しかし、いざ作ろうとすると「何を伝えるべきか」「どんな言葉を選べばいいか」と迷う方も多いでしょう。本記事では、スローガンの定義やキャッチコピー・クレドとの違い、作り方の4ステップ、作成時の注意点、有名企業の事例までを網羅的に解説します。心に響くスローガンを作りたい方はぜひ最後までご一読ください。

スローガンとは、企業や組織の理念・目標・価値観を短い言葉で表現したものです。従業員の行動指針となるだけでなく、顧客や社会に対して企業のメッセージを伝える役割も果たします。
優れたスローガンは、一度聞いただけで記憶に残り、企業の存在意義や目指す方向性を明確に示すものです。社内の一体感を醸成し、ブランドイメージの構築にも大きく貢献します。
スローガンと似た言葉に「キャッチコピー」や「クレド」がありますが、それぞれ目的や用途が異なります。以下で違いを確認しておきましょう。
キャッチコピーは、主に広告やマーケティングにおいて顧客の注意を引くために使われる言葉です。商品やサービスの魅力を端的に伝え、購買意欲を高める目的で作成されます。一方、スローガンは企業全体の理念や方向性を示すもので、社内外に長期的に発信し続ける点が特徴です。キャッチコピーがキャンペーンごとに変わることもあるのに対し、スローガンは企業の根幹を表すため、頻繁に変更されることはありません。
クレドは、ラテン語で「信条」を意味し、企業や従業員が大切にすべき価値観や行動指針を具体的に言語化したものです。複数の項目で構成されることが多く、日々の業務における判断基準として活用されます。スローガンが短いフレーズで企業の方向性を示すのに対し、クレドはより詳細な内容を含む点が異なります。両者は補完関係にあり、スローガンで大きな方向性を示し、クレドで具体的な行動指針を定めるという使い分けが一般的でしょう。

スローガンを作成する目的は企業によってさまざまですが、代表的なものとして以下の4つが挙げられます。目的を明確にしたうえで、自社に最適なスローガンを検討しましょう。
スローガンは、組織全体が目指すべき方向性を示す羅針盤のような役割を果たします。従業員一人ひとりがスローガンを理解し共感すれば、日々の業務における意思決定の軸が統一されるでしょう。部署や役職が異なっても、同じ目標に向かって進んでいるという一体感が生まれます。組織の規模が大きくなるほど、方向性を共有する手段としてスローガンの重要性は高まります。
力強いスローガンは、従業員のモチベーションを高める効果があります。自分たちの仕事が社会にどのような価値を提供しているのかを実感できれば、日々の業務に対するやりがいも増すでしょう。困難な状況に直面したときも、スローガンが心の支えとなり、前向きに取り組む原動力になります。チーム全体の士気を高める旗印として、スローガンは大きな役割を担っています。
スローガンは、顧客や社会に対して企業のブランドイメージを伝える重要なツールです。印象的なスローガンは人々の記憶に残り、企業名を聞いただけでそのメッセージが想起されるようになります。ブランドの差別化にも貢献し、競合他社との違いを明確に打ち出す手段となるでしょう。一貫したメッセージを発信し続けることで、ブランドへの信頼感や親しみやすさも醸成されます。
企業理念は重要ですが、長文で抽象的な場合も多く、従業員に浸透しにくいという課題があります。スローガンは企業理念のエッセンスを凝縮した表現であり、理念を身近に感じてもらうための橋渡し役を果たします。覚えやすく口にしやすいスローガンがあれば、日常的に理念を意識する機会が増えるでしょう。結果として、企業理念に基づいた行動が組織全体に根付いていきます。

効果的なスローガンを作成するには、段階を踏んで検討を進めることが大切です。ここでは、スローガン作成の基本的な4つのステップを紹介します。
まず、スローガンを届けたいターゲットと伝えたいテーマを明確にしましょう。ターゲットは従業員なのか、顧客なのか、あるいは両方なのかによって、言葉の選び方が変わります。テーマについても、「挑戦」「信頼」「革新」など、何を軸にするのかを決めておく必要があります。この段階で方向性を定めておけば、後の工程でブレが生じにくくなるでしょう。
次に、自社ならではの特徴や強みを洗い出します。競合他社にはない独自の価値は何か、顧客から評価されているポイントは何かを整理しましょう。従業員へのヒアリングや顧客アンケートの結果も参考になります。自社の強みを言語化する作業は、スローガンの核となるメッセージを見つけるうえで欠かせません。
スローガンは企業理念と整合性がとれていなければなりません。理念と矛盾するスローガンでは、従業員の混乱を招き、対外的にも一貫性のない印象を与えてしまいます。企業理念に込められた想いを改めて確認し、その本質をスローガンに反映させましょう。理念とスローガンが連動すれば、相乗効果で両方の浸透が進みます。
最後に、言葉を磨いてシンプルで覚えやすい表現に仕上げます。長すぎるスローガンは記憶に残りにくく、日常的に使われなくなってしまいます。目安として10文字前後、長くても20文字以内に収めるのが理想的です。リズム感や語呂の良さも意識し、声に出して読んだときの印象を確認しましょう。何度も推敲を重ね、誰もが口にしたくなるような言葉を目指してください。

スローガン作成においては、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。以下の3つのポイントに気をつけながら検討を進めましょう。
スローガンには、前向きでポジティブな言葉を選びましょう。否定的な表現や後ろ向きなニュアンスを含む言葉は、従業員のモチベーションを下げたり、ブランドイメージを損ねたりする恐れがあります。「〜しない」ではなく「〜する」という肯定形で表現するのが基本です。明るく力強いメッセージは、人々の心に響きやすく、行動を促す力を持っています。
スローガンは、既存のブランドイメージと整合性を保つ必要があります。これまで培ってきた企業イメージとかけ離れたスローガンでは、顧客や従業員に違和感を与えてしまうでしょう。ロゴやコーポレートカラーなどのビジュアル要素とも調和するよう意識してください。一貫性のあるブランディングが、信頼感の醸成につながります。
スローガン作成では、経営層の視点だけでなく、顧客や従業員の目線を取り入れることが重要です。自己満足で終わるスローガンでは、誰の心にも響きません。顧客にとって魅力的に映るか、従業員が誇りを持って口にできるかという観点でチェックしましょう。複数の視点からフィードバックを得ながらブラッシュアップを重ねることで、より良いスローガンが生まれます。
実際に多くの人に親しまれているスローガンを見ることで、作成のヒントが得られます。ここでは、有名企業のスローガン事例を3つ紹介します。
家具・インテリア小売大手のニトリは、「お、ねだん以上。」というスローガンを掲げています。価格以上の価値を提供するという企業姿勢を、わずか7文字で表現した秀逸なフレーズです。「お、」という感嘆の表現が驚きや発見を想起させ、消費者の期待を超える体験を約束しています。シンプルながら強いインパクトを持ち、多くの人の記憶に残るスローガンの好例といえるでしょう。
菓子メーカーのロッテは、「お口の恋人」というスローガンを長年使用しています。甘くて美味しいお菓子を「恋人」にたとえた比喩表現が特徴的で、親しみやすさと愛着を感じさせます。1960年代から使われ続けているこのスローガンは、世代を超えて認知されており、ブランドの象徴として定着しています。長く愛されるスローガンの力を示す代表例です。
コスモ石油の「ココロも満タンに」は、ガソリンスタンドという業態を巧みに活かしたスローガンです。燃料を満タンにするだけでなく、心も満たすサービスを提供するというメッセージが込められています。機能的価値だけでなく情緒的価値も伝える表現が、競合との差別化につながっています。業種の特性を活かしながら、温かみのある企業姿勢を示した好事例でしょう。

優れたスローガンを作成しても、従業員に浸透しなければ意味がありません。ここでは、スローガンを社内に定着させるための具体的な方法を4つ紹介します。
スローガンを日常的に目にする環境を整えましょう。オフィスの壁や会議室にスローガンを掲示したり、名刺やメールの署名に記載したりする方法が有効です。従業員が自然とスローガンに触れる機会を増やせば、無意識のうちに記憶に定着していきます。来訪者の目にも触れるため、対外的なブランディングにも効果的でしょう。
スローガンの浸透には、繰り返しの発信が欠かせません。朝礼でスローガンを唱和したり、社内報でスローガンに関連した事例を紹介したりする取り組みが効果的です。一度伝えただけでは忘れられてしまうため、継続的なコミュニケーションを心がけてください。さまざまな場面でスローガンに触れる機会を設けることで、組織全体への浸透が進みます。
スローガンを本当に浸透させるには、経営陣自らが行動で示す必要があります。言葉だけでなく、日々の意思決定や振る舞いがスローガンと一致していなければ、従業員は「形だけ」と感じてしまうでしょう。経営陣がスローガンを体現する姿を見せることで、従業員も「自分たちも実践しよう」という意識が芽生えます。トップダウンでの率先垂範が、浸透の鍵を握っています。
スローガンに沿った行動をとった従業員を称賛・感謝する仕組みを取り入れましょう。「スローガンを体現した行動」として具体的に褒められれば、何が求められているのかが明確になります。称賛を受けた従業員のモチベーションが上がるだけでなく、周囲の従業員にも良い影響を与えるでしょう。感謝のやり取りを通じて、スローガンが日常の行動に結びついていきます。

スローガンを社内に浸透させるには、称賛・感謝の文化と連動させることが効果的です。RECOGは、従業員同士が感謝や称賛のメッセージを贈り合えるコミュニケーションツールで、スローガン浸透の促進にも活用できます。
RECOGでは、メッセージを送る際に企業のバリュー(行動指針)を紐づける機能があります。スローガンに関連するバリューを設定すれば、従業員は日常的にスローガンを意識しながらコミュニケーションをとるようになるでしょう。
また、感謝のやり取りが可視化されるため、スローガンを体現した行動が組織全体で共有されます。「あの人のような行動を自分もしよう」という好循環が生まれ、スローガンが単なるお題目ではなく、行動に根付いた文化として定着します。
RECOGの詳細は以下の資料で紹介しているので、ぜひダウンロードしてみてください。
スローガンは、企業の理念や方向性を短い言葉で表現し、従業員や顧客に伝えるための重要なツールです。組織の一体感醸成、モチベーション向上、ブランドイメージ形成など、さまざまな効果が期待できます。
作り方としては、ターゲットとテーマの明確化、自社の強みの洗い出し、企業理念との連動、シンプルな表現への落とし込みという4つのステップを踏むことが大切です。ポジティブな言葉を選び、ブランドイメージとの一貫性を保ちながら、顧客・従業員目線を忘れずに検討を進めましょう。
作成したスローガンを浸透させるには、日常的に触れる機会を増やし、経営陣が率先して体現することが重要です。RECOGのようなツールを活用して称賛・感謝の仕組みと連動させれば、スローガンが組織文化として根付いていくでしょう。