市場環境の変化が激しく、DX推進や人的資本経営が求められる今、組織風土改革に取り組む企業は増加傾向にあります。しかし、「何から始めればよいかわからない」「取り組んでも成果が出ない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、組織風土改革の定義や必要性、具体的な進め方を5つのステップに分けてわかりやすく解説します。成功のポイントや失敗パターン、さらに称賛文化を活かした実践的なアプローチもご紹介しますので、自社の改革に役立ててください。

組織風土改革を効果的に進めるには、まず「組織風土」そのものの意味を正しく把握する必要があります。ここでは、組織風土の定義や構成要素、似た用語との違い、代表的なタイプについて整理していきましょう。
組織風土とは、企業や組織の中で長い時間をかけて自然に形成された、従業員に共通する価値観やルール、暗黙の規範、行動様式のことです。明文化されたルールだけでなく、「この会社では新しい提案をすると歓迎される」「失敗すると厳しく責められる」といった暗黙の了解も含まれます。
組織風土に影響を与える要素は大きく2つに分かれます。1つはハード面で、企業理念や人事制度、就業規則、組織構造などの明文化された仕組みを指します。もう1つはソフト面で、従業員のモチベーションや人間関係、コミュニケーションのあり方、暗黙の慣習などが該当するでしょう。
ハード面は経営陣の意思決定により比較的短期間で変更できる一方、ソフト面は従業員一人ひとりの意識や行動に根差しているため、変革には時間がかかります。組織風土改革では、この両面にバランスよくアプローチすることが重要です。
組織風土と混同されやすい言葉に「組織文化」と「社風」があります。それぞれの違いを明確にしておきましょう。
組織文化は、企業のビジョンや理念に基づいて意図的に形成された価値観や行動規範を指します。経営層が主導して築くもので、外部環境の変化に応じて見直されることもあるでしょう。
一方、組織風土は、日々の業務や人間関係を通じて自然発生的に形成される「空気感」のようなものです。意図的につくったものではないため、組織文化以上に変えにくい傾向にあります。
社風は、「うちの会社は自由な雰囲気がある」「体育会系の社風だ」のように、従業員が主観的に感じる組織の雰囲気を表す言葉です。組織風土と組織文化の両方を反映して構成されています。
組織風土は、「チームワークの良さ」と「成果への意識の高さ」という2軸で、大きく4つのタイプに分類できます。
ブリリアンス型
チームワークと成果意識がともに高い理想的な状態です。従業員同士が協力し合いながら、高いモチベーションで業務に取り組んでいます。風通しがよく、人材の定着率も高い傾向にあるでしょう。
ギスギス型
成果への意識は高いものの、チームワークや人間関係が悪い状態を指します。個人プレーに走りやすく、同僚のサポートや協力が少ないため、協力が必要なプロジェクトでは問題が生じがちです。
仲良しクラブ型
人間関係は良好でも、成果への意識が低い状態です。居心地のよい雰囲気はあるものの、お互いに注意や指摘を避ける傾向があり、組織の成長が停滞しやすくなります。
腐敗型
チームワークも成果意識も低い深刻な状態を表します。従業員同士の関心が薄く、チェック機能が働かないため、内部不正やコンプライアンス問題が発生するリスクが高まるでしょう。自社がどのタイプに近いかを把握した上で、改革の方向性を定めることが大切です。

組織風土改革は、単なる社内の雰囲気改善にとどまらず、企業の持続的成長を支える経営戦略の一つとして注目されています。ここでは、多くの企業が改革に着手している背景を3つの観点から解説します。
テクノロジーの進化やグローバル競争の激化に伴い、企業には迅速な意思決定と柔軟な対応が求められるようになりました。従来の「前例踏襲」や「上意下達」型の組織風土では、こうした変化に対応しきれません。
特にDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進においては、組織風土の変革が欠かせないテーマとなっています。経済産業省の「デジタルトランスフォーメーション調査2025」では、DXを本格的に推進している企業ほど組織カルチャーの変革に積極的であることが報告されています。新しい技術やビジネスモデルを取り入れるには、挑戦を歓迎し、失敗から学ぶ風土が土台となるのです。
終身雇用制度の崩壊や転職市場の拡大によって、企業と従業員の関係は「相互拘束」から「相互選択」の時代へ変化しました。優秀な人材に選ばれ続けるためには、従業員が「ここで働き続けたい」と思える組織風土が不可欠です。
リモートワークやハイブリッドワークの普及により、働き方も多様化しています。物理的な距離がある中でチームの一体感を維持するには、意識的にコミュニケーションの機会をつくり、お互いの貢献を認め合う仕組みが求められるでしょう。古い慣習のままでは、若手人材やキャリア採用者の価値観と合わず、早期離職につながるリスクも高まります。
組織風土は、従業員の行動規範や意思決定に深く影響を与えます。過去に大きな社会問題となった企業の不祥事を振り返ると、その背景には「問題を指摘しにくい」「上司に逆らえない」といった閉鎖的な組織風土が存在していたケースが少なくありません。
コンプライアンス違反の再発防止や、リスクの早期発見を実現するためにも、風通しのよい組織風土への改革は重要な経営課題の一つです。従業員が安心して意見を言える環境を整えれば、問題の早期察知と迅速な対処が可能になります。
組織風土改革は長期的な取り組みですが、成功すれば企業に多方面の恩恵をもたらします。ここでは主な3つのメリットを確認しましょう。
組織風土が良好な方向へ変わると、従業員は「自分の意見が尊重されている」「この組織に貢献したい」という意識をもちやすくなります。自分の役割や存在価値を実感できる環境は、仕事に対する主体性と責任感を高め、エンゲージメントの向上につながるでしょう。
エンゲージメントが高い組織では、従業員が自発的に改善提案を行ったり、チーム全体の成果に向けて協力し合ったりする好循環が生まれやすくなります。
挑戦を歓迎し、自由に意見を交わせる組織風土は、新しいアイデアの創出を促進します。従業員同士の横のつながりが強く、情報共有が活発な環境であれば、部門を超えた連携もスムーズに進むでしょう。
また、「組織の利益=自分の利益」と捉えられる風土が根づけば、従業員一人ひとりが成果に対する責任感をもつようになり、結果として生産性の向上にもつながります。
組織風土は、従業員の定着意向に大きな影響を及ぼします。企業レビューサイトの分析によると、劣悪な企業風土は低賃金の10倍以上も従業員の離職を招きやすいとされています。裏を返せば、良好な組織風土は強力なリテンション施策になるということです。
加えて、「働きがいのある職場」としての評判が広まれば、採用市場でも優位に立てます。組織風土改革は、人材獲得競争を勝ち抜くための中長期的な投資といえるでしょう。
組織風土改革は、正しい手順で段階的に進めることが成功の鍵です。ここでは、効果的に改革を進めるための5つのステップを解説します。
改革の第一歩は、自社の組織風土がどのような状態にあるのかを正確に把握することです。「なんとなく雰囲気が悪い」という感覚だけでは、効果的な施策は立案できません。
具体的な方法としては、全従業員を対象としたアンケート調査やサーベイの実施が有効です。従業員の満足度、心理的安全性、上司への信頼度などを部署別・階層別に定量的に把握しましょう。数値だけでは見えにくい課題を拾うために、個別面談やグループディスカッションを併用するのも効果的です。
本音を引き出しにくい風土がある場合は、匿名アンケートの実施や、外部コンサルタントへのヒアリング依頼なども選択肢の一つとなるでしょう。この段階では、問題の原因追究や解決策の検討は行わず、あくまで「現状を正しく把握する」ことに集中します。
現状把握の結果をもとに、組織が抱える課題を具体的に抽出していきます。重要なのは、表面的な「問題点」と根本的な「課題」を区別する視点です。
たとえば「若手の離職率が高い」は問題点ですが、その背景には「成長機会が不足している」「公正な評価制度が機能していない」などの本質的な課題が隠れている可能性があります。サーベイ結果のギャップ分析(期待度が高いのに満足度が低い項目の特定)を行えば、改革の優先順位をつけやすくなるでしょう。
課題が明確になったら、「どのような組織風土を目指すのか」というビジョンを設定します。ビジョンは抽象的なスローガンではなく、従業員が日々の業務で判断に迷った際の拠り所となる具体性をもたせることが重要です。
ビジョンをもとに、具体的な行動指針や計画を策定します。「お互いの成果を称え合う」「部門を超えて情報を共有する」など、従業員が実際に取れるアクションレベルに落とし込むことが、風土改革を実践に移すためのポイントです。
策定したビジョンや行動指針は、経営トップ自らの言葉で全従業員に伝えなければなりません。なぜ改革が必要なのか、改革によって何が変わるのかを、データや具体例を交えて説明することで、従業員の理解と共感を得やすくなります。
周知は一度きりでは不十分です。全社会議、社内報、1on1ミーティングなど複数のチャネルを活用し、繰り返しメッセージを発信し続ける必要があるでしょう。その上で、評価制度の見直しやコミュニケーション施策の導入、研修の実施など具体的なアクションを展開していきます。
組織風土改革は一度施策を実行して終わりではなく、継続的な改善が求められます。あらかじめKPIを設定し、四半期ごとに従業員満足度や離職率、施策の参加率などを確認しましょう。
改革の過程では、従業員からの反発や揺り戻しが起こる場面もあります。そうした状況でも安易に中断するのではなく、現場の声を拾いながら柔軟に軌道修正を行うことが大切です。半年に一度は方向性を見直し、新たな施策や優先順位の変更も検討してください。定期的なPDCAサイクルを回しながら、着実に前進していく姿勢が成功への近道となります。
手順を正しく踏んでいても、押さえるべきポイントを見落とすと改革は頓挫しがちです。ここでは、組織風土改革の成功確率を高めるための3つの重要なポイントをお伝えします。
組織風土改革は、現場任せでは決して成功しません。経営トップ自らが改革の旗振り役となり、言葉だけでなく行動で示す姿勢が不可欠です。
経営層が率先して新しい行動指針を実践する姿は、従業員に「本気で変わろうとしている」というメッセージを強く伝えます。逆に、経営層の言動が従来と変わらなければ、現場は「形だけの改革だ」と受け止め、協力を得るのは難しくなるでしょう。
心理的安全性とは、「自分の意見を率直に発言しても、否定されたり不利益を被ったりしない」と従業員が感じられる状態を指します。風土改革を推進するには、この心理的安全性の確保が土台となるでしょう。
具体的には、1on1ミーティングの定例化、匿名で意見を出せる仕組みの整備、失敗を責めずに学びに変える評価基準の導入などが有効です。従業員が安心して挑戦や発言をできる環境をつくることが、風土改革の定着を後押しします。
組織風土改革において見落とされがちなのが、従業員同士が日常的に感謝や称賛を伝え合う「称賛文化」の重要性です。人は認められることで帰属意識が高まり、組織への貢献意欲も強くなります。
称賛文化が根づいた組織では、普段の業務では見えにくいメンバーの貢献が可視化され、相互理解と信頼関係が深まっていくでしょう。結果としてコミュニケーションが活性化し、心理的安全性の向上にもつながります。こうしたポジティブな循環を意図的に生み出す仕組みづくりが、風土改革を成功に導く鍵の一つです。
組織風土改革に取り組む企業は多いものの、思うような成果を得られないケースも少なくありません。ここでは代表的な失敗パターンと、その回避策を紹介します。
「風通しのよい組織をつくろう」「挑戦を歓迎する文化にしよう」といったスローガンを掲げるだけでは、組織風土は変わりません。大切なのは、スローガンを具体的な行動や制度に落とし込むことです。
たとえば「挑戦を歓迎する」のであれば、新規提案制度の新設や、挑戦プロセスを評価する人事制度の導入など、行動を後押しする仕組みをセットで整備する必要があります。言葉だけではなく「行動を変える仕掛け」を用意しましょう。
経営層の強いリーダーシップは重要ですが、現場を無視した一方的な改革は反発を招きやすくなります。従業員にとって「やらされ感」が強い施策は定着しにくいためです。
改革の各段階で現場の声を拾い、施策の設計や改善に反映させるボトムアップの仕組みを取り入れましょう。経営層と現場の双方向のコミュニケーションが、改革を「自分ごと」として捉える従業員を増やす鍵となります。
組織風土は長い年月をかけて形成されたものであり、その変革にも相応の時間が必要です。「半年で劇的に変わるはずだ」という期待をもって取り組むと、成果が見えない段階で諦めてしまうリスクが高まるでしょう。
短期的な成果指標とは別に、中長期的な視点での目標設定が欠かせません。まずは特定の部署やチームで小さく始め、成功事例をつくった上で全社に展開していくアプローチが効果的です。小さな成功体験の積み重ねが、組織全体の変革を加速させます。
ここまで、組織風土改革の進め方やポイントを解説してきました。しかし、「称賛文化を根づかせたいが、具体的にどう実現すればよいかわからない」という方も多いのではないでしょうか。そうした課題を解決する手段として、チームワークアプリ「RECOG」をご紹介します。
RECOGは、従業員同士が感謝や称賛を「レター」として手軽に送り合えるチームワークアプリです。パソコンやスマートフォンから利用でき、「仕事を手伝ってくれてありがとう」「プロジェクト成功おめでとう」といったメッセージを日常的に交換できます。レター機能に加え、掲示板機能やチャット機能も搭載しており、社内コミュニケーションの基盤としても活用可能です。
RECOGが組織風土改革のツールとして注目される理由は、主に3つあります。
1つ目は、貢献の可視化です。日常業務における従業員の活躍や頑張りは、目に見えにくいものが多いでしょう。RECOGのレター機能を活用すれば、こうした普段の貢献が「見える化」され、相互理解と信頼関係の構築を後押しします。
2つ目は、ビジョン・行動指針の浸透です。RECOGにはレター送付時にバリューバッジを添付できる機能があり、自社のビジョンや行動指針に紐づいた称賛を送れます。日々のコミュニケーションの中で、組織が大切にする価値観が自然と浸透していくでしょう。
3つ目は、組織状態の分析機能です。RECOG上に蓄積されたデータをもとに組織状態を可視化します。新たなリーダーの発見や離職リスクの早期察知など、データドリブンな組織改善に役立てられます。
組織風土改革とは、企業に根づいた価値観や行動様式を見直し、時代の変化に適応できる柔軟な組織へと進化させる取り組みです。ビジネス環境の急速な変化、人材獲得競争の激化、コンプライアンスリスクへの対応など、多くの企業にとって避けては通れないテーマとなっています。
改革を成功させるためには、現状把握から課題の明確化、ビジョン策定、施策実行、効果測定という5つのステップを着実に踏むことが重要です。経営層のコミットメント、心理的安全性の確保、そして称賛文化の醸成が、改革を推進する三本柱となるでしょう。
組織風土は一朝一夕には変わりません。しかし、正しい手順とツールを活用しながら粘り強く取り組み続ければ、従業員が生き生きと働き、成果を生み出す組織は実現できます。まずは自社の現状を把握するところから、一歩を踏み出してみてください。