行動指針とは、組織や企業が独自に定めた行動ルールや行動規範を指します。
行動指針が浸透すると、従業員は自然と組織や企業文化に沿った行動をするようになり、従業員エンゲージメントや一体感の向上につながるとして注目されています。
本記事では、行動指針の意味や作り方、浸透させるための具体例などを解説します。「これから行動指針を作ろう」「行動指針を浸透させたい」とお考えの方はぜひお役立てください。
行動指針とは?
行動指針とは、自分の進むべき道やとるべき姿勢を指し示す羅針盤のような役割です。具体的には、企業の経済活動における経営理念やビジョンを実現するための従業員の行動基準として定められています。
また、企業の価値観を体現する行動としても機能します。企業によっては「バリュー」「クレド」「スピリット」などと呼ばれることもあり、リッツ・カールトンのクレドやGoogle、トヨタの行動指針は有名です。
行動指針を策定し浸透させることにより、組織全体で推奨される行動を従業員全体の共通認識として持てるようになります。この結果、従業員は企業の目指す方向性に沿った行動をすることができ、組織の理想像に向かって進めるでしょう。
ビジネス環境において、行動指針は企業全体の判断基準や価値観を統一する重要な役割を担います。
行動指針と経営理念・企業理念・行動規範との違い
行動指針との違いがわかりにくいのが「経営理念」「企業理念」「行動規範」です。似ているようで異なる概念のため、違いを理解したうえで策定・浸透させる必要があります。
そこで、ここからは行動指針と経営理念・企業理念・行動規範との違いをわかりやすく説明します。
経営理念とは
経営理念とは、経営者の考えや信念を表し、企業運営の核となる上で最も重要な考え方を示します。従業員が日々の業務で目指すべき目標や方向性を定める際の指針となり、企業の製品やサービスの品質向上に効果があります。
経営理念についてはこちらの記事でも触れているので、ぜひ参考にしてください。
企業理念とは
企業理念とは、「企業がなぜ存在するのか」「なぜ事業活動を行うのか」を明示します。企業理念を策定することで、企業文化や行動規範を従業員に伝えることが容易になり、組織内の意識を統一する効果が期待できます。
「行動指針」は経営理念・企業理念を体現する具体的な行動を示したもののため、経営理念や企業理念の一部といえるでしょう。
行動規範とは
「行動指針」と「行動規範」は、どちらも従業員として適切な行動を定義することを目的としています。
自分の進むべき道やとるべき姿勢を指し示し羅針盤の役割を果たす「行動指針」に対し「行動規範」は従業員として望ましい人格や資質、従業員のあるべき姿を示すものです。
行動指針がもたらすメリット
行動指針は、信頼され愛される企業文化の構築に不可欠です。ここからは、行動指針を策定する4つのメリットについて解説します。
従業員のモチベーションが向上する
行動指針は企業理念と密接に結びついており、従業員にとっての行動の羅針盤のような役割を果たします。そのため、従業員は企業の目指すビジョンと自身の貢献を明確に理解し、仕事の意義と達成感を深く実感できます。
加えて、行動指針は企業文化への理解を深め、自分の行動が組織の成功にどのように影響を与えるかを理解する手助けとなります。自分が貢献できていると感じられれば、業務に対する熱意や帰属意識も向上するでしょう。結果として、業務へのモチベーションが高まり生産性向上にもつながります。
従業員が自己実現と企業の目標達成の両方を感じる環境は、長期的なエンゲージメントと職場の満足度向上に寄与します。
従業員の行動の基準ができる
従業員が日々の業務で判断や行動選択の場面に直面しても、行動の基準である行動指針があれば迷うことなく判断・選択が可能です。行動指針は組織の目指す理念や価値観を反映しているため、従業員の具体的な行動を促せるためです。
また、明確な基準があることで、従業員は自身の判断や行動が企業の方針に沿っているかを判断しやすくなり、自信を持って業務に取り組むことができます。組織の目標と一致した行動を取りやすくなるため、社内の誰もが一貫性のある行動ができるようになります。
従業員が明確な行動基準をもとに行動できれば、組織全体の統一感を醸成してチームワークを高めることにつながり、組織の成長と成功に影響するでしょう。
従業員の帰属意識が高まる
行動指針が浸透すると、従業員は自らが組織の一員であり、組織の成果に貢献できていると強く感じるようになります。組織の価値観や目標に対する共感と理解が深まることで、個人は組織に対してより強いつながりを感じられるでしょう。
この結果、従業員は自分の仕事に対する責任感が高まり、自社に積極的に貢献しようとする意識が強まります。
企業文化や組織・チームの一体感が醸成される
行動指針は、企業理念やビジョンの具体化したものです。企業が目指すビジョンが行動レベルで具体的に落とし込まれるため、従業員は自社がどの方向に進んでいるのかを理解できます。
従業員一人ひとりが行動指針を実現できている企業は、企業理念や経営理念に基づく理想の組織が形成されているため、組織やチームの一体感が醸成されます。
また、自社の行動指針と考え方や経歴がマッチした人材を採用できるため、入社後のミスマッチも起こりにくいでしょう。
行動指針の作り方
では、実際にどのように行動指針を作成すればよいのでしょうか。ここからは、企業が目指すべき方向性を定め、従業員の行動を導く行動指針の作成方法について解説します。
実現したいことや理想を明確にする
行動方針を策定する最初のステップは、企業が達成したい目標と将来像を明確にすること。目標や将来像が明確だと、従業員がすべき行動や考え方の方向性も明確になります。
まずは自社の現状やビジネス環境を把握したうえで、実現したいことを具体的に考えてみましょう。たとえば「お客様にどういう状態になってほしいのか」「自分たちはどんな価値を提供できるのか」などを洗い出していくことで、実現したいことが明確になるはずです。
経営理念やミッション・ビジョンを定める
行動指針は経営理念を落とし込んだもののため、自社の実現したいことに沿った経営理念を定めましょう。まだ経営理念を定めていない企業だけでなく、すでに経営理念を掲げている企業でも、俯瞰して見てみると「現代のニーズにマッチしていない」「実現したいこととギャップがある」などの課題が見つかる場合があれば、見直しが必要です。
また、ミッションとビジョンも同時に策定することをおすすめします。ミッションとは企業が果たすべき役割や使命で、ビジョンとは企業が目標とする理想像です。ミッションとビジョンが明確だと、どのような行動をとるべきか明確になるでしょう。
創業理念も確認する
企業は、創業者の想いや行動が土台となっています。創業者の理念は、時代が変わっても企業のベースとなるもののため、創業理念に基づいた行動が求められます。そのため、行動指針には創業者の理念も取り入れましょう。
経営理念やミッション・ビジョンを体現する行動を考える
次に、経営理念やミッションビジョンを実現するために必要な価値観や行動を挙げます。顧客の視点から、企業が提供できる価値を分析し、具体的にどのような行動をすべきか考えましょう。部門やチームごとに役割を考え、具体的な行動に落とし込むことが重要です。
経営理念やミッション・ビジョンに反する行動を考える
自社が避けるべき行動も明確にしておくと、より効果的な行動指針を策定できます。たとえば、「従業員のワークライフバランスを無視してまで利益を重視したくない」や「短期的な利益にとらわれず、顧客と長期的な関係を構築したい」、「法令を遵守しない行動は禁止」などがあるでしょう。
「これだけは絶対にしたくない・すべきではない」という行動を洗い出しておくと、大きなトラブルに発展するリスクもなく、顧客からの信頼を得られたりブランド価値が向上したりするなどの効果も期待できます。
シンプルでわかりやすい言葉に変える
ここまで出してきた、推奨される行動や避けたい行動などを、シンプルかつわかりやすい言葉に言い換えます。これが、行動指針となります。たとえば「顧客ファースト」「従業員満足主義」などがあります。スローガンの要素を持つため、キャッチ―でわかりやすい表現にしましょう。
具体的な行動を補足する
行動指針に紐づく具体的な行動を策定します。たとえば「顧客ファースト」という指針には「私たちはお客様の満足を第一に考え、お客様のニーズにマッチする商品づくりを行ないます」といった、2~3行程度の文章を付け加えます。
行動指針を浸透させる方法
行動指針」を定めることは重要ですが、定めるだけでは意味がありません。そこで、行動指針を社内に浸透させる方法を解説します。
日々の業務の中に落とし込む
行動指針を日々の業務に落とし込むことは、社内に浸透させるうえで効果的です。
まずは、行動指針を具体的な作業や決定に関連づけます。たとえば、顧客サービスの向上を目指す場合、行動指針に基づいて顧客対応のガイドラインを明確に定めましょう。
次に、これらの指針についての理解を深める場として、定期的なミーティングや研修で従業員に共有します。定期的に情報共有することで、従業員が日々の業務で行動指針を意識する機会も増えていくでしょう。
このように日々の業務に取り入れると、行動指針は「単なる文書」から、実際の業務プロセスと緊密に結びついた「生きたガイドライン」へと変化します。従業員が指針を日常業務に取り入れることで、組織の目標達成にもつながるでしょう。
トップから定期的に発信する
トップメッセージとは文字通り、企業の創業者や社長、会長、執行役員など企業のトップに立つ人が発するメッセージのことを指します。
トップからの発信は、社内の文化を作る上で大きな影響力を持ちます。トップが行動指針について発信するだけでなく、指針に基づいて行動したうえで重要性を強調することで、従業員はその行動指針を業務へどのように活かすか理解しやすくなります。
また、トップが積極的に発信することで、従業員は指針に対する共感と理解を深められるため、組織に根付きやすくなるでしょう。
評価項目に取り入れる
行動指針に基づいた行動を実現したかどうか、人事評価制度の項目に取り入れるのも効果的です。評価項目に取り入れると、従業員は意識的に行動指針を体現しようとするため、社内への浸透を促進できます。
目につきやすいところに掲示する
日常的に目にしていると、自然と行動指針を意識するようになります。オフィスの目につきやすいところに貼りだしたり、社内SNSや社内ポータルに投稿したりして、従業員が目に留まりやすいところに掲示しておきましょう。
行動指針を浸透させるなら「RECOG」
前述もした通り、行動指針を浸透させるには「日々の業務の中に落とし込む」「トップから定期的に発信する」ことが大切です。
しかし、いざ行おうとしてもなかなか難しいもの。
そこでおすすめしたいのが、コミュニケーションツール「RECOG」です。RECOGは、サンクスカードを通じて称賛・感謝の文化を醸成できるサービスとなっています。
感謝や称賛の気持ちを伝えるサンクスレターを贈る際に行動指針のバッジを選ぶ仕組みにより、日々行動指針について考えることができます。また、レターを受け取ったメンバーは自分のどんな行動が行動指針を体現できているのか、仲間からのサンクスレターで知ることができるのもメリットのひとつ。レターの内容は他のメンバーもチェックできるので、どんな行動をしたら行動指針が体現できるのかを意識するようになり、自然と浸透していくでしょう。
掲示板機能もあるため、トップからの発信も気軽に行なえます。「いいね」を押してもらうことによって、トップからの従業員が確認しているかしていないか一目でわかります。
詳しくはこちらの資料にまとめているので、ぜひダウンロードしてみてください。
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RECOGをはじめて知っていただく方向けに基本機能や活用シーン、料金をまとめた説明資料をご用意しています。
まとめ
行動指針は、行動指針とは、自分の進むべき道やとるべき姿勢を指し示す羅針盤のような役割を果たし、従業員が企業文化に沿った行動を取るための重要な基準となります。これにより、従業員のエンゲージメントや組織の一体感が向上し、企業の経営理念やビジョンを具体的に体現する助けとなります。
さらに、経営理念や行動規範とは異なり、行動指針はより実践的な行動への道しるべを提供します。そのような効果的な行動指針の作成には、企業の理想とビジョンを明確にし、それを具体的な行動に落とし込むプロセスが必要です。
また、行動指針を組織内で浸透させるためには、日々の業務への落とし込みとトップからの定期的なメッセージが重要です。ぜひ本記事の内容を参考に、行動指針の策定と浸透に取り組んでみてはいかがでしょうか。