コラム

2023.12.07
2023.12.07

承認欲求が強い人の特徴や原因とは? 満たし方や職場での付き合い方・対処法を詳しく解説

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近年SNSが普及し、自分自身の発信に対して承認を求める、「承認欲求」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。承認要求とは、周囲から褒められたい、認めてもらいたいという欲求です。承認欲求を全く持たない人はおらず、程度の差はあれど承認欲求はすべての人が持っており、近年はZ世代を中心承認欲求が強い人も少なくありません。
 
本記事では、承認欲求の強い人の特徴や承認欲求が強くなる原因、仕事をする上で付き合うための対処法について詳しく解説します。
 

承認欲求とは?

 
承認欲求とは、他者に自分を見てもらいたい、褒めてもらいたい、理解してもらいたいなど、自分自身の存在を他者に認めてもらいたいという欲求です。すべての人が持っているごく自然な欲求なので、承認欲求を持っていることは悪いことではありません。ただし、その強さや程度には個人差があります。強すぎる承認欲求は周囲の人に迷惑をかけたり、自分自身を苦しめるなど、主に人間関係に弊害が出ることが考えられます。
 

承認欲求に存在する2つのタイプ

 
承認欲求は、2つのタイプに分けられます。タイプの違いによって承認欲求のレベルも異なるので、まずは承認欲求の2つのタイプについて知っておきましょう。
 

他者承認

他者承認とは、文字通り他者から褒められたい、認められたいというタイプです。自分の意見や考え、成果などを認めてもらいたい、理解してもらいたいと考えます。例を挙げると、仕事上で成果を出した際に同僚や先輩、後輩から「すごい」「仕事ができる」などと思われたり実力を認められたりすることにより、欲求が満たされます。
 
他者承認は、承認欲求の中でも低いレベルに位置づけられています。
 

自己承認

自己承認は、自分で自分のことを認めたい、もっと自分を好きになりたいという欲求です。技術やスキルを磨く、勉強や仕事をがんばるなどの努力をして自己肯定感を高めることで自信を持ち、欲求が満たされます。自己承認欲求が強い人には、人の話をよく聞かない、他者と自分を比較したり他者に同意を求めたりしがちという特徴があります。
 
自己承認が強い人にとって、自分が自分を認めるということは、他者から認められるよりも重要です。自分を認めることで理想の自分の実現に近づくと考えるので、自己実現欲求ともいえるでしょう。
 
どんなに他者から理解してもらったり認められたりしたとしても、自分が自分を認めない限り自己承認欲求は満たされません。そのため、自己承認は他者承認よりも高いレベルの承認欲求といえます。
 

承認欲求と自己顕示欲の違い

 
承認欲求とは、自分の存在や価値を認めてもらいたいという欲求です。一方、自己顕示欲とは大勢の人に注目されたい、自分の存在を知ってもらいたい、人気者になりたいという欲求です。つまり、自己顕示欲は存在をアピールできれば満たされるので、自分を認めてもらうことで満たされる承認欲求とは意味合いが異なります。
 
また、自己顕示欲の強い人は自分の存在や価値をアピールするために積極的に行動するので、自分を中心に考えており能動的です。
しかし、承認欲求の強い人は他者から認めてもらう、褒められることを求めるため、自分よりも他者が中心で受動的という点も、承認欲求と自己顕示欲の大きな違いです。
 

マズローの欲求5段階説から考える承認欲求

 
承認欲求について考える上で外せないのが、アメリカの心理学者マズローが提唱した「欲求5段階説」です。これは、人間の欲求を5段階に分類した理論で、ピラミッド状の5段階の欲求を下から順に1段階ずつ満たしていくたびに、より高い段階の欲求を求めるという理論です。
以下で示す5種類の欲求を順に満たすことで人間はさらにレベルの高い欲求を求めていき、自己実現に向かっていくと考えられています。
 

生理的欲求

生理的欲求とは、人間が生きていく上で必要である食事や睡眠、排泄などの欲求で、欲求5段階の最下層にあたります。生きるための本能的な欲求なので、ある意味動物的な欲求ともいえます。
しかし、生理的欲求が満たされなければ生命の維持が困難となるため、生きていく上で最も重要な欲求です。
 

安全の欲求

生理的欲求が満たされた後に持つのが、安全に生活したいという安全の欲求です。健康に暮らしたいという身体的な安定、金銭的な不安なく暮らしたいという経済的な安定も、安全の欲求に含まれます。
 
日本ではほとんどの場合、生活する環境で命の危険を感じることが少ないため、他者に脅かされることなく安全な環境で暮らしたいという欲求よりも、健康や経済面などの身体的・経済的安定の欲求の方が強い傾向があります。
 

社会的欲求

社会的欲求は「所属と愛の欲求」と呼ばれることもあることもあるように、集団に所属して安心したい、受け入れてもらいたい、周囲の人から愛情を得たいという欲求です。生命、安全を得ると、集団に所属、または周囲の人から愛されることで、社会的なつながりを得て社会に必要とされたいと感じる欲求なのです。
 
所属の欲求とは、家族や友人などの小規模な集団から学校、企業などの大規模な集団までどこかの集団に所属して一員となること、愛の欲求は、家族や友人などの周囲の人から愛されたい、友人や恋人が欲しいという欲求が含まれています。
 
日本人は、この社会的欲求以降の欲求を求める傾向があるといわれています。
 

承認欲求

ここまでの3種類の欲求が満たされた後に人間が満たしたいと考えるのが、5段階の欲求の上から2段目にあたる承認欲求です。前述の通り、承認欲求は他者から認められたい、褒められたいという欲求です。有名になりたい、尊敬されたいという欲求も含まれます。
 
マズローの欲求5段階説のうち、最初の3つは外的なものを満たすことで得られる欲求ですが、4段階目の承認欲求から、内的な欲求に変化するのが特徴です。
 

自己実現欲求

自分の能力や可能性を最大限に引き出して成長したい、自分にしかできないことを達成したいなどの欲求が自己実現欲求です。自分の能力や可能性の限界に挑戦し、自己実現のために成長することで満たされます。
 
外的な欲求を満たす3つ目までの欲求は低次の欲求とされており、自己実現欲求は承認要求とともに、高次の欲求に分類されます。
 

5段の上の欲求「自己超越」

欲求5段解説は上記の自己実現欲求までですが、この説を提唱したマズローは晩年、欲求の5段階の上にもう1つ、6段階目の「自己超越」があると発表しています。
 
最も高い段階の欲求である自己超越とは、見返りを求めることなく目的を達成することのみを純粋に追い求め、自我を超越して他者や社会のためになる目的のために没頭することです。自分の外にあるものに対して理想を追い求めることで、自分の利益を考えずに行なうボランティア活動や寄付などが該当します。自分自身が持つ欲求が満たされた後は、世の中や世界に対して理想を追い求めるというわけです。
 

承認欲求が強い人の特徴とメリット・デメリット

 
承認欲求が強い人には、そうではない人よりも目立つ特徴があります。その特徴にはメリットがある一方で、デメリットも存在します。中でも、デメリットは日頃の業務やコミュニケーションを進める上で影響が出る可能性もあるため、周囲に承認欲求が強い人がいる場合に知っておきたいメリットとデメリットについて解説します。
 

メリット

承認欲求の強い人には、主に以下に挙げる3つの特徴とメリットがあります。これらのメリットは、仕事を進める上では有益に働くことも多いでしょう。
 

モチベーションが高く仕事熱心

承認欲求が強い人は他者に褒められたい、認められたいと考えます。褒められる、認められることで自分の存在価値を見い出す傾向があるため、仕事や勉強に対して熱心です。自分の努力を認めてもらうとさらに頑張ろうという気持ちが高まるので、モチベーションが高いことも特徴です。
また、認められたい気持ちが強いので、モチベーションが持続しやすい特徴もあります。
 
リーダーシップがあることも承認欲求の強い人の特徴の1つで、部署やプロジェクトのまとめ役としてリーダーシップを発揮することで、周囲や上司に認められたいという考えを持っています。
 

高い目標でも成果が出やすい

人よりも他者に褒められたい、認められたいと考える承認欲求の強い人は、そのための努力を惜しみません。頑張ることは承認欲求を得るための行動なので、そのために常に目標に向かって真面目に取り組みます。頑張れば頑張るほど認められると考えていることから、前述のように熱心でモチベーションが高いので、目標を高く設定していても成果を出しやすいというメリットがあります。
 
仕事と能力がマッチすれば高いパフォーマンスを発揮できるので、前述のようにリーダーシップをとれば、プロジェクト成功や業績アップなどの良い効果が期待でき、仕事の上で成功する人が多いのも特徴です。
 

自己肯定感が高い

そもそも、承認欲求が強い人は自分に自信を持っていないケースが少なくありません。
しかし、目に見える目標達成や成果を出して周囲に認めてもらうことで、承認欲求の強い人は自信を持ち自己肯定感が高くなります。自分を認めてもらえばもらうほど自己肯定感が高くなる点も、承認欲求が強い人の特徴です。
 
自己肯定感が高くなるほど自信が高まるので、さらに高い目標へ向かって熱心に取り組み、より良い成果を上げられるでしょう。
 

デメリット

メリットだけを見ると、承認欲求の強い人は仕事を進める上で良い点が多い人物と思われるかもしれません。
しかし、場合によっては大きなデメリットとなる可能性がある点に注意が必要です。
 

人間関係が悪化する可能性がある

強すぎる承認欲求は、人間関係に悪影響を及ぼすデメリットが考えられます。自分を認めて欲しいと強く考えるために、自分の実績や成果を必要以上に自慢する傾向があること、加えて、自分に対する評価が低い人や企業などに対して不平不満を持ち、愚痴を言うことが多いからです。
 
自分が苦労をしていることを必要以上にアピールし、理解を示してくれない人に対しては不満を持ったり怒り、悲しみを感じることもあります。自分を認めさせよう、褒めさせようとするために、他者に対して自慢やマウンティングをすることも多くなりがちです。
また、認めてもらいたいという気持ちを強く持っている承認欲求の強い人は、否定されることを恐れています。自分を否定することに対しても怒りや恐れの感情を持ちます。
 
このような言動で周囲の人が不快に感じたり、付き合いにくい人と判断したりすると、人間関係が悪化することもあるでしょう。
 

承認がないとモチベーションや自己肯定感が低下する

承認欲求が強い人は、自分自身を認めることが苦手です。その代わりに、仕事などに熱心に取り組むなどの努力をして周囲に褒められたり認められたりすることによってモチベーションや自己肯定感が上がり、自信を持つようになります。反対に、もし周囲に認められないと自信を持てず自己肯定感も低い状態となり、モチベーションややる気も下がりやすいという特徴があります。
 
周囲から承認され続けていればやる気は上昇するものの、承認されない状態が続くとどんどんとやる気が下がっていくばかりです。承認欲求が強い人はプライドが高い人が多いといわれるので、一度失敗や挫折をすると立ち直りが難しい点も大きなデメリットです。
 

承認欲求が強い原因

 
承認欲求は誰しも持っている欲求です。その強さには個人差がありますが、近年は承認欲求が強い人が増えているともいわれています。なぜ今、承認欲求が強い人が増えているのか、考えられる原因には以下の3点があります。
 

時代の変化

かつての日本社会では、一流大学を卒業して一流企業に就職し、高い給料をもらう地位や肩書を持つことが多くの人に「すごい」と言われるステータスでした。
しかし時代の変化により、一流企業よりも時代の流れに沿った新たな技術やサービスなどを生み出すベンチャー企業や起業家などが注目されるようになり、一流大学から一流企業へ就職という流れが必ずしも「すごい」と言われるステータスではなくなっています。従来、型にはまった流れに乗っていれば得られたはずの評価も、現在は周囲に評価されたり認められたりするための要素も曖昧になりました。
 
つまり現代社会では、一昔前の型にはまったステータスよりも、一個人の能力や人間性など、より曖昧な部分が評価されるようになったといえます。認めてもらうための基準が曖昧になったことにより、どのように自分を認めてもらおうかと試行錯誤する必要が増えてしまいました。このような時代の変化も、承認欲求を強める原因といえます。
 

SNS時代

承認欲求という言葉は、SNSの利用時によく聞く言葉ではないでしょうか。スマートフォンの普及により、世界中の老若男女がSNSを通してつながるようになりました。そんなSNS時代ともいえる現在、SNSを通して個人が気軽に全世界に対して情報発信でき、不特定多数の見ず知らずの人からも注目を集められるようになっています。
 
SNSは閲覧数やいいねの数を可視化するシステムなので、SNSへの情報発信によって注目されることで承認欲求を満たす人が急増していること、他者からの評価を得ることに依存しやすいことも、SNS時代に生きる人が承認欲求を強めがちな原因でしょう。
 

幼少期の影響

承認欲求が強くなる原因の1つに、幼少期の家庭環境が影響することがあります。
 
幼少期に両親から褒められることが少なかった、愛情を十分に受けられなかった人は、他者から認められた経験に乏しいままで育ってしまいます。
また、自分が必要とされていないと感じてしまい、、自分に価値があると思えないので自尊心が育たないのです。
 
このような幼少期を経験している人は、大人になってからも自分に価値がないと考えてしまうので、他者に認められたり褒められたりすることで自分の価値を見出すようになるというわけです。
 
逆に、幼少期に愛情を過剰に受けることも、承認欲求が強くなる原因です。甘やかされて何をしても問題ない環境で育つと、他者に認められることが当然になってしまいます。しかし、大人になってからもその環境が続くわけではありません。成長してから認められることが減ると、子供の頃のように認められたいという欲求が強くなることで、承認欲求が強くなりがちです。
 

承認欲求はなくすことができない

 
承認欲求は誰しもが少なからず持っているもので、完全になくすことは不可能です。
 
しかし、過剰な承認欲求は周囲へ悪影響を及ぼしかねません。身近にいる承認欲求が強い人によって何かしらの悪影響がある場合は、その人の承認欲求をなくそうとするのではなく、承認欲求を満たす方法を検討してみましょう。
 

部下の承認欲求を満たすためにできること

 
承認欲求の強い部下がいる場合、承認欲求が満たされないことによるデメリットが業務に支障をきたす可能性があります。部下の承認欲求を満たすには、以下でご紹介する3つのポイントを押さえておきましょう。
 

従業員一人ひとりに適切な裁量・責任を与える

承認欲求の強い人は社会に必要とされたいという欲求が強いことが多いので、成果を得るために目標へ向かって高いモチベーションで取り組みます。
 
しかし、もし承認欲求の強い部下に裁量や責任のない仕事ばかりが与えられていると、必要とされていないと不安を感じる恐れがあります。そのため、従業員一人ひとりに裁量や責任のある仕事を適切に与えていれば、承認欲求が強い人も自分が必要とされていると実感しやすく、目標に向かって熱心に取り組んでもらえるでしょう。
 

意見や考えを尊重する

承認欲求の強い人は自己肯定感が強い一方、自分の意見や考えに対する他者の否定や反論は自分自身が否定されたと感じてしまいます。プライドが傷ついて感情的になったり、精神的な負担を抱えてしまったりする可能性も高いため、意見や考えを尊重し、理解することが重要です。
 
もし業務の進め方や誤りがあったとしても、頭ごなしに否定したりやり方を押し付けたりするのではなく、まずは部下に共感を示しつつ誤りを指摘するといいでしょう。
 

定期的に褒める

承認欲求の程度にかかわらず、褒められることで人は承認欲求を満たします。認められたい、褒められたいと考える承認欲求が強い人に対しても同様に、定期的に褒めることで「認めてもらえた」と思ってもらえるので、自己評価が高まり仕事に対するモチベーションも上がるでしょう。
 
褒めるときに注意したいのは、ただ単純に褒める言葉のみで済ませないことです。結果だけを見て褒めたり特に理由もなく無理に褒めたりすると、相手はバカにされたと感じてしまうかもしれません。褒めるときは、その対象に至るまでの過程を含める、できるだけ具体的な理由を付けて褒めるのがポイントです。
 

承認欲求が強い人との職場で上手く付き合う対処法

 
職場に承認欲求が強い人がいると、業務上で成果を出してくれるなどのメリットがあるものの、否定されると人間関係が悪化したり、認められることがないとモチベーションが下がりやすかったりするなど、付き合いにくいと感じることがあるかもしれません。そんな場合でも、職場で承認欲求が強い人と上手に付き合うには、以下の対処法を実践してみましょう。
 

承認欲求が強い人を理解する

前述の承認欲求が強い人の特徴がみられる人に対しては、まず「この人は承認欲求が強い」と理解することがコツです。それが理解できていないと、承認欲求が強いからこその言動に不満を持ったりストレスを感じたりする可能性があるからです。承認欲求が強い人と認識していれば、その人がなぜそのような言動をしてしまうのかを理解できるようになるので、余計なストレスも減らせるでしょう。
 
その上で、承認欲求が強い人の特徴やメリット・デメリットを把握しておくようにしましょう。
 

プライドを傷つけないようにする

承認欲求が強い人はプライドが高い人が多いため、意見や考えを否定する、叱るなどの行動を行なうとプライドが傷つき、感情的になりやすくなってしまいます。仕事をする際に感情的になってしまうと仕事のパフォーマンスにも悪影響を及ぼし、進むはずの業務がスムーズに進まなくなることが考えられます。
 
承認欲求が強い人に対して指示や注意をしたり意見を言ったりする際は、プライドを傷つけないようにすることが必要です。部下を叱る際も、その人自身を否定することは避け、叱った後にフォローをするなど気を配りましょう。
 

まとめ

承認欲求はすべての人が持っている欲求ではありますが、個人差が非常に大きいものです。承認欲求が強い人は認められる、褒められるために目標に向かって高いモチベーションを持って取り組みます。その一方で、認められなかったり否定されたりするとモチベーションが下がりやすく、人間関係が悪くなるなどの悪影響も考えられます。
 
もし職場で承認欲求の強い人と仕事をしていると、基本的にはしっかり業務に向き合ってくれるものの、ちょっとのきっかけで業務遂行が難しくなる、人間関係を構築しにくくなるかもしれません。周囲に承認欲求の強い人がいる場合は、今回解説した特徴や対処法を把握し、適切にコミュニケーションを取るように心がけましょう。
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