株式会社リテラル様は、大阪・梅田に本社を置くシステム開発会社です。ITと福祉を主事業に、人材、農業、教育、飲食を加えた6事業を展開し、将来的には10の事業をシナジーさせることを長期ビジョンに掲げています。従業員35名のうち、約3割が障がいをもつスタッフです。
自社にシステム開発の体制がありながら、社内SNSは自社開発せずRECOGを選択。投稿ルールも評価基準も設けない運用で定着させ、面識のなかった福祉事業部とシステム開発部の連携からは、新サービスの検討まで進んでいます。
今回は、代表取締役の船越様に、ツール選定の考え方から現在の活用までをうかがいました。
―RECOG導入以前は、社内にどのような課題があったのでしょうか。
複数の事業を展開して就労支援の事業所も拠点がバラバラになっていくなかで、各事業部がどのような仕事をしているのかという情報共有がまったくできていないという課題を抱えていました。せっかく成果を上げていても、それが他の事業部に伝わらないままになってしまうことは、会社にとって大きな損失だと考えていました。
また、事業が増えていくにつれて、私や他の役員もいろいろなアクションを起こしているのに、それを従業員に発信できていないことにも歯がゆさを感じるようになりました。会社が次の一手として何を考えているのか、どういう方向に進もうとしているのか。現在の事業は従業員やマネージャーが回してくれているからこそ、その先の話を伝えられていない状態でした。

事業部間のシナジーをあらわすリテラル社のビジョンMAP
―情報共有の手段として、どのような選択肢を検討されたのでしょうか。
まず、定例ミーティングや全体集会を開くという方法は選びませんでした。社内イベントとして場を持ってもよかったのですが、それは果たして従業員全員がポジティブな気持ちで臨めるのかな、と想いがあったためです。会社からの発信を受け止める気持ちは人によってさまざまですし、集められて話を聞くというかたちだと、どうしても構えてしまう方もいるでしょう。全員が楽しみながら情報共有できる方法にしたかったので、社内SNSにしようと決めていました。
当社はシステム開発会社ですから、その社内SNSを自分たちで作るという選択肢もありましたが、自社開発は検討していませんでした。自分たちでシステムやツールを作るという方針が、当社にはありません。
開発には時間もリソースもかかります。当社のエンジニアはお客様の案件を担っていますから、そこを社内ツールの開発に割くのは事業として合理的ではありません。それに、社内向けのツールを作った経験値もないので、本当に使いやすいものを一から設計できるとも思えなかったんです。作れるかどうかと、作るべきかどうかは別の話だと考えていました。
もうひとつ、他社のサービスを利用することで、また違うつながりや発見が生まれるという期待もありました。自分たちで作ってしまうと、どうしても今の自分たちが想像できる範囲のものにしかなりません。外のサービスを使えば、開発している会社の考え方や、自社にはなかった機能の発想に触れることができるため、「こういう使い方があるのか」という気づきは社内だけを見ていては得られないものです。
社外との接点が生まれることも、当社にとっては価値があります。10事業のシナジーを目指している会社ですから、外とつながることそのものが次の事業のヒントになり得るのです。だからこそ、社内SNSは他社のサービスを使うと決めて探し始めました。
―RECOGに決めた一番の決め手は何でしたか。
最終候補は4つほどありました。そのなかからRECOGに決めた理由は、称賛のレターを贈り合えるという機能が、当社の企業文化とぴったりはまっていたことです。ここに尽きると言ってもいいくらいですね。
情報共有ができるだけのツールでは足りないと考えていました。情報共有に称賛というエッセンスが加わることが、当社には必要だったのです。
というのも、当社は障がいをもっている方も含めて、多様性のあるメンバーが一緒に働いています。そのなかには、これまでの経験から自己肯定感が低くなっていたり、自分の力に自信をもてずにいたりする方も少なくありません。そうした方が安心して意見を出したり、失敗を恐れずに挑戦したりできる環境をつくることは、経営として何より優先すべきことだと考えていました。一人ひとりが「ここにいていい」と思える状態を、まずつくりたかったのです。
称賛の文化は、絶対に自己肯定感を高めてくれると私は考えています。自分がやったことに対して、みんなが称賛のレターを贈ってくれる。そのレターを見た他のメンバーも、拍手で称賛してくれる。面と向かって伝えてもらうこともうれしいですが、みんなから称賛されるというのは、やはり格別なものだと思うんですよね。承認欲求が満たされることで、自信につながっていきます。
当社は経営理念に「ITを通じて人を育み、多様性を認め合いながら、仕事で輝ける社会を実現する」と掲げています。採用で求める人物像にも「それええやん、と言って他人を認めることができる方」と書いているくらいですので、称賛を贈り合うツールというのは、そのまま当社の理念の延長線上にありました。
情報を共有するだけの場であれば、他のツールでもよかったはずです。そこに称賛が乗ることで、情報共有が「知らせる」だけで終わらず、お互いを認め合う機会になります。それがRECOGを選んだ理由です。
―導入にあたって大切にされたことはありますか。
当社の風潮でもあるのですが、「自由」であることです。投稿しなくてもログインしなくても、それを咎めるようなことはしません。使いたいように使ってもらえればいいと思っていました。
従業員のなかには「ネガティブな投稿があったらどうしますか」「こういう投稿をしても大丈夫ですか」といった不安はありました。「土日でも通知が届くけれど、それは大丈夫ですか」という声もありましたね。ガイドラインが必要ではないか、という意見も出ました。
そこは厳密にルール決めをせず、「土日はあまり投稿せず、勤務日に投稿するようにしてね」という、ごく簡単なグラウンドルールを作ったくらいです。ガイドラインをつくって堅苦しく定めるのではなく、まずは手軽にやってみようと考えました。
ルールで縛れば、投稿は「やらなければいけないこと」になってしまいます。それでは称賛を贈り合う文化にはなりません。自由にしたからこそ、伝えたいことがある人がそのタイミングで投稿し、見る側も気負わずに眺める。その状態が今も続いているのだと思っています。
―投稿数などを評価に反映させることも検討されなかったのでしょうか。
まったく評価していません。
導入当初、従業員からは、それぞれにアカウントが割り当てられるので情報を発信せずにみんなの投稿やレターを眺めているだけで大丈夫なのかな、という不安の声も聞きました。レターを贈らないことが会社の評価につながるのではないか、と考えた従業員もいたはずです。
私は評価にはつなげない、眺めているだけでも構わない、というスタンスでいましたので、そう伝えていくことで徐々に不安は解消されていきました。称賛のレターが流れている場所を見ていて嫌な気持ちになることはありませんし、見ているだけでも自己肯定感につながる部分はあるはずですから。
評価から切り離したことで、「贈らなければいけない」という気負いがなくなり、それぞれのペースで使ってもらえるようになりました。義務ではないところから始めたほうが、結果として長く続くのだと思います。
―社内への定着はどのように進められたのですか。
私が説明したというよりは、シンクスマイルのご担当者に進めていただきました。全社員に向けたオンラインでの説明会を開いていただき、そのうえで各事業部のマネージャーや店長が現場の質疑応答をまとめて解消していく、という流れです。各事業部の責任者が、自分の管轄する事業部に責任をもって浸透させていってくれました。
シンクスマイル担当者の対応は、とても丁寧で印象に残っています。導入前の事前説明から、利用を始めたあとの定着に向けた支援まで、「こんなに丁寧にしてもらっていいのかな」「こんなにお時間をかけてもらって大丈夫なのかな」と思ったくらいでした。おかげで、あまり苦労した記憶がありません。
ITに不慣れな従業員もいるのですが、意外と大丈夫でしたね。普段使っているSNSと同じような感覚で、スマホから数タップで投稿やレターを贈ることができるので、操作を覚える必要がほとんどありませんでした。使い方の質問が現場から次々に上がってくるようなことも起きず、ログインしないまま止まってしまう人もいませんでした。
そして、こういう投稿はOK、こういう投稿はNGということは決めずに自由にやってもらった結果、ネガティブな投稿は今まで一度もありません。制限しなかったからこそ、それぞれが自分の判断で、お互いを気遣った使い方をしてくれているのだと思います。
―導入前に使われていたツールとの使い分けはいかがですか。
業務でChatworkやSlackを使うことはありますが、お客様とのやり取りも含みますので、完全に業務用として切り分けています。RECOGのトーク機能は、社内で企画をしたり連携をしたりするために使っています。
社内の連絡については、導入前はLINEで取り合うこともありました。ただ、当社には個人情報に敏感な従業員が結構いて、「LINEは会社では使わない」と言ってLINEでの連絡を拒むメンバーもいたんです。プライベートで使っているアカウントを仕事の相手に伝えることになりますから、抵抗があるのは当然だと思います。RECOGのトーク機能であれば、会社が用意したアカウントの中だけでやり取りが完結するので、そうしたメンバーにも安心して使ってもらえています。
―そのトーク機能によって、社内で変化が生まれたとお聞きしました。
事業部間の連携が、非常にスムーズになりました。現在は、システム開発部と福祉事業部がトーク機能で専用のルームをつくり、福祉の現場で起きている業務課題をシステムで解決するプロジェクトを進めています。
もともと福祉事業部とシステム開発部には、接点がほとんどなかったんです。事業所も離れていますし、仕事の内容もまったく違いますから、お互いに何をしているのかを知る機会がありませんでした。
変化のきっかけは、スレッドで情報共有をするようになったことで、事業部をまたいだ課題が見えるようになったことです。福祉事業部が紙やExcelで管理している情報について、「システム開発部があるのだから、AIを使って高速にソリューションを作れるよね」という話になりました。それなら、作るにあたってのやり取りもRECOGでやろうと。専用のプロジェクトメンバーとして、福祉のメンバーとITのメンバーをつないだトークルームを作りました。

今はトークルームでやり取りをしながらAIで開発を進めていて、すごくいいものができあがりつつあります。社内の課題解決だけでなく、今後はこれをサービスとして展開することも検討しているところです。
当社は10の事業をそれぞれシナジーさせることを長期ビジョンに掲げていますが、これまでのシナジーは経営として意図して組み合わせてきたものでした。現場のメンバー同士から新しい事業の種が生まれたのは、これが初めてです。RECOGを通じて事業が成長できている実感は、大きな価値だと考えています。
―拠点も事業も異なるなかで、日常的なやり取りは生まれているのでしょうか。
当社は拠点が離れているだけでなく、事業所ごとにやっている事業もまったく違います。ITや福祉、農業など事業が異なるので、リアルの接点が頻繁にあるわけではありません。
それでもRECOGのなかではつながっていて、それぞれの事業所が「こんな取り組みをしているんだ」という独自の取り組みを共有できています。そこから他事業所へのレターも生まれていて、直接顔を合わせる機会がなくても、自分の仕事を見てくれている人がいるとわかる。そういう状態をつくれていることに意味があると思っています。
―RECOGを活用するなかで、印象に残っている出来事はありますか。
これは私自身のことになるのですが、一番印象的だった出来事と言ってもいいくらいのことがあります。
当社では年末に経営指針の発表会を行なっていて、そこで私が作成した経営指針書を全社員に発表する機会があります。改めて経営理念を伝えて「この先こういうビジョンで会社をやっていく」という話をします。
その発表会の感想を、従業員がRECOGにレターで書いてくれました。それがもう、感動的なレターだったのです。本当に当社の経営理念を、この会社で実現しようとしているんだ、ということを実感できる内容でした。経営理念の浸透具合や受け止め方を知ることができて、私自身、いい意味で衝撃を受けました。
発表する側としては、みんながどう受け取っているのかはなかなかわかりにくいものです。それがレターとして返ってくるのは、本当にうれしかったですね。アナログで、対面の場で発信したことが、従業員からRECOGというデジタルで返ってくる。面と向かって「この間の経営指針発表会、とても良かったですよ」とは、やっぱり言いにくいと思うのですが、RECOGであれば直接顔を合わせずに気持ちを伝えられるので、本人に伝えやすいのだと思います。
経営者にとっては、理念がどこまで届いているのかを知る手段があまりありません。発表会で伝えて終わりではなく、受け止め方が返ってくる。RECOGは、その往復をつくってくれたと思っています。
―従業員の方には、どのような変化が見られますか。
最初に申し上げた自己肯定感は、確実に高まっているように見えます。当社にはさまざまな理由でこれまで働けなかったメンバーがたくさんいます。そうしたメンバーが日々レターを受け取り、「自分のやったことを見てくれている人がいる」「この会社で自分は認められた」と実感できる。その積み重ねが、「この会社にずっといたいな」という気持ちにつながってきていると思います。

また、一番感じているのは、従業員の会社への愛着ですね。自分の会社が好きだという気持ちが高まり、一緒に働いている仲間と近くなれて、自分も相手も満たされる。好循環が生まれているので、RECOGが社内に良い影響を与えてくれていると感じています。
導入前に期待していたのは、称賛によって自己肯定感を高めることでしたが、実際に得られたのはそれだけではありません。認められた実感が会社への愛着に変わり、長く働きたいという気持ちにまでつながっている。ここまでの変化は、正直に言うと想定していませんでした。
―今後、RECOGの運用をどのように発展させていきたいですか。
運用のスタンス自体は、これからも変えるつもりはありません。見る人は見るだけでも構いませんし、投稿する人はどんどん投稿してもらったらいいと思っています。
今盛り上がっているのは、やはりトーク機能を使った事業間連携です。ここから新たな価値創造ができているので、そこをもう少しブラッシュアップしていきたいと考えています。たとえば、今は福祉事業部とシステム開発部の連携が中心ですが、同じやり方を農業や飲食の事業部にも広げていけるはずです。現場が困っていることをスレッドで共有し、解決できそうな事業部がトークルームを立ち上げる。この流れを仕組みとして定着させていければと考えています。

―将来的に目指したい組織像を教えてください。
もともと自由な企業文化なので、従業員が会社のルールに乗って動くというよりは、それぞれが自由に主体的に活躍できる組織にしていきたいと思っています。上からの指示で動くのではなく、一人ひとりが主体性をもって動く、いわゆるティール組織を目指しています。
そのなかで、RECOGが役立つ部分はもちろんあります。レターもスレッドもそうですが、今まで投稿していなかったメンバーが、周囲から影響を受けて「自分も投稿してみよう」というアクションにつながっていってくれたらいいなと思っています。そうなれば、会社との関わりやチームとしての関わりがもっと増えていくはずです。
IT業界は、嘘のような話ですが、席が隣なのに直接話さずにメールを打つようなことが起こり得る業界です。言葉で気持ちを伝えることに対して、妙なハードルの高さがある職場もあるんですよね。そういった壁を越えていくために、RECOGは当社にとって欠かせないツールだと思っています。
メールでもない、チャットでもない、レターというかたちで相手を称賛する気持ちを伝える。それは他では代替しえないコミュニケーションなのではないかと考えています。