株式会社Dress Circleは、2005年の創業以来、府中・調布・国分寺エリアを中心とする東京都内で飲食事業を展開する企業です。ワインバルや日本酒バル、餃子バルなど幅広く手がけ、アルバイトスタッフが全体の約8割を占める体制で、地域に根ざした店づくりを続けています。
同社がRECOGの前身サービスである「Hooop」を導入したのは約14年前。「褒める文化をつくりたい」という想いから始まった称賛文化づくりの取り組みは、RECOGへの移行、そして飲食店に特化した別のツールへの乗り換えを経て、再びRECOGへと戻ってきました。代表の雨宮様は、一度別のツールを試したからこそ、RECOGの何が自分たちに合っていたのかがはっきり見えてきたといいます。
今回は雨宮様に、理念づくりの歩みから、RECOGとの14年にわたる付き合い、そしてRECOGに戻ってたどり着いた現在の運用までを、じっくりとうかがいました。
―まず、御社の組織づくりの土台にある経営理念について教えてください。
雨宮様(以下、敬称略):当社の経営理念は、サントリーさんの「水と生きる」になぞらえてつくった「酒と生きる」です。短い言葉ですが、しっかりと意味を込めています。美味しいお酒を提供すること、地方の酒蔵さんを守ること、そしてお酒が人生を豊かにしてくれること。この3つの想いが「酒と生きる」に詰まっているんです。
理念は、社長である私が常に口にしていなければ浸透しないものですから、絶対に忘れない、誰でも言える短さにこだわりました。以前はもっと長い理念を掲げていた時期もあったのですが、誰にも覚えてもらえず、長くて言えない理念には意味がないと考えて見直したのです。今の理念であれば一度聞いたら忘れることはありませんし、アルバイトスタッフはもちろん、お客様まで言えるくらいに浸透しています。

―理念やクレドは、どのようにつくられたのでしょうか。
雨宮:理念とあわせて、ビジョンやミッション、そして行動指針であるクレドも、10年以上前にコンサルティング会社の力を借りて策定しました。完成までにかかった日数は、約100日。インパクトがあって覚えやすいものにするために、相当な時間を費やしました。
まずは私が何を大事にしているのか明らかにするために、普段口にしている言葉や考えをひたすらポストイットに書いて壁に貼っていったところ、応接室の壁一面がポストイットだらけになるほどでした。そのなかからスタッフに「社長はこれをよく言っている」というものを選んでもらい、キーワードに絞り込んでいきました。
クレドには、たとえば「断らない」という項目があります。否定から始まると、結論も否定にしかならないものです。お客様からのご提案や、スタッフ間でのアドバイスでも「そういう意見もあるんだ」と一旦受け入れてから会話を進めると、思いがけない方向に転がっていくことがあるんですよ。ほかにも、笑顔ひとつで料理の味も変わるという「笑顔」や、出不精にならず積極的に非日常を体感して自分を高めようという「非日常」など、私たちが日々大切にしたい行動を言葉にしています。
このクレドに沿って行動していくと、たいていのことが解決していきます。営業成績の良くない店舗を見ると、笑顔が足りなかったり、スタッフのモチベーションが下がっていたりするのですが、そういうときに「最近ちゃんと出かけてる?」と声をかけてみると、その裏にある課題が見えてくるんです。クレドがあることで、何に問題があるのかが見えやすくなります。いろいろな課題は、根っこでつながっていますから。
―シンクスマイルとの出会いは、前身の「Hooop」時代だったとうかがいました。
雨宮:はい、今から14年ほど前、当社がまだ4〜5店舗だった頃です。営業担当の方からお電話をいただいたことがきっかけで詳しい話を聞いてみることになったのですが、話しているうちに「うちの会社には褒める文化がないな」と気づいたんです。
相手を認める・褒める文化をつくることで組織を良くしたいという素朴な気持ちから、導入してみようと思いました。当初は社内から「何のために導入するのか」という反応もありましたが、導入の説明会を開いてみると、みんな「面白そう」と受け入れてくれましたね。

褒めることだけでなく、社内の連絡ツールとしても活用していました。LINEのような感覚で、業務の連絡事項を共有したり、日々のやり取りをしたりしながら、そのなかで相手を褒める。連絡のために毎日開くツールのなかに称賛の機能があることで、褒める行為を特別なことにせず、日常のなかに溶け込ませられるのではないかと考えていました。
称賛のメッセージにバッジをつけて贈れるので、そこからクレドの浸透も期待していました。当時はクレド自体ができたばかりでスタッフにまだ浸透していなかったので、バッジを通じて楽しく広まっていけばいいな、という想いがありました。もっとも、そこから本当に浸透していくまでには、もう少し時間がかかったのが実情です。
―HooopからRECOGへと移行されて、活用はどう変わっていきましたか?
雨宮:正直なところ、RECOGに切り替わってからも、しばらくは手探りが続きました。マネージャーと何度も相談を重ねるなかで「使いこなせていないのではないか」という結論になったときもあります。そのとき、マネージャーから「社長自身がRECOGを使いこなさないと、みんなついてきません」と言われました。RECOGには、レターを贈り合うことでスコアが上がっていく「称賛レベル」という指標があるのですが、「社長がその称賛レベルで最高の100に達していないと、説得力がないですよ」と。それからは意識して毎日レターを送り、称賛レベル100を維持するようにしました。称賛レベルの高いスタッフを表彰する取り組みも行ない、そのおかげで、RECOGを利用している企業のなかから選ばれるアワードで小規模企業の部門で全国1位もいただきました。
―運用していくなかで、見えてきたことはありましたか?
雨宮:積極的に使うスタッフがいる一方で、まったく使わないスタッフもいるという「二極化」の状況になっていきました。実際、称賛レベル100のスタッフがいる一方で、称賛レベル0のスタッフも10人ほどいたのです。私自身、積極的に使ってくれるスタッフのために続けたいという気持ちと、まったく使わないスタッフにどうすれば使ってもらえるのかわからないという気持ちで、頭を悩ませていました。
さらに、活用度と成果の相関も見えにくくなっていきました。RECOGをほとんど使っていない店長の店舗でも売上が良いことがありますし、現場からは「レターを書くのに時間がかかるわりに、売上には関係ないのでは」という声がちらほら出てきました。このままRECOGを続けることは会社にとって良い影響になるのか、疑問をもつようになっていったのです。
―RECOGの運用に疑問を感じてから、どのような手を打ったのでしょうか?
雨宮:まずは、会社を成長させていくために何が必要なのか洗い出すため、売上の低い店舗を分析してみました。すると、褒める以前の問題として、そもそもタスク管理ができていないことがわかりました。そこで、「今のフェーズで経営課題とすべきなのは、タスク管理ではないか」と考えるようになりました。
そこで、RECOGから飲食店に特化した別のコミュニケーションツールへ移行しました。店舗と個人それぞれに目標となるテーマを設定し、テーマを追いながら成長を目指すという仕組みです。日々テーマの達成度を追っていくことで「何ができていないから達成できていないのか」が見え、タスク管理ができるようになるというツールでした。目標を追うという視点は、それまで私たちが重要視してこなかったため魅力を感じました。
しかし使っているうちに、当社の使い方には合わない部分がでてきました。
スタッフとカジュアルにやり取りしたいという当社の使い方とは合わず、そのツールでは業務連絡のみのやり取りになっていきました。日々の気軽な連絡は自然とLINEを使うようになりましたが、今度は業務の連絡とプライベートの連絡が混ざってしまう、ということが起きました。
また、写真や動画を使ったやり取りにもストレスを感じるようになりました。当社では店舗やメニューの写真、マニュアル代わりの動画を共有したい場面が多いのですが、そのツールではそうした使い方が想定されていませんでした。
もちろん、目標管理という点では優れたツールでしたし、そこに魅力を感じて移行したのも事実です。ただ、飲食の現場で日々使うツールとして考えたときに、私たちが求めていた気軽さや情報共有のしやすさとは、少し方向性が違ったんです。
この一件を通じて、はっきりと気づいたことがあります。タスク管理を起点にすると、どうしても「なぜできなかったのか」というネガティブなフィードバックが増えてしまいます。
一方でRECOGは称賛を起点にしているので、自然と「相手の良いところを見つけよう」という意識になれる。出発点が違うだけで、これほど空気が変わるのかと実感しました。できなかったことをアドバイスするのはもちろん大切ですが、その前にまず良いところを見つけて認めるという順番こそが、飲食の現場では大事だったのだとRECOGを離れてみて初めてわかったのです。
―別のツールを経て、どのような判断をされたのですか?
雨宮:RECOG以外のツールも検討しましたが、現場にとっての使いやすさや、以前から慣れ親しんできた安心感を踏まえて、やはりRECOGだと考えて再導入を決めました。また、離れている間にRECOGにスレッド機能が追加されていたことも決め手のひとつでした。RECOGに戻るかどうかシンクスマイルの方に相談したところ、スレッド機能のことを知り、当社の理想とする使い方ができると思ったんです。
社内の反応は「見やすい」「使いやすい」など大歓迎で、特に1回目のRECOG導入時に使ってくれていたアルバイトスタッフからは「待ってました」という声があがったほどです。感謝や称賛を伝えたいという気持ちを持っていたスタッフが、現場にはたくさんいたんですね。RECOGが戻ってきたことで、その声が一気に表に出てきたように感じました。
―再導入後、具体的にどのように活用されていますか。
雨宮:1回目の導入時と比べて、2回目は明らかにRECOGへの接触頻度が高くなりました。私たちの使い方が進化したこともありますし、RECOG自体が進化したことも大きいと感じています。
1回目と大きく変えたのは、RECOGにアクセスしなければ仕事が回らない状態をつくった点です。朝礼・終礼をRECOG上で行うようにした結果、ログイン率は100%になりました。RECOGに予約台帳の写真も投稿しているので、アルバイトスタッフは出勤前にRECOGを開けばその日の予約状況を把握でき、心の準備をしてから出勤できます。

当社では毎営業日、朝礼と終礼をRECOG上で行なっています。まず出勤時にRECOGのスレッド機能で朝礼のテンプレートを立ち上げ、売上目標やその月の店舗テーマを記入します。退勤時には同じ投稿に終礼を追記し、数値の結果やその日の振り返りを書き込み、そこに店長がコメントを返します。スレッドとテンプレートを組み合わせることで、朝礼と終礼を一つの流れで完結できるのが、RECOGならではの使いやすさです。
RECOGのすごいところは、この朝礼・終礼投稿がそのままレターにつながる点です。投稿についているボタンをクリックするだけでレター作成画面が立ち上がるので、その日頑張ったスタッフや活躍したスタッフに、すぐレターを贈って称賛できます。達成できなかったことは終礼のコメントでアドバイスし、良かったことは、あえてコメントではなくレターで伝える。「あなたの日々の頑張りを見ているよ」という気持ちを伝える点はコメントもレターも同じですが、レターという形で称賛することでスタッフのモチベーションは大きく高まります。改善点を指摘された場合でも、あわせてレターを受け取れば前向きに受け止められるでしょう。これは、称賛を起点とするRECOGならではの効果だと感じています。

―貴社ならではの、RECOGの使われ方はありますか。
雨宮:"レタハラ"という言葉が生まれています。これは、レターの上限である1,000文字いっぱいまで使って長文のレターを書くスタッフたちが、その熱量を冗談まじりに自分たちで「レタハラ」と呼んでいるものです。
一見ハラスメントのような響きですが、これはむしろ良い文化だと捉えています。というのも、1,000文字もの長文を書くには、相手の頑張りや成果を普段からよく見ていなければ書けないからです。つまりレタハラが起きているということは、それだけスタッフがお互いをよく観察し、相手の良いところを見つけようとしている証でもありますよね。
興味深いのは、こうしてRECOGを積極的に使うスタッフほど、仕事もできるという傾向があることです。これは偶然ではないと考えています。レターを書くために相手をよく観察し、その良いところを言葉にする習慣が、そのまま接客やチームでの動き方にも活きているのです。実際、そうしたスタッフには、質の高い接客をする人や、ワインカードを1日に20枚売るような営業成績を上げる人が多くいます。

クレドの浸透にも、RECOGが一役買っています。レターを贈る際には、クレドに紐づいたバッジのなかから「この行動はどのクレドに当てはまるだろう」と考えて選ぶため、RECOGを使うたびに自然とクレドを思い出すことになります。日常的にレターを贈り合っていると、それだけクレドに触れる回数も増えていく。その積み重ねの結果、飲み会やスタッフとの食事の場でも自然とクレドの話題が出てくるほど、クレドが日常に溶け込んできています。
レターは「誰から贈られるか」も、とても大切な要素です。特にアルバイトスタッフにとっては上長からのレターの意味が大きく、社長からレターをもらうとテンションが上がると言ってくれる子もいます。たとえば、スタッフのテストやレポートを採点した際に「よくできていたね」とレターを送ると、日頃の仕事ぶりまで見ていることが伝わります。
1回目の導入時は、正直、無理をして書いていた面がありました。しかし今回は、義務ではなく、相手を見て本当に称えるべき点があるときに自然と送れるようになっています。レターをもらったら、その返事をレターで返すというやり取りも生まれています。レター上で双方向のコミュニケーションが生まれることで、社内に感謝や称賛が循環している気がしています。
―「感謝のアルバム」も活用されていると聞きました。
雨宮:とても好評です。以前は卒業する学生アルバイトに記念品を渡していたのですが、今回、これまで受け取ったレターを一冊にまとめる「感謝のアルバム」というRECOGのサービスを使ってみました。そうしたら、記念品よりずっと喜ばれたんです。
卒業してしまうとRECOGに入れなくなり、それまでのレターも見られなくなってしまうため、手元に残る形にできるのが喜ばれた理由だと思います。「こんなこともあったね」と振り返ることができますし、特に卒業していくスタッフほどRECOGの活用度が高い傾向があるので、受け取る喜びも大きいようです。
―今後、RECOGをどのように活用していきたいですか。
雨宮:RECOGは活用データが常に見えるので、一人ひとりの利用状況も、店舗ごとの状況も把握できます。それを活かして直近で検討しているのが、表彰制度の設計です。1回目の導入時は称賛レベルだけで表彰していましたが、これからは何を基準に評価するかを考えています。分析機能のユーザーランキングがとても見やすく、称賛レベルだけでなくレターの送信数や受信数などさまざまな指標で順位を確認できるので、どれを表彰の基準にするか決めかねている、といううれしい悩みを抱えているところです。
最近追加された成長ヒストリー機能も活用していきたいですね。これまでのレターや投稿の内容から、一人ひとりの成長を分析してくれる機能です。現状は管理者権限でしか見られないため、先日の幹部会議でも「これはぜひ本人に見せたほうがいい」という話になりました。良い方法を見つけて、スタッフの成長を本人にも届けていきたいです。

要望としては、個人が目標を立てて、それに対して私がコメントできるような仕組みができると、さらに面白くなるだろうなと思っています。タスク管理はRECOGの本質ではないと理解しているので、現在は朝礼・終礼の投稿という形で補っています。ただ、RECOGならではのおしゃれでワクワクするインターフェースのなかで目標を追えたら、楽しみながら目標を達成し、スタッフも成長できるのではないかと考えています。
戻ってきてまだ半年ほどですが、本当に使いやすいと感じています。RECOGは進化が早いので、これからも一緒に進化しながら、使い続けていきたいと思っています。