そこで注目されているのが、ゲームやワークショップを活用した理念浸透の取組みです。楽しみながら学べるゲーム形式であれば、従業員の主体的な参加を促し、理念への理解を深めることができます。
本記事では、理念浸透に効果的なゲームの種類やワークショップの内容例、実施する際のポイントを詳しく解説します。理念浸透に課題を感じている人事担当者や経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

理念浸透とは、企業が掲げるミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を従業員一人ひとりが理解し、日々の業務や判断において自然と体現できる状態を作ることを指します。
企業理念は、組織の存在意義や目指すべき方向性、大切にする価値観を示したものです。しかし、理念を策定しただけでは意味がありません。従業員が理念を「知っている」だけでなく、「理解している」「共感している」「行動に移せている」という段階まで浸透させることが重要です。
しかし、理念浸透には課題もあります。多くの企業では、朝礼での唱和や研修での説明といった一方的な伝達にとどまり、従業員が理念を自分ごととして捉えられていないケースが見られます。
そこで効果的なのが、ゲームやワークショップを活用したアプローチです。参加型のプログラムを通じて、従業員が楽しみながら理念を学び、自ら考え、行動につなげることができます。

理念浸透ゲームを通じて、従来の研修とは異なる効果が期待できます。ここでは、ゲーム活用の主なメリットを紹介します。
ゲーム形式の最大のメリットは、楽しみながら学べることです。
従来の理念研修は、講義形式で一方的に説明を受けるスタイルが一般的でした。しかし、このような形式では受け身になりやすく、内容が記憶に残りにくいという課題があります。
一方、ゲーム形式であれば、参加者は能動的に取り組めます。ルールに従って考え、仲間と協力し、結果を出すというプロセスを通じて、自然と学びが深まります。
また、「遊び」の要素があることで、研修に対する心理的なハードルが下がり積極的な参加を促せます。特に、理念に対して関心が薄い従業員や、研修を堅苦しいと感じている従業員にとっては、ゲーム形式が有効です。
ゲームを通じて、チームメンバーとの信頼関係を深められます。
多くの理念浸透ゲームは、チームで協力して取り組む形式になっています。課題を解決するために意見を出し合い、合意形成を行う過程で、自然とコミュニケーションが活性化するでしょう。
普段はあまり話す機会のない部署や役職の異なるメンバーとも交流でき、相互理解が進みます。また、ゲームという非日常的な場面だからこそ、普段は見せない一面を知ることができ、新たな発見につながることもあります。
このようにして築かれた信頼関係は、日常業務においても良い影響を与えます。コミュニケーションが円滑になりチームワークが強化されるため、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
ゲーム形式では、参加者が主体的に考え、行動することが求められます。
一方的に説明を受けるだけの研修では、理念を「自分には関係ない」と感じてしまうことがあります。しかし、ゲームでは自分自身で考え、判断し、行動する必要があるため、理念を自分ごととして捉えやすくなります。たとえば、理念に関連したクイズやディスカッションを行なうことで、「なぜこの理念が大切なのか」「自分の仕事にどう関係するのか」を深く考えるきっかけになります。
また、正解がない問いに対してチームで議論するため、多様な視点に触れることができます。他者の意見を聞けば、理念に対する理解がさらに深まり、新たな気づきを得られるでしょう。
ゲームやワークショップを通じて、理念と自分自身のつながりを見いだせます。
理念浸透の最終目標は、従業員一人ひとりが理念を体現し、日々の行動に反映させることです。そのためには、理念を「会社のもの」ではなく、「自分のもの」として捉える必要があります。
ゲームでは、理念をテーマにした問いに向き合う機会があります。「この理念に共感できるか」「自分の仕事は理念にどう貢献しているか」「理念を実現するために何ができるか」といった問いを考えるなかで、自身の存在意義やキャリアについて内省するきっかけになります。
このような自己理解は、仕事へのモチベーションを高めてエンゲージメントを向上させる機動力となります。また、理念と自分のキャリアを結びつけて考えることで、長期的な成長意欲も育まれます。

ここでは、理念浸透に活用できる代表的なゲームを紹介します。目的や参加者の特性に合わせて、最適なゲームを選びましょう。
NASAゲームは、チームでの合意形成(コンセンサス)を学ぶための代表的なゲームです。
参加者は「月面に不時着した宇宙飛行士」という設定で、生き残るために必要なアイテムの優先順位を決めます。まず個人で考えた後、チームで話し合って最終的な順位を決定し、NASAの模範解答と比較して得点を競います。
このゲームの特徴は、個人の判断よりもチームで合意形成した方が、より良い結果が出やすい点にあります。多様な意見を尊重し、建設的な議論を行うことの重要性を体感できます。
理念浸透に活用する際は、ゲーム終了後に振り返りの時間を設け、「チームで意思決定する際に大切なことは何か」「それは自社の理念とどうつながるか」といったテーマでディスカッションを行なうと効果的です。
自社の理念や歴史、創業者の想いに関するクイズは、楽しみながら知識を深められる手軽な方法です。
クイズ形式のメリットは、参加者が能動的に考えることで記憶に残りやすい点です。また、チーム対抗戦にすることで、盛り上がりながら学ぶことができます。
クイズの内容例としては、以下のようなものが挙げられます。
クイズを実施する際は、単に正解を発表するだけでなく、「なぜその答えなのか」「どのような背景があるのか」を解説すると理解をより深められます。
シンボルマッチゲームは、抽象的な理念を具体的なイメージやシンボルと結びつけるゲームです。
参加者は、自社の理念やバリューを象徴する画像やアイコンを選び、その理由を説明します。たとえば、「挑戦」というバリューに対して、ある人は「山の頂上」を選び、別の人は「ロケット」を選ぶかもしれません。その理由を、それぞれが解説します。
このゲームの目的は、抽象的な言葉に対する各自の解釈を共有することです。同じ理念でも人によって捉え方が異なることを知るため、多様な視点への理解が深まります。
また、他者の解釈を聞き、新たな気づきを得られます。今まで自分が気づかなった視点からの意見を通じ、自社の理念への解釈が深まるでしょう。
ストーリーテリングは、理念に関連したエピソードを共有するゲームです。
参加者は、自分が体験した「理念を体現したエピソード」や「理念の大切さを実感した出来事」を物語として語ります。各自の物語をチーム内で共有し、最も印象的なストーリーを選出するなどの形式で進めます。
ストーリーテリングのメリットは、抽象的な理念を具体的な体験と結びつけられる点です。実際のエピソードを通じて、理念がどのように日々の仕事に活きているかを実感できます。
また、他者のストーリーを聞くことで、「自分も同じような経験をしたことがある」「こんな場面でも理念が活きるのか」といった気づきを得られます。共感や感動を通じて、理念への愛着が深まることも期待できるでしょう。

ゲーム単体だけでなく、ワークショップとして体系的に実施することで、理念浸透の効果をさらに高めることができます。ここでは、代表的なワークショップの内容例を紹介します。
理念浸透の第一歩は、理念を正しく理解することです。このワークショップでは、理念の意味や背景を深く学びます。
具体的な内容例としては、以下のようなものがあります。
このワークショップを通じて、参加者は理念の表面的な言葉だけでなく、その背景にある想いや意図を理解できるようになります。
理念を理解した次のステップとして、理念を具体的な行動に落とし込むワークショップを実施します。このワークショップでは、「理念を体現するために、自分は何ができるか」を考えます。
具体的な内容例としては、以下のようなものがあります。
こうしたワークショップを通じて、参加者は理念を「知っている」状態から「行動できる」状態へとレベルアップできます。
理念浸透を定着させるためには、実際に理念を体現した事例を共有することが効果的です。このワークショップでは、従業員が実際に体験した「理念を実践した成功事例」を発表し、共有します。
具体的な内容例としては、以下のようなものがあります。
このワークショップを通じて、「理念は実際に仕事に活きる」ということを実感でき、さらなる実践への意欲が高まります。また、称賛や表彰を行なうと、理念を体現する行動が組織内で認められる文化が醸成されます。

理念浸透ゲームやワークショップを効果的に実施するためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
ゲームを実施する前に、参加者に目的を明確に伝えることが重要です。目的が共有されていないと、参加者は「なぜこのゲームをやるのか」が分からず、消極的な姿勢になってしまう可能性があります。また、単なる「お遊び」として捉えられてしまい、学びにつながらないこともあります。
ゲームを始める前に、以下の点を説明しましょう。
目的の共有を通じ、参加者は「学びの場」として意識を持ってより真剣に取り組めます。
理念浸透の度合いは企業や部署によって異なるため、現状の浸透レベルに合わせたプログラムを設計することが大切です。理念浸透には、一般的に以下のようなレベルがあります。
たとえば、理念を知らない従業員が多い段階であれば、まず「自社の理念を学ぶワークショップ」から始める必要があります。一方、理念は理解しているが行動に移せていない段階であれば、「理念に基づいた行動を考えるワークショップ」が効果的です。現状を把握した上で、最適なプログラムを選択しましょう。
ゲームやワークショップの効果を最大化するためには、参加者が積極的に発言し、参加しやすい雰囲気を作りましょう。具体的には、以下のような工夫が効果的です。
参加者が安心して自分の意見を言える環境を整えると、活発な議論が生まれて学びが深まります。
理念浸透は、一度のゲームやワークショップで完了するものではありません。単発の研修で終わってしまうと、時間とともに学びが薄れ、日常業務に戻ると理念を意識しなくなってしまいます。継続的な取組みとなるよう、以下のような工夫が必要です。
長期的な視点を持って継続的に取り組み、組織に理念を浸透させていきましょう。

理念浸透を継続的に進めるためには、日々の業務の中で理念を意識できる仕組みが必要です。そこでおすすめしたいのが、チームワークアプリ「RECOG」です。
RECOGは、従業員同士が日々の感謝や称賛を「レター」として贈り合えるアプリです。レターは社内全体に公開され、誰がどのような貢献をしたかが可視化されます。
RECOGが理念浸透に役立つ理由は、レターを送る際に「バッジ」を選択できる仕組みにあります。このバッジに自社のバリューや行動指針を設定することで、称賛と同時に「どのバリューを体現したか」を紐づけられます。
たとえば「挑戦」「協力」「誠実」といったバリューをバッジとして設定し、日々の感謝を贈り合うなかで「あなたの行動は"挑戦"を体現していたね」と伝えることで、理念が日常的に意識され自然と浸透していきます。
また、RECOGにはレターのやり取りを分析するデータ機能もあり、どのバリューがよく選ばれているか、理念に基づいた行動がどれだけ行なわれているかを可視化できます。理念浸透の進捗を把握し、施策の効果測定にも活用が可能です。
RECOGの詳細はこちらの資料で紹介しているので、ぜひダウンロードしてみてください。
理念浸透は、組織の一体感を高め、従業員のエンゲージメント向上や意思決定の質を上げるために欠かせない取組みです。しかし、一方的な研修では形式的になりやすく、従業員が自分ごととして捉えにくいという課題があります。
ゲームやワークショップは従業員は楽しみながら主体的に理念を学べるため、理念を自分ごととして捉える絶好の機会になります。また、チームで協力して取り組む中で信頼関係も深まり、組織全体の活性化にもつながるでしょう。
さらに、理念浸透を日常的に継続するためには、RECOGのようなツールの活用も効果的です。まずは自社の理念浸透の現状を把握し、最適なゲームやワークショップ、さらにRECOGを取り入れてみてはいかがでしょうか。