コラム

2024.02.07
2024.02.07

ボトムアップの意味とは?メリットやデメリット、トップダウンとの違いを解説

ボトムアップの意味とは?

 
ボトムアップは英語で「Bottom up」、直訳すると「下から上げる」「底上げする」という意味です。
ビジネスでは「現場の従業員から吸い上げた意見や提案をもとに上層部が意思決定するスタイル」を指します。従業員の声が、下(現場)から上(上層部)へ上がっていくことからボトムアップと呼ばれます。
従業員のさまざまな声を取り入れることで、現場の実態に沿った意思決定ができること、新しいアイディアが生まれやすいことが特長です。
 

ボトムアップとトップダウンの違いとは?

 
ボトムアップと逆の意思決定スタイルに、トップダウンがあります。
ボトムアップが前述のとおり「現場から吸い上げた意見をもとに上層部が意思決定するスタイル」であるのに対し、トップダウンは「上層部が意思決定した内容を現場に下して従業員に浸透させるスタイル」を意味します。
最終的な意思決定はいずれも上層部が行ないますが、発案を従業員が行なうか、上層部が行なうかに違いがあります。
 
ボトムアップとトップダウン、それぞれにメリット・デメリットがあるため、どちらが優れていると一概に言うことはできません。ただ、トップダウンの意思決定は限られた人数で完結するため、スピーディーかつ一貫性を持った判断が可能になります。緊急性が高い場面や、企業として大きく舵を切る局面ではトップダウンが有効です。
 

ボトムアップのメリット

 
現場の声を吸い上げ、意思決定に反映するボトムアップ。組織運営から人材育成まで、幅広いメリットをもたらします。
 

現場の声や意見を活かした組織運営が可能になる

全体を俯瞰している上層部が感じる課題と、現場が直面している課題は、必ずしも同じとは限りません。そのため、トップダウンの場合は、意思決定の内容と現場の実態にギャップが生じてしまうこともあります。
一方ボトムアップでは、従業員から意見を吸い上げるため、顧客からもらう商品改善の要望や人材不足など、実際に現場で起きている課題を上層部が把握しやすくなります。認識のずれが小さくなることで、現場のリアルに合わせた解決策を講じることが可能です。
実態に沿った意思決定は、従業員の心理的な抵抗が少なく、現場に浸透しやすいというメリットもあります。
 

従業員の帰属意識やモチベーションが向上する

トップダウンでは、上層部の意思決定によって決まった施策を遂行する「受動的」な側面が強くなるため、従業員に対して一方的な印象を与えてしまうこともあります。「ここでは自分の意見が反映されない」「自分のやりたいことができない」と、従業員が自身を歯車のように感じてしまい、離職の原因になりかねません。
従業員の意見やアイディアを丁寧に吸い上げるボトムアップを取り入れることで、従業員は尊重されていることを実感できると同時に、「企業の一員」であることを再認識できます。また、自分の意見やアイディアが企業の意思決定に反映されるため、仕事のモチベーションアップにもつながります。
 

主体性が生まれイノベーションが促進される

従業員自身が積極的に意見を出す環境のため、当事者意識を持って解決策を考え、日々の業務に主体性を持って取り組むようになります。
従業員一人ひとりが積極的に改善策やアイディアを提案することにより、長い間頭を悩ませていた組織課題が案外すんなりと解決したり、これまでにない面白いアイディアが生まれることも。上層部という経営視点の強い立場だからこそ思いつかなかった、柔軟なアイディアが出てくることもあります。新商品・サービスのヒントにつながることで、イノベーション創出を促します。
 

ボトムアップのデメリット

 
ボトムアップは多角的な視点で意思決定が可能になる一方で、現場の声に向き合うからこそ生まれるデメリットもあります。
 

意思決定に時間がかかる

トップダウンであれば、上層部が意思決定した内容を現場に伝達し浸透させるだけのため、比較的スピーディーに意思決定を行なうことができます。
しかしボトムアップでは、意思決定前の「意見の吸い上げ」と「意見の精査」に時間がかかるのがデメリットです。
現場の従業員に意見を出してもらい、場合によってはそれを管理職が取りまとめるため、少なくとも数日は要します。さらに、上層部が意見やアイディアに目を通して精査し、採用するかどうかを決めるのにも数日かかり、おのずと上層部の負担が大きくなります。
市場のニーズの移り変わりや競合他社の動きなど、経営の意思決定にはスピード感が求められることもしばしば。迅速な意思決定が必要な場面には、ボトムアップは不向きといえます。
 

会社全体の意思決定は難しい

現場の従業員から出てくる意見やアイディアは、どうしても「現場視点」「個人視点」が強くなってしまう傾向にあります。そのため、経営方針や目的にそぐわない、企業全体としての施策に適さない場合も多いです。また、ある現場の課題が他の現場でも共通して課題であるとは限りませんし、仮に表面的な課題が同じであっても、原因は異なるケースも見られます。
従業員の声をもとに企業全体の意思決定を行なうよりも、部署や組織レベルの課題を適切に解決する方が、ボトムアップ本来のメリットを発揮できます。
 

ボトムアップが適している組織

 
組織の風土や抱えている課題によって、より良い意思決定スタイルは異なります。ここからは、ボトムアップが適している組織の特徴をご紹介します。
 

イノベーションや創造性を重視する組織

従業員一人ひとりが積極的にアイディアを出すことで、”いい案”が生まれる確率が高まります。1つのアイディアだけでは成立せずとも、集まったアイディアを掛け合わせることで優れたイノベーションの種になることもあります。
また、従業員の立場や仕事内容、バックグラウンドはそれぞれです。多様な価値観を持つ従業員によって、さまざまな角度から固定概念にとらわれないアイディアが生まれることもあります。新たな商品・サービスを生み出したい組織や、課題の突破口を見つけられず悩んでいる組織にボトムアップは適しています。
 

従業員のモチベーションやエンゲージメントを高めたい組織

上層部に限らず、誰かの指示通りに動く業務だけでは、なかなかモチベーションは上がらないもの。日々感じる課題に対して「もっと良くするために、こんなことができるのでは」「こんな事業にチャンスやニーズがあるのでは」と提案ができる環境は、従業員のモチベーションを高めます。
また、ボトムアップでは従業員の声に真摯に向き合うため、従業員の信頼感が高まりやすいと同時に、貢献意欲を向上させます。従業員の主体性やエンゲージメントを高めたい組織には、ボトムアップの導入が解決の糸口になるかもしれません。
 

現場の状況に合わせて適切に意思決定を行ないたい組織

トップダウンでは企業全体としての最適解を採用することが重視されるため、画一的な施策にならざるを得ない場面が多々あります。
しかし実際は「地域によって顧客ニーズが違う」「部署ごとに抱えている課題が違う」など、現場ごとに置かれている状況はさまざまです。
就業規則といった公平を保つべきルールは一律にする必要がありますが、営業戦略や各店舗の運営方法などは、その現場をよく知る従業員が考え、実行する方が解決の近道になることもあります。個々の状況に合わせて意思決定を行ないたい組織にはボトムアップがおすすめです。
 

ボトムアップを取り入れる際のポイントと注意点

 
組織運営を円滑にし、人材育成の観点でもメリットの多いボトムアップですが、従業員の声を取り入れる際にはいくつか注意が必要です。
 

従業員の意見やアイディアを尊重する

集めた意見やアイディアをすべて採用することは難しいもの。提案の中には「成果や利益が見込めない」「過去に実施したが上手くいかなかった」ものも含まれるでしょう。
しかし、どんな意見であっても否定しないことが、ボトムアップを上手に実践していくポイントです。
従業員から見れば、理由もなしに出した意見を否定されては「意見を言っても無駄だ」と感じてしまい、次の提案の機会をつぶしてしまいます。
意見を採用しない場合は、必ずその理由をフィードバックすること。理由があれば不採用にも納得してもらえると同時に、アイディアの改善点が明確になるためブラッシュアップして再提案してくれることもあります。
 

意見やアイディアを出しやすい雰囲気を作る

普段あまり話さない環境で、意見やアイディアを言うのはハードルが高いもの。対面はもちろん、メールやチャットを含め日常的にコミュニケーションを積極的に取ることで、話しやすい雰囲気作りを行ないましょう。何気ない雑談の中で、ふと自分の意見に気付いたり、アイディアの種が生まれることもあります。
また、普段のコミュニケーションから、どんな意見も否定しない習慣をつけることも大切です。否定されない安心感は、積極的なアイディア提案につながります。
 

効率的に意見やアイディアを収集する

思いついた意見やアイディアを、従業員一人ひとりが思いのままに上層部に提案していたら、企画書に目を通すだけでも膨大な時間と労力がかかります。
上層部の負担を減らすためにも「提案フォーマットを指定する」「ツールを使う」など、効率的に意見やアイディアを吸い上げられるようにしましょう。
ツールに関しては、例えばデジタルの社内掲示板で、テーマごとに意見やアイディアを募ることもおすすめです。他の従業員のアイディアで共感するものがあれば「いいね」を押してもらうことで、マジョリティの意見も一目で把握できます。
 

ボトムアップの成功事例

 
ボトムアップを上手く取り入れることで、成長に繋げている企業があります。本記事では、ボトムアップの成功事例を5つご紹介します。
 

Amazon.com, Inc.

アメリカの4大巨大企業GAFAの1つであるAmazon。全従業員が常に新しいことを考え、イノベーションを生み出すことを大切にしている企業です。
提案のある従業員は、新サービスや新事業のアイディアを、指定された企画書にまとめて提出。提出された企画書をもとに、Amazonとして参入するべきサービス・事業かどうかを社内で審査します。審査通過後は、ファイナンス部(経営企画本部)とともに事業戦略を立案。投資額が大きい場合は経営層の審査も行なったのち、無事に承認されればプロジェクトとして始動します。日々イノベーションに挑み続ける姿勢が、今日のAmazonを創っています。
 

株式会社リクルートホールディングス

求人広告や人材派遣、販売促進などを扱うリクルートには「Ring」という新事業提出制度があります。社歴や部署に関わらず、誰でも新事業のアイディアを提案することができる制度で、「ゼクシィ」「スタディサプリ」など、今やリクルートを代表する事業を生み出してきました。
提出されたアイディアは社内の審査を経て、選考に残ったアイディアのみ「Ringチーム」を発足。「Ring AWARD」で最終プレゼンを行ないます。その後、授賞式でグランプリが選ばれます。この授賞式の目的は受賞者の表彰と、次の応募を迷っている従業員の背中を押すこと。授賞式を盛り上げることで、持続的にアイディアが生み出されるサイクルをつくっています。
 

ブックオフコーポレーション株式会社

全国に店舗を構えるブックオフ。一律の品質を提供するため以前は、ある店舗で上手くいった手法を他の店舗にも横展開して、企業としての統制を図ってきました。
しかし、店舗ごとに客層も競合他社の状況も異なることから、経営方針を変更。扱う商品、販売方法、レイアウトなどを各店舗に任せ、現場に裁量権を与える方針にシフトしました。
その結果、店舗のスタッフが、ニーズの高い商品やレイアウトを自ら考え、直接耳にする顧客の声も反映できるように。地域や店舗のことをよく理解しているスタッフだからこそ、その地域にぴったりとはまる店舗づくりが可能になったと同時に、店舗の特色を出すことにも成功しています。
 

株式会社コンカー

6年連続「働きがいのある会社」ランキングでNo.1に輝いているコンカー。従業員に課題やこれからのビジョンを考えてもらう場「オフサイトミーティング」を年に1度実施しています。部署の垣根を越えて4~5人でグループを作り、自社の課題や解決策を話し合います。各チームで出た意見をもとに、実施する施策を検討。実施が決まった施策は担当部署が持ち帰り、上層部はビジョンに対する意見を意思決定に反映します。
コンカーは「高め合う文化」を大切にしており、感謝を伝えること、称賛すること、そしてフィードバックすることを重視しています。オフサイトミーティングで決まった施策やビジョンに対しても、担当部署と上層部からそれぞれフィードバックすることを徹底しており、それが「働きがいのある会社」につながっています。
 

小林製薬株式会社

「あったらいいなをカタチにする」でおなじみの小林製薬では、そのスローガンにふさわしく「全社員提案制度」を導入しています。担当業務に関係なく、いつでも誰でも新商品のアイディアや業務改善の提案ができる制度です。30年以上続いており、年間4万件を越えるアイディアが提案されています。提案されたアイディアは必ず担当部署内で検討されて、提案者にフィードバックされますが、このフィードバックこそが長年提案制度が続いている秘訣です。提案内容や件数によってポイントが付与され、半期に一度ポイント上位者を表彰する文化もあるそうです。
過去には全社員提案制度から「テイラック」をはじめとする大ヒット商品も誕生しています。
 

まとめ

 
ボトムアップとトップダウンは、それぞれにメリットとデメリットがあります。どちらか一方だけを取り入れるのではなく、「部署単位ではボトムアップ」「企業全体ではトップダウン」と意思決定の場面に合わせて使い分けることが重要です。
また、両者を上手く取り入れることで、それぞれのデメリットをカバーし合うことにもつながります。組織運営に課題感をお持ちの企業は、ぜひボトムアップとトップダウンの取り入れ方を見直してみてはいかがでしょうか。

 
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