「Z世代」という単語は、近年さまざまな場面で耳にすることが多いものです。Z世代は2021年の流行語大賞に選出されたことでも知られ、注目されている世代です。現代の日本で、なぜZ世代が注目されているのでしょうか。
本記事では、Z世代の意味や由来、何歳までを指すのかという定義や「ゆとり世代」など以前の世代との違いのほか、Z世代が職場に求める要素について解説します。
Z世代とは?意味を簡単に解説
Z世代とは、アメリカで「ジェネレーションZ」と呼ばれる1990年代後半から2000年代前半にかけて生まれた世代で、2023年時点で13歳~27歳が該当します。1980年代から1990年代前半生まれの「ミレニアル世代」の次の世代という意味で、「ポストミレニアル世代」と呼ばれることもあります。
Z世代が注目されている理由の1つは、インターネット上での発信力が高いことです。物心がついた頃にはすでにデジタル技術が普及している世代であるため、他の世代よりオンラインサービスに抵抗感がない人が多いといわれます。SNSを通じて日常的に積極的に除法発信をしているため、自分の意見や考えをインターネット上で発信する能力が高く、その発信能力に注目が集まっているのです。
なぜ「Z世代」と言われるのか?
Z世代という名称は、この世代がアメリカで「ジェネレーションZ」と呼ばれたことが由来です。そしてこのジェネレーションZの元となっているのが、Z世代の前の前にあたる「ジェネレーションX」という世代です。ジェネレーションXに続く1980年代~1990年代中盤生まれの世代を、アルファベット順にY世代と定義したことから、Z世代がこれに続く世代となりました。
Z世代の特徴とは?
Z世代はただ若いだけではなく、育った環境などの影響によって他の世代と異なる特徴を持ちます。一般的なZ世代の特徴には、以下で解説する5つのポイントが挙げられます。
h3 デジタルネイティブ
Z世代の大きな特徴が、デジタルネイティブであるということです。生まれたときからIT技術が発展していたZ世代は、幼い頃からインターネット環境がごく当たり前に存在した時代に育っています。日頃からスマートフォンやタブレットに慣れ親しんでいるので、それ以前の世代と比較するとデジタル技術やデバイスへの抵抗感が非常に少ないのです。Z世代にはIT技術やデバイスが日常生活の中に深く浸透していることもあり、これらの使用にも長けています。
Z世代は日頃から情報収集や情報発信にSNSを活用しているため、前述の通り情報発信能力にも優れています。また、インターネットが普及した時代に育っているデジタルネイティブ世代は、SNSの使い分けや情報の真偽の見極め、プライバシー保護などのネットリテラシーが高い傾向がある点も特徴です。
多様性を重視する
多様性を重視する点も、Z世代の特徴です。近年は、世代を問わず多様性の尊重が叫ばれる場面が増えています。そのような時代に育っているZ世代は個性を尊重する教育を受けているので、年齢や性別、ライフスタイルなど一人ひとり異なる考えや特徴を尊重し、一個人として認めて接することが一般的だと認識しています。
多様性を受け入れる考えを持っているからこそ、Z世代は物事をフラットに見ることができ、一方で人と違うこと、既成概念からはずれた人に対する偏見を嫌う傾向があります。
自分の個性や価値観を大切にしている
Z世代は多様性を当たり前のように受け入れることに加えて、自分自身の個性や価値観も大切にしています。Z世代にとっては前へ倣えで周囲と同じであることよりも、自分らしさを出せる方が重要です。モノ選びでも、人気ブランドや人から勧められたという理由で選ぶのではなく、自分の価値観に合うか、自分らしさを出せるかどうかを重視する傾向があります。
環境や社会問題への関心が高い
前の世代と比較すると、Z世代は環境問題、社会問題への関心が高い特徴があります。これは、Z世代がデジタルネイティブであることと関係しています。インターネットで常にリアルタイムで世界中の最新情報が入手できる環境で育っているため、多彩な価値観を知る機会を通して環境問題や社会問題への関心が高まりやすいのです。
さらに、Z世代は幼い頃に東日本大震災などの大災害を目の当たりにしている世代であることも、社会問題への関心を高めている理由といえます。
メンタルヘルスへの意識が高い
メンタルヘルス、いわゆる心の健康は、従来は肉体的な健康よりも軽視されがちでした。しかしZ世代は、インターネットの普及などにより以前より他者との比較が容易になっていることから、承認欲求にとらわれがちです。このような環境は自己肯定感を下げる可能性がある上、家庭や学校などのさまざまな問題がメンタルヘルスへ悪影響を及ぼすことがあります。
デジタルネイティブ世代だからこそのメンタルの問題を抱えがちであるZ世代は、メンタルヘルスへの意識が高いといわれます。特に職場において肉体的な健康と同様に心の健康を保てることは、転職先の選択や働きがいにつながる機会が多いといえるでしょう。
X世代・Y世代とは?
Z世代の前の世代にあたるのが、X世代とY世代です。Z世代をより理解するために、まずこれらの世代がどのような特徴を持つのかを解説します。
X世代
Z世代の由来となった「ジェネレーションZ」の元となった、1960年代中頃~1980年代前半生まれの世代です。アメリカで「ジェネレーションX」と呼ばれたことから、日本ではX世代と呼ばれるようになりました。
団塊ジュニア世代とも呼ばれるこの世代は、日本では高度経済成長、バブル経済を通した成功体験を経験していることから、個人主義的な考えや独立心が高いのが特徴です。そのため安定志向が比較的低く、転職に肯定的な人が多いといわれます。
X世代は成人してからIT技術が発展した世代でもあるので、新しい技術への関心や学習意欲も高いという特徴もあります。
Y世代
X世代の次の世代にあたるY世代とは、1980年代後半~1990年代中頃に生まれた世代です。2000年以降に成人した「ミレニアル世代」とも呼ばれ、一部は2002年~2011年頃に義務教育として「ゆとり教育」を受けた「ゆとり世代」と重複します。Y世代はIT技術の進化とともに成長した世代で、デジタル技術やデバイスも積極的に利用しています。
Y世代はバブル崩壊から就職氷河期に厳しい競争を経験した人が多く、保守的な考えを持つ傾向が強い点が特徴です。
Z世代とX世代・Y世代の違い
X世代とY世代、そしてZ世代は育った時代や環境が大きく異なります。その違いは、普段の仕事やコミュニケーションなどにも大きく影響しています。
コミュニケーションスタイル
X世代やY世代は、インターネットやSNSが普及する前に成長している世代です。SNSを上手に使いこなしている人もいますが、新聞や雑誌、口頭でのコミュニケーションにも慣れています。
一方、物心がついたときからインターネットが身近にあるデジタルネイティブのZ世代は、SNSをコミュニケーションツールとして活用しています。SNSが生活の中に溶け込んでおり、情報収集は紙媒体よりインターネットを通して行なうのが主流です。
場所や国籍を問わずにリアルタイムでコミュニケーションが取れるSNSをごく当たり前に使っているZ世代は偏見が少なく、さまざまな人とフラットでオープンなコミュニケーションスタイルを取っている点も、X世代やY世代と異なります。
働き方に対する考え方
Z世代は不安定な社会情勢の中で育った影響により、安定志向が強い点がX世代と異なる点です。Y世代も安定志向が高い世代ですが、Z世代はさらに仕事の意義を重要視します。加えて、Z世代は多様性を重視する考えを持っており、就職先に関しても大手企業にこだわらず、自分がやりたいことをできる企業を選ぶ傾向があります。
インターネットに慣れ親しんでいるZ世代は、働き方もオンライン上で行なうリモートワークを好んでいると思われがちですが、意外にも対面での勤務を希望する人が半数以上を占めているといわれます。学生時代や新卒で入社した際に新型コロナウイルスの流行が始まっており、人とコミュニケーションを取れる場が少なかったことから、よりリアルなコミュニケーションを求めている傾向があると考えられます。
ハラスメントへの意識
さまざまなタイプのハラスメントが問題となっている昨今、ハラスメントに対する意識も世代による違いがみられます。Z世代は、他の世代よりもハラスメントに対する意識が低く、X世代・Y世代がハラスメントだと考えている行動でもハラスメントと認識しない割合が多いといわれます。
ハラスメントを受けた際の行動も、他の世代とも異なります。デロイト トーマツ グループが行ったZ・ミレニアル世代年次調査2023によると、Y世代でハラスメントを通報するのは半数以下にとどまる一方、Z世代は8割近くがハラスメントを通報すると回答しており、ハラスメントを受けた後の転職率も高くなっています。
働き方に関してZ世代は他世代と同じ考えを持っているとはいえますが、メンタルヘルスやワークライフバランスの観点から積極的に通報したり転職したりする点は、メンタルヘルスへの意識が高いZ世代ならではといえます。
Z世代が職場に求めるもの
Z世代の多くは、すでに社会へ出ています。以前の世代と価値観や意識が異なることが多く、新卒としてZ世代を受け入れる機会があるX世代、Y世代にとってはギャップを感じることもあるでしょう。これから成人したZ世代が入社する機会が増える中、受け入れる側はZ世代が職場に求めるものを理解しておく必要があります。
オープンなコミュニケーション
SNSを日常的に使いこなすデジタルネイティブのZ世代は、オンライン上で情報を発信したり情報収集したりすることに慣れているため、職場においてもオープンなコミュニケーションを求めています。また、情報の透明性にも敏感なので、会社側の積極的、誠実さのある情報発信を好意的に受け止めます。
ただ単にコミュニケーションをオープンにするだけではなく、平等なコミュニケーションを求めるのもZ世代の特徴でしょう。国籍や性別などの違いによる偏見が少なく、かつ共働きの家庭が多い世代でもあるので、社内でのコミュニケーションにも平等性を求めます。
やりがい・達成感を感じる仕事
Z世代は前の世代と比較して社会問題などへの関心が高いことから、社会に貢献できるやりがいや達成感のある仕事を求める傾向が強いといえます。仕事をする目的として、金銭的な理由よりも成長性ややりがいを求める傾向が強いので、お金を稼ぐための仕事よりも仕事の対価である報酬よりも自分自身が価値を感じることを求めます。
自由・効率的な働き方
対面での勤務を希望する人の割合が多いZ世代ですが、仕事に縛られて拘束時間が長い仕事よりも、業務上の無駄を省いた効率的な働き方を求めます。これは、いわゆる「タイパ(タイムパフォーマンス)」を意識することが多いZ世代の特徴です。
また、世代は仕事と同様にプライベートを大切にしています。自分らしさを求めるため、ワークライフバランスを充実させるために自由度の高い働き方を求める傾向も高いといえます。
多様性が認められる
Z世代が他の世代と大きく異なる特徴として挙げられるのが、多様性の尊重です。学校教育ですでに多様性について学んでいる世代であるため、職場においても多様性を認め、尊重することを求めます。
承認・称賛
SNSなどでの情報発信が生活の一部となっている人が多いZ世代は、発信した情報を他者に認めてもらいたいという承認欲求が強い世代です。自分が発信した情報が周囲にどう思われているのかを気にすることが多く、仮に評価が悪かった場合に落ち込みやすい、評価を気にしすぎて保守的になってしまうという傾向があります。このような特徴から、Z世代は職場においても承認や称賛のフィードバックを求めてしまいます。
まとめ
Z世代は物心ついたときからインターネットやデジタルデバイスに慣れ親しんだデジタルネイティブ世代で、その影響を多大に受けた世代です。以前の世代よりも多様性や平等性、個性や価値観を重視する傾向が強く、これは職場においても同様です。この違いを理解しなければ、Z世代にとって違和感を覚える可能性もあります。
今後もZ世代を受け入れる側となる企業や管理職は、Z世代の特徴や他の世代との違いを理解し、これまでの社内コミュニケーションや業務の進め方を見直すなど柔軟な対応をすることが必要といえるでしょう。