりすぎると、現場の不満の要望も届きにくくなり、組織としての一体感は高まらないでしょう。

 

決定権のない従業員が反対意見を述べても、聞いてもらえない状態が続く場合、決定権をもつ経営層や管理職からの意見に誰も反論しなくなるためです。

 

部門がサイロ化している

官僚主義が定着した組織は閉鎖的で従業員同士の協調性が低いため、部門間のサイロ化が生じる可能性が高まります。

 

サイロ化とは組織や部署同士が連携しておらず、業務の進捗状況やナレッジなどに関して情報共有が十分にできていない状態です。部門間のサイロ化が起きる原因の1つには、縦割り組織の定着があげられます。

 

縦割り型の組織は部門ごとの目標達成に向け、集中して取り組める点が特徴です。一方、部門ごとに業務の進め方が確立されているため、自部門の利益獲得や目標達成を最優先する傾向が強くなります。

 

結果として部署間での協力意識が薄れ、コミュニケーション不足や部門間の対立を招く可能性が高まります。

 

「前例踏襲」や「リスク回避」が常態化している

官僚主義に陥っている組織は、過去のルールやマニュアル、成功体験に固執している状態です。。前例踏襲を優先するため、ルールやマニュアルに記載されていない内容は、すべてリスクと捉えがちです。

 

また、官僚主義では上司から指示された内容通りに業務を進めることも推奨されます。指示通りに仕事をこなすのが常態化した場合、従業員が自発性や自律性を発揮する機会がほとんどありません。

 

困難な目標へ挑戦する機会や自ら考えて判断する機会が減るため、新たなアイデアが生まれにくくなります。


 

官僚主義に陥る主な原因

 

官僚主義が定着する原因は企業によって異なるものの、以下3つの内容は官僚主義に陥る代表的な原因といえるでしょう。

 

組織の規模拡大と複雑化

組織の規模拡大により従業員数や部門数が増えると、経営者は細かなところに目が届かなくなるため、ルールや手続きを増やさなければなりません。

 

また、組織構造が複雑化していくことで、1つの決定が全体に与える影響が大きくなるため、複数の意思決定者の判断が必要となります。こうした原因が、官僚主義に陥る引き金になります。

 

失敗を恐れる責任回避文化

官僚主義が定着すると組織全体で失敗を過度におそれるようになり、新しい挑戦が生まれにくくなります。前例踏襲や規則遵守が評価される以上、従業員がリスクを犯してまで新しいことに挑戦しようと思わなくなるためです。

 

組織全体でリスクや責任を回避する傾向が強くなると、従業員は自身の担当業務や上司から指示された内容以外、積極的に関わろうとする姿勢が薄れます。組織全体に「事なかれ主義」が蔓延し、従業員が主体的に動く機会はほとんどなくなるでしょう。

 

権限の集中

大きな成果をあげた部署や一部の従業員に権限を集中して固定化するのも、官僚主義を招く原因の1つです。権限をもつ人物の意見や方針が社内で通りやすくなり、権限のない従業員が反対意見を述べづらくなるためです。

 

自分たちの考えを聞き入れてもらえない状態が続くと、次第に「反対意見を言っても聞いてもらえない」と思うようになり、事なかれ主義が蔓延します。仮に間違った指示や方針を示しても、反対意見を述べる者はいないでしょう。

 

また、組織内での発言力や影響力向上に向け、部門ごとに既存の権限や利益を守る意識が強くなるケースも想定されます。組織内での派閥意識や縄張り根性が強くなると、協調性が低下するため、部門間の連携は望めないでしょう。


 

官僚主義に陥るデメリット

 

官僚主義が定着した組織は、官僚制の特徴である合理的な組織モデルからは程遠い状態です。官僚主義に陥ると、以下4つのデメリットが生じます。

 

意思決定の遅れによる機会損失

官僚主義に陥っている組織は意思決定が遅く、新たな取引を逃すリスクが高まります。ルール通りの業務遂行や上司からの承認が優先されるため、手続きが遅くなりやすいためです。

 

たとえば、顧客から翌日までに見積書の提出を依頼されたとしましょう。社内ルールで複数人からの承認・押印が必要な場合、翌日までに見積書が出せないこともあるでしょう。

 

また、競合他社が素早く動くなか、社内調整や手続きに時間が取られてしまうと、市場の変化にも柔軟に対応できません。

 

既存商品の改善や新商品販売などの重要な決定が先延ばしされ、新たなビジネスチャンスを逃す結果となります。

 

現場のモチベーション低下

一部の経営層や管理職に権限が集中すると、現場の声が届きにくくなり、従業員のモチベーションが低下します。

 

経営層や管理職の方針に意見を述べても、権限のない従業員の声を聞き入れてもらえるとは限りません。要望を聞き入れてもらえない状態が続いた場合は職場への不満が溜まり、最悪の場合は離職につながるでしょう。

 

また、指示通りに業務をこなす姿勢が高く評価される組織では、従業員の積極性が失われます。もしも指示内容と異なる方法を実践して成果につながっても、評価される見込みは低いでしょう。

 

そのため、自分で考えて行動するよりも、言われたことだけをやる方が楽になり、組織全体のモチベーション低下を引き起こします。

 

イノベーションの停滞

官僚主義が定着した組織では、業務改善や新商品開発などのアイデアなどを提案しても、採用される可能性は低いといえます。現状維持の姿勢が強く、前例のない挑戦はすべてリスクと捉えられるためです。

 

アイデアを却下される経験が何度も続くと、従業員は「現場の意見は届かない」「どうせ却下される」と感じ、新しい挑戦を試みる意欲が低下してイノベーションが停滞するでしょう。

 

優秀な人材の離職

官僚主義が定着した場合、優秀な人材が流出する可能性が高まります。

 

安定志向が強い組織では、自社の利益につながる行動を起こしても、マニュアルや上司の指示から外れている場合、組織内部からは評価されません。自身の能力や創造性を存分に発揮できない状態が続いた場合、新たな環境を求める従業員も出てくるでしょう。

 

また、官僚主義に陥った企業はささいな決定を下す際も、業務フローやルールに沿った手続きが優先されがちです。無駄な業務が増えるだけでなく、顧客の利益につながらないため、嫌気がさした従業員が離職する懸念もあります。


 

官僚主義を改善するための具体策

官僚主義から脱却するには、現場の従業員が働きやすい環境を整えることが重要です。具体的な対策として、以下5つの内容があげられます。

 

意思決定プロセスを簡素化する

意思決定プロセスの複雑化によって、スムーズに意思決定ができない場合は、見直しが必要です。少額の備品購入や見積書提出のために、何人もの管理職から承認を得なければならない体制では、スムーズに業務が進みません。

 

「課長の承認は購入金額が10万円以上の場合に必要」「承認者は2人まで」など、承認プロセスを見直し、意思決定のスピードを速めましょう。

 

また、すべての判断を経営層や管理職が下すのではなく、現場へ積極的に権限譲渡を進めることも重要です。現場の裁量権が増えると、状況に応じた判断を素早く下せるようになり、業務効率や従業員の当事者意識が高まります。

 

無駄なルールの見直し・廃止を行なう

官僚主義からの脱却には、不要な会議や申請書、報告書を削減し、従業員が業務を進めやすい環境を整備することも必要です。

 

たとえば、毎週月曜日の部内会議を行なう理由が「以前からの慣習」という場合、会議を開催する意義はほとんどありません。

 

会議の開催には多くの事前準備が必要なため、目的が不明確な会議は従業員の時間や労力を無駄にします。まずは自社のルールを洗い出したうえで、それぞれの目的を改めて確認し、「やめても差支えないもの」を見極めることが重要です。

 

現場の裁量を拡大する

現場の従業員が自発的に判断して業務を進められるよう、意思決定権を譲渡していくことも重要です。経営層や管理職がすべてを判断する組織体制の場合、複数人からの承認や会議の実施などで承認プロセスが長期化し、業務がスムーズに進みません。

 

現場で決定できる事柄が増えると、従業員が業務を進めやすくなりモチベーションも高まるでしょう。

 

組織の縦割りを廃止しフラットにする

組織が縦割りが原因で、部門間連携や従業員同士の交流が著しく少ない場合は、フラットな組織体制に転換するのも1つの方法です。

 

たとえば、自社で新しいサービスを開発する際は、人事や営業、マーケティングなど、さまざまな部署から人材を集めて、プロジェクトチームを編成するとよいでしょう。

 

部署を問わないフラットなチーム体制によって、さまざまな視点から意見が飛び合い、新たなアイデアが生まれやすくなります。

 

また、組織内での縦割り文化をなくすには階層を減らし、部門横断的なコミュニケーションが取りやすい環境を作ることも重要です。従業員同士の交流機会を増やすことで、互いの仕事ぶりや貢献などを把握できると、相互理解が深まります。

 

従業員同士の相互理解が深まると、業務の進捗状況や連絡事項などを共有する機会も増え、部門間が協力しやすい組織体制が形成されるでしょう。

 

「挑戦」を称賛する文化に変える

官僚主義からの脱却には、前例のない提案や行動に対して称賛する文化も求められます。

 

新しい挑戦をリスクと捉える姿勢が続く限り、官僚主義から脱却するのは困難です。しかし、プロセス重視の評価体制への変更や評価項目に積極性を追加するなど、人事評価制度を見直すと、従業員が安心して挑戦できる環境を整えられます

また、自社に称賛文化を定着させるには、サンクスカードの導入も有効です。サンクスカードとは、従業員同士が自発的に互いの仕事ぶりに対して感謝や称賛の気持ちを伝え合うカードです。

 

サンクスカードを贈り合うことで、自然と誰かの挑戦を評価・称賛する習慣の定着が期待できます。


 

サンクスカード導入にはチームワークアプリ「RECOG」

サンクスカードを導入して称賛文化を醸成するには、社内に定着するために「手軽さ」「使いやすさ」「分析のしやすさ」が重要です。チームワークアプリ「RECOG」は、サンクスカードを通じて感謝・称賛を贈りあい、組織活性化の実現が期待できます。

 

パソコン・スマホ対応のため営業担当者や店舗スタッフでも利用しやすく、使いやすいインターフェースでITツールが苦手な方にも喜ばれています。

 

RECOGの詳細は以下の資料で紹介しているので、ぜひダウンロードしてみてください。

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まとめ

官僚主義は古くからのルールを重視し、新しいことへの挑戦をリスクと捉える組織のあり方です。マニュアルや上司の指示通りに業務をこなす従業員が高く評価されるため、新しいアイデアやイノベーションが生まれにくくなります。

 

一部の経営層や管理職に権限が集中した状態が続くと、現場で働く従業員との間に距離が生まれ、モチベーションや生産性の低下を招くでしょう。

 

官僚主義から脱却するには、意思決定プロセスの簡略化や無駄な会議・書類を廃止し、現場で働く従業員が業務を進めやすい環境を整備しなければなりません。

 

また、新しい挑戦を積極的に評価する文化醸成も必要となります。本記事の内容を参考に官僚主義から脱却し、従業員が積極的に挑戦する文化を作ってみてはいかがでしょうか。


 

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